
Epic Games CEOのTim Sweeney氏らが、Steamストアの“AI使用ラベル”に対して批判的な姿勢を示し、議論が起こっています。
Epic Games CEOらがSteamの“AI使用ラベル”撤廃を主張
発端となったのは、撮影監督などを行っているMatt Workman氏が「Steamやデジタルマーケットプレイスは“(生成系)AI使用ラベル”をやめるべきだ」とX(旧Twitter)に投稿したことです。
これに賛同する形で、Epic GamesのTim Sweeney氏が「AIタグは、作者性の開示が求められるアートや購入者が権利関係を理解する必要があるデジタルコンテンツのライセンス系マーケットプレイスでは重要だと思う。でもゲームストアに関しては意味がない。今後はほとんどあらゆる制作にAIが関わるようになるから。」とコメントしました。
Valveスタッフは“成分表示”になぞらえて擁護
一方で、Valveのスタッフで『Counter-Strike』シリーズなどに関わってきたAyi Sánchez氏は、Matt Workman氏の投稿に対し「これは食品に成分表示を記載するべきではないと言っているようなものだ。消費者は商品に含まれる成分に基づいて、購入するかどうかを判断できる情報を持つべきだ。この表示を恐れるのは、自分の製品が手抜きだと知っている人たちだけだ。」と反論しました。
これに対してMatt Workman氏は「食べるものは命に関わることがあるし、家にある家電だって火事の原因になり得る。画像や映画、ゲームがどう作られたかは、それらと同列に比較できる話じゃない。」と返信。
さらに議論は白熱し、Ayi Sánchez氏が「服やコーヒーが児童労働で作られているか、素材がオーガニックか、車のエンジンに特定の技術的仕様があるかなどそういう情報は、消費者が不透明な選択ではなく、納得した上で判断できるように誰にでも見える形で提示されるべきだと思う。」Matt Workman氏が「食べ物やハードウェアについては同意するし(もちろん地域ごとの話だけど)法律も整備されている。画像/映画/ゲームについては違う。僕は一人のクリエイターにすぎない。政府やプラットフォームが必要だと思うならやるべきことをやればいい。」と議論を続けました。
Matt Workman氏は、その後LinkedInで、「現状のValve/Steamの“AI使用ラベル”の範囲が広すぎて、Unreal Engine、Google Suite(Gmail/Docs/Sheets)、Slack(AI自動化が多数)、Adobe製品、Microsoft Officeなどを使う開発者まで引っかかってしまう。これは不公平で、Tim Sweeneyも同意している。AIの使用を“全部”免責や注記で開示しろというのは、非現実的で馬鹿げている。『Clair Obscur: Expedition 33』のように、多くのスタジオ同様ワークフローに生成AIを明らかに取り入れているゲームでも、Steam上でそれを開示していないものは多い。一方で、SAGの新しいボイスアクター学習プロトコルに従って開示した『ARC Raiders』は、反AIの集団に叩かれている。私はValveに対し、“AI使用ラベル”を削除するよう求める。そうすることで、“標準的な”AIツールを制作工程で使っているUnreal Engine開発者が、不当に罰せられる状況を止めてほしい。」と投稿しました。
生成AIをめぐっては、特にアートや音声・サウンドなどの領域において、各分野の著名アーティストなどからの反発や、根強い忌避感が消費者層に根付いた状況です。ともすれば不買運動にも発展しかねない繊細なAI成果物の扱いについて、どこまでを明らかにすべきかが難しい問題であることを示しています。








