『パルワールド』の成功を受けて設立されたPocketpair Publishing(PPP)は、一般的なパブリッシャーとは一線を画すスタンスを掲げています。
パブリッシャー収益の最大化を前提とせず、開発者に対してフェアな条件を提示し、創作の主導権を委ねる。その背景には、自社タイトルのヒットによって生まれた“余裕”があります。
本記事では、PPPがどのような思想でタイトルを選び、どのようにインディー開発者と向き合っているのかを、責任者であるBucky氏へのインタビューから紐解いていきます。
重視するのは“情熱”
――Pocketpair Publishingが設立されて、1年が経ちました。これまでのパブリッシングタイトルの手応えはいかがですか?
Bucky:これまで契約したタイトルはどれも順調です。いずれも1~2人、多くても3人ほどの非常に小規模なチームによる作品ですが、すべて良い結果を出しています。開発者からのフィードバックも概ねポジティブですね。
――タイトルを選定するうえで最も重視しているポイントは何ですか?
Bucky:ゲームを選ぶ際に重視しているのは、作り手がどれだけ“ゲーム作りへの情熱”を持っているかです。少し抽象的に聞こえるかもしれませんが、最近はただ作るために作られているゲームも多い。だからこそ、自分たちの作品を本当に愛しているクリエイターを探しています。
――他のパブリッシャーでは選ばれないようなタイトルでも採用する基準はありますか?
Bucky:ありますね。幸いにも『パルワールド』の成功もあって、現在は財務的にかなり自由度があります。そのため、とても面白い、あるいは小粒ながら魅力的だと感じるゲームであれば、たとえ大きな売上が見込めなくても支援することができます。他のパブリッシャーのように大きなリターンを求めているわけではないので、そういった判断ができるのは強みです。

――逆に、どれだけ完成度が高くても選ばないケースはありますか?
Bucky:もちろんあります。極端な例で言えば、Web3やNFT関連のゲームには一切関わりません。また、素晴らしいゲームであっても、予算が過大だったり、資金の使い道が明確に説明されていない場合は難しいですね。計画が不透明な状態では関与できません。
それと、Pocketpair Publishingでは生成AIを使用したゲームのパブリッシングも基本的に行っていません。
収益源を依存しないからこそできるパブリッシング
――市場性とゲームの面白さのバランスはどのように判断していますか?
Bucky:私たちはパブリッシング以外にも収益源があるため、市場性にそこまで強く依存する必要はありません。それよりも、面白いアイデアがあれば、それを多くの人に届けることで結果的に市場性も高まると考えています。その視点でタイトルを選んでいます。
――開発者にとって、PPPと組むメリットはどこにあると考えていますか?
Bucky:一番のメリットは、条件が非常にフェアであること、そして私たちが開発の主導権を奪わない点だと思います。私たち自身も現役の開発者なので、現場の苦労や感覚をリアルに理解していますし、地に足のついた視点で対話できるのも強みですね。

――逆に、開発者から見て「PPPは合わない」と感じるとしたら、どんな点でしょうか?
Bucky:私たちのスタイルが“ハンズオフ”、つまり干渉しすぎない方針であることは、人によっては物足りなく感じるかもしれません。もちろん開発やマーケティングなど、幅広くサポートできる体制は整えていますが、基本的には開発者の自主性を最優先にしています。「すべてのステップで細かく指示してほしい」というタイプの方には、少し合わない可能性はありますね。
これは日本のPCゲーマーに確実に刺さる―新作『Windrose』について
――パブリッシングを発表した『Windrose』について伺います。本作を最初に見たときの印象はいかがでしたか?
Bucky:初めて見たのは数年前で、そのときは『Crosswind』という名前のPvP MMOでした。興味深いとは思いましたが、PvP MMOは非常に難しいジャンルです。その後、PvEのサバイバルゲームとして『Windrows』に方向転換したのを見て、強く興味を持ちました。私たち自身もそうしたジャンルのゲームを手がけているので、この方向転換は非常に魅力的でした。

――パブリッシングを決めた最大の理由は何ですか?
Bucky:デモを見たとき、日本語対応がなく、日本でほとんど注目されていないことに気づきました。でも、日本のPCゲーマーはサバイバルゲームが大好きなんです。『パルワールド』だけでなく、『ARK』や『Valheim』のようなタイトルも非常に人気があります。だから開発チームに連絡して、日本市場への展開を支援したいと伝えたのが始まりです。
――日本市場における特殊性についてどう考えていますか?
Bucky:日本は少し特殊で、日本のゲームは海外で注目されやすい一方で、海外のゲームが日本国内で注目されるのは難しい傾向があります。2026年になっても、まだその“壁”は存在していると感じます。大ヒットを狙うというより、日本のPCゲーマーに確実に刺さると確信しているので、その橋渡しをしたいという思いが強いですね。

――日本市場に向けた具体的な施策はありますか?
Bucky:特別なことをするというより、自分たちのネットワークを活用します。インフルエンサーやクリエイター、メディアに広くアプローチし、日本国内のイベントにも出展して、とにかく多くの人の目に触れる機会を作る方針です。
困っている開発者を支えられる存在になりたい
――今後、増やしていきたいタイトルの方向性はありますか?
Bucky:個人的な好みではありますが、サバイバル系やオートメーション系のゲームには、今後さらに力を入れていきたいと考えています。自分自身が好きなジャンルというのもありますし、ポケットペアとしてもこれまで知見を積み上げてきた分野なので、相性が良いと感じています。
――ジャンルや地域に関する方針はありますか?
Bucky:基本的には、「面白い」と思えればジャンルや地域は問いません。海外の開発者とのプロジェクトでは時差の問題などもありますが、そこは工夫しながら、良い形で協力関係を築いていきたいと思っています。

――PPPをどのような存在にしていきたいと考えていますか?
Bucky:最終的には、「高品質なゲームを届けるパブリッシャー」であると同時に、「困っている開発者を支えられる存在」として信頼されるようになりたいですね。世の中には多くのパブリッシャーがありますが、私たちは『パルワールド』の成功で得たものを還元する形で、よりフェアな条件を提供したいと考えています。良いインディーゲームが増えることは、結果的にすべてのゲーマーにとってプラスになると信じています。
――インディー支援を掲げるパブリッシャーが増える中で、PPPが選ばれる理由は何だと思いますか?
Bucky:やはり徹底した「開発者ファースト」の姿勢だと思います。従来のパブリッシャーには豊富な実績がありますし、新興のパブリッシャーにも大きな可能性があります。その中でPPPは、資金力や人的リソースといった従来型の強みを持ちつつ、開発者を重視するフラットな姿勢も兼ね備えた、いわば両者の良さを併せ持つ存在を目指しています。
そんなPocketpair Publishingの新作『Windrose』は、PC(Steam)向けに発売予定です。









