ポールトゥウィン、メディア・コンテンツ事業撤退で利益率向上に一手【ゲーム企業の決算を読む】 | GameBusiness.jp

ポールトゥウィン、メディア・コンテンツ事業撤退で利益率向上に一手【ゲーム企業の決算を読む】

ゲームのデバッグなどを手がけるポールトゥウィンホールディングスが、業績改善を急いでいます。

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ゲームのデバッグなどを手がけるポールトゥウィンホールディングスが、業績改善を急いでいます。

2026年1月期第2四半期累計期間(2025年2月1日~2025年7月31日)は2億円を超える営業赤字。前年同期間は3億円を超える営業利益を出していました。人件費や採用費が増加しており、海外事業の拠点閉鎖、人員整理に伴う費用負担が重荷になりました。足元ではゲームのパブリッシングやアニメ制作などを行うメディア・コンテンツ事業の撤退を進めています。

この事業は長らく赤字が続いており、利益率の改善に期待ができます。

子会社のアクアプラスはユークスへと売却

ポールトゥウィンはゲームのデバッグで30年以上の実績を積んできた会社。デバッグの専門会社として設立されましたが、M&Aによって事業を多角化してきました。特に近年は非連続な成長を遂げており、2022年1月期から4期連続の2桁増収。力強く売上を伸ばしてきました。

ゲームやエンタメ関連では、『うたわれるもの』や『To Heart』などのゲームを手がけるアクアプラスを2022年、カナダでゲーム開発企業向けのミュージックデザイン事業を展開するVibe Avenue Inc.を2023年、劇場版アニメ「ベルサイユのばら」の3DCGモデリング協力を行ったしいたけデジタルを2024年に完全子会社化しています。

ゲームのデバックを主軸としていたポールトゥウィンは、M&Aによってコンテンツ産業の上流工程へと足を踏み入れました。しかし、2024年1月期に度重なる企業買収の綻びが生じました。この期に事業関連資産と投資先状況を精査した結果、10億円近い減損損失を計上したのです。

2023年1月期に6.8%だった営業利益率は、2024年1月期には1.0%まで低下しました。

決算短信より筆者作成

業績面で足を引っ張っていたのが、ゲーム開発やアニメ制作などを手がけるメディア・コンテンツ事業でした。この事業は2023年1月期から2025年1月期に至るまで、一度も通期で営業利益が出せませんでした。ポールトゥウィンは2025年6月にメディア・コンテンツ事業からの撤退を発表します。

この事業の中核をなす会社がHIKEとアクアプラス。HIKEはRPGゲーム『ARIA CHRONICLE -アリアクロニクル-』や『メタリックチャイルド』を手がけた会社。グループにアニメスタジオ100studio(ワンダブルオースタジオ)があり、アニメ「藤本タツキ 17-26」の「人魚ラプソディ」「予言のナユタ」のアニメーション制作を担当しました。ポールトゥウィンの成長をけん引する存在として期待されていましたが、2025年6月に代表取締役である三上政高氏らによるMBO(マネジメント・バイアウト)が成立しています。

アクアプラスは8月にユークスが株式を取得しました。かつて「とらのあな」をグループに持つユメノソラホールディングスの子会社でしたが、ポールトゥウィン、そしてユークスの手へと渡ることとなったのです。

上流工程を志向するのはデバッグ会社の宿命か?

ポールトゥウィンの2026年1月期第2四半期累計期間の売上高は前年同期間比1.6%増の246億7,400万円、2億600万円の営業損失(前年同期間は3億5,900万円の営業利益)でした。

主力の国内ソリューション事業はゲーム分野が売上をけん引し、5.0%の増収だったものの、高収益のEC大型案件が終了した影響で35.1%の減収。前年同期間の営業利益は10億円を超えていましたが、6億円台まで減少しました。

メディア・コンテンツ事業は1億3,700万円の赤字。しかし撤退を進めることにより、収益性の改善が見込めます。

ユークスに売却したアクアプラスは、2022年12月期に9,000万円の営業損失を計上。翌2023年12月期には1億7,500万円の営業利益を出すなど、収益性が改善していましたが、2024年12月期の営業利益は700万円となっていました。ポールトゥウィンは、主力事業に経営資源を集中するため、同社の譲渡を決断しました。

ポールトゥウィンのように、デバッグを手がける会社が上流工程に事業領域を広げようとするのは珍しくありません。典型的な会社がSHIFTで、もともとはソフトウェアのテストやゲームのデバッグを手がけていましたが、2019年ごろからベンダーやSIer領域を強化しています。事業領域を広げるにあたり、プロフェッショナルやコンサルティング、エンジニアなど一流の人材をヘッドハンティングし、専門人材に厚みをつけました。営業力も強く、省庁や自動車業界、通信業界などでも頭角を現すようになっています。

SHIFTもM&Aで事業領域の拡大を行いましたが、PMIと呼ばれるM&A後の統合プロセスに並々ならぬ力を注いでいるのです。しかも、システム開発は人材に厚みをつけることで事業やサービス力を強化することができますが、ポールトゥウィンのようにゲーム開発やIPの創出は簡単に成功できるものではありません。

コンテンツ産業は優れた人材の数も限られるため、獲得も容易ではないというハードルもあります。

撤退の決断は早いものでしたが、サンクコストと割り切って次のステージに移ったのは英断だと言えるのではないでしょうか。

デバッグのノウハウを武器に世界攻略を進められるか

ポールトゥウィンは2026年1月期の売上高を前期比4.8%減の497億2,900万円、営業利益を43.0%増の11億2,400万円と予想しています。メディア・コンテンツ事業からの撤退で減収、利益は回復する模様。営業利益率は1.5%から2.3%へと0.8ポイント改善する見込みです。

成長戦略の一つにM&Aを盛り込んでいるため、引き続き成長が期待できます。一方で、買収効果と予実管理を厳格化し、シナジー効果を高めるPMIを強化する意向を示しました。また、周辺事業に限ったM&Aを行うため、事業領域の拡大は狙いません。

手がける分野をゲームからアニメ、メタバースなどへと広げ、日本から世界へと地域も拡大する計画。日本のゲームは高いクオリティを求められるため、デバッグの現場で磨いたノウハウは世界でも通用するでしょう。すでに海外事業は展開していますが、デバッグを軸に世界進出を果たせるかが成長のポイントとなるのではないでしょうか。

《不破聡》

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