かつてハイパーカジュアルゲーム市場は、短期間で開発し、安価にユーザーを集め、数日で回収するという「スピード勝負」が定石でした。しかし、市場の成熟やプライバシー規制強化による広告効率の低下により、その“必勝法”は崩れ去り、業界では「Hypercasual is dead(ハイパーカジュアルは死んだ)」という言葉すら囁かれるようになりました。
そんな逆風が吹く2025年、日本のデベロッパーであるゲーミンキャットが米国市場の頂点に立ちました。彼らが手掛けたタイトルの名は『Jigsolitaire(ジグソリティア)』。かつて個人開発で世界的ヒット作『TENKYU』を生み出した小林太一氏を中心としたチームが再びマーケットを席巻するタイトルを手掛けた、というわけです。

なぜ彼らは、成熟し、一部では「死んだ」とまで言われた市場で再びNo.1を獲ることができたのでしょうか。その裏には、クリエイターとしての執念と、それをビジネスとして成立させるための「Axon by AppLovin」による強力なテクノロジー支援がありました。
今回は、ゲーミンキャットの小林太一氏と、同社の急成長を裏側で支え続けたAppLovinの佐藤憲悟氏に、ヒットの裏側にある「開発の苦悩」と、Axon をはじめとするAppLovinのソリューションを活用した「数億円規模の投資判断」について、深くお話を伺いました。

サーバーサイドエンジニアから個人開発へ。『TENKYU』で掴んだヒット、7年かけて奪還した全米1位までの道のり
―― 小林さんといえば、個人開発で『TENKYU』を全米1位に導いた実績が有名ですが、まずはこれまでのキャリアについて改めて教えていただけますか。
小林 太一氏(以下、小林)もともとはとある企業でソーシャルゲームのサーバーサイドエンジニアとして働いていました 。ただ、キャリアを考える中で「クライアントサイドの経験も積みたい」「Unityを触れるようになりたい」という思いが強くなり、勉強のために個人開発を始めたのがきっかけです 。
そこで作ったのがボール転がしゲームの『TENKYU』でした。1~2年かけてコツコツ改善していたのですが、個人での展開に限界を感じてVoodooにコンタクトを取ったところ、とんとん拍子に話が進み、2018年に世界30カ国以上で1位を獲得することができました。

―― その後、現在のゲーミンキャット(旧MagicAnt)へジョインされた経緯は?
小林『TENKYU』のヒット直後、現在のゲーミンキャット代表である林(宣多氏)に誘われたのがきっかけです。「好きなだけハイパーカジュアルゲームを作っていい」という環境で、再び自分の力でどこまで行けるか挑戦したいと思い、この7年間ずっとハイパーカジュアルゲームを作り続けてきました。
―― この7年間で、市場環境は激変しました。かつてのパートナーであるVoodooは、2023年に「ハイパーカジュアルは終わった」とまで言っていましたが、開発を続けてきた身としてはどう感じていましたか。
小林正直、非常に苦労した7年間でした。王者であるVoodooですら「ハイパーカジュアルは終わった」と言い出し、多くの事業者が撤退していったというのは隠せない現実です。
ただ、現場で作り続けてわかった事実があります。終わったのはハイパーカジュアルという「ジャンル」ではなく、「短期で回収するビジネスモデル」だということです。
かつてのようにCPI(インストール単価)重視で安く集めて数日で回収する手法は通用しません。しかし、アドテクノロジーの進化により、1ヶ月、2ヶ月と長く遊んでくれるユーザーを獲得できるようになりました。つまり、瞬間的な面白さではなく、長く遊べる「本質的に面白いゲーム」を作れば、以前よりも大きなチャンスがある時代になったのです。
テスト段階では「撤退」もよぎった。数字を変えたのは“中身”ではなく“人”
―― 今回の『Jigsolitaire』は、ソリティアとジグソーパズルという定番要素を掛け合わせたゲームですが、開発当初から手応えはあったのでしょうか。
小林いえ、全く逆です。初期のテスト結果は芳しくありませんでした。
テストでは主にCPIでユーザーの関心度を、プレイタイムとリテンション(継続率)で面白さを見ているのですが、当初は肝心のリテンションが全く伸びませんでした。何度も改修を重ねて現在の形にたどり着きましたが、それでも最終テスト段階の数値は「このまま続けるか、撤退するか」を迷うギリギリのラインでした。

―― そこからどうやって全米1位へと飛躍したのですか。
小林
「ここまで作ったのだから、最後にAppLovinのAxonを使って本格的に配信して判断しよう」と踏み切ったのが転換点でした。
驚くべきことに、ゲームの中身は全く変えていないにも関わらず、Axonで本格運用を始めた途端、リテンションが130%~150%と劇的に改善したのです。これは、テスト段階で集めていたユーザー層と、Axonが連れてくるユーザー層の質が根本的に異なっていたことを意味します。
AppLovin 佐藤憲悟氏(以下、佐藤)そこがまさに、我々のプラットフォームが提供できる最大の価値だと自負しています。
AppLovinのAIエンジン「Axon」を用いることで、それぞれのゲームの特性に合ったユーザー層——つまり今回のケースでは、長くじっくり遊びたいと考える人々——に対して、ピンポイントでリーチすることが可能になります。
ゲームそのものを変えなくても、獲得する「ユーザーの質」をテクノロジーで最適化することで、KPIを劇的に好転することが可能です。
AppLovinの「伴走」が可能にした、月数億円規模の投資判断
―― 具体的に、AppLovin側からはどのようなソリューション提案やサポートがあったのでしょうか。
佐藤今回はAppLovinの広告収益最大化プラットフォーム「MAX」をご利用いただいた上で、ユーザー獲得においては「Ad ROASキャンペーン」を軸に運用しました。
特に成功の鍵となったのは、「D28(28日目)」での最適化を提案し、実行したことです。従来の手法ではD0(初日)やD7(7日目)での短期回収を重視していましたが、『Jigsolitaire』は長期的なエンゲージメントが見込めるタイトルです。そこで、28日という長いスパンで収益性が最大化するように調整しました。

―― デベロッパーからすると、回収期間を長く設定するのはキャッシュフローのリスクを伴いませんか?
小林おっしゃる通り、経営サイドとしては非常に勇気がいる決断です。ハイパーカジュアルの広告出稿額は月に「億単位」になります。それが回収できるのが半年後、というスパンになることもあり、キャッシュフローの観点では非常にヒリヒリする戦いです。
テスト配信の段階で、1ヶ月目の数字だけを見て半年後の収益性を予測するのは困難です。ここで重要だったのが、AppLovinの佐藤さんたちとの「伴走」でした。
―― 具体的にはどのようなサポートがあったのですか?
小林週次で定例ミーティングを行い、リリースから半年間、ずっと伴走してもらったのは大変大きかったです。
「120日経過時点でデータがこう溜まったから、ROASターゲットはここまで設定できる」「今の傾向なら半年後はこうなる」という緻密なシミュレーションとアドバイスを常に共有いただきました。
新規タイトルでいきなり長期回収モデルを回すのは、自分たちだけでは怖くてできません。Axonの実績と予測データに基づいた提案があったからこそ、安心して巨額の広告費を投下し続けることができました。

「ハイブリッドカジュアル」の波と、あえて「広告モデル(IAA)」を選んだ理由
―― 今、カジュアルゲーム市場では広告収益(IAA)とアプリ内課金(IAP)を組み合わせた「ハイブリッドカジュアル」が主流になりつつあります。『Jigsolitaire』で課金要素を入れようとは考えなかったのですか。
小林もちろん考えましたし、これからの市場でハイブリッドカジュアルが重要度を増すことは間違いありません。ただ、『Jigsolitaire』に関しては、あえてハイブリッド化はせず、広告収益のみ(IAA)でいくと決めました。
理由は、この作品における「ゲーム体験」を守りたかったからです。僕はこのゲームを「おばあちゃんが孫と一緒に遊んでいる」ような、ゆったりとしたイメージで作っています。
そこにハイブリッドカジュアル特有の「制限時間」や「クリアのための課金アイテム」といった要素を入れてしまうと、ユーザーを急かすことになり、期待している体験とズレてしまう。だから、このタイトルはIAA一本で勝負することにこだわりました。
―― 課金がないIAAモデルでも、Axonならスケールさせることができる、と。
佐藤はい、可能です。市場では「ハイブリッドじゃないと勝てない」という空気が一部ございますが、我々の考えでは「IAAでもハイブリッドでも、どちらでもスケールさせられる」と考えています。
実際、『Jigsolitaire』はIAAのみですが、ユーザーの継続率が非常に高く、LTV(顧客生涯価値)もハイブリッドゲーム並みに高い。だからこそ、先ほどお話しした「D28(28日後)」のような長期スパンでの最適化も機能します。
―― 逆に、これからハイブリッドカジュアルに挑戦したいデベロッパーには、どのようなソリューションがあるのでしょうか。
佐藤ハイブリッドの場合は、広告と課金の両方の収益を合算して評価する「Blended ROAS(ブレンデッド・ロアス)」という指標を用いたキャンペーン運用をご提案しています。
ハイパーカジュアルが長期化・高寿命化していく中で、課金も広告も含めて、28日後やそれ以降のリターンを最大化していくキャンペーンです。Axonであれば、ゲームのモデルに合わせて、IAA単体でもハイブリッドでも、最適な運用をご提案できます。
起爆剤となった「プレイアブル広告」とLTVの相関関係
―― マーケティング面で、他に成功の要因となった施策はありますか。
佐藤「プレイアブル広告」の導入が、全米1位への決定的なブーストになりました。
今回はD28キャンペーンでしっかりと土台を作った上で、さらに爆発力を生むためにプレイアブル広告をご提案しました。グローバルでスケールしているタイトルの多くがプレイアブル広告を活用しており、今回の事例も顕著な成果がでている成功例となります。
小林プレイアブル広告に関しては、導入前は「獲得数(スケール)が増えるだけ」だと思っていました。しかし実際には、インストール後のリテンションまでもが向上し、結果としてLTVが向上するという好循環が生まれました。
―― プレイアブル広告が、なぜインストール後の継続率に影響するのでしょうか。
小林「期待と体験の一致」だと思います。ユーザーはプレイアブル広告を通して実際に遊んで「もっと遊びたい」と思ってインストールします。プレイアブル広告での体験と、実際のアプリ体験が一致していることで、ユーザーが満足して遊び続けてくれるのだと思います。
正直にゲームの面白さを伝えるプレイアブルを作ったことで、エンゲージメントの高い、「本当にこのゲームが好きな人」を集めることができました。
佐藤Axonのシステムは、パフォーマンスの悪いクリエイティブは自動的に配信がなくなり、成果の高いクリエイティブへ配信を寄せていく仕組みになっています。つまり、実際に遊んで満足度が高い、パフォーマンスの良いクリエイティブだけが生き残り、配信され続けるのです。
日本から世界へ。フルリモートで挑むゲーミンキャットの新たな挑戦

―― 最後に、今後のゲーミンキャットの展望について教えてください。
小林弊社ゲーミンキャットは、日本から世界に向けてゲームを作る会社です。特徴的なのは、全員が「フルリモート」で働いていることです。
東京だけでなく、地元にUターンして開発を続けているメンバーなど、全国各地から「ゲームを作りたい」という情熱を持った仲間が集まっています。
今後はハイパーカジュアルやハイブリッドカジュアルに加え、Steam向けのゲーム開発にも挑戦し、世界市場に向けてさらに勝負していきたいと考えています。場所に縛られず、世界でヒットするゲームを作りたいエンジニアやクリエイターの方は、ぜひ私たちと一緒に挑戦してほしいですね。
―― Axon by AppLovinとして、今後のサポート方針をお聞かせください。
佐藤私も日本のデベロッパーの皆さんの熱量が大好きです。市場は「ハイブリッドカジュアル」という言葉に代表されるように、より複雑化・高度化していますが、それは「長く遊ばれるゲーム」が正当に評価される時代になったとも言えます。
我々は、単なる広告プラットフォームとしてだけでなく、ゲームデザインへのフィードバックや、今回のような大規模な投資判断を支えるデータ分析まで踏み込んで、世界を目指す日本のデベロッパーを黒子として支え続けていきます。

「ハイパーカジュアルは終わった」という言葉に翻弄されず、市場の変化を冷静に分析し、必要なリスクテイクを行ったゲーミンキャット。そして、その挑戦を「Axon」や「MAX」といったテクノロジーと、人的な伴走支援の両面で支え、巨額の投資判断を可能にしたAppLovin。
今回のインタビューで浮き彫りになったのは、単なる「ヒットの運」ではなく、緻密な計算と強固なパートナーシップが織りなす「必然の勝利」でした。『Jigsolitaire』の成功は、日本のゲームビジネスが世界で戦うための、一つの明確な解を示していると言えるでしょう。
次なる全米No.1のタイトルを目指すデベロッパーやパブリッシャーはぜひ一度Axon by AppLovinに勝ち筋を問い合わせてみてはいかがでしょうか。
Axon by AppLovin 公式サイト





