さよなら『Anthem』―理想と現実の狭間で終わった野心作に最後のログイン | GameBusiness.jp

さよなら『Anthem』―理想と現実の狭間で終わった野心作に最後のログイン

懐かしくもあり、さみしくもあり……。

文化 その他
さよなら『Anthem』―理想と現実の狭間で終わった野心作に最後のログイン
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2026年1月12日(日本時間13日)、BioWareが手掛けたアクションRPG『Anthem』がそのサービスに幕を閉じました。ファンからはオフライン版のリリースを望む声もありましたが、システム上の制約から実現には至らず、現在では起動してもタイトル画面から先へ進むことはできません。

本作が発売されたのは2019年。リリース当初の不評や、大規模刷新計画「2.0」の中止といった出来事を振り返れば、7年という運営期間は「長く続いたほうだ」と言えるのかもしれません。しかし、本来「ゲームを購入する」という行為には、いつまでも遊べることへの期待が込められているものです。ライブサービス型タイトルが主流となり、デジタルライブラリの所蔵が実質的な「利用権」に過ぎない現代において、その期待は儚いものなのかもしれません。それでもやはり、昨日まで遊べていた世界が永遠に失われてしまうというのは、寂しいものです。

前置きが長くなりましたが、本記事は、発売当時に『Anthem』のレビューを執筆した筆者が、サービス終了直前の世界を再訪した記録です。当時の思い出を振り返るとともに、最後にもう一度触れたこのゲームのプレイ感がどのようなものであったか、ここに書き記しておきたいと思います。



まず『Anthem』を起動して驚かされるのは、そのグラフィックスの圧倒的な美麗さです。発売から7年という月日は、コンソール機の世代交代に照らせば「一世代前」の作品ということになります。しかし、『Anthem』の描画は、そんな時間の経過を全く感じさせないほど精密です。特に、プレイヤーが身に纏うパワードスーツ的な機械(作中では「エクゾスーツ」と表現されていました)「ジャベリン」の造形美は、本作最大の魅力の一つに挙げられるだけあって、今なお目を見張るほどの格好良さを誇っています。当時の筆者はジャベリンのカスタマイズにかなりのこだわりを持っていたようで、セーブデータに残されていた機体は、今見てもなかなかに格好の良いものでした。

各部の素材感や汚し(ウェザリング)を(おおまかにですが)設定できるなど、本作のカスタマイズ要素は今でも通用するほど楽しいものです。ちょっとした工夫でジャベリンの見た目が劇的に良くなるので、いつまでもカスタマイズにこもっていたくなる魅力があります。カスタマイズ画面を眺めていると、これまでほとんど再プレイすることもなかった『Anthem』の、自分だけのジャベリンとの別れが寂しく感じられるようになってきました。駆け込みでプレイしてスクリーンショットや動画を残しておけてよかったです。

本作の拠点「フォート・タルシス」も少し散歩してみました。あくまでシナリオをこなすための機能的な場所に過ぎないとはいえ、細部まで意匠が凝らされており、どこを切り取ってもフォトジェニックな美しさがあります。

当時、自分が執筆した記事に寄せられたコメントを読んでみると、移動範囲の狭さや歩行の遅さからくるテンポの悪さなど、決して評価の高い場所ではなかったようです。ルーターシューターの「拠点」としてはよくある仕様だとも思いますが、当時はバグも多く、何度もやり直しを強いられた経験から、本作のストレスの象徴として記憶されてしまったのは無理もないことでしょう。

サービス終了の数日前に改めて遊び直したこともあり、「もうすぐこの世界も終わるんだな」という、どこか不思議な「エモさ」を感じて、どの場所も愛着を持って眺めることができました。

NPCのフェイシャル・アニメーションも極めて高いレベルで、古さを全く感じさせません(というか、現代でもこれより表情が不自然なAAAタイトルはあるのでは、と思うほどです)。サービス終了という未来を知っているプレイヤーの目線からすると「こんなところに凝ってるから……」と思わなくもないのですが、まあそれを言うのは野暮というものです。2019年に発売された他のAAAタイトルには『DEATH STRANDING』や『バイオハザード RE:2』などがありますが、どれも最新のゲームと遜色ないクオリティを保っており、すでに7年も前の作品だとは信じがたいほどです。

『Anthem』は、その高い技術力が描く理想と実際のゲームプレイとの間に乖離があり、特にサービス初期の不安定さが今でも思い出されます。もし本作が「完璧」な形で実現されていたら、先のタイトルと同じように今でも遊ばれ続け、歴史に残る名作となっていたことでしょう。

では、いよいよメインディッシュ。次は「ジャベリン」に乗って出撃することにします。余談ですが、この出撃前のドックがめちゃくちゃ格好いいです。ジャベリンが後ろを向き、背中の外装を開くアニメーションには、今見ても最高に気分がアガります。

『Anthem』の思い出に浸るため、今回は特定のミッションは選ばず、「フリープレイ」でぼんやりとマップを飛び回ってみることにしました。フリープレイでの出撃にもマッチングが必要な仕様を改めて目にすると、オフライン版への移行がいかに困難だったかが察せられます。

本作より後に発売され、同じくサービスを終了したタイトルに『Marvel's Avengers』がありますが、あちらはPC版の新規購入こそ不可になったものの、現在もオフラインでのプレイは可能です。そうした例があるだけに、「どうにかして残せなかったのかな」と考えてしまいますね。

グラフィックスは凄まじく美しく、ジャベリンの造形も格好いい本作ですが、マップの構造に目を向けると、その大半が渓谷の内側であったり、厳格な高度制限が設けられていたりと、基本的には「細い道」を繋いだような作りになっています。そこからは、当時の技術的な制約を苦心して克服しようとした痕跡が感じ取れます。

TPSとしての銃撃戦もそれなりに楽しいのですが、今の感覚からすると射撃のフィードバックがやや希薄というか、手触りが大味に感じられる面もあります。当時も純粋に戦闘を楽しむというよりは、「俺のジャベリン、格好いいな~」と自機を愛でながら戦っていたような覚えがあります。スキルを用いた派手な演出はおもしろいものの、エフェクトが重なると画面が少し見づらく感じられることもあります。

戦闘は「よくある」感じではあるのですが、雄大な自然を飛び回る感覚はまさに唯一無二。この部分を眺めているだけで本作を遊ぶ価値があります。

ゲーム部分は「そこそこ面白い」、世界観は「マジ最高」、そしてジャベリンは「めちゃくちゃかっこいい」。本作は、長所と短所が非常にはっきりとした作品でした。刺さる人にはとことん刺さる一方で、間口の狭さに苦戦し、最初の悪評を覆せぬままとうとうサービス終了の日を迎えてしまいました。

当時は私がゲームライターとしての活動を始め、レビューを書き始めたばかりの頃でした。「発売直後の新作をクリアまで遊び込み、その評価を言葉にする」というプロセス自体が、当時の私にはとても新鮮な体験だったことを覚えています。

そういう意味で個人的にも思い入れの深い本作を、サービス終了を前に再びプレイできたことは、筆者にとって非常に感慨深く、意義のある体験となりました。近年では、『DAEMON X MACHINA TITANIC SCION』をプレイした際、ふと『Anthem』の面影を感じたりなどしましたし、今後も折に触れて本作のことを思い出すことがあるのでしょう。

どのようなゲームであれ、サービスが終了してしまうのは寂しいものですが、これからも本作のことは、折に触れて思い出すことになるでしょう。


The Art of Anthem (English Edition)
¥1,547
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《文章書く彦@Game*Spark》

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