ゲームのグローバル化への対応
――2015年には『MV』、そして2020年にはそれをベースに多彩な機能を強化した『MZ』がリリースされました。
一之瀬氏:『VX Ace』は、その完成度の高さだけでなくWindowsで作ってWindowsで遊ぶという最終地点、完成形だと思うんです。
その頃Steamでの販売が本格的になってきて、『VX Ace』がSteamでは海外で大ヒットしたんです。この流れが『MV』にも繋がっています。完成度の高さを理解してくれて、次回作に移行してくれる人がたくさん出てくれたんです。
僕が最初に開発に参加したのが『MV』で、尾島さんと「もう“Windowsで作ってWindowsで遊ぶ”だけじゃ限界じゃないか」という話になったんです。作ったゲームを複数のプラットフォームで遊べるようにしなければダメなんじゃないかと。そういった経緯もあり、「RPGツクールシリーズ」で初めてMacにも対応しました。
色々と模索した中で採用したのが、HTML5でした。『MV』を作っていた2014年にはHTML5がすでに実用段階になっていたんです。作ったゲームはHTML5でビルドされるので、WebブラウザでPCだけじゃなくモバイル環境でもプレイできるようになったんです。

――まさしく革命だったと思います。
一之瀬氏:実はHTML5を採用するということで、特に海外の方からは不安視する声もあったんですよ。ブラウザで遊ぶというので、昔のFlashゲームのような挙動になってしまうんじゃないか、と思っていた人もいたんですね。でも、実際はとてもスムースに動いてくれますね。
あと『MV』ではエンジンをJavaScriptに一新しているんですが、メジャーな言語に移ったことで、新しくスクリプトやプラグインを作ってくれるユーザーも増えました。元々のツクールコミュニティも継続してくれていましたし、多くの人が参加してくださってヒットしましたね。
今はなくなってしまいましたが、ドワンゴが運営していた「ゲームアツマール」でも大きく盛り上がりました。プラットフォームをまたいでプレイできるという意味合いを強く実感させてくれたのが、『MV』だったと思いますね。
野口氏:マルチプラットフォームは本当に素晴らしい変化でした。私は当時、プライベートでMac環境に移行していたのですけれど、やっぱりMacだと遊べるゲームが少なかったんですよ。でもブラウザならどの環境でもプレイできましたし、なにより『MV』自体にMac版があったので、嬉しかったですね。
言語をJavaScriptに移行したことも大きかったのではないでしょうか。私はRubyから始めた人間なので最初は少しショックだったし、覚え直すのに苦労しましたが、メジャーな言語になったことで、覚えたことをより活かせるようになりました。
実際にプラグインを作って配布し始めたのもこの頃で、コミュニティとの交流で得たものは大きかったですね。遊んだゲームにプラグインが使われていて、スタッフロールに名前があったら嬉しかったり。これまでも交流文化自体はありましたけど『MV』で、さらに一歩進んだ感じがあります。
「ゲームアツマール」も革命的でしたね。投稿されたゲームを遊んでいると、コメントが流れるのが衝撃的で夢中になりました。私自身も投稿しましたが、あまり伸びなかったですね(笑)。
――『MV』では、公式サイトでダウンロードできるプラグインも用意されていますね。
野口氏:「Web 2.0」という言葉もありますが、その双方向コミュニケーションが大きく花開いたのが『MV』の時代だと思います。もちろんそれ以前にもあったものですが、より気軽になったイメージです。
例えば『MV』では「ゲームアツマール」に直接投稿する機能もあって、今作っているゲームを遊んでもらうことができました。コミュニケーション支援機能も充実してきたし、ツクールとしての機能も大幅に強化されています。
ゲームを介したエコシステムに力を入れていた時期でもあると思いますね。あと、この時期は色々なコラボレーションも行っています。
一之瀬氏:母体がKADOKAWAになったのもあって、コラボはかなり積極的に行っていたと思いますね。ゲームを売る際の目玉ということもあったし、ゲームとIPの融合性というのは、チャレンジするべき部分だったんです。
ビルドしたゲームを変換して、モバイルアプリにするツールも他社と提携して実現しました。これまでにない試みに挑戦して、コミュニティに受け入れられた要素も多く、さまざまなものが次の『MZ』にも繋がったと考えています。
――現行で配信されている最新作『MZ』では、どのような進化や要素を目指したのでしょうか?
一之瀬氏:『MV』の良い部分をベースに引き継いでいったものが、『MZ』です。新機能の追加や拡張なども多いですが、サブツールの開発など、周辺でのサポートに関するチャレンジは現在でも続いています。
他にも自社の公式フォーラムの製作や誘導を行い、コミュニティを盛り上げようという、大きな動きもありました。『VX』が洗練されて『VX Ace』になったように、『MZ』もそうなっていくんじゃないかと考えています。
野口氏:私は開発として『MZ』から参加しました。リリース後に開発に参加した人間なので、すでに長時間触れていた『MZ』をユーザー時代から感じていた課題解決に取り組んでいます。
同じくコミュニティからのフィードバックも大切にしています。「こうしたらもっと使いやすい」というような意見をたくさんいただいています。そういった意見を集め、良いものを積極的に取り入れたいと考えています。
サブツールなんかは、ゲームをより作りやすくするために提供しています。ゲーム作りを簡単に、楽しくするための工夫は今後も継続していくつもりです。

――2020年に発売された作品が、今も進化しているというのは驚きますし、ユーザーにとっても嬉しいですよね。
野口氏:ありがとうございます。私たちとしても、ここまで来たんだなという思いはあって、今はもう毎日のようにSteamなどのプラットフォームでツクールを使用したゲームがリリースされています。
名作もたくさんあって、個人の方がここまで作れるんだということが驚きです。個人制作って、本当に凄い規模になっているんだなと実感します。
弊社ではSteamを中心に毎年「RPG Maker Festival」というイベントを開催して、ご参加いただいたクリエイター様による「RPGツクールシリーズ」製タイトルを紹介しています。期間中はRPGツクール本体やそのDLC等がセール価格で購入ができるなど、ちょっとしたお祭りですね。
そのイベントを毎年コンスタントに開催できるくらい多くの作品が生まれていることにも感謝していますし、我々もサポートできる体制を作れていることを最近実感しています。同じくツクール製作品を集めた「RPG Maker Award」というのも企画しているんですが、こちらもすごい数の応募があるんですよ。
北島氏:毎年数が増え続けていて「RPG Maker Festival」には昨年はおよそ1,000本、今年は1,150本以上が参加しています。しかも、これはSteamでリリースされているゲームだけでの数字ですからね。
――先日、Game*Sparkでも話題になった『Lie of Caelum: Spirit』という作品があって、このタイトルは『MZ』で3D表現にチャレンジしています。開発者側の観点からの感想をぜひ聞かせてください。
野口氏:この映像を初めて見たときに、ものすごいグラフィックに力を入れている作品だと衝撃を受けました。
『MZ』でのスクリプトをうまく使えば、理論上はどんなゲームでも作れるんですが、実際にここまで3Dにこだわった作品を作るというのは驚きで、純粋に尊敬します。ぜひとも完成したゲームをプレイしてみたいと思わされますね。
3Dは本来、ツクールでサポートしていない機能なので、1から作り上げているのは本当にすごいですね。製作ツールとして『MZ』を選んでもらったのも嬉しく思います。

一之瀬氏:先ほども言ったのですが、スクリプトを導入することで色々と試す人が増えて、その中で3Dにチャレンジする人もたくさんいました。でも、実際にやりきれている人はなかなか見ることがないので、これが完成するのであれば、相当な努力をしてきたのではないかなと思います。
あと、ついでに言えば、次回作はぜひとも開発中の『RPGツクールU2U』で作ってみてほしいですね(笑)。









