ゾンビのあの音は「野菜をかじる音」!『バイオハザード RE:2』サウンドデザイナーに訊いた「効果音」制作の極意【NDC19】 | GameBusiness.jp

ゾンビのあの音は「野菜をかじる音」!『バイオハザード RE:2』サウンドデザイナーに訊いた「効果音」制作の極意【NDC19】

「NDC 19」で「最新技術が導き出す新たなホラー体験 ~バイオハザード RE:2の挑戦の数々~」セッションを行った『バイオハザード RE:2』サウンドプロダクション担当者へのインタビューをお届けします。

ゲーム開発 サウンド

ネクソンは、韓国最大規模のゲーム開発者向けカンファレンス「Nexon Developers Conference 19(NDC19)」を、韓国の京畿道城南市盆唐区にあるネクソンコリアにて開催しました。4月24日から26日に実施されたこのイベントでは、ゲーム開発者が登壇する公演やトークセッションが多数開かれました。


本稿では、「最新技術が導き出す新たなホラー体験 ~バイオハザード RE:2の挑戦の数々~」と題されたセッションを行った『バイオハザード RE:2(以下、『RE:2』)』サウンドプロダクション担当者へのインタビューの様子をお届け。株式会社カプコンのサウンドプロダクション室でサウンドデザイナーを務める宮田祥平氏(写真左)、そしてサウンドプログラマーの木下祐介氏(写真右)から、『RE:2』の効果音や演出に込められた技術について語っていただきました。



――『バイオハザード RE:2』は旧作のリメイクタイトルでしたが、オリジナル版の存在を意識したサウンド制作となったのでしょうか。それとも、過去作を意識せず新たなサウンドを作るような気持ちで取り組まれたのでしょうか。



宮田祥平氏(以下、宮田氏): 私はもともと『バイオハザード2』が大好きでして、その影響でカプコンに入社したくらいですから、『RE:2』に関われてとても光栄でした。なので、逆に原作を意識しないように意識する、というようにはしていました。『RE:2』では、可能な限り新しいホラーサウンドをプレイヤーの皆様に体験していただきたかったのです。

――「リメイク」というよりは、新作をいちから手がけるような感覚ですね。

宮田氏: そうですね。『RE:2』は「クラシックモード」という当時のBGMと効果音を体感できる有料DLCもありますから、昔からのファンの方にはそちらを楽しんでいただいて、リメイク版のサウンドについては、今の自分がひとりのサウンドデザイナーとして「どうすれば最もクリエイティブに作れるか」ということを考えていました。

――サウンド制作の意図はシリーズ作品によって大きく変わってくるのでしょうか。

宮田氏: 『バイオハザード7 レジデント イービル(以下、『バイオ7』)』には直接関わっていませんが、ゲームに使うオーディオ素材の一部は『バイオ7』から共有していて、雰囲気の近い効果音は『バイオ7』に似せるよう作っていました。

――『バイオ7』と『RE:2』はカメラ視点が異なるゲームですが、同じオーディオ素材を使うとき、音響処理にどのような違いが生まれるのでしょうか。主観視点と客観視点では、聞こえ方をどのように変えていくのか教えてください。

宮田氏: プロップス(ゲーム中に出てくるドアなど)に使う音はまったく同じものではなく、『バイオ7』で使った素材を『RE:2』のために別の形で処理している、という感じですね。同じ素材だけど、「ガチャン」という音の出だしだけ使ったり、「バタン」という音の木製っぽい質感のところだけ使ったり。

主観視点と客観視点で最も変わってくるのは、「プレイヤーキャラクターの音」だと思います。主観視点では自分のキャラが見えず、客観視点では自分のキャラを背中から見ることになります。主観視点ではある程度誤魔化すことも可能なのですが、『RE:2』はレオンやクレアが常に目に入るわけですから、そこにはとてもこだわっていました。例えばレオンが途中で着替えるシーンでは、別の服の効果音を使いまわさないとか、細かい動作音も加えるとか。プレイヤーの目に見える部分にはきちんと手を入れています。

――効果音の収録にはいろいろな野菜を使われていたとのことですが、なぜ野菜を選ばれたのでしょうか。

インタビュー前に開かれたセッションでは、スタジオで録音した効果音を演出に用いる「フォーリー録音」という手法について解説。「ゾンビが骨を噛み砕く音はセロリをかじる音で表現」「骨が折れる音はピーマンで」と説明されていた


宮田氏: 血の表現や骨の折れるような音は、野菜などを使うととても表現しやすいんです。スイカやメロンみたいに、水気のあるものは特に。あと、鶏肉とか果物とか、グチャグチャした音が出そうなものもよく使っていました。フォーリー録音ともマッチしやすいので。内臓の音は肉でなくスライムを使ったりもしていましたね。

――骨が折れる効果音には「セロリをかじる音」を採用されていたということでしたが、「セロリ」に至るまでのボツアイデアにはどのようなものがありますか。いろいろな野菜などで試行錯誤をされていたのでしょうか。

宮田氏: そうですね。ピーマンもセロリもかじったし、シャクシャクした質感のものは結構試しました。フォーリー録音は水っぽさが大事なので、セロリは特にマッチしたんです。もちろん加工処理は加えていますけど。あと、かじりやすかったのもありますね。シチュエーションによっては録りやすい素材を選びますから。

――たしかに、水分が含まれていて録音に使えて、なおかつ手に入りやすいモノは限られてそうですね。収録現場も観てみたいですけど、ゲームのイメージがガラッと変わりそうです。

宮田氏: そうなんですよね。モノによっては水を足したり、ローションを使ってネバネバ感を付け加えたり。収録現場を見ると拍子抜けするかもしれません。意外というか、冷めちゃうかもしれないですね(笑)。

ドアや足音は実際にそれらの音を使うけど、内蔵などはさすがに録れないですから、そこをどう表現するか、ってところですね。例えば「骨をかじる音」というのは、実際に鳥の骨をかじれば上手くいくというものでもなくて。僕らが考える骨をかじる音を作るには、実物を使ってもダメなケースもあります。そこは試行錯誤して探してきましたね。

――野菜以外に「意外とこの音だったんですよ」と思えるような効果音はありますか。

宮田氏: 目玉が潰れる音でプチトマトを使ったり、ヤシの繊維を引き千切って血管の音を作ったり……自分たちから出せる音を使ったりもしましたね。喉から鳴る空気の音を使って。

――『RE:2』のフォーリー録音の際、特殊なマイキング環境で録るようなことはあったのでしょうか。音が鳴るモノに対して、変わった位置や角度にマイクを配置したり、など。

宮田氏: 鳴る音や状況にもよりますが、基本は「近距離で録音」「ちょっと離れて、空間の音も入れて録音」の二種類です。SM57(マイク)に小さな袋をつけて、マイク自体をスライムに入れてグチャグチャとした音の録音を試したりもしましたね。マイク自体を素材に入れる、というような。

――セッションで「サウンドは聴くものではなく感じるもの」とおっしゃっていましたが、「音を感じること」について具体的にご説明いただけるでしょうか。

宮田氏: サウンドってただ聴くだけじゃなくて、「後ろに何かがいる」「後ろから何かがこちらに向かってきている」のように雰囲気を感じるものでもある、と思っていまして。同じようにホラーゲームも「プレイするもの」のみに留まらず、「体験するもの」でもあると考えていて、没入感を高めるために立体音響やドルビーアトモスを取り入れていきました。

――『バイオ7』はPlayStation VRに対応していましたが、サウンドデザインにおいてVRプレイに適した工夫などはされていましたか。「VRだからこのように表現した」と言うような。

宮田氏: 私は直接関わっていないのですが、VRは処理が命となりますし、同時発音数はかなり意識していたかなと。他の音の影響しないように鳴らす・鳴らさないなど。


木下祐介氏(以下、木下氏): 他のタイトルでも同じことを言えると思いますが、VRタイトルを遊ぶプレイヤーは「後ろから聞こえる音」「画面外から聞こえる音」というのに、より敏感になります。なので、印象的な音をVRに適したかたちで配置するように試みていました。『バイオ7』の前日譚であるデモ版『KITCHEN』では、意図的に「プレイヤーの後ろから音が聞こえてくる」というやり方で演出していましたね。

――『RE:2』では、タイラントがプレイヤーを追いかけてくるシーンがありました。隣の部屋から“コツコツ……”と足音を立てて近付いてくるサウンドは特に印象的でしたが、あのような「壁一枚を隔てた音」などはどのように処理されていたのでしょうか。


宮田氏: サウンドデザインに関しては、リアルタイムバイノーラル技術を使っていまして、バイノーラル録音を採用しています。プレイヤーと同じ部屋にいても、プレイヤーの視界にいる(画面内にいる)のか、見えていない(画面外にいる)のかで音は変わります。同じ部屋にいるかどうか、階下・階上・隣の部屋にいるかどうかという情報は常にゲームの内部側で検知していて、ケース毎に効果音の処理に違いを与えています。「どれくらいの距離に脅威があるのか」というのが分かるように。

――『RE:2』のサウンドデザインで特に苦労した点はどこだったでしょうか。

木下氏: リバーブ処理(残響効果)がとても重たくて。部屋と部屋の間をプレイヤーが移動すると、それぞれの部屋の音に別々のリバーブがかかることがあるんですよね。同時に複数のリバーブがかかるので、処理が大変になってきます。そういうところで処理落ちすると音飛びが発生してしまいますから、工夫が必要でした。

また、プラットフォームによっても処理は変わってくるので、「この機種だとどうしても実装できない」というような問題もありました。部分的に重いところは処理を変えたり試行を重ねました。

宮田氏: ゾンビが目の前にいてプレイヤーが銃を構えているとき、たまに「クソっ!」みたいなセリフを言うことがあるんですよね。これがめちゃめちゃ大変でした。どのセリフを言うか、どれくらいの音量にするか。ゾンビが単体か複数かでもセリフが変わってきますし、かなりの量を考えました。「お前!」なのか「お前ら!」なのか、のような。


ゾンビが視界にいる・いないでも変わってきますし、距離によっても違いが出ます。プレイヤーが瀕死なのか元気なのか、ストーリーの進行度によっても。後半になると初めて会うようなニュアンスで「なんだこいつら!」とは言わないよう、シチュエーションに沿った形になります。セリフの発生条件を決めたら、敵キャラクターやプレイアブルキャラクターの担当プログラマーと都度相談して、状況に合わせたセリフを出せるよう調整していきました。これを各キャラクターごと、さらには各言語毎に用意する必要があります。大変でしたが、リアリティーの向上に繋がったと思います。

――プラットフォームのスペックとサウンドデザインの関係について教えてください。「現行機だとこういう技術を使えた」「これまではこういう表現はできなかった」というようなものがあれば、詳しくお聞かせください。

木下氏: 大いにありますね。サウンドって、時間的には映像よりシビアだとも思ってます。処理落ちが起きた場合、グラフィックだと「フレームが落ちる(コマ送りのようになる)」じゃないですか。これがサウンドだと音飛びになって、グラフィック以上に目立つんですよね。なので、処理能力を超えないように組まないといけません。サウンドエフェクトに関して言うと、負担の大きいリアルタイム処理だと、残響のかかり具合までシーン毎に細かく変えられます。

宮田氏: バイノーラル(五方向・四方向から複数マイクで録音)に関しても、ハードウェアスペックが高まればさらにサウンド数を増やせます。「右斜め後ろから聞こえる音」というものが必要になったら、既存の音に工夫を凝らして表現するのではなく、実際に右斜め後ろの位置から録音して再生できます。技術が進歩すれば、まだまだ音の立体感は向上すると思っています。

――ハードウェアのスペックが上がれば、これからもサウンドのクオリティーを上げられると言うことですね。

宮田氏: そうですね。「部屋のどこから音が鳴るのか」を細かく分けて設定できれば、より良くなるかもしれません。現段階では、都度々々チェックしながら表現力を間引いてるところもありますので。

木下氏: 音の場所を分けると、どこでなんの音を再生するかという情報がその分だけ必要になるんです。こうなるとメモリ消費が増えますから、使用できるメモリ量が増えれば、さらに精細なサウンドを表現できると思います。

――ハードウェアスペックを考えると、PC版のサウンドは他機種と比べて高品質なのでしょうか。

木下氏: ハイエンドなゲーミングPCとPS4/Xbox Oneを比べると処理能力が倍ぐらい違いますから、同時に複数のリバーブを使う場合、PC版においてはあまりスペックについて考えることはありません。どっちかと言うと、PS4/Xbox One版のほうが苦労した点は多かったです。

宮田氏: 「PC版に合わせて制作したものを、PS4/Xbox One版でスケールダウンしている」のではなく、初めからPS4/Xbox One版に最適なものを作っています。タイトルにもよると思いますが、『バイオハザード』シリーズはPS4/Xbox Oneで遊ぶ方が多いでしょうし、家庭用ゲーム機で100点が出せる表現を考えて、それをベースに他の機種でも動かせるようにしています。

――最後の質問となりますが、ゲームをどのような環境で遊ぶことを前提としてサウンドを制作されているのでしょうか。「モニターの内蔵スピーカー」「ヘッドフォン」「外部スピーカー」など、ユーザーによっても環境は変わってくると思います。

宮田氏: 我々はまずサラウンドの「外部スピーカー」を使用して音量の振れ幅が一番大きい状態を制作します。そして、大きな音でプレイすることが難しい「モニターの内蔵スピーカー」などを使用したユーザーが「○○の音が小さいから音量を上げよう」と音量を上げた後に、突然大音量が出て必要以上に音量を下げてしまわないよう、全体の音量の幅を小さくする調整を行います。なので、外部スピーカーで制作した上でテレビやヘッドフォン用の調整をしています。

――本日はありがとうございました。
《subimago》

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