スマホゲーム時代で中国に先を行かれた日本ゲーム開発現場!日本クリエイターの逆襲はあるのか?【CEDEC 2020】 | GameBusiness.jp

スマホゲーム時代で中国に先を行かれた日本ゲーム開発現場!日本クリエイターの逆襲はあるのか?【CEDEC 2020】

「CEDEC 2020」で、中国最大規模のゲームショウ「ChinaJoy 2004」から現在に至るまで中国市場を見てきた株式会社ゴールデンサニー代表取締役・田村俊彦氏が後の日本人クリエイターの未来像を提案しました。

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スマホゲーム時代で中国に先を行かれた日本ゲーム開発現場!日本クリエイターの逆襲はあるのか?【CEDEC 2020】
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現在、中国ゲーム市場は日本を超えて世界トップクラス。2019年の中国市場及び海外市場の売り上げは約4.7兆円を超えました(2019年中国遊戯産業年度報告より)。特にスマートフォンゲームは国内だけでなく、東南アジア、韓国、アメリカ、日本など海外進出しています。

米モバイルアプリ調査会社「Sensor Tower」が2月2日に発表した、全世界のApp StoreおよびGoogle Playにおける、中国スマホゲームパブリッシャーの売上ランキングを見ると、上位5社はテンセント(騰訊)、「網易(ネットイース)」、「莉莉絲(Lilith Games)」、「趣加(FunPlus)」、「霊犀互娯(Lingxi Games)」で、トップ30企業の売上合計は約14億3千万ドル(約1490億円)と、全世界スマホゲーム市場売上合計の約28%を占めました。

それと比べて、日本のゲーム業界が世界に通用しないともいわれている昨今、日中のゲーム開発において日本はどの部分が中国より優れていて、どの部分が劣っているのでしょうか。


9月2日から4日までオンライン上で開催された「CEDEC 2020」で、バンダイナムコエンターテインメントにかつて在籍し、中国最大規模のゲームショウ「ChinaJoy 2004」から現在に至るまで中国市場を見てきた株式会社ゴールデンサニー代表取締役・田村俊彦氏が「日本人よ、このままでいいのか?!日中ゲーム開発現場から日本人クリエイターの未来像を考える~緊急時対応から見えてきた実像」のセッションを実施。中国に負けていると言わざるを得ない日本ゲーム市場において、スマートフォンゲーム時代到来が分岐点だったと分析し、今後の日本人クリエイターの未来像を提案しました。

日中ゲーム市場をデータで比較




データで比較すると、日本と中国のGDP(国内総生産)は中国が2010年に日本を追い越し、2019年では約3倍もの差をつけています。ゲーム市場においても中国は2013年に日本を追い越し、2019年では約3倍もの差をつけました。

どうしてこれだけの差が付いたのか、中国ゲーム開発の変遷を見ていくと、2003年~2006年の中国ゲーム幕開け、2007年~2012年のiPhone登場、2013年~現在のスマートフォンシフトの3つの時期に分けられます。


2003年~2006年は家庭用ゲーム機などのハードを用いたコンソールゲームが主流の時代で、中国のゲーム会社は主に韓国や台湾のMMORPGのローカライズや運営を担当していました。


2007年~2012年は、日本ではコンソールゲームの市場規模減少、ガラケー・ソーシャルゲームゲブームが到来しました。同時期の中国ではPCオンラインゲームほぼ一辺倒で移植作からオリジナルの開発へと移行していました。


2013年~現在、世界のゲームはスマホゲームへとシフトする中、日本でもモバイル市場の売り上げがコンソール市場を上回りました。中国でもスマホゲーム時代が到来し、あっという間にPCオンラインゲーム市場を追い越しました。


スマートフォンゲーム時代到来で、コンソールゲームの売り上げが良かった日本は慌ててスマートフォンゲーム開発に参入したのに対し、中国はPCオンラインゲームで培ったオンライン技術や課金ノウハウをベースにスマートフォンゲームに参入することができました。田村氏はこの差は歴然だと見ています。


日本から中国への発注は3Dモデルが圧倒的に多い


それでは次に日本から中国への主要な発注内容を見ていきます。基本的には、3Dモデルやイラスト、BGMなどゲームの素材となるアセット制作です。中でも、3Dのモデル制作が圧倒的に多い傾向が見て取れます。


2Dモデルでは日本と中国でキャラクターのタッチに大きな差があるため発注はほぼなく、もっぱら、キャラクターも背景もリアルモデルが得意な中国に3Dモデルを発注しています。一方で、中国は日本のパブリッシャーが納得できるクオリティーの3Dモーションのクリエイターが少なく、発注の需要が高くても供給が追いつきません。

エフェクトに関しては制作できる人がレアで、中国内でも需要が高く給料が高い会社に引き抜かれ続けるほど人材不足のため、日本の発注を受ける余裕がほとんどありません。プログラミングとシナリオに関しても、中国に発注することはほぼありません。特にシナリオは文化的要素が色濃く影響するからです。

一方で、主にカルチャライズ費用を抑える目的で中国に開発全てを発注することも時々あります。中国企業が自社エンジンを持っていて、日本、中国、東南アジアでの展開を視野に入れている場合がよくあります。東南アジアに展開する場合、日本開発だとカルチャライズが必要ですが、中国で開発すればほぼ同じ仕様で展開できるからです。



中国に発注する場合は、いわゆる丸投げはできません。基本的には言われたことしかやってくれないため、最初にきっちりとした仕様書やサンプルデータを用意することが不可欠です。フィードバックを次回以降に活かしてくれる企業も少ないのが特徴だそうです。

中国から日本へのキャラデザ、シナリオの発注が増えている


かつては日本のパブリッシャーの人件費は世界トップレベルでしたが、現在は中国パブリッシャーの給料の方が高いため、中国から日本への発注が増えています。内容はキャラクターデザインが圧倒的に多いのが特徴です。


田村氏は「中国のキャラクターデザインは頭身高が多く、二次元らしいデザインが上手くいってない背景がある」と語っています。中国が日本に求めているのは、2Dキャラクターデザインであり、この分野では日本がまだ中国の先を行っています。しかし、中国と日本では業務上の認識の相違があるため、初期コンセプトが途中で変更されたり、企画が途中打ち切りの場合は金額がゼロであったりといった問題に気をつける必要があります。


シナリオも時々、日本への発注があります。中国では「三国志」や「水滸伝」など古典をベースにしたシナリオが多く、ゲームの独自性を出す際に行き詰まるため、日本人のクリエイティブが活用されています。

日中ゲーム開発トラブルや問題点を明確にしておく


中国で新型コロナウイルス発生した1月下旬は春節であり、多くの中国人スタッフは地方に帰って長期休暇中でした。感染拡大防止のために都会出身者もオフィスに入れず、中国パブリッシャーではスタッフ不在問題が発生したといいます。中国に依頼した日本企業を見てみると、双方同意の上で途中清算して引き上げられたのは良いケースで、現場と連絡が取れない状況が続いた所が多々ありました。

緊急事態で中国企業の対応力の明暗が浮き彫りになりましたが、良いケースの中国企業は、春節前からスタッフが出社できないことを想定し、地方出身者の業務内容を都内出身者に振り分けたり、日本企業と密に連絡を取ったりしていました。

この時の中国企業の対応を踏まえた上で、日本企業が中国企業と協業する場合は、作業単位で工数を明確化して精算しやすくしておく、1人の担当者しか知らないケースが多いので担当者以外との繋がりを強化する、メールだけでなくWechatなど連絡可能なツール手段を複数持っておく、日本在住者がいる企業と協業するといった対応策を講じておく必要があります。

日本が海外に負けている点


海外を長く見てきた田村氏は、日本人が海外に負けている点を分析しました。

プロデューサー、ディレクターに関しては、海外協業する際に相手国の特性を上手く引き出せず、日本流のやり方を通す人が多い傾向にあるのだと指摘します。プログラマーに関しては、スマホゲーム全盛の影響でUnityしか扱えず、C/C++開発経験者が少ないこともネックになっていると指摘。また、企画に関しても、海外はPVPのゲームが多いのに対し、日本はPVE主流のため、海外に通用する企画が少ないことも課題点として挙げています。

また、ビジュアル面にも話題は及び、3Dデザイナーに関しては、日本の造形力が高いもののコストの面では中国に太刀打ちできず、2Dデザイナーに関して日本が優位ではありますが、『アズールレーン』のように、中国のレベルも急上昇して追いかけられている背景があります。現状、日本クリエイターが中国クリエイターに勝るものが少なくなってきたと厳しい現状を語りました。

日本クリエイターの劣化はいつから始まったのか


田村氏は、ゲームにログインしたユーザー数、ユーザーの平均課金額、売り上げなどをひっくるめた「KPI」という言葉がゲーム業界内に入ってきた2007年頃から日本クリエイターの劣化が始まったと分析。コンソール開発よりもコストが少なく済むソーシャルゲームの方が売り上げは良いという結果に、コンソールゲーム開発が悪者のように立場が弱くなっていったからです。当時、世界に太刀打ちできる日本クリエイターは多くいましたが、ゲーム自体の出来の良さよりもKPI重視の舵取りにモチベーションを失っていったのです。

日本クリエイター復活の条件



田村氏は「今一度、日本人が持つ真面目さ、勤勉さ、緻密さ、計画性といった「職人魂」を大切にしてほしい」と呼びかけました。アジアにおけるノーベル賞受賞者数は日本が1位であることから見ても優秀だと分かるからこそ、日本ゲームクリエイター復活においては基礎力の強化、海外ゲーム研究が不可欠です。


プロデューサー、ディレクターなら、外国語を身につけて現地の言葉で情報をキャッチし、相手国の文化・歴史を学習する必要があります。田村氏は、日本クリエイターの今後の課題をまとめました。

  • プログラマー:C/C++の開発経験は必須で、ドキュメントは英語原文が読めるようにする、外国人プログラマーと一緒に開発するなど経験が必要。
  • 企画職:オリジナル企画・アイディアを出し続けるべきで、世界のゲームがコモディティ化してくる中で、独自性が必要とされる時代が来るはず。
  • 3Dデザイナー:緻密さと計画性を武器にクオリティーコントロール能力を高め、世界一を目指す。
  • 2Dデザイナー:今のまま突き進んで、江戸時代にヨーロッパで浮世絵が高評価された理由を研究する。




そして、スマートフォンゲームへのシフトで出遅れた日本としては、今は力を蓄えてネクストシフトを狙うべきだと展望を語ります。田村氏は「江戸幕府が倒れて開国した時代、当時の日本最高峰の頭脳を集めた岩倉使節団が海外を研究し、カルチャライズを実行したおかげで先進国になれたことを学んで欲しい」と呼びかけました。
《乃木 章》

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