
5月1日、Epic Gamesは『フォートナイト』と『Rocket League Sideswipe』の2タイトルとともに、日本向けのiOS版「Epic Gamesストア」アプリをリリースします。Android向けの同ストアアプリやEU圏では既にリリースされていましたが、日本でもとうとう『フォートナイト』のiOS向け配信が復活となります。
そんなiOS版ストアアプリのリリースに際し、Epic GamesおよびEpic Games Japanはメディア向けにオンラインのプレスカンファレンスを実施しました。CEOであるティム・スウィーニー氏も登壇し、日本におけるiOS版アプリの展開や、リリースに至るまでの動向などが語られた会見の様子をお届けします。
ティム・スウィーニーが語る、ストアアプリのリリースに至るまでの動向とApple社の姿勢

まず登壇したのはEpic Games Japan代表の河﨑高之氏。河﨑氏はこれまでEpic Gamesストアアプリは全世界で4,000万ダウンロードを突破している点に触れつつ、日本はEpic Gamesにとって非常に重要で魅力的な市場であることを強調しました。
日本は世界で見ても有数のゲーム市場のひとつで、ゲームをただプレイするだけでなく、コミュニティやカルチャーを形成していく熱量の高さがあるといいます。モバイルが主要なプラットフォームとなるなか、『フォートナイト』において日本のユーザー基盤は着実に成長しており、特にクリエイターコミュニティの分野では大きな成長が見られているようです。
さらに日本のカルチャーは『フォートナイト』に多くの影響とも語ります。これまで「ドラゴンボール」や「NARUTO」といった世界的なアニメ作品をはじめ、初音ミクや米津玄師さん、果てにはメジャーリーグで活躍する大谷翔平選手など、象徴的なコラボレーションの数々で重要な役割を果たしてきたとその影響力の高さを振り返りました。


また、ゴールデンウィーク期間にも日本のプレイヤーやコミュニティ向けに特別なキャンペーンが実施されることも明らかに。個人事務所の設立を発表したばかりの星街すいせいさんとのコラボレーションではゲーム内でのパフォーマンス配信や、アイテムの再発売などが計画されています。
続いて登壇したのはEpic GamesのCEOであるティム・スウィーニー氏。これまでApple社の寡占的な姿勢に対して抗議してきた同社は、日本で昨年12月18日に施行された「スマホ新法」(スマホソフトウェア競争促進法)によりiPhoneでも他のアプリストアや決済が可能になったことをうけ、日本の政府の努力に対して感謝の気持ちを述べました。
しかし一方で、こういった法律が可決したにも関わらず、Apple社の動向はいくつかスマホ新法に反する点があると指摘。一例として挙げているのは、法律の施行により新設された、サードパーティ製のストアでダウンロードしたアプリ内の課金や購入に対して課される「コアテクノロジー手数料(CTC)」の存在です。これによりパブリッシャーやデベロッパーがApp Store以外でアプリ配信した際にもAppleへ手数料を支払わなければなりません。
さらに、運営や決済に一切関わっていない状況であっても、Appleはあらゆる取引に対し、デベロッパー側に報告の義務を設けています。これらの要因により混乱と余計なコストが生じ、開発者がサードパーティのストアに参入することの妨げになってしまっていると厳しく批判しています。
また、サードパーティのストアに参入することによって、Appleからの“報復”をデベロッパーが恐れてしまい、リリースを萎縮するような状況が生まれしまうとスウィーニー氏は言及。結果としてEpic Gamesストアアプリは日本のデベロッパーは参加しない、2タイトルのみでのローンチとなりました。

続いてスウィーニー氏は、実際にiPhoneなどのデバイスでEpic Gamesストアをインストールするまでの流れの中でも、Appleによる“障壁”があると語っています。EU圏で初めてEpic Gamesストアアプリがリリースされた際、インストールに至るまでは15のステップにも及ぶプロセスがあったといいます。
その後規制当局からの指導を受け、最終的には6ステップのプロセスへと落ち着きました。プロセスが簡略化されたことにより、かつてはインストールを試みたユーザーの60%が断念してしまう状況から、20%にまで離脱率を抑えられるようになったといいます。
一方、配信が始まった日本版では、スウィーニー氏によると、日本版のEpic Gamesストアアプリをインストールするまでに必要なプロセスは9ステップと、EU圏のものよりも多くの段階を踏まなければなりません。さらにはEUの規制当局の指導によって削除されたステップが復活しているともいいます。

Epic Gamesはこうした状況に対処するべく、日本の公正取引委員会などとも連携をしながら、今後もAppleの姿勢に対してフェアな環境を整えるために戦い続けることを改めて強調しました。
質疑応答ではAppleへの印象や、『フォートナイト』の今後も語られる
また、プレゼンの後にはティム・スウィーニー氏に対しての質疑応答も行われました。
ーー以前のカンファレンスではAppleの行動に対し、訴訟を示唆する発言がありましたが、何か法的なアクションを起こす予定はあるのでしょうか。また、今回日本のデベロッパーがローンチに参加しない理由について詳しく教えてください。
ティム・スウィーニー氏(以下、ティム):日本の公正取引委員会とは、継続的に対話を進めています。今後はEpic Gamesストアのアプリからデータを収集し、インストールまでのステップ数や手数料、取引の報告義務などの“違法行為”を指摘していきます。
日本のデベロッパーの参加についてですが、弊社はこれまで多くのデベロッパーと面談を実施しました。しかし、あらゆるデベロッパーがAppleからの報復を恐れて参加を拒否する現状があり、これは極めて異例と言っても差し支えない事態です。
ーーiOS版『フォートナイト』が2020年に配信停止されてから現在に至るまでに、Appleからデベロッパーに対する姿勢に変化は見られましたか。
ティム:Appleの状況はさらに悪化していると認識しています。AIに関連したアプリやバイブコーディングなどを多数排除しており、ライトなユーザーや学生が自分のデバイスでプログラミングなどを学ぶ機会や能力を損なっています。
アプリの審査を却下したかと思えば急に承認したりと、信頼性の低下も見られるだけでなく、審査の待ち時間自体も増加しました。
アメリカではAppleが連邦地方裁判所の命令に反し、競合サービスの決済の許可に従わなかったことで「法廷侮辱罪」に問われたこともあります。Appleは新たなCEOが就任しますが、これまでの行いを改善することを期待します。
ーー規制当局の指導がなければ行動を変えないAppleの姿勢について、どういった印象を持ちますか。
ティム:非常に奇妙だと思っています。消費者にとって素晴らしい製品を開発する能力を持ちながら、デベロッパーに対しては正反対の敵対的な態度をみせています。マイクロソフトやソニー、任天堂などはデベロッパーと消費者の双方を尊重していますが、これはApple特有の「病」のようなものだといえます。
ーー日本のストアではデベロッパーの参加がない一方、海外ではどういった動向が見られますか。
ティム:PC版のEpic Gamesストアは2018年のローンチ以来、月間アクティブユーザーは7,500万人、年間売上は10億ドル以上の収益を記録しています。EU圏のスマートフォン向けストアアプリでは10社以上のデベロッパーが参加していました。
一方の日本では、デベロッパーのAppleに対する恐怖心がEU圏よりも大きいという傾向が見られます。日本とヨーロッパの状況の違いについて、規制当局とも連携しながら原因の解明を進めます。
ーー日本のデベロッパーとは何社ほどやり取りをしたのでしょうか。また、今後のデベロッパー数や参加する時期など、目標は定められていますか。
ティム:具体的な数やデベロッパーの名前を明かすことはできませんが、継続的に対話を進めています。
Epic Gamesストアの手数料は通常12%で、条件によっては0%になることもあります。通常の市場原理が働けば、30%の手数料を課すAppleよりも私たちの方を選ぶのが自然ですが、そうならないAppleの独占的な戦術があります。
この現状を打破しない限り、Epic Gamesストアに参入する日本のデベロッパーは現れず、具体的な目標を立てることもできません。
ーーAppleが外部ストアの決済に課している「コアテクノロジー手数料」は、法的に支払うべきものなのでしょうか。それとも、Appleが違法に請求しているものなのでしょうか。
ティム:ヨーロッパや日本の法律と照らし合わせてみても、Appleの「コアテクノロジー手数料は違法である」と解釈できます。現在は裁判所による判断が下されていない段階ですが、私たちは既に規制当局にこの見解を伝えており、問題の検討が進行中です。
ーーEpic Gamesでは3月に大規模なレイオフが実施され、コミュニティの間でも『フォートナイト』の今後などを不安視する声が見られました。iOS版のストアアプリやiOS向けの『フォートナイト』の復活にあわせ、今後の展望やビジョンについても教えてください。
ティム:レイオフについては、業界全体で起きている流れの一部と捉えていただければと思います。業界全体の成長が鈍化し、競争が激しくなっているなか、最近ではユーザーのゲームをプレイする時間がTikTokなどゲーム以外のアクティビティに奪われています。
しかし『フォートナイト』については積極的な投資を続けていく予定で、今年から来年にかけて新しいシーズンコンテンツが登場するだけでなく、ディズニーとのパートナーシップによる、エキサイティングなものをお届けできるよう準備中です。
また、「バトルロイヤル」という枠組みを越えて、デベロッパーがコンテンツを提供できるエコシステムとしての成長も目指しています。『Roblox』が子供たち向けのデジタルなエコシステムとなったように、『フォートナイト』は「ゲーマー向けのデジタルなエコシステム」となることを期待しています。
iOS版Epic Gamesストアアプリのリリースや『フォートナイト』の復活など、喜ばしいニュースが報じられた一方で、Appleの独占的な姿勢が改めて強調された今回のプレスカンファレンス。アメリカなどで進行中の裁判もあわせ、日本国内外でどのように動向が変化していくのかにも注目です。
iOS版Epic Gamesストアアプリ、iOS版『フォートナイト』および『Rocket League Sideswipe』は本日5月1日より利用可能となります。












