攻略メディアとグローバル決済ソリューションがなぜ協業?Xsolla×Game8が語る、広告の先にある「ゲーム・メディア・コマース」の未来―世界進出の一手とは【TGS2026】 | GameBusiness.jp

攻略メディアとグローバル決済ソリューションがなぜ協業?Xsolla×Game8が語る、広告の先にある「ゲーム・メディア・コマース」の未来―世界進出の一手とは【TGS2026】

国内で成果が見えた「攻略サイト×アプリ外課金」を、Xsollaと組んで海外へ。慎重な日本企業の背中を押すのは何か、AI時代に攻略メディアが目指す「唯一性」とは

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あなたの会社のタイトルでも、プレイヤーはいまこの瞬間、どこかで攻略ページを開いています。ボスの倒し方を調べ、ガチャの当たりを確かめ、イベントの周回効率を計算する。世界最大級のゲーム攻略メディア「Game8」には、そうしたプレイヤーが月間5,500万人(国内4,000人+海外1,500万人)以上集まります。

もし、その「購入を決める直前の場所」に、アプリストアを介さないアイテム購入の入り口があったとしたら――。

その問いを現実の仕組みに変えようとしているのが、Xsolla(エクソラ)とゲームエイトです。Xsollaは、ゲームの発売から成長、収益化までに必要なソリューションを手がけるグローバルコマース企業。200以上の地域で1,000以上の決済手段に対応し、アプリストアを介さずにゲーム内アイテムを直販する「Web Shop」は700タイトル以上に導入されています。決済だけでなく税務やコンプライアンス、不正対策まで一括で引き受けるマーチャント・オブ・レコード(MoR)として、20年以上ゲーム業界に寄り添ってきました。

Xsolla Head of Japanの國分英孝氏、ゲームエイト執行役員 Media&Solution海外事業本部長でGame8 Global Inc. CEOの加藤喜宣氏、そしてXsolla APACでHead of Partnershipsを務めるエリック・リー氏が同じテーブルに着いて語ったのは、単なる「送客提携」ではなく、日本のゲームを世界で売るための力強いタッグの構想でした。

海外に活路を見出そうとする日本のゲーム会社。慎重すぎる意思決定。AIに要約されていく攻略情報と、見え始めた広告の天井。それぞれが抱える行き詰まりを、ゲーム・メディア・コマースが重なる一点で突破しようという構想です。国内で手応えをつかんだ「攻略サイト×アプリ外課金」を海外へ広げる狙いから、インタビュー中に世界観が重なったデジタルとフィジカルの境界を越えた先まで、ざっくばらんに裏側をお話いただきました。

なお、APAC全体の市場動向とWeb Shop時代のローンチ戦略は、Xsolla APAC統括のイ・ジュヨン氏へのインタビューをご覧ください。

Xsolla 特集ページはこちら!

「海外で一番シェアがあるのはXsollaしかない」―協業の経緯

――まず、今回の協業がどのような取り組みで、どういう経緯で始まったのかを教えてください。

國分英孝氏(以下、國分):今回はゲームエイトさんからお声がけをいただいたのが始まりです。私たちは決済やコマースの基盤を提供する立場ですが、攻略サイトという実際にゲームのエンドユーザーが日々集まっている場所に購入の入り口を置けることの価値は非常に大きい。そこで意気投合しました。

加藤喜宣氏(以下、加藤):私たちは国内でも、攻略サイトからアプリ外でゲーム内アイテムを購入できる取り組みを進めてきました。国内ではある程度の成果が見え、攻略サイトが購入導線として機能することが分かってきたんです。同じ課題は海外にもあります。それなら、海外で正直に「シェアが一番高い決済基盤はどこか」と考えたとき、Xsollaさんしかなかった。それが決め手になって、最初にXsollaさんにお声がけしました。

私たちは2019年から英語版の「Game8.co」を運営していて、いま月間約1億PV、約1,600万人のユーザーに使っていただいています。日本のゲーム会社が海外へ出ていく機会は確実に増えているので、攻略Wikiから新しい形で課金できる仕組みを整え、海外展開のプロモーションまで支援していきたい。そのパートナーとして、Xsollaさんは私たちにとってベストな選択でした。

――協業は日本法人同士の話し合いで進んだのでしょうか。

加藤:日本同士で進めた部分もありますし、グローバルとグローバルで話をした部分もあります。両方の機会がありましたね。

成熟市場の課題は「海外で稼ぐこと」―両社が見る日本のいま

――業界的に、日本のモバイルゲーム市場は厳しい局面だと言われます。メディアと決済基盤、それぞれの立場でゲーム会社と話す中で、どこに課題を感じていますか。

國分:新しいユーザーを獲得すること自体が難しくなっている、というのはどの会社からも聞く話です。だからこそ、いまいるユーザー1人あたりの価値をどう高めるか、そして海外にどう出ていくか。D2Cと海外、この2つの方向に価値を高めていける会社と、そうでない会社の差が広がっていくと感じています。

加藤:メディアの立場でいろいろなゲーム会社さんと取り組んでいて感じるのは、やはり海外展開が一番の課題になっているということです。名だたる会社さんが2016年ごろにこぞって海外に出ましたが、正直、うまくいかなかったケースが多かった。成功例はあるけれど、それを再現できるのかは誰もが悩んでいるところです。

日本のゲームは、日本人自身がもっと自信を持っていい水準にあります。その強みを軸に、どういう戦略で海外に出ていくのか。ユーザー1人あたりの課金額が高い国へ出ていくことを、この取り組みで日本の企業に対してしっかりサポートしたい。そこが両社の狙いが重なる部分です。

「攻略記事の中に、そのゲームだけの入り口を置く」―協業はどのようなかたちに?

――具体的には、どのような仕組みから始まるのでしょうか。

加藤:ゲーム会社さん、Xsollaさん、私たちの3社で組む形です。攻略記事の中に購入の導線を入れ、そこからXsollaさんのWeb Shopに送客する。導線を置くかどうかはゲーム会社さんが判断します。Xsollaさんが持っている営業リストと、私たちの営業リストを合わせて、これから各社さんに提案していくフェーズです。

――XsollaのWeb Shopを使っているタイトルの記事に自動的にすべて表示される、というわけではないのですね。

加藤:技術的にはできますが、それだとゲーム会社さんから「やめてくれ」と言われるケースもあるでしょう。あくまで各社さんと合意したうえで進めます。

――ゲーム会社側から見れば、これまでWeb Shopに来ていなかったユーザーにリーチできるわけですから、歓迎される話ですよね。すでに国内で運用している導線の成果はいかがですか。

加藤:クリック率で言えば、通常の広告と比べて数倍~数十倍のレベルです。攻略を読んでいる「そのゲーム」のユーザーに、「そのゲーム」がお得になる情報を届けるわけですから、引きが強いのは当然と言えば当然で、ユーザーを限定できる分、効果が高い。

――ビジネスインパクトとしてはどう見ていますか。

加藤:短期的には、アプリ内で課金しているユーザーに攻略Wikiから導線を渡すので、流通総額としても小さくはありません。ただ、私たちがもっと重要視しているのは短期的な収益だけではなく中長期でのインパクトです。日本のゲーム会社の使えるお金が増えれば開発費が増え、より良いゲームがユーザーに届く。そうなれば私たちは攻略サイトとしてトラフィックの増加が期待できます。正直に言えば、ゲーム市場が大きくなること自体が私たちの利益なんです。

――そこはXsollaが掲げてきた「パートナーの収益を増やす」という理念と重なる部分ですね。

國分:まさにそうです。目指す方向が同じだからこそ、パートナーシップが成り立っていると思います。

「一歩目を踏み出すことが重要なのかもしれない」―慎重な日本企業の背中を押すもの

――國分さんはHead of Japanに就任されて約1年です。この間にスマホ新法が施行され、アプリ外決済の議論が一気に進みました。日本企業の動きはどう変わりましたか。

國分:関心の度合いは、法律が施行されたことで間違いなく高まりました。プラットフォーム側も外部決済の手段を整えつつあります。ただ、日本企業はまだまだ慎重に進めようとしている、というのが実感です。だからこそ、ゲームエイトさんとのような取り組みを通じて様々な収益機会を上げられるという形を具体的に示すことが、後押しになると考えています。

――外から見ていると「なぜみんなやらないのだろう」と感じます。アマゾンやディズニー、円谷プロダクションなど異業種を経験されてきた立場から、日本のゲーム会社が二の足を踏む理由をどう見ていますか。

國分:日本企業だから、ゲームだから、というよりも、皆さんプラットフォームとの関係をよく見ていらっしゃるんです。積極的に外部決済へ舵を切ることで、逆にストア側との関係に影響が出ないか。そういう質問は本当によく受けます。

――そうした質問には、どう答えているのですか。

國分:「もうスタートしている会社がたくさんあります」とお伝えしています。多くの企業は「やらない」と決めているわけではなく、タイミングを図っているんです。最初の一歩を踏み出すのに時間がかかるのは、国民性かもしれません。非常に保守的なところがある。一方で、思い切ってチャレンジする、フロンティアスピリットのある会社さんは、割と前向きに進めてくださっています。何だかんだ言って、最後は「後押し」が必要なんだと思います。

――決済事業者は複数あります。ゲーム会社は何を基準に選んでいるのでしょうか。

國分:経験がない段階では、どうしてもコストなどの数字に目が行きがちです。ただ、実際に選んでいただいている理由は別のところにあります。私たちはゲーム業界に向けて20年以上サービスを提供してきた歴史があり、その中で蓄積してきたゲーム業界ならではの知見がある。

もうひとつのキーワードは海外です。日本の企業が海外に出るときに直接的な支援を受けられる相手は多くありませんが、Xsollaなら海外に販路が開けるというわけです。特に日本のゲームはIPベースのものが多く、ひとつの国だけでなく世界中で人気が出るポテンシャルがあります。そこを一緒に取りに行けることが大きいと思います。

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「AIに引っ張られない"唯一性"をつくる」―広告の天井と、攻略メディアの次の一手

――メディアの側にも伺います。Game8といえば、トラフィックを広告収益に変えるモデルで成長してきました。ページビューに連動したマネタイズには天井が見えつつあるとも言われますが、実感はいかがですか。

加藤:おっしゃる通り、事業の売上としては広告が中心で、PVが大きければ売上が増える構造でした。いま海外事業では、収益の大部分が広告です。そこで立ち上げているのが「ソリューション」の領域で、企業から直接プロモーションの費用をいただいて取り組むものや、今回のようなコマースの取り組みも含まれます。最終的には広告とソリューションを半々、少なくともソリューションを5割にしていきたいと考えています。

正直、PVを集めて広告のクリックで収益化できるのはシンプルです。でもAIによる検索最適化の世界では、広告というマーケット自体にどうしても縮む力が働く。だから、ユーザーがもう一度訪れたくなるサービスをつくり、それをゲーム会社さんに使ってもらい、ユーザーにも使ってもらう。その循環で私たちも収益を得る形に変えていきたいんです。

――AIの影響を、もう少し聞かせてください。

加藤:私たちはメディアですが、もはやメディアを見なくても、AIに聞けば「このボスはどう倒せばいいか」に対して「Game8にはこう書いてある」と返ってくる時代になりました。では、そのときGame8にはどんな答えがあるのか。

私がテーマに置いているのは「唯一性」です。情報の優位性はAIに勝手に引っ張られてしまうので、それだけでは意味がない。たとえばゲーム会社さんと組んで、先行してプレイさせてもらえる、先行して情報を出していいというアライアンスを組めれば、それはAIには代替できない唯一性になります。今回の協業もその延長線上にあって、攻略に特化した機能の中でお得な購入情報やセール情報を提供できる。「ユニークユーザー」ではなく、本当に「この人はGame8のために使っている」と言える状態を目指したい。情報のために来ていたGame8を、「Game8に訪れたい」に変える取り組みです。

海外でも、Game8はMetacriticに日本のメディアとして初めてレビュー媒体として登録されました。海外の大手パブリッシャーの公式トレイラーに、IGNやGameSpotと並んでGame8のスコアが載るようになっています。そうした唯一性を、海外でも積み上げていきたいですね。

――攻略サイトの読者は、ニュースサイトの読者とはマインドが違います。購入導線まで担うとなると、記事やコンテンツの作り方は変わりますか。

加藤:課金アイテムだけではなく、今後はグッズなども視野に入ってきます。ひとつのタイトルの熱量を上げること自体は、私たちだけでは簡単ではありません。ただ、Wikiを運営する中でコミュニティの熱量が上がる瞬間は確かにある。ゲーム会社さんがIPをアニメなど多方面に展開していく中で、その位置づけの中に私たちの導線を置き、課金アイテムに限らずグッズも販売していく。国内も海外もやっていきたいと思っています。海外は物流がネックになりますが、そこも解決できるはずです。

デジタルとフィジカルの境界線を越える―3社が描く「win-win-win」

――物理的なグッズもWeb Shopで扱えるようになる、ということでしょうか。

國分:いままさにそうした取り組みができないか社内でも議論が盛り上がり始めたところです。デジタルとフィジカルを同じ場所で扱えるようにしていきたいというのが狙いです。

――たとえば、あるタイトルの熱心なファンがGame8のWikiを読んで、そこからゲーム内通貨を買い、そのポイントでグッズにも交換できる。物流を意識させずに「ここに行けばもらえる」という体験ができるわけですね。

國分:そうなっていくと思います。デジタルとフィジカルの境界線をどう考えるかは私たちも常に議論していますが、両社が見ている世界観はかなり一致している。きっとそういう方向に進んでいくはずです。

加藤:グッズの話はこれまでしたことがなかったのですが、世界観が一致していて安心しました。

――エリックさんにも伺います。海外でも、そうしたニーズは多いのでしょうか。

エリック・リー氏(以下、エリック):最近、私たちが最も関心を持っているのがまさにその領域です。私たちはデジタルアイテムの販売に強い会社ですが、一緒に仕事をしているゲーム会社は、それぞれがIPの権利者でもあります。つまり、いまあるデジタルグッズに加えて、フィジカルなグッズを販売したいというニーズを持っているんです。

私たちはソリューションの会社ですから、決済だけでなく、そうしたニーズも一緒に解決したい。ただ、1社だけではできません。だからこそ、他社と知恵を出し合ってパートナーシップを組み、2社、3社のすべてにシナジーが生まれる「win-win-win」の絵を描く。最後にはユーザーにも恩恵が届くようにする。それが私たちの目標です。

「ゲームの発展が、私たちの発展になる」―この協業で提供したい価値

――最後に、この取り組みはまだ始まったばかりです。改めて、協業を通じてどんな価値を提供したいのか、この先どう取り組んでいきたいのかを聞かせてください。

加藤:最終的には、ゲームの発展が私たちの発展につながります。私たちのユーザーベースを使って、ユーザーにはよりお得に、パブリッシャーにはより高い収益を。それを目指して、この取り組みを通じて頑張っていきます。

エリック:率直に言えば、私たちはゲーム会社様の収益創出を非常に重視しています。ゲームに追加の収益をもたらせる、良いパートナーシップにしていきたい。ゲームに限らず新聞や出版、ウェブなどを含めたあらゆるパートナーの皆さんが引き続き良質なコンテンツやゲームを作り続けられる、そんなエコシステムをつくっていきたいと考えています。

國分:慎重に見ている企業が多いからこそ、「ここから始められる」という具体的な形を示すことが私たちの役割です。ユーザーが集まる場所に入り口を置き、日本のゲームを海外へ。ゲームエイトさんと一緒に、その最初の一歩を後押ししていきます。


ゲームが育てば、メディアも育つ。加藤氏の言葉を借りれば、この取り組みの本質は「ゲームの発展が私たちの発展になる」ことにあります。決済基盤と攻略メディアが同じ方向を向いたとき、最後に恩恵を受けるのはプレイヤーとパブリッシャーです。日本のゲームを世界へ届けるためのタッグは、まだ走り出したばかり。今後の展開にもぜひ注目したいところです。

おなじくTGSではXsolla APAC統括イ・ジュヨン氏にもAPAC全体の市場動向と、「ローンチ戦略に最初からWeb Shopを組み込む」という新しい潮流について伺いました。APACでも力強く成長を続ける日本市場やインド市場などのお話も伺っています。あわせてご覧ください。

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《宮崎 紘輔》

タンクトップおじさん 宮崎 紘輔

Game*Spark、インサイドを運営するイードのゲームメディア及びアニメメディアの事業責任者でもあるただのニンゲン。 日本の新卒一括採用システムに反旗を翻すべく、一日18時間くらいゲームをしてアニメを見るというささやかな抵抗を6年続けていたが、親には勘当されそうになるし、バイト先の社長は逮捕されるしでインサイド編集部に無気力バイトとして転がり込む。 偶然も重なって2017年にゲームメディアの統括となり、ポジションが空位になっていたGame*Sparkの編集長的ポジションに就くも、ちょっとしたハプニングもあって2022年7月をもって編集長の席を譲る。 夢はイードのゲームメディア群を日本のゲーム業界で一目置かれる存在にすること、ゲームやアニメを自分達で出すこと(ウィザードリィでちょっと実現)、日本武道館でライブすること、グラストンベリーのヘッドライナーになること……など。

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