「手数料が安くなる」だけじゃない──スマホ新法時代、Stripeが提案するゲーム課金の"次の一手" | GameBusiness.jp

「手数料が安くなる」だけじゃない──スマホ新法時代、Stripeが提案するゲーム課金の"次の一手"

昨年末に施行され業界でも注目を集める「アプリ外決済」。単なる手数料の引き下げに止まらない新たなビジネス展開についてStripeの日本法人担当者にお話を伺いました。

マネタイズ マネタイズ
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「手数料が安くなる」だけじゃない──スマホ新法時代、Stripeが提案するゲーム課金の
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2025年12月18日、いわゆる「スマホ新法(スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律)」が施行されました。この法律の施行による大きな変化の一つとして、AppleやGoogleといったプラットフォーマーに対し、アプリ内での決済手段を自社サービスに限定することを禁止するというものがあります。これにより、ゲーム会社はアプリから外部のWebサイトに誘導して課金を行う「リンクアウト」方式を、より自由に選択できるようになりました。

これまで30%のプラットフォーム手数料を支払いながらアプリ内課金に依存してきた事業者にとって、大きな転機となる法改正です。すでに年末年始には各パブリッシャーがWebストアでのキャンペーンを積極的に展開し、SNSでは「Webストアで買うとお得」という情報も話題になりました。ユーザー側にもこの流れが浸透しつつあるといっても過言ではないでしょう。

一方で、リンクアウト方式であっても一定の手数料(iOSの場合15%+決済手数料)が発生することから、「期待したほどのメリットがないのでは」という声も業界からは聞こえてきます。

しかし、アプリ外課金への移行は本当に「手数料の節約」だけの話なのでしょうか。そこには、コスト削減を超えた新たな可能性があるのではないか──今回は、グローバルで年間240兆円以上の決済を処理するStripeの日本法人から、多くのゲーム会社の課金システム導入を支援してきたDing氏にお話を伺いました。

アプリ外課金とは?メリットや日本の導入事例を解説

インタビュイープロフィール

Yunjie Ding(ユンジエ・ディン)氏 ストライプジャパン株式会社 プロフェッショナルサービス

2021年、Stripe日本法人最初のインプリメンテーションコンサルタントとしてストライプジャパン株式会社に入社。IBMでエンタープライズアプリケーション領域のテクニカルコンサルタントを経験後、「よりエンドユーザーに近いところで価値を提供したい」という想いから決済業界へ転身。入社後はプロフェッショナルサービスチームの立ち上げを経て、現在は大手ゲーム会社をはじめ、自動車、金融、メディアなど幅広い業界のStripe導入支援を担当。大規模なゲーム課金プロジェクトにも複数携わっている。


スマホ新法の施行は“新たな顧客基盤”をつくる非常に大きな一歩

──まず、昨年12月に施行されたスマホ新法について、Stripeさんから見た現在の状況をお聞かせください。

ディン氏(以下、敬称略):昨年の施行については、非常に大きな一歩だと捉えています。事業者目線から見ると選択肢が増えましたので、自社に合うアプローチを取れば、しっかり収益向上につなげられます。課金戦略を見直すいいタイミングではないでしょうか。

まずコストについてですが、従来のアプリ内課金以外のオプションを利用することでコスト削減が可能になります。例えばリンクアウト形式を採用する場合、15%+決済手数料という構成になりますので、収益性改善のチャンスとして見込めるかと思います。

ただし、アプリ内課金と違って、従来App Storeが代わりに実施していた作業が事業者側の負担になる点には注意が必要です。具体的には、不正対策、チャージバック対応、負荷対策といった運用面ですね。実際には、ここの運用コストとの兼ね合いが非常に重要になってきます。

──なるほど。つまり、単純に手数料が下がるだけではないということですね。

ディン:おっしゃる通りです。リンクアウトや純正アプリストア以外を利用する場合、運用のしやすさ、開発工数のメンテナンスのしやすさが成功するかどうかの鍵になります。安くなった手数料の代わりに開発工数や運用工数が膨らんでしまうと本末転倒ですから。

Stripeはすでに海外でリンクアウトに対応できる国では、リンクアウトを実現するための管理画面・決済ページを提供しています。1回の実装でApple Pay、Google Payを含めた複数の決済手段に対応できるリンクアウト決済ページを準備可能です。稼働・運用の実績があるソリューションを提供できるのが強みであり、実装工数だけでなく、運用に関する工数も非常に抑えられます。

──実際にゲーム会社さんとお話しされる中で、決済周りでどのような悩みを耳にすることが多いですか?

ディン:大きく2つあります。

まず、決済体験の自社構築への不安ですね。今までアプリストアに決済を任せていたところを、これから自分たちで構築する際に、決済のベストプラクティスや不正対策、決済にまつわる運用全般についてノウハウがないという声をよく聞きます。

もう1つは海外展開についてです。日本のアプリストアでの販売だけでなく、リンクアウト形式が対応している国々でも同じように展開したいけれど、日本国内の決済代行業者さんが海外対応していない、あるいは海外の税制や返金、チャージバックへの対応に不安があるといった声が多いですね。

──コスト削減は分かりやすいメリットですが、それ以外にアプリ外課金に移行するメリットはありますか?

ディン:コストだけではなく、ユーザーとの接点が決済を通じて増えるということも大きなメリットとして認識する必要があります。

アプリ外部決済を導入することにより、ゲーム会社はユーザー情報に加え、決済の情報も保持できます。この情報は、ゲーム会社がゲームの枠を越えてユーザーと接点を持つ場合に、非常に意味を持つのです。例えば、ファンクラブ、グッズ販売サイトなどのオンラインでの購買行動や、イベントでのポップアップストアなどオフラインでの購買の際に、アプリ外決済の履歴があれば、既に登録されているカードで簡単に決済が完結できます。また、ゲーム内のアイテムと、ゲーム外のグッズを組み合わせた販促キャンペーンなども行いやすくなります。こういった、ユーザーとの多様な接点の構築と、ゲーム内に縛られない自由な販促活動が、LTV向上につながる重要なファクターとなるでしょう。

Stripeは単なる決済代行事業者としての機能だけでなく、Billingというサブスクリプション機能やオフラインでの決済を受け付けるためのTerminalにも対応しています。決済のカード情報を活用することで、より高いビジネスチャンスを創出することが可能です。

これからはプラットフォーマーに全てを任せるのではなく、自社でユーザーの情報をしっかりと把握してゲームを遊んでもらいながら、イベントへの参加やグッズを買ってもらう――そうした新たなビジネススキームのお役に立てるのではないかと思っています。

100億円規模なら「1%の差」で1億円が動く

──さて、もう少しStripeの強みについて聞かせてください。決済においては成功率が売上に直結するとよく聞くのですが、これは具体的にどういうことでしょうか?

ディン:決済成功率は売上・利益に多大なインパクトのある要素です。例えば100億円のビジネス規模で決済成功率が1%違うと、1億円の差になりますよね?ゲーム業界でメインのデジタルコンテンツは利益率が高い(商材によっては売上≒粗利)ので、この機会損失は非常に大きい。

ゲーム内課金であれば基本的にアプリストアに任せきりですが、外部決済になるとカード情報の入力ミス、決済失敗時のハンドリング、3D セキュアの表示など、自社で最適化や決済代行業者に依存する部分が出てきます。また、運用している中で決済成功率も変動しますし、不正対策もこの成功率に影響します。

先ほどもお話したとおり、このあたりを気にされているゲーム会社さんも少なくありません。

──Stripeでは決済成功率を高めるために、どのような工夫をされているのでしょうか?

ディン:まずインフラ投資の面からお話しします。日本で決済代行を遂行するには、通常CAFISやJCNと呼ばれる決済ゲートウェイを利用することが多く、弊社も数年前までCAFISを利用していました。しかし、より高い決済パフォーマンスを提供するために、VisaやMastercardなど主要なブランドネットワークに直接接続する方式に移行しています。

これにより秒間処理決済件数が大幅に向上し、ネットワークトークンを対応できるようになりました。ネットワークトークンを使うと、例えばサブスクリプションでカードの期限が切れて更新されても、トークンはそのまま使えるので、新しいカードに自動的に紐づいて決済が継続できます。これは解約防止に大きく貢献します。

もう1つ重要なのが3D セキュア(3DS)です。3DS必須化以降、「3DSによって決済成功率が下がった」という声をよく聞きます。Stripeは自社で3DSサーバーを構築しているため、この部分の可用性も高いです。以前はサードパーティの3DSを利用していましたが、APIの可用性にも影響があったため、自前で構築することにしました。

──インフラ面以外ではいかがでしょう?

ディン:決済承認率の向上と不正対策は車の両輪のような関係です。カードの決済承認は最終的にカード会社が行いますが、不正が多い加盟店は承認率が下がるケースが多数存在します。もちろんカードの不正取引は大きな問題なので、「Stripe Radar」という不正対策製品を提供し、怪しい取引は自動でブロックしたり、ルールベースで制限をかけたりできます。

不正はしっかりと防ぐ一方で、決済承認率を改善するための「Adaptive Acceptance」というAIテクノロジーを活用した機能を提供しています。

カード会社に拒否された決済の約半分は、実は明確な理由を教えてもらえないんです。リスクが高いと判断されているのですが、その中には「False Decline」(支払い拒否の誤判定)、つまり本当は良いユーザーなのにリスク高いと誤判定されているケースが含まれています。

Adaptive Acceptanceでは、拒否された決済に対してリアルタイムでAIモデルが分析し、0.5秒以内にリトライを行います。カード会社ごとの判定の「癖」を学習して、誤判定となった決済をリカバリできます。Stripeは年間240兆円以上の決済データを持っているので、無数のパターンを学習して最適化できるんです。この機能により、日本で平均的に1~3%程度の決済成功率改善が見られています。

こうした情報は全てStripeのダッシュボードから簡単に確認することもできます。

──ユーザーからすると、決済が通っただけで、裏側でそんなことが起きているとは気づかないわけですね。

ディン:そうなんです。顧客の体感としては、通常の決済と体感は何も変わらないですが、事業者としてみるとStripeを利用しなければ決済できなかったであろう顧客にもサービスを提供できているといえますね。

実際、あるStripeのユーザーさんから「他社の方が決済手数料が安いからそちらに乗り換えたい」と相談を受けた時、ダッシュボードを見ていただいて「この成功率を他社で担保できるなら乗り換えてもらって構いません」とお話ししました。結果、向こうの決済代行業者さんと話した上で「無理でした」となり、残っていただいたこともあります。先ほどもお話したように、1~3%と聞くと小さい数字に思えるかもしれませんが、100億円規模のビジネスだととんでもない金額ですから。

1回の実装で195カ国──グローバル展開の「重さ」が変わる

──グローバル展開を視野に入れているゲーム会社も多いと思いますが、そのあたりはいかがでしょう?

ディン:まずカバレッジの広さですね。Stripeでは日本でアカウントを作っていただき、1回実装すれば基本的に195カ国以上から決済を受け付けることができます。チェックアウトページは各言語に対応しているので、国ごとの開発は不要になります。

それぞれの国では慣れている決済手段が異なるため、Stripeのチェックアウトページでは自動的にその国でよく使われる決済手段が優先的に表示されるよう並べ替えを実現しています。

また、「Adaptive Pricing」という機能もあります。150カ国以上で現地通貨での決済に対応しており、Stripeが機械学習を使用して最も関連性の高い取引通貨を決定し、ローカライズされた価格を自動的に計算します。この機能により、我々のデータでは約17.8%の売上向上につながっています。

──海外展開というと、税務処理の負担も大きいですよね。

ディン:そうなんです。海外展開する際には税務処理がかなり負担になります。国によって税制が違いますし、現地法人を持っていない場合は越境販売になるので、どう納税すればいいのかノウハウがないという声が多いんですね。

そこで使われるのが「MoR(Merchant of Record)」と呼ばれるサービスです。これは簡単に言うと、Stripeが「販売者」に代わって一部業務を担い、税務処理や返金対応、チャージバック処理などを代行するサービスです。事業者さんは商品を提供し、決済にまつわる煩雑な処理はStripeに任せられる――いわば「販売代行」のような仕組みですね。

Stripeでは「Managed Payments 」という名称でこのMoRサービスを提供しており、日本国内ではベータ版の案内を始めている状況です。

──なるほど、税務処理まで含めて丸ごとお任せできるわけですね。

ディン:はい。MoRサービスは便利な反面、すべてお任せいただく分、通常の決済手数料より高くなります。グローバルだと、通常のカード決済が2~3%程度のところ、MoRサービスだと5~8%といった水準になることもあります。

ただ、StripeのManaged Paymentsの特徴として、決済サービスと深く統合しているため、トランザクションレベルで柔軟に切り替えができるんです。

──トランザクションレベルで切り替えられるというのは、具体的にどういうことでしょう?

ディン:例えば、最初は運用コストを抑えたいのでManaged Paymentsで始めて、途中から自社で運用してコストをさらに下げたい──こうした変更を1つのパラメータを設定するだけで実現できます。また、複数タイトルを海外展開している際に、特定のタイトルだけ自社で運用しつつ、他のタイトルは任せてみようといった柔軟な運用が可能です。

他社さんだと、MoR業者さんと決済代行業者さんが別になってしまって、APIの仕様も運用も全部違うので、一度方針を決めてしまうと切り替えが大変なんです。自社で体制を整えるのか、MoRでいくのかの重大な経営判断を最初にして、そのまま突き進むしかありません。でもStripeなら同じアカウントの中で柔軟に切り替えられるので、部門判断で「まずこのタイトルでトライアルしてみよう」といったことができます。経営レベルの大きな判断を待たなくても、機動的に試し、その後の大きな判断に繋げることができるわけです。

──少し話はそれますが、人気ゲームの周年イベントなどでは、秒間にとてつもない数のトランザクションが発生しますよね。システムの安定性についてはいかがでしょう?

ディン:安定性も我々の強みですね。

一番わかりやすい例として、昨年のブラックフライデー・サイバーマンデーがあります。Amazonを含め、多くのStripeユーザーが4日間の週末に310億米ドル(約4.8兆円)の決済を遂行しました。ピーク時には1分間で15万トランザクションを処理しています。

これは取引数ですが、実際のAPI処理件数はこの数倍になります。それでもAPIのアップタイムについては99.9999%、いわゆる「シックスナイン」を達成しています。

この稼働率については社内に専門のチームがいて、年間のチームパフォーマンスの最重要指標として見られています。専門チームは高い稼働率が人事評価にも直結しているんです。(笑)ですから、日々これをいかに維持できるかという改善活動を行っています。

4日間で6兆円!Stripeを通じたブラックフライデー決済の裏側

人間が買い物する時代から「AIが買い物する未来」へ

──少し先の話になりますが、今後の技術トレンドで注目されているものはありますか?

ディン:決済のトリガーが「ユーザーがボタンを押す」だけではなく、AIエージェントがユーザーの代わりに自律的に取引を実行する世界になっていくと考えています。

例えばゲームの中で、ユーザー(プレイヤー)がコントロールしているキャラクターもいれば、自律的に動いているキャラクターもいる。その自律的なキャラクターに「このバジェットで成長してね」と任せたときに、そのキャラクターが自分で判断してアイテムを購入したりする。今は想像しづらいかもしれませんが、AIの進化を見ると、そういう世界は十分あり得ると思います。

──たしかに、放置系ゲームなんかはまさにその方向性ですよね。オートで進めておいて、進捗だけ確認するという遊び方が増えている印象があります。

ディン:そうなんです。そこに、例えば「200円までなら自動で買っていいよ」という設定ができたら、日々忙しくしている社会人の方でも使うのではないでしょうか。

──そうしたエージェンティックコマースの領域で、Stripeは昨年OpenAI社との「Agentic Commerce Protocol(ACP)」を発表し、業界を牽引する立場であることを印象付けました。今年に入ってからも、マイクロソフトのCopilotと連携した「Copilot Checkout」という機能が発表されましたね。

ディン:はい、Stripeは昨年、OpenAI社と共同で開発した、「Agentic Commerce Protocol (ACP)」というエージェンティックコマースのためのプロトコルを発表しました。これにより、現在すでにアメリカでは一部の加盟店の商品がChatGPT内で直接購入できるようになっています。オープン標準であるACPは、Stripeで決済処理を行っていない事業者でも、既存の決済プロバイダーと共に導入することができ、あらゆるAIエージェントで機能します。

また、今年に入ってCopilot Checkoutも発表しました。こちらは、マイクロソフトのAIアシスタント「Copilot」のチャット内で、会話しながらそのまま商品を購入できる機能です。Stripeがチェックアウト機能を提供していて、ユーザーはチャットから離れることなく、小売業者から商品を購入できます。米国では既に実用化が進み、EtsyというCtoCモールや、URBNグループ傘下のブランドの商品が、AIチャット内でそのまま購入できるようになっています。


技術的には、Stripeが「Shared Payment Token(SPT)」という新しい決済トークンを発行して、購入者の決済情報を公開することなく、Copilotのようなアプリケーションが決済を開始できるようにしています。

さらに、複数のAIエージェントを通じて販売を開始することができる新しいソリューション「Agentic Commerce Suite」を発表しました。AIエージェントと企業間で共有される技術的な言語を提供するACPですが、各AIエージェントには固有の統合要件と導入要件があります。これらの要件に対応するのをお手伝いするのが「Agentic Commerce Suite」です。Agentic Commerce Suiteは、ローコードでの導入を可能にすることでその複雑さを解消し、企業が単一の統合でAIエージェントを横断して販売できるようにします。

──チャットで会話しながら、そのまま買い物が完結するというのは、かなり体験が変わりそうですね。

ディン:そうなんです。この世界では、単にチェックアウトUIがきれいというだけではなく、「誰が何をどこまで買ってよいか」という委任の設計や、監査性、不正対策まで含めて、システムが安全に決済できる基盤が重要になります。

VisaやMastercardのようなネットワークも「Agentic Token」といった技術仕様を整備し始めていて、Stripeはその最前線で標準化に関わっています。こうした新しい技術が出てきたとき、決済代行業者としてすぐに対応するかどうかは別の話です。我々はかなりそこを率先してやっているので、将来的にAIによる決済が当たり前になったときに「対応できません」ということにはならないはずです。

──昨年は日本のステーブルコイン(JPYC)の発行も話題になりましたが、暗号通貨でも積極的な投資をされていると伺いました。

ディン:ステーブルコインというと越境決済の手段として紹介されることが多いのですが、ゲーム業界にとってはもっと大きなポテンシャルがあると考えています。ゲーム内通貨と現実世界の通貨の境界線がシームレスになる世界が遠くないということです。

例えば、ゲーム内の「通貨」をそのまま現実のグッズ購入に使えるとか、ファンクラブの決済にも同じ通貨が使えるとか、プレイヤーがゲーム内で稼いだ価値を、そのまま現実の経済圏で使える──そういった体験を安全に提供できる基盤が整いつつあります。

Stripeとしても、ステーブルコインのオーケストレーション基盤であるBridgeの買収を完了し、ウォレットやオンチェーン体験を開発者が実装しやすくするPrivy(プリヴィ)の買収も発表するなど、この領域への投資を加速させています。ゲーム内通貨のゲーム外での利用については、法的な面など、まだまだ解決すべき点もありますが、ゲーム会社自身が主導する「ゲーム経済圏」の創出は、非常にエキサイティングな仕事になると思います。

──最後に、決済戦略の見直しを検討しているゲーム会社の経営者に向けてメッセージをお願いします。

ディン:決済戦略を見直す際に、3つの視点でお伝えしたいと思います。

まず、今回のスマホ新法を機に、決済コストの見方を変える必要があるということです。自社で決済手段を構築する場合、決済代行事業者の手数料だけで判断するのではなく、開発のしやすさ、運用のしやすさ、そして決済のパフォーマンス──承認率、不正対策、ピーク時の安定性まで含めた「総コスト」で見ることが重要です。安くなった手数料の代わりに開発・運用コストが膨らんでしまっては本末転倒ですし、決済成功率が低ければ売上機会を失ってしまいます。

次に、グローバル展開を狙う場合の視点です。決済手段、税制、規制が国ごとに違う中で、カバレッジの広さ、展開のしやすさ、運用のしやすさが成功の鍵になります。最初から「国別に作り込む」よりも、拡張できる基盤に乗せた方が早くて強いケースが多いです。

そして、少し先を見据えた視点です。決済のトリガーがユーザーだけではなくAIエージェントになる世界が来つつありますし、ステーブルコインのような新しいレールも現実的な選択肢になってきています。これらの技術は決済と密接に関わっており、今日の収益を伸ばすだけでなく、明日の前提にも耐えられる決済基盤を選ぶことが重要です。

この3つ──スマホ新法時代の総コスト、海外展開のしやすさ、そして未来の技術への対応力──を総合的に見ると、Stripeは非常に大きなバリューを提供できると考えています。

ゲーム会社さんには本業に力を入れていただきたい。規制対応や決済の運用に振り回されるのではなく、良いゲームを作ることに集中していただくために、決済という部分はStripeにお任せいただければと思います。ぜひご検討いただければ幸いです。

──ありがとうございました!


単なる手数料引き下げだけでないビジネスチャンス

スマホ新法の施行により、ゲーム会社にとってアプリ外課金という新たな選択肢が現実的なものとなりました。しかし、ディン氏の話から明らかになったのは、この変化が単なる「手数料の節約」に留まらない、より大きな可能性を秘めているということです。

自社で決済基盤を持つことで、ファンクラブや物販、イベントなど、ゲームの外側にある顧客接点でも一貫した決済体験を提供でき、LTVの向上につながります。また、海外展開においても、195カ国以上をカバーするStripeのグローバルネットワークを活用すれば、国ごとの対応に追われることなくスピーディーな展開が可能です。

さらに、AIエージェントによる自律的な決済や、ステーブルコインによるゲーム内通貨と現実通貨のシームレスな融合など、未来のコマースを見据えた取り組みはゲームにもそう遠くない未来に影響してくるでしょう。OpenAIとの「Agentic Commerce Protocol」の共同開発、MicrosoftのCopilot Checkoutとの連携など、すでに実用化が始まっている事例もあり、この先もさらに拡張していくものと思われます。

今回の法改正を、単なるコスト削減の機会としてではなく、決済戦略全体を見直し、グローバル展開や新たなビジネスモデルへの足がかりとする──そんな視点が、これからのゲーム会社には求められているのかもしれません。

Stripe 公式サイト
取材/執筆:宮崎 紘輔,撮影:小原聡太》

取材/タンクトップおじさん 宮崎 紘輔

Game*Spark、インサイドを運営するイードのゲームメディア及びアニメメディアの事業責任者でもあるただのニンゲン。 日本の新卒一括採用システムに反旗を翻すべく、一日18時間くらいゲームをしてアニメを見るというささやかな抵抗を6年続けていたが、親には勘当されそうになるし、バイト先の社長は逮捕されるしでインサイド編集部に無気力バイトとして転がり込む。 偶然も重なって2017年にゲームメディアの統括となり、ポジションが空位になっていたGame*Sparkの編集長的ポジションに就くも、ちょっとしたハプニングもあって2022年7月をもって編集長の席を譲る。 夢はイードのゲームメディア群を日本のゲーム業界で一目置かれる存在にすること、ゲームやアニメを自分達で出すこと(ウィザードリィでちょっと実現)、日本武道館でライブすること、グラストンベリーのヘッドライナーになること……など。

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