【特集】Valve担当者を取材―Steamはどう進化し、この先どこへ向かっていくのか 2ページ目 | GameBusiness.jp

【特集】Valve担当者を取材―Steamはどう進化し、この先どこへ向かっていくのか

Steamは一体にどのような成長を遂げたのでしょうか?今回は、E3 2017にあわせて、ロサンゼルスに滞在中だったVavle、Steam担当のRicky Uy氏、並びにBusiness DevelopmentのDJ Powers氏を直撃。お話を伺いました。

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■すべてのインディーメーカーはSteamにあつまる!

――これまで数々のインディースタジオの作品に出合ってきたと思いますが最も衝撃を受けた作品は何でしょうか?

Powers氏: 毎週かならずひとつかふたつの作品には驚きを感じていますが、ここ数か月間、話題になっているのは『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』ですね。総勢100人によるバトルロワイアルをするシューターで、僕らだったら絶対に企画として採用しないと思います。

Uy氏: 僕としては『Star Bound』です。とにかく、ゲームをリリースするか否かについて誰かがその判断に関わると、いずれ間違いを犯すことになる。だから、むしろ誰もがSteamで作品を公開することを可能とするツールをあたえ、我々としては如何なる状況においてもより多くの成功を見ることに喜びを見出すことが重要と考えるようになったのです。

Powers氏: 作品を選ぶのに優れているのはユーザーです。次に何がヒットするか、我々では絶対に分からないですから(笑)。

――インディーメーカーによるSteamでの作品展開に関するトレンドについて教えてください。

Uy氏: もともとインディーによるSteamへの登録依頼は、北米や欧州からが最も多いです。しかし、最近の変化で言うと、アジアからの登録が急増しています。昨年だけでも以前の数倍という形で申請企業数が増えました。2016年12月の段階での登録社数でみると、インディーメーカーに限らず大企業も含まれますが、日本からは200ものデベロッパーが登録しています。また、中国からはなんと800ものデベロッパーが登録しています。もちろん韓国からも数多くの登録企業があって、アジア地域はいま、とてもホットなのです。

――なるほど。日本からのリリースが増えたとのことですが、5年前、『FEZ』のクリエイターであるPhil Fish氏が「日本のゲームは酷い」と発言して話題になりました。その後から現在までにどのように変化があったと思いますか?

Uy氏: まず理解してもらいたいのは、我々は当時からそんな認識はなかったということです(笑)。当時から日本産ゲームのクオリティに関しては全く問題無いとは思っていましたが、日本からのインディーメーカーによるゲームのクオリティは、ここ数年で間違いなく上がっています。ただ、当時はプラットフォームが広く開放されていなかったからだと思いますね。というのも、イベントで遭遇してきた出来のいいゲームは、すべてPC向けに開発されていました。したがって、たとえ優れたゲームがあったとしても、それを知るチャンス自体がなかったのだと思います。


―――では、優れた日本のゲームがより多く普及するためにどのようなことがなされましたか?

Uy氏: Steamでコンテンツを展開するうえで必要となる文書は、全て日本語化しました。顧客側から言えば、電子決済での円への対応も進めました。サーバーも強化して、アジア側からのアクセスが増えても問題ないようなっています。また日本各地のゲームコミュニティともしっかりとつながって、いまでは、彼らがValveと日本語で直接コミュニケーションが出来る体制も整えています。これによって、日本のデベロッパーにとってのSteamの価値というのを改めて理解してもらえるようになったと考えています。結果的により多くの日本のデベロッパーと関われるようになったので言えますが、当時の彼によるあの発言は、日本のデベロッパーが作ったゲームの品質が悪かったというよりは、彼がハイクオリティな作品に単純に触れる機会がなかったからだと思います。当時、Steamの存在が日本で今ほどは知られてなかったのもあります。

――Steamのグローバル化にあわせてなにか面白い現象を確認できましたか?

Uy氏: 一般的に言うと、Steamにコンテンツをリリースしても、グローバルで成功するためにローカライズは一つの重要な要素になります。テキストが多かったり音声が多用されている場合は、ローカライズが絶対に必要。これらのゲームは言葉が分からなければプレイ出来ないものが多いですから。しかし、2016年には面白いことが起きました。コーエーテクモゲームスの『Romance of the Three Kingdoms XIII(三国志13)』をリリースしたところ、言語は日本と中国語(繁体字版)しか対応していなかったにも関わらず、グローバルランキングで1位を獲得したのです。Steamとして作品をプロモーションする際、これら言語の顧客にターゲットを絞って展開することが効果を発揮したのだと思います。

――ローカライズについてはValveとしてサポートしているのでしょうか?

Uy氏: ローカライズという作業そのものはそれぞれが責任をもってやるべきことです。ストアページ全ての項目で、言語選択を可能にする機能をデベロッパーに提供しています。だからデベロッパーは自分たちでゲーム上の言語を追加、変更できます。

――ツール以外の面で注目すべきことは?

Uy氏: Steamにおけるコミュニティ機能のひとつに、Workshopがありますが、作品によってはそこでローカライズを行い提供するひとたちもいます。リリース時に各国の言語に対応していなかったとしても、デベロッパー側でWorkshopを開けば、コミュニティが、スペイン語や、フランス語、ロシア語、中国語、日本語、韓国語などSteamで提供可能な26もの言語に翻訳することが出来るのです。ときにはコミュニティに頼るという判断も可能で、それを実現するツールを提供するのが我々の仕事です。

Steam全体の翻訳も多くがボランティアで行われており進捗表も公開されている

■VRプラットフォームとしてのSteamはWin-Winの発想で生まれた

――VRでも、HTCと組むことで素早くプラットフォームとして立ち上げることが出来ましたね。台湾の大手携帯メーカー、HTCとコラボレーションすることになった背景を教えてください。

Powers氏: たしか、商品が発売された1年か2年位前、明確には覚えていないのですが、かなり長い間HTCと交流はありました。ValveはもともとVR用トラッキングなどの研究を長い間続けてきたのに対し、HTCは優れたハードの設計エンジニアや、大量生産のノウハウを持っている。だがら、互いにそれぞれの能力を必要としていたのです。

――HTCと組むことのメリットは何だったのですか?

Powers氏: 実際、技術的な視点ではValveも独自にヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を作ることは、設計も含めて出来たと考えます。しかし、たとえ設計までは出来たとしてもそれを製造することはできませんし、大量生産は不可能です。だからその点で能力のあるパートナーが必要だったというわけです。

――現在まででSteamで提供しているVRコンテンツで最も顧客に受入れられたのは何でしょう?

Powers氏: なかなかひとつのタイトルやジャンルを上げるのは難しいですが、敢えてあげるとすれば『Google Tiltbrush』や、『Google Map VR』といったVRならではのコンテンツです。この他には『Job Simulator』や『Arizona Sunshine』など。さまざまなジャンルがある中で、共通しているのは、プレイヤーが没入出来る世界がしっかりと作り込まれているということでしょうか。

次ページ: Steamが進化する先に行き着くのは……?
《中村彰憲》

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