リアルタイムレイトレーシングの限界と「Enlighten」を活用した新たなグローバルイルミネーションの表現手法―シリコンスタジオのセッション内容に迫る【CEDEC 2020】 | GameBusiness.jp

リアルタイムレイトレーシングの限界と「Enlighten」を活用した新たなグローバルイルミネーションの表現手法―シリコンスタジオのセッション内容に迫る【CEDEC 2020】

リアルタイムレイトレーシングの限界と「Enlighten」を活用することで実現できることとは何なのか―。CEDEC 2020にも登壇するお二人に、セッションのポイントや現状の課題について伺いました。

ゲーム開発 3DCG
リアルタイムレイトレーシングの限界と「Enlighten」を活用した新たなグローバルイルミネーションの表現手法―シリコンスタジオのセッション内容に迫る【CEDEC 2020】
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新型コロナウイルス感染症の影響をうけ、初めてオンラインで9月2日から4日まで開催されるCEDEC 2020。様々なゲーム関連に関する講演が予定されていますが、開催初日の9月2日(水)11時から、シリコンスタジオによる同社のグローバルイルミネーション(以降、GI)ツール「Enlighten(エンライトゥン)」とリアルタイムレイトレーシングを組み合わせた新たなGIの表現手法についてのセッションが予定されています。

CEDEC 2020「リアルタイムレイトレーシング+EnlightenによるHybrid型グローバルイルミネーション」セッション詳細はこちら

マシンスペックが向上した次世代機の登場及びGPUの性能向上で、ゲームのグラフィック表現はさらに高まっており、よりフォトリアルな表現をいかに実現するかという点に注目している読者も多いのではないでしょうか。一方で、レイトレーシングだけでリアルタイムにGIを実現するには、まだハード側が追いついていないとシリコンスタジオの吉野潤氏、蘇紹華氏は指摘しています。リアルタイムレイトレーシングの限界と「Enlighten」を活用することで実現できることとは何なのか―。CEDEC 2020にも登壇するお二人に、セッションのポイントや現状の課題について伺いました。

登壇者の紹介


吉野 潤氏(シリコンスタジオ株式会社 テクノロジー事業本部 技術統括部 ミドルウェア技術部)

2013年にゲーム開発会社に入社、内製ライブラリの開発および各プロジェクトの技術検証や最適化などを担当した後、2017年にシリコンスタジオへ。現在はリードエンジニアとして「Enlighten」開発チームをまとめながら開発に従事している。吉野氏による「Enlighten」の解説は以前のインタビューを参照いただきたい。

蘇 紹華氏(シリコンスタジオ株式会社 テクノロジー事業本部 技術統括部 ミドルウェア技術部)

中国・北京生まれ。2014年に来日し、2年の大学院生活を経て2016年シリコンスタジオに新卒入社。以降は同社でモバイルゲーム、モバイルOpenCLなどのプロジェクトの開発に携わり、2018年にEnlightenチームに合流した。現在は「Enlighten」の開発及びカスタマーサポートに携わる。

※インタビュー中は敬称略。

──リアルタイムレイトレーシングは興味・関心を持っている開発者も多い分野だと思いますが、改めてどういった技術なのかご説明いただけますか。

蘇:レイトレーシングという技術自体は、レンダリングで一般的に採用されており、映画などでは意識せずに目にしている方も多いでしょう。簡単に説明すると、レイ(光線)の反射や屈折、特定の光源がある場合の陰影などを物理法則に則って表現する技術です。これを用いることで、よりフォトリアルなグラフィック表現が可能になります。ただし、例えば金属面に光を当てた場合はそれなりに光の方向が決まっているので演算はそこまで複雑にならないのですが、金属ではない素材の場合、反射は幾重にも重なり、複雑に跳ね返るため、非常に高い処理能力がマシンには求められます。しかもゲームのようなインタラクティブな映像を“リアルタイム”でレイトレーシングすることは、これまで容易ではありませんでした。

しかし、近年アーキテクチャも進化しており、NVIDIAのGPUがリアルタイムレイトレーシングに対応したことで注目を集めています。PCのみならず次世代機(コンソール)もリアルタイムレイトレーシングに対応することがアナウンスされています。

──これで簡単にリアルタイムなGIを実現できるかというと、そうではない。というのが今回のセッションのテーマになるとのことですが、どこに問題があるのでしょうか。

蘇:今回セッションでお話するテーマのひとつは、リアルタイムレイトレーシングと弊社の「Enlighten」をハイブリッドに活用することで、より効率的にリアルタイムGIを実現しようというものです。というのも、GIをレイトレーシングだけで実現しようとすると、最初に幾つかのレイを飛ばし、さらに反射したレイを飛ばさなければなりません。もちろんそこからのレイの軌道もそれぞれ演算していかなければならないため、膨大なレイの数を処理する必要がでてきます。ここまで大量のレイをリアルタイムでトレースすることは、いくらマシンスペックが向上していくとはいえ、まだ実現できておらず、ファーストバウンスしか計算していないのが現状です。

──そうした限界に対して、「Enlighten」を組み合わせたハイブリッドなGIの手法でより効率的にフォトリアルな表現が可能になるということですね。

蘇:その通りです。そもそも「Enlighten」はCPUベースで演算をするソリューションです。CPUで計算した無限バウンスの結果がテクスチャに反映され、その結果をGPUでサンプリングするだけなんですね。今回のハイブリッドな手法というのを一言でまとめるなら、「Enlighten」(CPU)で演算した無限バウンスの結果と、GPUの最初のバウンスとを組み合わせて、より簡単にGIを実現しようというものになります。

映像、映画などのレンダリングなどでは既に同じような手法が存在しています。例えばファイナルギャザー(※)というアルゴリズムを活用したりしているわけですが、今回のハイブリッド型のGIも、基本的にはファイナルギャザーの考え方がベースです。それをリアルタイムに再現するにはどのようにリアルタイムトレーシングを用い、どう「Enlighten」を組み合わせればよいか、という話をしていきます。
※光源からの光を計算するのではなく、光の経路を視点から逆方向へ追跡し、モデルにヒットした地点のRGBを取得・拡散し画像を生成する方法。


※掲載の画像は作業中のものです。


──具体的にはどのような手法で実現するのか、どのくらい表現に差異が出るのか、という点はセッションで紹介されると。

蘇:2~3くらいの手法があるのですが、それぞれメリット/デメリットもあって、どの組み合わせが一番良いGI結果になるかということを試しているところです。まだ研究を重ねている段階(※)でもあるので講演を楽しみにお待ちください(笑)。
※インタビューは8月上旬にZoomで実施。

──新しい手法の研究ということで結構苦労もありそうですね……。

蘇:一つは先ほどもお話したように、手法を絞りきれていないところですね。あとはレイトレーシングということで、無限バウンスのシミュレーションはできても飛ばすレイには限界があります。さらにどうしてもノイズが乗ってしまうので、どう低減させるかという点にもかなり苦労しました。そのあたりの苦労もお話しつつ、より効率的な手法をお伝えできると思います。

──セッションを楽しみにしています。ところで先ほどハイブリッド型GIがテーマの“一つ”というお話がありましたが、他にセッションで触れられる内容についても教えてください。

蘇:あと2つほどお話をする予定ですが、一つはリフレクションに関するお話です。今のレイトレーシングリフレクションだと、一回バウンスさせた結果には、リアルタイムで更新する間接光は入ってないんですね。そこをよりリアルに表現するため「Enlighten」で間接光を簡単に入れられるようにするというお話もする予定です。

また、「Enlighten」にはライトリークを防ぐために、昔からインプットガイドに影を用意していて、エンジニアが影のデータを設定できるようになっています。この機能を利用することで、よりライティングの精度が高くなるのですが、新たにレイトレーシングで影を作るという機能も実装する予定です。もちろんこちらもライティングの精度を高められるので、どのように使うのか、それぞれどのように表現に変化が出るのかという点についてもセッションで明らかにしていきます。デモや画像による比較もあるので、きっとその違いを体感していただけるはずです。

──セッションを受講する人たちはEnlightenのユーザーさんも多いと思いますが、導入を検討していたり、あまり詳しくないという開発者もいるかと思います。改めてEnlightenを利用するメリットについても伺えるでしょうか。

蘇:他のGIソリューションとの大きな違いは、やはりCPUベースで処理をすることですね。他のツールは大抵GPUベースなので根本が違います。今の新しいゲームや3DCGグラフィックは、既にGPUを酷使しているんです。そこでさらにGIのためにリソースを確保するのが、非常に難しくなっています。一方、「Enlighten」はCPUベースなので、GPUへの負荷が少ないんです。なので同じ結果を得るにしても、CPUのリソースを活用しながらGPUのリソースは他の部分に割くこともできますし、究極的には「Enlighten」の結果をサンプリングだけで済ませるようなGIも可能だということです。

──逆にCPUのリソースが足りなくなるということはないのですか。

蘇:「Enlighten」ではCPUの状況によって処理を調整できます。CPUへの負荷状況に応じて更新頻度を上げたり、下げたりもできるので、そういったことにはならないと思います。

──「Enlighten」を使っていない開発現場で、リアルタイムGIを実現しようとするとどういうところがネックになってくるのでしょう。

蘇:現時点ではどう考えても、複雑で膨大なバウンスをシミュレートするのは難しいんじゃないかと。もちろんどこかに方法はあると思いますが、GPUだけで実現するのは非常に負荷が高くなってしまって難しいはずです。

──PCのCPUももちろんですが、次世代機でもCPUのスペックは上がりますよね。つまり「Enlighten」でよりリッチなGIを実現可能になるということでしょうか。

蘇:そうですね。CPUのパワーが上がると、「Enlighten」のライトワークで扱うピクセルの数をさらに増やすことが可能です。つまり、よりリアルなGIの結果が反映されることに繋がります。

──セッションでは今後のロードマップや機能追加についてもお話されるのでしょうか。

吉野:蘇の研究結果の解説とあわせて、私から色々とお話する予定です。先日のインタビューでもお話しましたが、Unreal Engine 4.25への対応が完了し、現在はSDKのアップデートに向け作業を進めています。CEDECまでにはSDK 3.11もリリースできる見込みですので、最新のリリース内容について解説する予定です。大きなトピックとしては次世代機対応をしていくというところですね。

また、それだけではなく、3.12に向けてどう動いていくのかということにも触れたいと思います。そちらでは今後リアルタイムトレーシングに対応していくということに加えて、将来的に「Enlighten」がどういうミドルウェアになっていくのか、というところまでお話できればと。詳しい機能の解説や今後の展望については、こちらも講演をお楽しみにしていただければと思います。

──ありがとうございました。

リアルタイムレイトレーシングと「Enlighten」を組み合わせたハイブリッドなGI手法でどのようにグラフィックが変化するのか、デモやより具体的な手法の解説が予定されるセッションは9月2日11時よりCEDEC 2020で配信予定です。次世代機対応やEnlightenのリアルタイムレイトレーシング対応などミドルウェアの今後も語られるということで現在も使用している開発者はもちろん、導入を検討している開発者も注目の内容となりそうです。

CEDEC 2020「リアルタイムレイトレーシング+EnlightenによるHybrid型グローバルイルミネーション」セッション詳細はこちら
《宮崎紘輔》

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