
カメラによるモーショントラッキングを活用し、コントローラーを持たずに体を動かして遊べる家庭用ゲーム機『Nex Playground』が2027年に日本市場への進出を予定しています。本ハードは、北米で家庭向けにスマッシュヒットを飛ばした体感型ゲームハードです。
本稿では、TGS2026にて行われたNexのデイビッド・リー氏、トム・カン氏、山本恵美子氏へのインタビューをお届けします。『Nex Playground』はいかにして生まれ、北米の家庭に広がっていったのか。そして、北米とは異なる市場環境を持つ日本で、どのような展開を目指しているのかを聞いてきました。
『Nex Playground』とは?

インタビューに入る前に、会場で実際に『Nex Playground』を体験。遊び方は非常にシンプルで、ゲームプレイ用のコントローラーは存在しません。リモコンはあるものの、本体にはボタンが一切配置されていません。
『Nex Playground』は内蔵カメラがプレイヤーの動きを認識し、腕を振ったり、体を左右に動かしたりと、自分自身の動きがそのままゲームへの入力になります。後述のインタビューでも触れられていますが、モーションは本体内で処理され、クラウドに上がる仕組みではないとのこと。
さらに、本体内蔵タイトル以外に遊べるゲームについても、サブスクリプションを通じて提供されるものはNexがパブリッシングしています。これらはまさしく、「小さな子供のいる家庭でも安心して遊べる」ことに特化するためのシステムと言えるでしょう。

実際に遊んでみると、操作方法を覚えるという感覚はかなり薄く、直感的にプレイすることができます。画面を見ながら体を動かせば、それに合わせてゲームが反応してくれるため、ゲームに慣れていない人でも「まず触ってみる」までのハードルは低そうです。
さらに、「日本の居住環境で十分に体を動かして遊べるのか」という懸念も、今回の試遊では大きく感じませんでした。TGSのブースは決して広くありませんでしたが、限られたスペースでも手足を動かして遊べます。
北米では、口コミを通じて『Nex Playground』が広がったといいます。その背景にあるのは、単なる「コントローラー不要」の仕組みだけではありません。操作をシンプルにし、タイトルやプライバシーまで含めてプラットフォーム側で管理する。家族が安心して、同じテレビの前に集まって遊べることを軸に設計されています。
こうした思想は、どこから生まれたのでしょうか。Nex共同創業者兼CEOのデイビッド・リー氏、Nexプレジデント兼インターナショナル統括のトム・カン氏、Nex日本法人ゼネラルマネージャーの山本恵美子氏に、創業の背景から北米での広がり、日本市場での戦略まで聞きました。
『Nex Playground』が目指す“アクティブプレイ”
――まず、Nexを創業された経緯からお聞かせください。
リー氏:Nex共同創業者兼CEOのデイビッド・リーです。最初に創業したスタートアップ「EditGrid」をAppleに売却した後、同社で8年間を過ごしました。その後、独立してNexを創業しました。
私の原点には「スラムダンク」があります。子供の頃に見て育ったので、バスケットボールが大好きなんです。身長は宮城リョータで、プレーは三井の3ポイント、心は桜木花道でした。ほかの多くの子供たちと同じようにNBAでプレイすることが夢でしたが、身長や技術の問題で、そこにはたどり着けませんでした。
しかし、開発したテクノロジーがNBAへと導いてくれました。モーショントラッキングの技術をバスケットボールのトレーニングに利用し、その後、NBAがNexのパートナーとなり、出資もしてくれたのです。
その過程で、予想していなかった可能性に気づきました。バスケのトレーニングアプリのために作った技術を、ゲームという、もっと大きな世界で使えるとわかったんです。

そこから今に至るまで、私の心には常に2人の人物がいました。スティーブ・ジョブズと岩田聡さんです。ジョブズからは「Think big」、大きく考えることと、あらゆる細部に注意を払うことを学び、岩田さんからは、ゲームはすべての人のためにあるものだと学びました。
岩田さんはWiiによって、子供も両親も、おじいちゃんやおばあちゃんも、一緒に集まって遊べるようにしていました。それが『Nex Playground』のインスピレーションになっています。
――『Nex Playground』の根底には、Wiiへのリスペクトがあるのですね。
リー氏:おっしゃる通りです。私は『Nex Playground』を、Wiiという巨人の肩の上に乗っているつもりで開発しました。

(商品パッケージを手に取り)お弁当箱からルービックキューブが出てくるようなイメージです。この小さな本体にたくさんのテクノロジーを詰め込んでいますが、ご家族にとっては非常にシンプルに使えるようになっています。
――かわいいですね。本体に操作するボタンが見当たりませんが。
リー氏:リモコンで操作する形となっています。
山本氏:本体にボタンはないのですよ。

リー氏:カメラには、物理的に隠すためのカバーも付けています。技術的な懸念からというより、親御さんに安心していただくためという側面が大きいのです。カバーは、使わないときには本体の背面に付けておけます。

リモコンも、とてもシンプルに作っています。ゲームに詳しくなくても、すぐに使い始められます。
――アメリカでは大きなヒットを記録していると伺います。
リー氏:昨年11月、ブラックフライデーの週には、米国で『Nex Playground』の販売台数がXbox Series X|Sを上回りました。新しいブランドのゲーム機がトップ3に食い込むのは、20年以上で初めてのことです。
私たちが作っているのは、非常にユニークな製品です。Wiiという巨人の肩の上に立ち、「アクティブプレイ」という新しいカテゴリーを創出しています。Nexのミッションは、アクティブプレイを通じて家族や友人のつながりを深めることです。
現代のエンターテインメントは、ユーザーを座りっぱなしにして、家族それぞれを孤立させてしまいます。私たちが解決しようとしているのは、まさにその問題です。『Nex Playground』のアクティブプレイによって、子供たちと家族みんなが体を動かせるようになることを目指しました。
――アジア展開にあたり、まず日本を選んだのはなぜでしょうか。
リー氏:日本には素晴らしいIPやタイトルがたくさんあります。私自身、香港で育ち、「スラムダンク」が大好きでした。アニメが大好きなんです。
『Nex Playground』を日本に持ってくるというのは、単に製品を日本市場へ持ってくることではありません。日本を『Nex Playground』の中に招き入れる、という気持ちでいます。日本のIPを迎えることで、より良い製品になると信じています。
家族向けプラットフォームを支える「信頼」という要素

――米国では、どのような料金体系で提供しているのでしょうか。
リー氏:基本的には本体とサブスクリプションで完結します。米国では、本体に5本のゲームを同梱して299ドル。サブスクリプションの「Play Pass」は3カ月で49ドル、年間で89ドルです。パスを利用すると、すべてのタイトルにアクセスできます。広告もゲーム内課金もありません。
子供は体を動かして遊べますし、親や保護者、祖父母の世代まで、家族みんなで楽しめるようにしています。
――プライバシーやセキュリティについては、どのように対応していますか。
リー氏:ファミリー市場で展開するには、まず信頼が基盤になります。カメラによるモーショントラッキングは完全に本体内で処理しており、その処理にクラウドは使いません。

プラットフォームも完全にクローズドなシステムで、ライブラリーにはNexが厳選したタイトルだけが並びます。「kidSAFE+」の認証なども取得しています。こうした信頼があるからこそ、世界中で愛されるIPを私たちのプラットフォームに迎えることができるのです。
現在、プラットフォームには60タイトル以上のゲームがあります。社内には4つの開発スタジオがあり、外部でも15を超えるスタジオと提携して、一緒にゲームを開発しています。毎週、新しいタイトル、もしくはゲームのアップデートを配信し、常に製品を良くし続けています。
日本向けに価格・ラインアップを最適化
カン氏:私たちは非常に速いペースで成長しています。2024年には1,000を超える店舗で販売していましたが、2025年には5,000超、2026年には7,000以上の販売店で取り扱われるようになりました。
お客様に実際に体験していただくことは、とても重要だと考えています。そのため、数千の販売店に『Nex Playground』のプレイアブルデモを用意し、店頭に来た方がその場で遊べるようにしています。
――実際に遊んでみると、家族や親戚が集まる場にも合いそうですね。
カン氏:休暇シーズンなどに家族や親戚が集まって、みんなで遊ぶのに最適だと思います。
日本の市場は米国とはまったく違うと理解しています。そのため、『Nex Playground』の体験を、日本の皆さんにふさわしい形でお届けしたいと考えています。本体とサブスクリプションについても、日本向けの価格を検討しています。
――価格面でも、日本に合わせた展開を考えているのですね。
カン氏:そして、日本のIPも取り入れる予定です。現在、日本の開発会社と、日本のIPを使ったコンテンツを開発しています。
――日本での販売網は、どのように広げていくのでしょうか。家電量販店に加え、子供たちが集まる施設などでの体験機会も考えていますか。
山本氏:家電量販店さんとは、ぜひご一緒したいと考えています。ただ、最初から大規模に展開するのではなく、徐々に広げていく方針です。
もちろんECサイトでも販売していきますが、やはりデモで遊んでいただくことが非常に重要です。そうした取り組みを量販店さんと一緒に進めていきたいと考えています。子供たちが集まる場所などでも、デモの機会があれば積極的に取り組んでいきたいです。
――今回ブースでプレイして、あまりスペースを使わずに遊べると感じましたが、一方でジャンプをする場面もありました。集合住宅では階下への音も気になると思いますが、こうした住環境への対応はどのように考えていますか。
リー氏:私たちのタイトルには、ジャンプを必要としないものも多くあります。子供たちが跳んで活発に動くことも遊びの一部ですが、シニア世代の方がジャンプすることを考えると、少し心配になりますよね。
そのため、跳ばなくても楽しめるゲームや、もっと穏やかに体を動かせるゲームも開発していますし、今後も開発していきます。運動量の異なるさまざまなゲームをそろえていく方針です。
――Play Passのラインアップは日米で共通なのでしょうか。また、外部のパブリッシャーによるタイトルの提供は受け付けていますか。
山本氏:まず、外部のパブリッシャーにプラットフォームを開放しているわけではありません。すべて私たちがパブリッシャーを務める、管理されたプラットフォームです。例えばセガさんの場合、セガさんのスタジオで開発していただきましたが、パブリッシャーは私たちです。
基本的には、私たちがタイトルを選定します。そのうえで、日本では米国と少しラインアップを変えます。日本向けのタイトルを増やし、日本で人気のあるタイトルを優先してローカライズするなど、順次拡充していきます。
日本市場での「成功」のかたち
――子供たちの成長に伴い、遊びたいゲームも変わります。サブスクリプションを継続してもらううえで、どのような展望をお持ちでしょうか。
リー氏:Nexを始めたとき、娘たちは6歳と1歳でしたが、今は15歳と10歳です。子供たちが成長しても遊び続けてもらえるよう、音楽、スポーツ、フィットネス、パーティー、学びといったジャンルのゲームを開発していきたいと考えています。個人的な夢は、娘が大学に行くときにも『Nex Playground』を持っていってくれることです。
カン氏:家族それぞれが楽しめるものと、家族が一緒に楽しめるもの、その両方を増やしていきます。
私の15歳の息子も、NFLのゲームを遊んでいます。スポーツや音楽は、子供たちの成長にも対応できるジャンルです。例えばBTSのゲーム『BTS-branded music experience』も、幅広い世代の方に楽しんでいただけると思います。
――日本市場で「成功」と考える基準をお聞かせください。
リー氏:お客様の幸せが私たちの幸せだというのが、私たちの信念です。たとえ販売台数が500台でも、500のご家族が幸せになってくれたなら、それは成功です。小さなところから始めたとしても、その方々の役に立ち、そこから学んでいきたい。愛とリスペクトを持ち、粘り強く日本市場に取り組んでいきます。
山本氏:私は実際に親しくしている日本のご家族に1台お貸しして試して試してもらいました。働くお母さんです。彼女からは、お子さんの友達が家に来たときに、どう一緒に遊んでもらうかという悩みが解決できたと伺いました。そうした家庭の課題を解決していけることは、「成功」なのだと思います。
カン氏:日本の親御さんたちには、ぜひ『Nex Playground』を信頼して遊んでいただきたいと思っています。
リー氏:あらためて、私たちは『Nex Playground』の箱の中にあるものにはすべて責任を持ちたいと考えています。親御さんからフィードバックがあれば責任を持って対応しますので、よろしくお願いします。
――今回は、ありがとうございました。






