プラットフォーム依存からの脱却へ―MIXIが実践する『モンストWebショップ』の1年と、PayPalが見据える決済の未来 | GameBusiness.jp

プラットフォーム依存からの脱却へ―MIXIが実践する『モンストWebショップ』の1年と、PayPalが見据える決済の未来

ゲームビジネスが直面する収益最大化とグローバル化というテーマに対し、具体的な解決策が提示されました。

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2025年9月26日(金)、「東京ゲームショウ2025」にて、PayPal主催のスポンサーセッション「ゲーム成長の鍵:決済とグローバル展開」が開催されました。本セッションには、PayPal東京支店の余伝道彦氏、PayPal広告事業ディレクターのサンディ・ムサ氏、そしてMIXI開発本部の橋本広大氏が登壇。ゲームビジネスが直面する収益最大化とグローバル化というテーマに対し、具体的な解決策を提示しました。

セッションでは、MIXIが運営する『モンスターストライク』のアプリ外課金サイト『モンストWebショップ』の1年間の取り組みと、そこから得られた成果や課題が詳細に語られました。また、PayPalからは決済データを活用した新たな広告事業「PayPal Ads」や、AI、ステーブルコインといった未来の決済技術がゲームビジネスにもたらす可能性が示され、今後のゲーム業界の成長戦略を考える上で重要な示唆に富む内容となりました。

ゲーム成長の鍵は「決済体験」と「グローバル展開」

セッションの冒頭、モデレーターを務めるPayPal東京支店の日本事業統括責任者、余伝道彦氏は「可能性を解き放ち、最高の未来を掴もう」と本セッションのテーマを掲げました。同氏は、PayPalは世界最大の決済ネットワークの一つであり、世界の決済の4回に1回はPayPalが利用されている現状を紹介。特にゲーム業界は大きな成長領域であると位置づけ、その成長を支援したいとの考えを述べました。

ゲームにおける決済の重要性について、余伝氏は「ゲームの世界観を損なわないシームレスな決済体験」が不可欠であると指摘。カード番号の入力などでゲームの世界から離脱してしまうストレスをなくすことが、ユーザー体験の向上と離脱率の低下に繋がると説明しました。

また、ゲーム業界で多発する不正利用に対し、PayPalが持つ世界中の決済データを機械学習させることで未然に防ぐ仕組みや、保証制度による“世界規模の安心”を提供できる点を強みとして挙げました。

決済データが広告を変える――「PayPal Ads」の可能性

続いて、PayPalの広告事業ディレクターであるサンディ・ムサ氏が、同社の新たな広告事業「PayPal Ads」についてプレゼンテーションを実施しました。

ムサ氏は現代の消費者を「知識とツール、自主性を持って購入を行う“力を持つ買い物客”」と定義。ソーシャルメディアがユーザーの「好み」を知っているのに対し、PayPalは「何処で何を買うか」という実際の購買行動、すなわちトランザクションデータを把握していると述べ、この取引データこそが「新しいCookie」になると強調しました。このファーストパーティの取引データを活用することで、新規顧客、離脱顧客、ロイヤル顧客といったセグメントに対し、極めて精度の高いターゲティング広告を配信できると説明します。

同社は、米国でNo.1のモバイル決済アプリである「PayPal」と、Z世代・ミレニアル世代に人気のP2P決済アプリ「Venmo」という特性の異なる2つのプラットフォームで広告を展開。それぞれのデモグラフィックに合わせたアプローチが可能であることや、キャッシュバック機能「Advanced Offers」によってブランドへのロイヤルティを向上させる施策も紹介されました。

ムサ氏は「私たちの目的は、力を持つ買い物客とエンゲージするためのメディア製品を提供することだ」と述べ、PayPalの決済データを活用した広告が、認知度向上からコンバージョン、再購入に至るまで、ファネルのあらゆる段階でビジネスの成長を支援できると自信を見せました。

MIXIが挑むアプリ外課金――『モンストWebショップ』1年間の軌跡

次に、MIXIで『モンスターストライク』のアプリ外課金サイト『モンストWebショップ』の開発・運用を担当する橋本広大氏が登壇。リリースから約1年間の取り組みについて、具体的な事例を交えて紹介しました。

『モンストWebショップ』開設の最大の目的は「利益率の向上」であり、プラットフォーム手数料の課題に対応するためであったと橋本氏は明かします。同社が持つID基盤や決済基盤といった“土壌”と、規制や法令を巡る昨今の市場環境の変化が重なったことが、プロジェクト始動の背景にあったと語りました。

この1年間で注力した取り組みとして、橋本氏は以下の4点を挙げました。

  1. 利便性の向上: 決済手段の充実化を図り、利用のハードルを下げることを目指しました。特に日本では「クレジットカード」「銀行」「コンビニ」が主要な決済経路であるとし、これらをカバーする戦略を実行。PayPalを導入することで、クレジットカードや銀行口座払いを間接的に、かつシームレスに提供できたことを紹介しました。

  2. 商材の充実: アプリ内で購入できる商品は基本的にウェブショップでも購入できる状態を目指し、サブスクリプション商品などにも対応しました。

  3. 独自ベネフィットの提供: 「なぜウェブショップで買うのか」という動機付けのため、アプリ内より多くの無償オーブが付与される商品や、購入回数限定のさらにお得な商品を提供。また、アプリ内では1つしか購入できない限定パックをウェブショップでは追加でもう1つ購入可能にするなど、ユーザーの購買意欲を刺激する施策を実施したと語りました。

  4. 認知拡大: アプリ内から直接的な誘導が難しいという制約の中、既存メディアでの宣伝やプレゼントキャンペーンとの連携が効果的だったと振り返ります。一方で、一般的な広告出稿はゲーム本体とウェブショップのどちらを訴求するかの文脈が曖昧になるため、まだ実施していないとのことです。

橋本氏は「一度使ってもらえると、継続的に利用してもらえる傾向がある」と述べ、アプリ外課金の取り組みには十分な手応えを感じていると締めくくりました。

【パネルディスカッション】アプリ外課金の課題とグローバル展開の現実

セッション後半では、3名の登壇者によるパネルディスカッションが行われました。

まず「アプリ外課金の成果と課題」について、橋本氏は「予想以上に堅調にシェアを伸ばせている」と成果を語る一方で、「認知拡大と、アプリ外からの動線確保が引き続き課題だ」と述べました。

この動線の課題に対し、ムサ氏は「PayPal Adsは自社マーケットの外で認知度を高めるのに役立つ」とコメント。海外市場への進出を狙う事業者にとって、PayPalの広告プラットフォームが有効な手段になり得ると示唆しました。橋本氏も「コンテクストが絞られる広告媒体は利用しやすい」と述べ、PayPal Adsへの期待を寄せました。

続いて「グローバル展開における決済の重要性」について議論が及びました。橋本氏は、MIXIが繁体字圏やインドで『モンスト』を展開している事例を挙げ、「グローバルでアプリを展開する上で、アプリ外課金の取り組みは価値がある」と断言。その上で、「各リージョンで最もポピュラーな決済手段を確保することが不可欠だが、自社で直接対応するのはハードルが高い」と現実的な課題を指摘しました。これに対し、「PayPalのようなグローバルな決済サービスを利用することで、現地の決済手段への対応コストを圧縮できる点は事業者にとって非常に魅力的だ」との見解を示しました。

PayPalが描く決済の未来

最後に、余伝氏がPayPalが見据える決済の未来、「ネクストレベル」として3つのビジョンを提示しました。

  1. AIの世界: Googleとの提携により開発を進めるAIエージェントを紹介。チャット形式で欲しい商品を伝えると、AIが商品を提案し、そのまま決済・配送までを完結させるという利用イメージを披露しました。将来的にはゲーム内にもこの技術が組み込まれ、よりシームレスな購買体験が実現するとの展望を語りました。

  2. ステーブルコイン: 海外の事例としてPayPalが発行した米ドル連動のステーブルコイン「PYUSD」や、100種類以上の暗号資産に対応する「Pay with Crypto」を紹介。これにより、従来のクレジットカードが苦手としていた“少額決済”が容易になるほか、「推し」やファンへのエンゲージメントを高めるための「色を付けた決済手段」としても活用できる可能性を示しました。

  3. PayPalワールド: WeChat Pay(中国)、UPI(インド)、Mercado Pago(南米)など、各大陸の主要な決済サービスと提携し、世界20億人規模の経済圏を構築する構想を発表。PayPalを導入するだけで、世界中のユーザーに最適な決済手段を提供できる未来を描きました。

まとめ

本セッションは、現代のゲームビジネスが直面するプラットフォーム手数料やグローバル化といった大きな課題に対し、「アプリ外課金」という具体的な打ち手と、決済データを活用した「新たな広告戦略」という未来への布石を示す、非常に実践的な内容となりました。

MIXIの事例からは、アプリ外課金を成功させるためには、決済手段の拡充による利便性向上と、ユーザーに明確なメリットを提示することが不可欠であることが明らかになりました。一方で、PayPalが提示したビジョンは、決済がもはや単なる支払い行為ではなく、AIによる購買体験の変革、暗号資産による新たな経済圏の創出、そして世界中のユーザーとシームレスに繋がるための“ハブ”として、マーケティングやグローバル戦略の中核を担う重要な要素へと進化していくことを強く印象付けました。ゲームビジネスの次なる成長を模索する上で、決済戦略の重要性を再認識させられるセッションでした。


《多賀秀明》

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