配信者の起用における「よくある失敗」「成功の条件」とは―ZETA DIVISION、YouTube担当者らが語るマーケティングの現実 | GameBusiness.jp

配信者の起用における「よくある失敗」「成功の条件」とは―ZETA DIVISION、YouTube担当者らが語るマーケティングの現実

昨今マーケティングの軸として外せない、ストリーマーを活用した施策について、議論が交わされました。

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2025年6月4日(水)に開催された「GAME FUTURE SUMMIT 2025」のパネルディスカッション「配信者のパワーを活かす。ゲームマーケターが知りたい事例と現実」では、昨今マーケティングの軸として外せない、ストリーマーを活用した施策について、議論が交わされました。

本稿では、単に登録者数だけでははかれない、ゲーム配信者の起用で失敗しないための、ノウハウを中心にその内容をレポートしていきます。

イベント概要

昨今、様々なプロモーション活動において、ゲーム配信者の起用が増えていますが、「思ったよりも視聴者数が伸びなかった」「イベントは盛り上がったが、そのあとの購買に繋がらなかった」などの失敗例も目立ちます。

また「インフルエンサーを起用したいが、どうやればいいかわからない」という、実施の前段階での悩みも増えているでしょう。

今回は、ゲームコミュニティ戦略に長けたSide & Co. 脇俊済氏、ゲーム配信者のマーケティングの実態に精通する、YouTube(Google)隅田裕也氏、多くの配信者イベントを成功に導く、プロeスポーツチーム ZETA DIVISIONの運営であるGANYMEDE 千葉哲郎氏によるセッションを取材。

ゲーム配信者のイベント・プロモーション起用における「よくある失敗事例」「成功の条件」について意見を交わしました。

忙しい人向けに2つのポイントで整理

登壇者や内容の詳しい紹介の前に、本セッションで語られた重要なポイントを整理してお届けします。

ファンが本当に求めるコンテンツかどうかが成功の分かれ目

隅田裕也氏は「仲良しグループでやってもらったとしても、『あの案件だからやってるんだ』と透けて見えると、ファンは非常に敏感になる」と指摘し、千葉哲郎氏も「配信者がこの案件を受ける際に重要なのは、自分たちの視聴者がこれを面白がるかどうか」と説明しました。

配信者自身がゲームに対して本気で興味を持ち、ファンがその姿を応援したくなる状況を作ることで、想定を大きく上回る効果を生み出せます。一方、数字だけを見てキャスティングしても「やらされている感」をファンは敏感に察知してしまうというのが、両氏の共通した見解でした。

配信者個人ではなく「チーム全体」での協力体制が必要

配信者マーケティングでは、配信者個人だけでなく、その周りを支える制作スタッフやコミュニティ全体が一つのチームとして機能していることが重要とのこと。

千葉氏からは、『Destiny 2』のイベントの成功例として、1人の制作スタッフがゲームの専門知識を活かして配信中に徹底的にサポートし、案件を成功に導いた事例の共有がありました。

この事例を受けて脇氏は、「配信者のチームの中に1人でもハマっている人がいたら、その人を中心に引っ張れる」と分析。配信者とその制作チームを一つの単位として捉えることの重要性を指摘しました。

登壇者紹介

本セッションの登壇者を紹介します。

脇俊済(Side & Co.)

本セッションのモデレーターを務めた脇氏は、2016年にSupercellに入社し、『クラッシュ・ロワイヤル』や『ブロスタ』のコミュニティ戦略を担当。YouTuberやeスポーツプレーヤーとのコラボレーションを通じて、日本のゲームコミュニティの発展に貢献しました。

2023年4月に独立してSide & Co.を設立し、現在はグローバルに展開するスマホゲームのコミュニティ・マーケティング戦略の立案・実行や、AIを活用したコミュニティ活性化に取り組まれています。

千葉哲郎(GANYMEDE)

千葉氏は、2005年に芸能プロダクション アミューズに入社し、アーティストのコンテンツ制作に従事しながら、MBS「情熱大陸」の演出を手掛けるなど映像ディレクターとして活動。

2018年に同社の新規事業としてeスポーツ業界への参入を推進し、世界最大規模のeスポーツチームTeam Liquidとのパートナーシップ締結や日本支部立ち上げなどを担当。2022年にZETA DIVISIONのブランド理念に共鳴してGANYMEDEに入社。現在は事業開発部門を統括し、パートナーシップや新規事業を担当されています。

隅田裕也(YouTube)

隅田氏は、2012年にGoogleに入社し、AdMobやAdSenseの新規獲得チームを経験後、2016年からYouTubeでクリエイターの育成を担当。

2018年以降はYouTube Gaming日本専任担当として、国内外のゲーム企業のYouTube活用拡大やゲーム実況者の育成などを主導。現在はゲームコンテンツに加えてアニメコンテンツのYouTube活用の拡大にも注力されています。

注目の議題を3つピックアップ

ここでは、パネルディスカッションの中で、特に注目の事例や登壇者間のやり取りを紹介します。

インフルエンサー起用が失敗する理由

ゲームリリース時や大型アップデート時に有名な実況者を公式チャンネルに招いて生放送を行う企画は、想定した視聴数が出ないことが多くあります。

YouTubeの隅田裕也氏によると、配信者の魅力は大きく2つの要素で構成されているといいます。1つは配信者自身のトーク力やゲームプレーセンスといった「人に依存する部分」で、もう1つは配信者が持つ「チャンネル」そのものです。普段から投稿している動画を通じてファンがそのチャンネルに集まってくるため、配信者だけを他の場所に連れてきても、本来の魅力を発揮しきれません。

「配信者だけを引っ張ってきても、配信者が公式チャンネルに出演していることにファンが気づかない、あるいは普段のファンとの交流方法と異なることでアウェイ感が強くなってしまい、効果が出にくい」と隅田氏は分析します。

では、配信者のチャンネルで配信すれば解決するかというと、そう単純でもありません。「配信者がそのゲームに対して本当に興味を持ち、意欲的に取り組んでいるか、そしてファンがその配信を心から望んでいるかが重要になる」「ファンはただ単に配信者を見たいのではなく、配信者が楽しんでいる姿を見たい」と隅田氏は説明しました。

『Destiny 2』事例で見る、1人の“熱量”の重要性

2024年5月頃、ZETA DIVISIONが実施した6名の配信者による『Destiny 2』の大型案件(全10回配信シリーズ)は、配信外でもプレーヤーが継続してプレーする理想的な結果となった、と千葉哲郎氏は語ります。

この案件を成功に導いたのは、制作スタッフ(アシスタントディレクター)の中村くんの存在とのこと。中村くんは『Destiny 2』の熱狂的なファンで「なんでも聞いてくれ」レベルの知識量を持つ彼が、配信中にDiscordで手取り足取りサポート。敷居の高いゲームを視聴者にもわかりやすく説明し、寝る間も惜しんで準備して案件自体を1人で支えました。

千葉氏は「彼自身が『Destiny 2』のカルチャーを全て背負って配信者たちを導いた。最終的にファンコミュニティからも『ZETA DIVISIONのナカムラくんありがとう』と言われる存在になった」と明かしました。

脇氏はこの事例について「誰かが非常に熱心であること以上に大事なことはあまりない」と分析し「配信者チームの中に誰か1人でもハマっている人がいたら、その人を中心に引っ張れる、と気づいた」と語りました。

「いらないモノ」を賞品にするという離脱率防止策

ZETA DIVISIONが実施する大会では、賞金ではなく、ネタになる賞品を用意することで、視聴体験を最後まで維持して後日のSNS投稿につなげています。

千葉氏が紹介したエピソードによると、雀魂の案件では麻雀牌の“一索”を模した巨大な鳥の顔出しパネルを用意し「いらない」と受賞者が言うところまでコンテンツとして成立させました。また別の案件では、配信中に出演者が「ソーリー」と謝った回数をスタッフが全て数え、最多発言者に「ソリ」をプレゼントするという駄洒落を仕込むほどの徹底ぶりです。

脇氏はこの手法について「最初は賞品を明かさず、みんなで『いらない』と言うまでがテンプレート化している。試合終了後の同時接続数が落ちるタイミングでも視聴を継続させ、離脱を防ぐ効果がある」と分析しています。

また隅田氏も「賞金に関する話題は(当事者もファンも)SNSに投稿しづらいが、体験や物品は後日の投稿につながりやすい。賞品を食事券にして、優勝メンバーで食事している様子を投稿することで、ファンも『おめでとう』と言いやすくなる」と指摘しました。

《小川翔太》

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