
エレクトロニック・アーツ(EA)が評価額約550億ドル(約8兆1,300億円)で買収された件に関して、ゲーム業界アナリストや企業財務の専門家たちが独自の見解・予想を述べています。
◆業界アナリストも驚いた過去最大のLBO案件
EAがサウジアラビア政府系ファンドを中心とするグループに全額現金で買収され、非公開企業化や過去最大のLBO(レバレッジド・バイアウト)として、各種メディアが大きく取り上げたのは9月30日のことです。
買収完了後もカリフォルニア州のEA本社や、CEOのアンドリュー・ウィルソン氏は変わらず継続する予定です。
しかしLBOというM&A(企業買収)の手法(※)により、EAは200億ドル(約3兆円)という巨額の負債を背負い、今後の舵取りがどうなるのか注目を集めています。
(※レバレッジド・バイアウト:買収対象の企業の資産や将来の利益を返済の原資とすることで、少ない自己資金で大規模な買収を可能にする手法)
「PCGamer」によれば、DBD Investment BankのPhilip Alberstat氏は「『Apex Legends』『バトルフィールド』『EA Sports FC(元FIFAシリーズ)』からは年間約75億ドル(約1兆円)の収益を上げています。EAには200億ドルの負債を返済する余裕がある」と述べています。
また、同氏は大手パブリッシャーにはできないことに挑戦するクリエイティブ系の活躍の余地も増えると予想し、「ゲーム業界は資本集約型の大手と、特化型の独立系の2つに分裂する」ともコメントしています。
専門家の多くは「新たなEA経営陣は近い将来、大きく戦略を変える可能性は低い。200億ドルの負債を返済しながら、複数のプラットフォームにわたる既存ライブサービスからの収益化に重点を置くであろう」という見解のようです。
◆創造性の喪失か新たな挑戦か、分裂する業界
一方で調査会社「Newzoo」のEmmanuel Rosier氏のように、「この買収により、パブリッシャーは実験的なプロジェクトでリスクを負うより、実績のあるタイトルのフランチャイズに注力する可能性がある。時間の経過とともにクリエイティブな発想の多様性が失われる恐れもある」という声も。
そして業界アナリストのMat Piscatella氏は、SNSにて「ゲーム業界において同様の買収事例はもちろんあるが、これほどの金額では前例がない」と史上最大とされるLBOに驚きつつ、「この先何が起きるかは誰にも分からない。大手パブリッシャーの基盤は劇的に変化したことは間違いないが、どのように変化したのか、全容が判明するのは少し先の話になるでしょう」という、先行きの不透明感に触れています。
$20,000,000,000 of debt financing is a shockingly large number to have to service, while also transitioning from a public to private organization and all the implications that has on the people that work in it. We've obviously never seen anything like this at this scale in the industry before.
— Mat Piscatella (@matpiscatella.bsky.social) 2025年9月30日 0:26
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