「作業時間を減らし、クリエイティブに集中する」Wwise 2026.1がもたらす開発環境の進化―Audiokineticレポート&インタビュー【CEDEC2026】 | GameBusiness.jp

「作業時間を減らし、クリエイティブに集中する」Wwise 2026.1がもたらす開発環境の進化―Audiokineticレポート&インタビュー【CEDEC2026】

「CEDEC2026」におけるAudiokineticのスポンサーセッション「Wwise 2026.1における集中的かつ持続的なワークフロー / WwiseとUnrealによるWwise Acoustics活用法」のレポートと、同セッションに登壇したプロダクトマネージャーのダミアン・キャストバウアー氏、およびシニアフィールドアプリケーションエンジニアの合田浩氏へ実施したインタビューをお届けします。

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カナダのモントリオールに本社を構えるAudiokinetic社。同社はゲーム開発に欠かせないミドルウェアとなりつつある「Wwise(ワイズ)」をグローバルに提供しており、「オーディオクリエイターが制限なく創作に没頭できる世界」を目指したソリューションで業界をリードしています。

本稿では、2026年7月22日から24日にかけて開催された日本最大級のゲーム開発者向け技術カンファレンス「CEDEC2026」におけるAudiokineticのスポンサーセッション「Wwise 2026.1における集中的かつ持続的なワークフロー / WwiseとUnrealによるWwise Acoustics活用法」のレポートと、同セッションに登壇したプロダクトマネージャーのダミアン・キャストバウアー氏、およびシニアフィールドアプリケーションエンジニアの合田浩氏へ実施したインタビューをお届けします。

Audiokinetic セッションレポート

Wwise 2026.1がもたらすワークフロー革新

スポンサーセッションの前半は、合田氏が通訳を務める形でキャストバウアー氏が進行。Wwiseのもたらす集中的かつ反復的なワークフローが、ゲームのオーディオ開発パイプラインにおいていかに中核をなすものであるかが語られました。Wwiseがもたらす集中・反復型ワークフローの強みの一端を紹介します。

WwiseはDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)からレンダリングされたオーディオファイルを直接使用できるだけでなく、実行中のゲームにオーディオファイルを直接送信・再生できるライブメディア転送機能、オーディオバスやインタラクティブなプロパティをその場で編集できるライブ編集機能を備えており、ランタイムでのスピーディーな編集を実現しています。

また、利用者所有のデータベースやWwiseにインポートされたオーディオファイルの検索、整理、プレビューを行える「Media Pool」や、ソニーAIとの共同開発によるオーディオ検索機能「Similar Sound Search」により、がオーディオや効果音を言葉やサウンドで検索できるようになります。

現在ベータ版が提供されている最新バージョン「Wwise 2026.1」では、「Music Segment」が「Segment」に改称。オーディオとサウンド(効果音の類)の両方に対応したほか、新たにタイムラインベースのクリップ編集ができるようになりました。

「Wwise 2026.1」からの新機能としては「Replay」も見逃せません。この機能はプロファイリングセッションでキャプチャされた音声の再生を行えるほか、現在の設定に基づいたすべての音声イベントをシミュレートできるように。さらに、プロジェクトの変更もリアルタイムで再現可能になりました。オーディオの実装、変化、調整の結果などを即座に確認でき、Audiokineticが目指す没入型ワークフローをより身近なものにしています。

「Wwise 2026.1」は、8月現在、Beta 2が提供中です。キャストバウアー氏は「(Wwise 2026.1は)今後のBeta 3提供を経て今秋の正式リリースを見込んでいるので、ぜひベータ版に触れてフィードバックを寄せてください」と呼びかけ、セッションの前半をしめくくりました。

Wwse 2026.1 最新情報はこちら

「Wwise Acoustics」活用法とは?

セッションの後半は合田氏による「Wwise Acoustics」の活用法が紹介されました。このセッションは「CEDEC2025」で講演された「WwiseとUnrealによるSpatial Audio入門」の続きとなっており、「CEDEC2025」でのセッションはYouTubeで公開中です。

Wwise Acousticsは、発生した音がどのように伝播し、障害物や地形などによりいかに遮蔽されるかを自動でシミュレートする機能の総称です。具体的には「回折(障害物に当たった音がどのように横方向へ拡散し、障害物の向こう側へ回り込むか)」、「透過(障害物に当たった音がどのように通過するか)」、「オクルージョン/オブストラクション(音を聞くことになるリスナーとサウンドの発生源の間に何らかの遮蔽物が存在する場合、どのような条件で音が完全に遮断/部分的に遮断されるか)」、「ルームカップリング(音が1つの部屋からほかの部屋へと伝達されていく場合、どのように拡散していくか)」などが挙げられます。

上記機能のおさらいを含む前回セッションの補足を終えると、「動的な初期反射」が解説されました。Wwiseでは、音の初期反射はWwise ReflectプラグインとSpatial Audio(空間音響)の組み合わせで実現されます。何らかの音が発生した場合、部屋の体積や形状、音の発生源から壁までの近さに応じた初期反射が発生し、時間の経過と共に、部屋の体積・音色などに応じた後期残響へと遷移していきます。反射は4次反射までサポートされていますが、パスが長くなるほど、CPUの使用量も増加していきます。

また、初期反射の紹介にあわせて、ほぼ同じ音がほぼ同時に再生されてしまうとPhasing(位相ずれ)が発生してしまうことにも言及。位相ずれが発生すると音が本来意図したわけではない音色に聞こえてしまうため、「Direct Sound Max Delay」と「Decorrelation Strength」の設定で位相ずれを軽減する解決策もあわせて紹介されました。

その後は、Wwise Acousticsの機能をいかに使い分ければよいかのユースケースが語られました。空間音響の基本要素となる「Room」と「Geometry」に関しては、「Room」は部屋や廊下のような音響特性が一定である空間の表現に適しているため、文字通りに屋内での使用が推奨されます。

「Geometry」は岩や壁などによる音の遮蔽、回折効果を演出できるので、屋内では両者を併用し、屋外では「Geometry」のみを「Reverb Zone」と組み合わせて使うケースが多くなることが考えられます。

「Reflect」は反射を含む音響表現に適しており、FPS/TPSのようにプレイヤーが壁へ近づくことが多くなるゲーム、聴覚による情報が重要となるホラーゲームやVRゲームで大きな役目を担います。一方で、制作コストがかぎられるカジュアルゲームや2Dゲームでは、コストに見合う効果が得られない可能性も考慮する必要があるとされました。

最後に、Wwise利用者から実際に寄せられた相談と、それらに対するAudiokineticの認識・対策が紹介されました。そのうちのひとつには「L字型の部屋を作成したところ、室内では回折が発生するのに、ポータルを通ると回折が発生しなくなる」というものがあり、合田氏は現状での回避方法を提示。さらに、今後本格的な調査・修正が行われるとのことです。合田氏は最後に「Audiokineticはみなさまのサウンドデザインをお手伝いしますので、今後もぜひお気軽にご相談ください」と語り、セッションを締めくくりました。

Audiokinetic インタビュー

「作業時間を減らし、クリエイティブに集中する」Wwise 2026.1が目指すワークフローの統一化

――まずは自己紹介をお願いします。

ダミアン・キャストバウアー 氏(以下、キャストバウアー)若いころはバンドでギタリストをしていましたが、やがてゲーム業界と交わる縁が生まれ、ゲームオーディオという分野に興味を持つようになっていきました。その後、テクニカルサウンドデザイナーとしてキャリアをスタートし、多くのサウンドクリエイター/デザイナーと共にキャリアを積んできました。

合田浩 氏(以下、合田)私は元々ゲームプログラマーで、初代PlayStationを皮切りにPS2、PS3、Wii、スマートフォンなどのゲームソフト開発に携わりました。その後、いったんゲーム業界を離れましたが2021年にお誘いを受けてゲーム業界に戻り、Audiokineticで現職についています。今はフィールドアプリケーションエンジニアという立場から、弊社のソリューションや技術をお客様に紹介したり、導入するお手伝いをしたりしています。

左から順にキャストバウアー氏、合田氏

――Wwise 2026.1の設計思想について教えてください。オーディオ関連のコンテンツ制作と、ゲームエンジンの間にできる反復的なワークフローの中心にWwiseを据えることが強調されていますが、この思想に至った背景には、開発現場のどのような声や課題があったのでしょうか。

キャストバウアー:ゲーム開発はすごく複雑ですので、安定した開発環境を提供することが非常に重要です。かつては、今でいうミドルウェアは(ゲームメーカーが)社内で独自開発する向きもありましたが、Wwiseのように高い安定性と拡張性をもつツールを提供することでサウンドデザイナーやプログラマー、コンポーザーの共同作業や連携はより密なものとなり、知見を共有しやすくなるでしょう。

合田開発者やデザイナーと切っても切り離せないイテレーションにかかる時間をいかに短縮できるかが、常に弊社の最優先課題です。(発想やセンスが問われない)作業時間を短くすることで、その分クリエイティブに集中できるようにすることが第一です。

――開発現場からの具体的な要望などはどのようなものがありますか?

合田UIを大規模変更した際、音量を調整するフェーダーのインターフェースも、他と同様の横長のゲージに変更しました。しかしサウンドコミュニティからは以前のグラフィカルな縦型のインターフェースがよかったというフィードバックがありました。そこで、そのあとのバージョンアップで両方のインターフェースから好きな方を選べるように変更しました。ただ、インターフェースも常に最善を目指しているので、私たちがこの方がよいと思ったらどんどん変えていきます。

キャストバウアー:弊社のサポートチャンネルは常に開発者たちと緊密に連携し、ニーズをくみ上げています。ただサポートするだけでなく、例えば現在提供しているWwise 2026.1のベータに関するヒアリングを実施し、フィードバックを得るのもサポートチャンネルの役割の1つです。

――Wwise 2026.1では、従来の「Music Segment」が「Segment」に変更され、サウンドとミュージック両方で使えるようになりました。Wwiseが目指すオーサリング体験の完成像を教えてください。

合田今まではオーディオ、サウンド、ボイスなどのワークフローが分割されていたのですが、それらを極力統一していきたいと考えています。

キャストバウアー:ワークフローを統一化し、かつインターフェースもDAWなどの親しみやすいものに合わせていこうと考えています。その方が、これからWwiseを導入する方もスムーズに使えると思いますので。

合田Wwiseはこれまで、20年間ほど同じレイアウトで提供してきましたが、2025年にゲームエンジンなどでよく使われる縦型のプロパティレイアウトを導入しました。「20年間ずっと変わらなかったのに、なぜ今さら変えるのか」というお声もありましたが、長い目で見れば、この方がより多くの方に親しんでいただけるだろうと考えました。

――Wwise 2026.1の新機能の1つである「Replay」は、プロファイラセッションの再生、再シミュレーション、ループ再生などが可能になります。こうした機能は、ゲームの開発現場へどのようなインパクトをもたらすでしょうか。

キャストバウアー:ゲームとリアルタイムで接続してプロファイリングを行えるので、これからはQAやプログラマーが気にするようなパラメータを特定・調整しやすくなります。

合田ランタイムで作業できるので、ゲーム内で特定の動作などをしたときの音回りをよりスピーディーに確認・編集できるようになりました。サウンド周りのスタッフだけでなく、プログラマーやQAの作業時間短縮にも貢献すると思います。

キャストバウアー:数々の機能の追加でWwiseのイテレーションループは早くなる一方で、これからもそうした機能は積極的に追加していく予定です。

次世代機に向けたハプティクス(触覚)技術への期待と、Wwiseの将来性

――セッションで紹介されたWwise Acousticsについて教えてください。リスナーを中心とする新たな回折モデルを採用したことで、CPUの使用率がより最適化されたとのことですが、モバイルやNintendo Switchのようなリソースの限られるプラットフォームでも実用的なレベルでしょうか?

キャストバウアー:サウンドによる体験を重視するゲームタイトルは、どのようなプラットフォームにも存在します。Wwiseは、あらゆるプラットフォームに向けていかに最適化されたサウンドを届けられるようにするかが基本理念です。

合田スマホでも年々ゲームの高度化が進んでいますので、Wwise Acousticsの需要はあります。Wwise Acousticsは1つのプロジェクトに対して、対応プラットフォームに応じた個別のパラメータや制限を付けることができるので、さまざまなプラットフォームに最適化を行えます。聞こえかたは、若干変わるかとは思いますが。

――ソニーAIとのコラボレーションによるSimilar Sound Searchについて教えてください。「オーディオからオーディオ」「テキストからオーディオ」で検索できるとのことですが、実際のゲーム開発現場ではどのような使い方を想定していますか。

キャストバウアー:サウンドは、ファイル名やタグ、メタデータで検索するのが従来の検索手段でした。しかし、Similar Sound Searchは音を波形で検索するので、メタデータがついていないサウンドでもライブラリの中で見落とすことがなくなりました。

合田Similar Sound Searchは、弊社がライセンスを有するすべてのサウンドデータの波形と説明文を学習させており、そのデータとお客様が有しているサウンドデータを比較します。そうすることで、弊社がもつ稲妻の音のサウンドデータと波形が似ているお客様のサウンドデータも稲妻の音である……という風に類推を行い、特定の単語を指定されたときに両者を提示することができるわけです。

キャストバウアー:「波形を見て類似したものを検索する」というSimilar Sound Searchの特性を生かせば、例えばお客様自身でなんらかの動物の鳴き声を模した音声を録音し、登録すればそれと似た音声を探し出せます。

合田極端に言えば、「ニャー」とネコの鳴き声をマネた音声を登録すれば、メタデータなどが登録されていなくてもネコの鳴き声(に近い)データを探せるというわけですね。

――引き続き、AIへのスタンスについて教えてください。Audiokinetic社としてAI活用の構想はどのように具体化してきていますか。

キャストバウアー:AIは、何かを作らせるのではなく、単純作業への労力を減らせるようにするのがよいと考えています。作業時間が減れば、その分クリエイティブへの時間を増やせます。また、Wwiseをとりまくコミュニティの中には、エージェントAIを活用してWwiseをより使いやすくする試みもあると聞いています。

合田いわゆる生成AIのようなものは、考えていません。権利の問題もありますし、サウンドやオーディオには正解がないので結果を保証するのも難しいからです。

――2025年のCEDECでは、合田氏がWwiseのNintendo Switch2への対応やハプティクスへの期待を述べていました。この1年で、その期待はどのような形になりましたか?

合田Switch2は、完全新作がある一方で既存作のリマスターなども見られるので、Wwise Motionによる(Switch2での)ハプティクスが本格的に活用されるのはこれからだと考えています。

キャストバウアー:ハプティクスが浸透するにつれ、ゲーム業界ではハプティクスデザイナーと呼ばれる新たな役職が誕生しつつあると聞きます。また、ハプティクスを活用する形は広がり続けており、ゲームのコントローラーだけではなくLBE(ロケーションベース・エンターテインメント)としてアトラクションで床を振動させたり、あるいはヘッドフォンを振動させたりする動きも見られます。

そうしたさまざまなハプティクスをWwise Motionでいかにサポートしていくかも重要な課題です。Wwiseはサウンド、オーディオ、ハプティクスの分野で中心を担うような位置にいると認識していますので、今後もご期待いただければと思います。

――最後に、既に御社の製品を利用している方、まだ利用したことがない方へ、それぞれメッセージをお願いします。

キャストバウアー:Wwiseはランタイムでイテレーションを行えることに特化したツールです。ぜひ、今後の発展・進化にご期待ください。

合田よりよい発展をしていくためには、お使いいただいているみなさまのフィードバックが非常に重要となります。質問、要望、何でも構いませんのでぜひお声を寄せてください。まだWwiseを導入していただいていない方は、お試しで使うこともできますので、ぜひご検討いただければと思います。

「CEDEC2026」Audiokineticブースにて
Audiokinetic 会社情報Wwise 製品情報
《撮影:小原聡太》

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