Naughty Dogから独立し、日本でゲーム開発。Vinit Agarwalさんにインタビュー!次なるゲームの構想や前職で得たものを訊いてみた | GameBusiness.jp

Naughty Dogから独立し、日本でゲーム開発。Vinit Agarwalさんにインタビュー!次なるゲームの構想や前職で得たものを訊いてみた

大のゲーム・アニメ・マンガ好きであることも判明……!

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Naughty Dogから独立し、日本でゲーム開発。Vinit Agarwalさんにインタビュー!次なるゲームの構想や前職で得たものを訊いてみた
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『アンチャーテッド』や『The Last of Us』で知られる、ゲーム業界トップクラスのゲーム開発スタジオ・Naughty Dog。そんな同社から独立したゲームクリエイターが日本に来て、新しいゲーム開発スタジオを立ち上げています。

本記事では、Naughty Dogでさまざまな作品を手掛けたVinit Agarwal氏へのインタビューをお届けします。

Naughty Dogから独立した理由とは

――自己紹介をお願いします。

Vinit:Vinit Agarwalです。日本には7月上旬にきたばかりです。

――これまでのキャリアを詳しく教えて下さい。

Vinit:ゲーム業界には15年ほどいて、そのうち10年はNaughty Dogに勤めました。その前はFree to Playのゲーム開発に携わっていたのですが、もう少しハードコアなゲームも作ってみたいな……と思っていたときに、初代『ラスアス』に収録されていたマルチプレイモード「ファクション」に出会って、激ハマりしたんです。

その勢いで、Naughty Dogに申し込みをして、幸いにも入社できました。Naughty Dogは業界トップクラスのすごい人がたくさんいるので、私は1ヶ月でクビになるんじゃないかな……と不安だったんですが、ジュニアゲームデザイナーからゲームディレクターまで務めることができました。それから、独立したのは2025年初頭のことです。

――主にどういった作品を手掛けてきましたか。

Vinit:『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』や『アンチャーテッド 古代神の秘宝』、『The Last of Us Part II』が主な作品ですね。マルチプレイとシングルプレイ、どちらも手掛けました。

主に担当したのはボス戦なんですが、Naughty Dogのボス戦は基本的に1対1のシチュエーションですよね。そこで、プレイヤーの皆様にはAIではなく、人間のプレイヤーを相手にしているような感覚をシングルプレイでも味わってほしかったんです。

――かなり重要な役割だったのですね。

Vinit:具体的な箇所を言うと、『海賊王と最後の秘宝』の最終ボスや、『ラスアス2』のエリー対アビー戦を手掛けました。人間と戦っているような感覚を味わってもらうため、マルチプレイヤーの知識を総動員しました。

――Naughty Dogという大企業から独立するのは、勇気のいることだったと思います。独立を決めたきっかけは何だったのでしょうか。

Vinit:Naughty Dogが得意とするシネマティックなアクションとマルチプレイヤーを融合させることに可能性を感じ、自分で作りたくなったことが大きなきっかけです。

実は私の新しい会社は、Naughty Dogでナラティブリードやクリエイティブディレクターを務めていたJoe Pettinatiさんとともに立ち上げています。Joeさんはアメリカに住んでいて、私は日本に移住して、2つの拠点でゲームを作ります。

――Vinitさんにとって、Naughty Dogはどんな職場でしたか。

Vinit:尊敬するニール・ドラックマンさんやブルース・ストレイリーさんと一緒に仕事ができたことは本当に幸せでしたね。

Naughty Dogの開発文化は、皆が細かいデザインや調整をすごく大事にしているのが特徴です。ちょっと日本的でもありますよね。その哲学は、いまも私の中に引き継がれています。

また、同社の中には、「No Bad Ideas」という文化があります。これはどんな意見にもいいものが含まれている可能性があるから、それをちゃんと聞けばより良いものが作れるという考え方です。私は入社前、AAA作品の開発はまったくの未経験でしたが、それでも皆が私の意見を聞いてくれました。フラットな関係で意見を言い合える場だったんです。QA担当からゲームデザイナーになった人も知っていますし、キャリアを積む場としても素晴らしかったです。

――同社で得た経験はどのように活かしていきますか。

Vinit:Naughty Dogからは、世界観とストーリーを大事にするという姿勢に強い影響を受けています。開発中の新作では、ただ面白いゲームプレイを作るだけでなく、ストーリー・アクション・世界観・ゲームプレイすべてを同じ水準で仕上げるのが大事なポイントです。

新作はシネマティックアクション×マルチプレイ

――Vinitさんが日本という地を選んだ理由は何でしょうか。

Vinit:ゲーム業界に入ってからずっと、日本のゲーム開発を参考にしてきました。1990年代のゲーム雑誌やクリエイターへのインタビューを読み漁り、強く興味を抱いていたんです。

また、日本のゲームには強い「ビジョン」があると思います。最近遊んだ任天堂の作品はそうですし、フロム・ソフトウェアの宮崎英高さんとお話する機会があったのですが、改めてディレクターのビジョンが強いというスタイルが好きだと感じました。

そして私は海外の開発者ですが、日本のビジョンが強いスタイルと、海外のさまざまな視点の意見を取り入れるというスタイル、それを合体すればすごいものが作れるのではないかと思っています。「イースト・ミーツ・ウエスト」という感じですね。

――新作の開発はもう動いているのですね。

Vinit:はい。もう数ヶ月ほど開発していて、すでにプレイアブルな状態です。お見せできる段階ではありませんが、友達と毎週テストプレイを重ねています。

まだ言えることが少ないのですが、新作はマルチプレイヤーのゲームで、過去に手掛けた作品でお馴染みのシネマティックなアクションを、マルチプレイヤーにおいてプレイヤー同士の間に持ち込むことを目指しています。パートナーともすでにやりとりをしていて、今後さらに情報を共有できると思います。

――ゲームの規模としてはどのくらいなのでしょうか。

Vinit:「Triple-Indie」という感じです。AAA(トリプルA)ほどの予算ではありませんが、インディーらしいスピード感を持ちつつも、AAAらしいストーリーやゲームプレイの影響を受けています。

――スタジオの規模はどれくらいなのですか。

Vinit:いまは10人ほどですね。将来的には最大で30名ほどになる見込みです。スピード感やフレキシブルさを維持できるくらいの規模感ですね。皆の個性を出して、ひとりひとりが「これは私が作ったゲームだ」と強く実感できるように頑張りたいです。

――少し話が逸れますが、Vinitさんはどのように日本語を学んでいるのですか。

Vinit:子供の頃から日本のアニメや文化に興味があって、あるとき日本の価値観が自分と似ていると気づきました。中学生の頃から日本語の勉強を始めて、大学生の頃に京都の同志社大学に留学しました。

いまは日常会話ならできるようになりました。次は仕事のためのビジネス日本語を覚えることをゴールに据えて、勉強を続けています。

Vinitさんは“歩くゲーム図鑑”

――好きなゲームは何ですか。

Vinit:長くなりますよ。歩くゲーム図鑑と言われるくらい、大量にゲームを遊んでますから(笑)。

まず、『クロノ・トリガー』はめちゃくちゃ好きで、最も好きなJRPGです。結婚式では、妻と一緒にテーマ曲で踊りました(笑)。Joeさんも同じくJRPGが大好きなので、いつかJRPGへのラブレターのようなものも作ってみたいですね。

次は、『大乱闘スマッシュブラザーズDX』です。すでに5,000試合以上遊んでいます。『スマブラ』には細かなゲームデザインがいろいろ詰まっていて、自分のゲームデザインへの影響も大きく、すごく参考になります。

3本目は、『PUBG: BATTLEGROUNDS』です。『ラスアス』の「ファクション」モードと同じくらい好きで、何百時間と遊びました。『PUBG』はプレイしているときのテンションがすごく良くて、これと「ファクション」の戦略性が組み合わされば、夢のゲームになるでしょうね。

最後は、『Bloodborne』です。これは一番好きなアクションゲームというより、全ゲームの中で一番の傑作だと思います。アート、世界観、アクション、仕組み……すべてが最高です。以前は『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』も好きでしたが、『Bloodborne』は他のゲームをはるかに上回りますね。

――ゲーム愛が伝わってきます……!ちなみに、ゲーム以外のエンタメで好きなものはありますか。

Vinit:私のゲームは、日本の漫画やアニメの影響も強く受けています。ちょっとマイナーですが、最近は「EDEN ~It's an Endless World!~」や「漂流教室」といった漫画を読んでいます。

これらに共通するのは、テーマやストーリーはダークだけど、ギャグという明るい部分も混じっているということです。アメコミと比べてもこの混ざり方は違和感がなく、この明るさがあるからこそ、暗い部分がより際立つように感じます。

また、最近はNetflixで「ダンジョン飯」のアニメを観ています。全体的なトーンは明るい作品ですが、シリアスな部分もありますよね。どちらもあるからどちらも深く感じるんです。この日本のストーリーテリングはすごく面白いなと思いますね。

ほかは、海外ドラマになりますが、「ブレイキング・バッド」が好きです。ストーリーが深いし、キャラクターが持っているモチベーションが面白いんですよね。こちらも私のクリエイティブで参考にしています。

つまり、私が作りたいのは「ブレイキング・バッド」のような深いキャラクターとストーリーに、日本の作品でよくある、ダークなテーマに明るい部分が混じっているというテイストを足したものなんです。マルチプレイのゲームなのでシングルプレイヤーとは勝手が異なるのですが、世界観でこれらを表現したいと考えています。

――最後に、日本のゲーマーに向けて、今後の活動のアピールをお願いします。

Vinit:これまでの作品の経験を引き継ぎつつ、皆がワクワクするようなゲームデザイン的な発明をしたいと思っています。新作は日本人の開発者も参加していて、日本のファンが好みそうな仕上がりになっていると思います。

我々の目標は日本の技術者と日本のソウルをNaughty Dogならではの映画のような没入感あるアクションと融合することです。チームは、東洋と西洋、それぞれの文化や視点が国境を超えて混ざり合うこれまでにない特別なチームです。 近い将来、プレイテストも開始予定なので、皆さんにいち早くプレイしていただける日を、チーム一同楽しみにしています!

――ありがとうございました!


大手から離れて自分が作りたいゲームを作ろうとするVinit Agarwalさんのインタビューでは、深いゲーム愛と強いビジョンを感じることができました。今後の続報にも期待しましょう。


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