
MIXIのデジタルエンターテインメント事業(ゲーム事業)の利益率が急改善しています。
2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)のゲーム事業は4.8%の減収。しかし、15.0%もの増益となっており、事業単体の利益率は39.0%から47.1%へと上昇しました。決算手数料や広告宣伝費などのコスト削減策を進めています。
足元で急成長しているのがスポーツ事業。22.1%もの増収で、黒字転換も果たしました。ゲーム事業の利益率の改善は、成長著しいスポーツ事業への投資を強化する布石と見ることができます。
モンストの派生タイトルの連発は失敗に
2025年3月期のMIXIの売上高は前期比5.4%増の1,548億円、営業利益は同38.7%増の266億円でした。ゲーム事業のコスト削減による利益率の改善と、スポーツ事業の黒字化により営業利益率は13.1%から17.2%となり、4.1ポイント上昇しました。MIXIは期初に営業利益を185億円と予想していましたが、43.8%上振れて着地。想定以上にゲーム事業におけるコスト効率化が進んだとしています。

2025年3月期のゲーム事業の売上高は前期比4.8%減の940億円。営業利益は同15.0%増の442億円でした。主力の『モンスターストライク』はARPU(ユーザー1人当たりの平均売上高)が増加したものの、前期に10周年の記念イベントを実施した反動によってMAU(月間アクティブユーザー数)が減少し減収となっています。
MIXIは2025年3月期までのゲーム事業の戦略としてモンストIPへの投資を行い、経済圏の拡大を掲げていました。それが、2023年の『スピードラッシュランナーズ』、『ゴールドラッシュバトラー』、『タワーオブスカイ』、『キュービックスターズ』、『ミステリーレコード』のリリースラッシュにつながります。しかし、2024年に5タイトルはすべてサービスを終了しました。この戦略は失敗であり、早期撤退という経営判断が利益率改善に大きく寄与したことになります。
足元ではアニメなどのメディアミックスによるモンストの認知拡大を図っており、2024年12月にMIXIが制作したアニメ「モンスターストライク エル 堕天の覚醒」を公式YouTubeチャンネルで配信しています。IP経済圏の拡大という戦略を改め、選択と集中を進めました。
『モンスターストライク』のインド進出への開発は進行中。今期(2026年3月期)でのリリースを計画しています。収益拡大に向けた期待度の高い動きがこのインド進出。一方、市場は巨大であるものの日本企業の成功事例は少なく、インド攻略は難航も予想されます。MIXIの開示情報も少なく、どの程度力を入れているのか見えづらいところもあります。
フォトウエディング事業への投資は大損する結果に
ゲーム事業は増収に向けた動きよりも、コスト削減に注力している印象。AIの活用もその一つです。2025年3月期に兼吉完聡氏を執行役員に迎え、AIによるゲームバランスチューニングの検証を行っています。兼吉氏はコナミで『メタルギア』シリーズの開発に携わり、2010年から『ドラゴンコレクション』の企画・ディレクション・プロデュースを手がけた人物。モバイルゲーム開発の実績とノウハウを活かし、AIを活用した新たな取り組みを始めています。
ゲームに限らず、事業やサービスの整理も進めています。2025年4月3日には27.03%の株式を保有していたデコルテ・ホールディングスとの資本業務提携の解消を決定しました。保有していた株式の大半は結婚相談所を運営するIBJに譲渡しています。
デコルテは婚礼写真のフォトウエディングを手がける会社。MIXIは家族の写真アプリ「みてね」を展開しており、両社の提携によって新規事業の開発が見込めるとしていました。株式を取得したのが2022年。取得総額は18億円あまりでした。
今回、譲渡した株式は135万株で、売出し価額の総額は6億円。大損とも言える安値での売却ですが、事業の整理を進めようとする強い意志も同時に感じることができます。
400億円で海外のスポーツベッティング事業を買収
そうした中で、大胆な一手を打ったのがPointsBet Holdings Limitedの買収でした。この会社はオーストラリアやカナダでスポーツベッティング事業を行っています。MIXIはスポーツ事業の成長に経営資源を集中したといえるでしょう。
2025年3月期のスポーツ事業の売上高は前期比22.1%増の402億円、20億円の営業利益(前年同期間は1億円の営業損失)を出しました。MIXIはプロバスケットボールチーム「千葉ジェッツふなばし」やプロサッカーチーム「FC東京」を傘下に収めるているほか、競輪やオートレースなどの投票サービスである「TIPSTAR」、「チャリロト」の運営も行っています。事業の成長をけん引しているのは投票サービスであり、更なる拡大に向けてPointsBetの取得を決めました。
このM&Aには期待ができる一方、不安材料もあります。その一つが取得額の大きさです。