吉田修平氏が約30年で出会ったクリエイターたちの創造力を振り返る。『クラッシュ』や『Demon's Souls』などの裏話も【CEDEC 2026】 | GameBusiness.jp

吉田修平氏が約30年で出会ったクリエイターたちの創造力を振り返る。『クラッシュ』や『Demon's Souls』などの裏話も【CEDEC 2026】

元ソニーインタラクティブエンターテインメントの吉田修平氏が、過去30年のあいだに関わってきた様々なタイトルと、そのタイトルを生み出すクリエイターたちとのやりとりを振り返る歴史的な基調講演

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吉田修平氏が約30年で出会ったクリエイターたちの創造力を振り返る。『クラッシュ』や『Demon's Souls』などの裏話も【CEDEC 2026】
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過去30年にかけて、吉田修平氏ほど様々なゲームクリエイターの生み出すビデオゲームに関わってきた人物はいないかもしれません。

ソニー・インタラクティブエンターテインメント(以下、SIE)に所属していた時代には『グランツーリスモ』から『ICO』といった日本国内のタイトルから、『God of War』『アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝』など海外のタイトルまで、錚々たるタイトルに関わってきました。

AAAタイトルだけではなく、インディーゲームへの関わりも積極的です。むしろ、近年の吉田氏のイメージはこちらの方が大きいでしょう。吉田氏は日本の地方のインディーゲームイベントから世界各地のアート系のインディーゲームイベントにも参加し、個人クリエイターによる前衛的なタイトルも追い続けています。

ゲーム産業の中心でキャリアを醸成しながら、同時にゲーム産業の枠外に位置するようなインディーゲームイベントにも取材している人物は、少なくともゲーム産業内でほぼ存在しないのは間違いありません。SIEを退職し、株式会社yospを立ち上げて以降はさらに幅広い活動を行っております。

CEDEC 2026では、そんな吉田氏による基調講演「私が出会った素晴らしいゲーム、クリエイター、そしてその創造性について」が行われました。本講演は、吉田氏が30年近くに渡るキャリアで出会ってきたクリエイターたちと、彼らがゲームを生み出そうとするときのこだわりを間近で見てきたことについて振り返るものです。その内容は、ゲームの歴史を感じさせる厚みがあったと言えるでしょう。

吉田氏は1993年にプレイステーションの会社であるソニー・コンピュータエンタテインメント(以下、SCE。現・ソニー・インタラクティブエンタテイメント)に入社し、社員番号32番をもらったこと、その後アメリカに渡ってプレイステーションのファーストパーティー開発の責任者を長く務めたこと、そして独立後は自身の会社を通じてインディーデベロッパーを支援していることが紹介されました。

そのうえで、吉田氏はゲーム業界にはずっと「クリエイターか、IPか?」という究極の選択があると考えてきたと述べ、「これはどっちが正しいってことではなく、ただ私はいつもクリエイターを選んでいました」と、自身のキャリアを貫く姿勢を明かしています。

今日でも様々なクリエイターやユーザーの間で「ゲームを作品と捉えるか、コンテンツとしてIPと見るべきか」で議論になり、堂々巡りになりやすいのですが、吉田氏は業界内の当事者として作り手の側に立つスタンスを早い段階で固めていたことがうかがえます。

本講演を受講した筆者による雑感となりますが、もともとSCEには、EPICソニーなどで活躍された丸山茂雄氏が音楽業界でミュージシャンを前に出していくプロモーションのように「ゲームでもクリエイターを前に出していく」という方針があったことを過去に語っています。その前提を思い出すと、吉田氏の「クリエイターを選ぶ」スタンスも丸山氏がSCEで打ち立てた方針の元で、さらに作家に寄り添う方向にしたようにも映ります。

そんな吉田氏がキャリアの最初に関わったタイトルが、1996年発売、PS1の『クラッシュ・バンディクー』です。本作はユニバーサル・インタラクティブスタジオのマーク・サーニー氏がプロデュース。ノーティードッグのジェイソン・ルービン氏、アンディ・ガビン氏が開発した本作について、吉田氏は日本向けローカライズプロデューサーとして関わった経緯を紹介。

発売に向け、メディア回りをしている際に当時Vジャンプの編集長だった鳥嶋和彦氏に「このキャラクターは絶対日本では売れない」と断言されたことをきっかけに、キャラクターデザインやゲームバランスを日本向けに作り直したエピソードが語られ、結果としてシリーズ3作目は日本だけで100万本を売り上げる異例のヒットになったといいます。

続いて紹介したのは1997年発売の『グランツーリスモ』です。本作を開発した山内一典氏について「非常に強いクリエイティブと、全体を見られるマネジメントの両方を備えた、非常に数少ない人」と評しました。

いまでこそカーシミュレーターの代表的な一作ですが、吉田氏は「当初は企画が通らなかった」という逸話も明かします。そこで「マリオカートみたいなものが必要ですよね」と提案しながら、中身は本格的なカーシミュレーションを作り上げていった戦略性が紹介されています。一方で「『いつ出します?』って言うんですけど、初期の頃は全然スケジュールが間に合わなかった」と、クリエイターならではの苦労もユーモラスに振り返りました。

1999年発売の内製タイトル『サルゲッチュ』では、デュアルショックの発売にあわせて2本のアナログスティックを活かすゲームデザインを議論した思い出を紹介。話は2001年発売の『ICO』へと移り、上田文人氏が自らビデオで企画をプレゼンしたエピソードや、インソムニアックが手がけた『スパイロ・ザ・ドラゴン』シリーズを経て、2002年発売の『ラチェット&クランク』が生まれた開発経緯も語られました。

2000年にアメリカへ移った際の文化の違いについても触れられました。当時のGDC(ゲームデベロッパーズ・カンファレンス)では、各社のクリエイターが自らの工夫を積極的にプレゼンし合う雰囲気があり、「秘密主義」だった当時の日本のゲーム業界との違いに驚いたといいます。会社に所属しているというより「業界で働いている」という意識が強く、日頃から他社にも知り合いを持っておくことが、レイオフやスタジオ閉鎖が起こりうる業界で自身を守ることにもつながっていたと振り返りました。

吉田氏がアメリカに渡った後の代表作としては、サンタモニカスタジオが2005年に手がけた『God of War』、ノーティードッグが2007年に発売した『アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝』が紹介されています。特にアンチャーテッドについては、リアルなアニメーション表現と操作感の両立を目指したチームの姿勢を評価。PS3世代では複数のファーストパーティースタジオが技術を共有するICEエンジンの取り組みについても触れました。

京都を拠点とするQ-GAMESを率いるディラン・カスバート氏との思い出も紹介されました。吉田氏はディラン氏が10代でスーパーファミコンのプログラマーとして活躍した経歴を紹介しつつ、マーク・サーニー氏との議論について「10回に3回はディランが言ってることは正しいんだ」と評されていたというエピソードを説明。

こうしたエピソードを通じて、吉田氏はディラン氏を「天才」と称しています。ディラン氏との関わりは2007年発売の『PixelJunk Monsters』をはじめ、長く続きました。その後、ディラン氏がインディーゲームイベントの代表であるBitsummitの創設にも携わっていたことにも触れ、吉田氏は「日本のインディーゲーム振興に貢献してきた人物」とも評しています。

またPS3の世代に入り、プレイステーションネットワークが始まったことでデジタルストアにゲームの配信が可能になったことがクリエイターにとって大きな環境の変化になったことについて触れました。

「小さくてクリエイティブなオリジナルゲームを作ろうぜ」という方針のもと、多くの意欲的なタイトルが生まれたことも語られました。あわせて、当時サードパーティーの多くがPS3のアーキテクチャに苦戦していたことを受け、社内向けに開発していた共通エンジン「ICEエンジン」を外部にも提供した経緯も紹介されています。

PS3期の挑戦としては、ヨーロッパのメディアモレキュールが2008年に手がけた『リトルビッグプラネット』と、続く『Dreams Universe』が語られ、「バンドのようなセッションでゲームを作る」という同スタジオの創造的な社風も紹介されました。

講演では、リアルタイムでは時代を変えることになるゲームに対し、当時のゲーム業界内部の価値観では見落としてしまうこともあると痛感させられるエピソードも語られています、それがフロム・ソフトウェアの宮﨑英高氏が開発した2009年発売の『Demon's Souls』でした。

筆者が補足すると、本作は高難度でありながら、少しずつ前に進み、世界の実態をつかんでいく“ソウルライク”というジャンルを定義した一作として、ゲームの価値観を一変させた歴史的な一作には間違いありません。しかし、2009年当時におけるゲームのトレンドとしては、評価が難しいタイトルだったとも記憶しています。

改めて当時を思い返してみると、コンソールのゲームはなるべく多くのユーザーがクリアできるように難易度は緩めにすることや、派手なムービーやキャラクターで物語をわかりやすくすることが高いクオリティを持つゲームと認識されやすかった傾向があったと思います。『Demon's Souls』はいずれにも該当しない方向でした。それどころか、一見するとユーザーを突き放してすらいる印象を持つ一作だったのも確かです。

実際、吉田氏も発売前に『Demon's Souls』を試遊して「なんてこれ難しいゲームなんだよ」と感じ、当初はアメリカ・ヨーロッパでの発売も見送られていたことを明かしました。

しかし発売後、ネットの口コミで評判が広がったことから、後に海外展開が決まった経緯を紹介。続編にあたる『DARK SOULS』がSCE以外から発売されたことについて、「お前は『Demon's Souls』の良さが分からなかったよね」と海外ファンにからかわれると笑いながらも、「我々が頑張って続けてなくて、良かったんじゃないかな」と振り返りました。

いまでこそ吉田氏も笑い話のようにしていますが、普段からゲームレビューなども行う筆者としては「歴史を変えるようなゲームをリアルタイムで高く評価するのは本当に難しいことなんだ」と痛感させられるエピソードだと思いました。

当時、他のゲームメディアでも『Demon's Souls』の評価は(後の宮崎英高氏の作品の評価と比べれば)はるかに低かったのは事実です。このことが後にゲーマーから批判されることが多いのですが、逆を言えばゲーム業界関係者はタイトルを評価するときに「パブリッシャーからメディアを含めたゲーム業界内部では、その当時に評価しやすいリアルタイムでの価値観(※『Demon's Souls』の時代なら誰でもクリアしやすくわかりやすい爽快感あるゲームプレイや、豪華なグラフィックとムービーなど高いクオリティを見せるタイトル)を飛び越えて評価することはなによりも困難だ」という事実を思い知らされるものとなりました。(読者の方に各自で調べていただけるとありがたいのですが、意外に歴史を変えたような一作はリアルタイムでのメディアの評価があまり高くないことは少なくありません)

筆者としてはこう思わされました。「クリエイターか、IPか?」という選択肢で「クリエイター」を選んだとしても、当然「IP」を売るビジネスの視点はゼロにはできないでしょう。確かなクリエイティブは見られていても、リアルタイムで『Demon's Souls』をビジネスとしてどこまでGOサインを出せるかという悩みを想像させられるエピソードでした。

後年、2015年発売の『Bloodborne』でフロムと再びタッグを組めたことについては、「宮﨑さんの作られたソウルライクの中でも最高傑作の一つ」と高く評価。自身がプラチナトロフィーを取得する過程で、難所として知られるボスを配信中に生放送で撃破したエピソードも紹介。「一番誇らしかったことは、生放送で『Bloodborne』の一番難しいボスを倒したこと」だと、冗談交じりに語りました。

さらに吉田氏の関わりは、PSVRの開発にも及んでいます。PS3時代にサンタモニカスタジオで『God of War』の改造機を使い、頭の動きをトラッキングして自分がクレイトスになったかのような体験をした「草の根活動」がハードウェア化のきっかけになったことが紹介されました。

あわせて、2016年発売のローンチタイトル『PlayStation VR WORLDS』に収録された、ロンドンスタジオが手がけたサメが襲ってくるVRデモの評判の良さや、元セガの水口哲也氏による同年発売の『Rez Infinite』で、体に振動を伝える専用スーツを使った表現へのこだわりも語られています。

そのほか、2012年発売のPS Vita『Gravity Daze』を手がけた外山圭一郎氏、サンタモニカスタジオでUSC出身の若手チームが手がけた同年発売の『風ノ旅ビト』についても時間を割いて紹介されました。

特に『風ノ旅ビト』については、開発者ジェノヴァ・チェン氏が「プレイヤーにどういう気持ちにさせたいか」を大切にしていたこと、ゲーム内で偶然出会う他プレイヤーとの関係性を描いた設計思想を紹介し、「人の気持ちを動かして感動させて、人の人生にもポジティブな影響を与えることができる」と、自身のキャリアの中でもっとも誇りに思うタイトルだと語りました。

同じく2012年発売の『サウンドシェイプ』は、ステージのアイテムを取るたびに音が重なり曲になっていくという、音楽とゲーム性を融合させた作品です。カナダのクリエイター、ジェシカ・メック氏がほぼ一人で作り上げたこの作品について、吉田氏は「PS Vitaで出たすべてのタイトルの中で一番好きなゲーム」と、思い入れの深さを語っています。

PS4・PSVR期には、上田氏が長い年月をかけて手がけた2016年発売の『人喰いの大鷲トリコ』、そして外山氏の系譜を継ぐチーム「Team Asobi」が2018年に発売した『ASTRO BOT: RESCUE MISSION』が紹介されました。トリコについては開発に長い年月を要した経緯や、発売直前まで「バグ修正リスト」と「上田さんが直したいリスト」の両方を議論し続けたエピソードが語られています。

2019年末からはインディーゲームを支援する部門に異動し、応援したいタイトルをプレイステーションで先行配信するパートナー契約に携わるようになったことも紹介されました。

2020年発売の人気バトルロイヤルアクション『Fall Guys』については、発売当初は毎朝プレイし、1位を取った際の映像を録画してSNSに投稿する日課があったと明かし、「たまに勝ちそうで勝てなかった映像を混ぜていた」ため、フォロワーがクラウンを取れたかどうかハラハラしていたというエピソードで会場を沸かせました。

同じく2020年発売、サッカーパンチの『Ghost of Tsushima』については、日本を舞台にした作品として日本のユーザーからの評価を意識し、ローカライズチームと密に協力した結果、海外制作タイトルとして『クラッシュ・バンディクー3 ブッとび!世界一周』以来となる100万本ヒットになったことが紹介されています。インディー分野では、2022年発売、猫の視点で描かれる『Stray』も紹介されました。

近年の好きなタイトルとしては、PSVR2のアイトラッキング機能を活かした『Synapse』、韓国を本拠地とするShift Upとの出会いのきっかけとなった『Stellar Blade』、台湾のRed Candleによるアクションゲーム『九日ナインソール』を取り上げました

話題作となったRPGである、フランスのSandfall Interactiveによる『Clair Obscur: Expedition 33』では開発のスタンスについて注目しています。2025年発売、スタッフ数が約30人というチームで作られた本作については、「プログラマーがわずか4人という体制でも、アンリアルエンジンのブループリント機能を活用してゲームデザイナーが積極的にゲーム性を作り込んでいった」という開発体制を紹介。「小さいチームっていうのは色々工夫していいゲームを作っていくんだな」と評しています。

最後に紹介されたのは、2026年8月4日発売予定の『Beast of Reincarnation』です。ゲームフリークの新作で、古島康太氏がディレクターを務める気鋭のタイトルです。吉田氏が現在アドバイザーを務めるパブリッシャー、Fictionsが手がけるタイトルとして、開発チームと繰り返しプレイテストを重ねてきた過程を紹介。古島氏が完成度を上げようとするこだわりを紹介しつつ「本当にできることならこの場を去って、家に帰って続きをやりたい」と、マスター版を毎日プレイしている現在の心境を明かし、本作の完成度を期待させる一言を残し、講演を締めくくりました。

吉田氏は「今後も世界のインディークリエイターを支援していきたい」と語っており、これからも未知なるクリエイターと彼らが生み出すゲームを追い続けていく模様です。まだまだ吉田氏はまだ見ぬクリエイティブを探し続けている姿勢を見せています。そこには30年に及ぶ、国内外のさまざまなクリエイターとの関わりで見出した、苦しい開発のなかで確かなクリエイティブが結実する魔法のような瞬間を間近で観続けて来たことが大きいように思わされる講演となりました。

《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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