
2025年9月末より報じられている、エレクトロニック・アーツ(EA)のサウジアラビア系政府投資ファンドである公共投資基金(PIF)を含む3社による買収の意向。これに対し、米国上院議員のリチャード・ブルーメンソール氏とエリザベス・ウォーレン氏は「サウジアラビアが資金提供する買収には安全保障上のリスクや外国からの影響力が及ぶ可能性がある」と警告を発しました。
サウジアラビアによるEAの買収が米国の歴史や文化に対する脅威に?
海外メディアVGCは、リチャード・ブルーメンソール氏とエリザベス・ウォーレン氏がスコット・ベッセント財務長官に宛てた手紙を詳細に紹介しており、その記事によると対米外国投資委員会に対して米国の大手エンターテインメント企業の外国による買収という前例のない提案を徹底的に精査し、この取引による国家安全保障上のリスクをいかにして軽減するつもりなのか説明を求めたということです。
2名の上院議員はPIFによるスポーツ、ビデオゲーム、その他の文化施設への戦略的投資は、実際に利益を出すことよりも、国の「世論の長期的な変化を活用すること」が目的であるとしています。
また、彼らは買収を行う3社にトランプ大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏が設立したAffinity Partnersが名を連ねていることにも疑念を呈しており、「トランプ政権の前例のない腐敗と連邦政府の権力の金銭化に照らせば、『大統領の義理の息子にノーと言う規制当局はどこにあるだろうか?』という状況だ」と述べています。

EAを買収により非公開化することで「同社の活動の透明性が失われる恐れがある」とし、その結果PIFが「ビデオゲームという人気の媒体を通じて、米国民に伝えられる物語を指示したり拒否したりする立場に立つことになり、米国の歴史や文化についての物語をコントロールすることになる」とも上院議員2名は主張しています。
「要するに、EAを通じて影響力を行使できるサウジアラビア政府の能力は、世界中に権力を投射する効果的な手段をサウジアラビアの権威主義体制に与えることになるだろう」と手紙の中では述べられています。
また、上院議員2名はEAのCEOであるアンドリュー・ウィルソン氏にも別途書簡を送っており、その書簡では以下の5つの点について説明を求めています。
EAは、EAの米国顧客の個人情報がPIFまたはサウジアラビア政府によって悪用されないことをどのように保証するのでしょうか?
EAの経営陣は、PIFやサウジアラビア政府から顧客の個人情報の要求があった場合、どのように対応するのでしょうか?
EAは、同社のAI研究と成果物がサウジアラビア政府の目的を推進するために利用されないことをどのように保証するのでしょうか?
EAの顧客がEAのビデオゲームを利用する際に、サウジアラビアの秘密プロパガンダやその他の影響の標的にならないと確信できる理由と、PIFやサウジアラビア政府がEAのゲームの内容やストーリーに影響を与えたり指示したりできないようにEAがどのように保証するかを説明してください。
買収完了後、EAの従業員または代理人が外国代理人登録法に基づいて登録する必要があるかどうかを詳しく説明してください。
はたして今回の2名の上院議員の訴えかけは、EAの買収に影響を与えることとなるのでしょうか。
PIFなど3者によるEAの買収は、取締役会の承認を得て2027年度第1四半期(2026年6月末)に完了予定です。