Gotcha Gotcha Gamesは、ゲーム制作ソフト『RPGツクール』シリーズ最新作『RPGツクールU2U(ユーツーユー)』をリリース予定です。
本作では、従来のツクールの2Dマップに奥行きのある立体的な表現と美しいエフェクトをプラスした映像表現「P2D(Perspective 2D)」を採用。専門知識がなくとも、従来の『ツクール』と同じ感覚で立体的なマップを作れるエディターが搭載されています。
こだわりたいユーザーは、一からオブジェクトを組み上げて作ることも可能。ゲーム制作にすぐに使えるP2Dマップを100種類以上収録しているだけでなく、装飾用のタイルは過去の2D『ツクール』のマップタイルを使用可能です。

Game*Sparkでは、そんな大きく生まれ変わる待望のシリーズ新作について、開発スタッフへのインタビューを実施しました!
新技術「P2D」とは!?『RPGツクールU2U』開発インタビュー
今回インタビューしたのは、『RPGツクールU2U』プロデューサーの一之瀬裕之氏(以下、一之瀬氏)と、プランナーのY氏。新技術「P2D」や今後の展開など、気になる部分にお答えいただきました。
――まずは自己紹介をお願いします。
一之瀬氏:Gotcha Gotcha Gamesの開発部に所属している一之瀬です。2014年にKADOKAWAに入社し『RPGツクールMV』のプロデューサーとなり、そこから長年にわたって、『ツクール』シリーズの開発に関わってきました。
「誰でもゲームを作れる」という『ツクール』の理念を大切にしながら、多くの人にゲーム制作を楽しんでもらえる環境づくりに取り組んでいます。『RPGツクールU2U』でも、同じ理念で開発を進めています。
Y氏:同じく、Gotcha Gotcha Gamesで開発部に所属しているYです。
子供の頃からスーパーファミコンの『RPGツクール SUPER DANTE』など、色々なシリーズを何作品もプレイしているので、良いものや新しいものを提供できればと考えています。
――『RPGツクールU2U』の新機能である「P2D(Perspective 2D)」について教えてください。
一之瀬氏:「P2D」は『RPGツクールU2U』の最大の特徴であり、PC版のシリーズ初となる3D表現を取り入れる機能です。
『ツクール』シリーズは1990年代から始まり、現在まで多くの方に親しんでいただいております。これまでPS2で発売した『RPGツクール5』しか3D作品はなかったんです。なので、PC版としては初めての試み、新たな挑戦になる3D表現が「P2D」です。
3Dのゲームは色々ありますが、どのゲームエンジンであっても複雑な設定や細かな作業が必要になってしまいます。それが、どうしても初心者の方にはハードルが高くなってしまうんです。「P2D」はカメラの制御やオブジェクトの配置などに気を使い、誰でも簡単に扱えるという部分に注力しています。

例えば『RPGツクールU2U』ではカメラを固定しています。3Dだと背後や上部、裏面など360度を表現するのですが、そこにあえて制限を設けることで、扱いやすさと誰でもツクールに入りやすい形を実現しようと考えました。
我々は、これが自由と遊びやすさのバランスを取るための仕組みになっていると思います。自由度を抑えていることで、初心者の方も学びやすくなっているんです。

――公開されたトレイラーでも「P2D」の作り出す雰囲気に驚き、ワクワクしています。この技術を開発するにあたって苦労したこと、実現したかったことなどを教えてください。
一之瀬氏:繰り返しになってしまうんですが、3D表現を採用する上で最大の壁になるのが、その敷居の高さになると思っていて。
3Dエンジンを使ったことがある方ならわかると思いますが、2Dの世界と3D空間というのはまったく違うものなんです。何もない3D空間にキャラクターを置いたとして、360度好きなように歩き回れるとしても、そこにあるカメラの概念や空気感を考えなくてはなりません。
もちろんポリゴンでのモデリングもあり、人体を一つ作るとしても、労力は大変なものになってしまいます。そのあたりの難しさを、いかにして『ツクール』の文脈に落とし込んで再現するのか、というのはとても重要な部分だと認識しています。
本作には『RPGツクールMV』『RPGツクールMZ』の素材をそのまま流用できるというメリットがあるのですが、マップチップをどのように立体的な形で表現できるのかという点に関しては、一番苦労しましたね。
カメラが固定されているとは言え、側面とか屋根などの「見えてしまう部分」もあるので、そこをどう表現するのかというのは難しいポイントでした。3Dの難しさをどれだけ排除して、2D感覚で直感的に3Dマップを配置できることにどれだけ迫れるのか、とても苦労しましたが、現状では一定のハードルは超えられたと思いますね。

――ユーザー側としては、誰でも入りやすく色々な新しい要素に触れられるというのは、とても嬉しいことだと思います。
一之瀬氏:ユーザーの方としては、カメラを回したいという欲求はあると思います。でも、例えばこれまでのツクールシリーズから入った人やその延長線上にいる方は、カメラを回したり、背後などの描写を有効に扱えたりするというのは、もしかしたら難しく感じるかもしれません。
なので、そこに労力を割くのではなく、まず制限のある中でも3Dの世界に慣れていただきたいなと。ゲームを作るということは、やはりイベント設定などの膨大な作業も必要になってきます。例えばマップ配置で挫折してしまうのは、我々も望むところではありません。
『ツクール』では、短くても1本のゲームを作れるのか、という点にこれまで気を遣ってきています。『RPGツクールU2U』でもその延長線上として、3Dをいかに手軽に扱えるかということを考えていて、それこそが開発意義でもあるんじゃないか、という気持ちで開発も進めています。
――マップタイルで自由にブロックを組み合わせ、建物を作ることもできます。作れる建物のブロック数など、オブジェクトの制限などはあるのでしょうか?
Y氏:マップの負荷がどれくらいかかるかという検証は、まだまだ先の開発段階の話になります。現時点で具体的な数字を出すことはできませんが、無制限とはいかないですね。
一之瀬氏:現在は開発途中ということもあり、基本的に制限というものはないんです。とはいえ「ブロックをどこまで高く積み上げるか」というのを検証する人が必ず出てくると思うんですが、ゲームとして成立する範囲を考えると、それを確認しづらくなってしまいます。なので、最終的には適正な制限を考えることになるかなと思っています。
――確かに、制限がないとどこまでも積んでしまう人は必ず出てきそうです。見上げても果てが見えないような、巨大な塔のようなものも作れてしまうかもしれませんね。
一之瀬氏:『マインクラフト』のような壮大な建築物を作ろうという気持ちは絶対出てくるだろうな、というのも理解しています。今の段階では、バランスを取りながら開発を進めていくことになるかなと。現時点では、具体的な制限はまだまだ決まってないですね。

――ちなみに、建物の外部と内部は別マップの扱いになるんでしょうか?
一之瀬氏:そうですね、そこは従来の『ツクール』通りのようなシステムになると思います。
――3Dだからこその「錯覚のトリック」のようなものを作るユーザーも出そうです。
一之瀬氏:我々は今、たくさんのサンプルマップを作っているんですが、実際に『RPGツクールU2U』が発売されたら、想像を超えるようなものを作る方は絶対に出てきてくれると思います。それが本当に楽しみです!
どんなマップを作るかを考えるだけでも、相当遊べると思います。「P2D」のエディターには“マップを作るだけで楽しい”という部分がたくさん含まれているので、それを感じ取っていただければ嬉しいですね。
――「P2D」の導入で表現できるものが増えると思います。『ツクール』ユーザーの制作環境にどのような変化が起きると想定されていますか?
一之瀬氏:『ツクール』の長い歴史の中で培ってきたものに、膨大な知識や素材の資産があります。その資産を上手く活かしながら、よりリッチな表現に挑戦できるようになりました。
「P2D」は完全な3D制作を学ぶ必要はなく、あくまで3Dの入口を体験できます。従来の延長線として立体的な表現やダイナミックな街並みを実現できることは、本作の大きな変化だと思います。
3Dのメリットは、エフェクトやカメラなど、2Dには存在しない空気感を扱えることでしょうか。そういった部分は劇的に変わると思いますね。本作で3D制作に触れる方も多いと思いますが、一般的な3Dゲームの制作って自由な反面、本当に複雑で難しいんです。
繰り返しになりますが、「P2D」では自由度と使いやすさはトレードオフの考え方で設計しています。まずは扱いやすいものを提供することで、ユーザーの皆さんにとってのゲーム制作の扉を開ければと。
その先で、高度な表現や新しいアイデアに挑戦できるきっかけになれば嬉しいですね。制限を加えているとは言っても、さまざまな構築ができる仕組みを考えています。3Dゲーム制作のきっかけに『RPGツクールU2U』が存在してくれれば嬉しいです。
3Dになることで、グラフィック面は大きく変化します。先日ゲーム公式Xで霧の表現に関するショート動画を投稿したのですが、霧が濃く立ち込めているだけでもホラーゲームに利用するなど、いろいろな想像ができるんじゃないかと思います。
劇的なライティングなどの設定も簡単にできるんです。2Dでもプラグインでライティングの設定はできるんですが、3Dはオリジナルでそういった仕組みが入っているので、制作環境の変化に繋がっていくと思います。
――過去の『RPGツクール』での素材も「P2D」で使用可能ということですが、ユーザーが過去に製作したチップセットなども「P2D」で利用できるのでしょうか?
一之瀬氏:基本的には『RPGツクールMV』『RPGツクールMZ』でのチップセットであれば、オリジナルでも本作で利用できます。
――ものすごい技術ですね!
一之瀬氏:例えば『MV』『MZ』におけるサンプルマップなら、「P2D」で再現することは可能です。
その意味では現在『MV』『MZ』でオリジナルゲームを作っている方であれば、ほぼ同じものを『RPGツクールU2U』で再現することもできると考えていただければいいかなと思います。
――「P2D」での2Dから3Dへの映像表現は、どのような技術を使用しているのでしょうか?
一之瀬氏:これはとても実験的なところから始まって、最初は板ポリに『MV』『MZ』のチップを一部貼り付けて、カメラの角度や奥行きの表現などの検証を積み重ねていきました。非常にプリミティブなところから開発が始まって、0から今の形へと進んでいったんです。
Y氏:捉え方として2Dは方眼紙のようにマス目で管理されていて、3Dならばそのマス目がキューブになっています。正方形のタイルを地面に貼るのか、キューブに貼るのかという違いですね。
『RPGツクールU2U』では2Dのマップらしさを表現するために、実際はシンプルなキューブではなく「奥に45度倒れた」形になっていて、地面にマップを貼っていたイメージに近い見た目になるようにしています。
例えば、普通の建物であれば地面に垂直に立っていますよね。その形だと3Dらしく立体的になるんですが、45度に倒すことでより平面に近くなります。こうすることで本来の3D空間よりは平面ではあるけど立体感もある、それが、本作の「P2D」の空間となります。

――これまでの2Dチップでも、例えば椅子などの家具でも影の表現で立体的に見えるようになっていました。「P2D」ではこういった表現もより変化していくのでしょうか?
一之瀬氏:3Dになったことで、椅子や室内の家具で、ライティングによって自然に影ができるので、よりリッチに見えるようになります。
2Dでも3D的な雰囲気に見えるようなグラフィックの作り方はできるのですが、3Dだと置いた瞬間にカメラの当たった部分と当たらない部分で影が作られます。
昼から夜に移るのであれば、太陽をシミュレートして影が伸びていったり左右に動いたりと、さまざまな影の表現がやりやすくなります。そこは大きな違いですね。
――例えば同じチップセットを使用したとして、これまでの作品と『RPGツクールU2U』で比べれば容量は増えてしまうのでしょうか?
Y氏:そうですね、それは当然3Dという情報量が加わることで、どうしても容量は増える事になります。
一之瀬氏:ただし、そこまで極端に増えることはないと考えています。3Dになったとしても、容量の大部分を占めるのはグラフィックや音楽などのアセットです。
ポリゴン自体はそこまで容量が大きいというわけでないので、例えば3Dになって容量が2倍になるといったことは無くて、想像よりは大容量なものにはならないかなと思いますね。

――『RPGツクールU2U』で製作したゲームは、シリーズ近作同様にスマートフォンでも遊べるようになるのでしょうか?
一之瀬氏:現時点でビルドとして発表できることはまだありません。
ただし、色々なプラットフォームにビルドできるというものは『RPGツクールMV』で発展してきました。以前はWindowsで作ったものはWindowsでしか遊べなかったのですが、今はPCでもスマホでもブラウザでプレイできるようになっています。
なるべく制限がないことを目指していますが、現時点ではまず『RPGツクールU2U』でいかに3Dで簡単にゲームを作れるかに重点を置いて開発を進めています。
なので、スマートフォンでのプレイに関しては、リリース時点で採用できるかというのを含め、検討の部分に入っているという答えに留めさせてください。
――前作『RPG MAKER UNITE』で得られたもの、本作で新たに活かそうと思っているものがあれば教えてください。
一之瀬氏:『RPG MAKER UNITE』は、基本的にUnityエディターのベースであるアセットフォーマットで動いているので、Unityで扱えるものは『UNITE』でも扱える形になっていました。
その意味では「P2D」のエフェクト関連、3D表現に関してはUnityがあってこそなので、そこはUnityでできることを上手く活用できていますね。今後はオリジナルのエフェクトも入れていくことになりますが、ベースがUnityにあるというのは活かせていると思いますね。
――『ツクール』シリーズに関して、RPG以外の独創的なゲームが作られる伝統があります。『RPGツクールU2U』でもRPG以外のゲームを作れるのでしょうか?
一之瀬氏:本作でも、基本的に何でも作れると思います。ユーザーさんが作った作品の中では、「これ本当に『ツクール』で作ったの?」と話題になるゲームって必ずありますよね。
『MZ』で完全3Dのゲームを制作したという方もいました。我々の想像を超えたものを作ってくれる人が現れることを期待しています。
『RPGツクール2000』なんかはスクリプトを使えなかったのに、驚くような作品を制作する方がたくさんいらっしゃいました。クォータービューを実現する方もたくさんいて、我々も不思議に思うような作品がたくさんありました。
『RPGツクールU2U』でも、こういった独創的な発想の作品がたくさん出てくれると嬉しいですね。

――トレイラーでは戦闘に関する要素がなさそうでしたが、バトルについて本作はどのようなシステムが採用されているのでしょうか?
一之瀬氏:基本的にはこれまでのシリーズの流れを汲んだものになると思います。ただしバトルに関しても3D空間になるので、表現の幅は拡がっていきそうです。現時点で言えることはこれくらいですね。
――本作は、「BitSummit PUNCH」での展示も大きな話題になっていました。実際に触れたユーザーからは、どのような感想や意見を得られましたか?
Y氏:実際に遊んでくださった方からは色々なリアクションがありましたが、全体的に好評でした。特に反応が良かったのは水位の上昇、壁の裏に回った際に半透明になる機能など、表現力に関連するところですね。
ブロックの組み合わせでオブジェクトや地形を作れる部分に驚く方も多く、皆さんから「簡単に作れそう」「立体感がいい感じ」「マップを作るだけでも楽しそう」などの感想をいただきました。
また展示ではアスレチックのようなコースを用意していたところ、それに夢中になってくださる方もいました。
中でも印象的だったのが、今作っているゲームを「P2D」で作り直したいと仰ってくれる方や、先ほどお話した45度の傾きに関して「マップチップの素材を活かした立体の最適解だよね」という感想をくださる方もいましたね。
昔『ツクール』に触れていて「今はこんな凄いことになってるんだ」と驚く方もいましたし、逆に『ツクール』自体を知らない学生さんもいました。その学生さんは1からゲームを作られている方で、自分で作ろうとすると大変なものが『ツクール』だと簡単に作れるということに、驚かれていましたね。

――例えば体験版の配信など、『RPGツクールU2U』の今後のスケジュールを可能な範囲で教えてください。
一之瀬氏:現状で体験版についての確実なことは言えないのですが、検討を進めている状態です。
「P2D」はPC『ツクール』として初の3D表現になります。映像ではどうしても伝わりにくい部分はあるので、実際に触れていただける機会ができれば良いなと思います。「BitSummit PUNCH」で試遊していただいた方には好評だったので、それを伝えていきたいですね。
体験版に関しては前向きに考えていますので、ぜひとも楽しみにしていただければ幸いです。今後のスケジュールとしては、夏頃に新情報を出す予定で頑張っています。
――楽しみです。最後に、ツクールファンと読者へのメッセージをお願いします!
一之瀬氏:『RPGツクール』は四半世紀以上の歴史があるシリーズです。これまで多くの方々に支えられてきて、今があります。
『RPGツクールU2U』では3D表現として「P2D」を導入しています。「誰でもゲームが作れる」というツクールの理念を変えずに新しい表現に挑戦しているので、これまでの作品に触れてきた方でも問題なく受け入れられるような作品を提供していけるよう取り組んでいます。
今後も新情報を次々に出していけると思いますので、ご期待ください!
Y氏:『RPGツクールU2U』では、いきなり3Dになったことで驚いた方も多いかもしれません。「3Dは難しそう」という印象を壊せるような、サクサクと簡単に作れるマップエディターを現在開発しています。
既に『ツクール』ユーザーの方も、これからシリーズに触れるという方も、本作をきっかけにゲーム制作の世界に踏み出していただけましたら嬉しいです。
3D表現という、新たな映像表現「P2D」が搭載された『RPGツクールU2U』。今後の情報も目を離せません。まずは今夏に公開されるという、次の新情報を楽しみに待ちましょう!









