「にじさんじ」ANYCOLORの成長は鈍化したのか？直近3Qの決算を丁寧に読み解く【ゲーム企業の決算を読む】

VTuber事務所「にじさんじ」を運営するANYCOLORの株価が、2024年4月期第3四半期（2023年5月1日～2024年1月31日）の決算発表を受けて急落しました。

2024年3月15日に、一時前日比22.3%安い2,440円のストップ安となりました。3営業日続落し、3月19日は2,630円で引けています。決算発表前の終値3,140円よりも16.2%下落したのです。

2024年4月期第3四半期の売上高は前期比19.9%増の232億7,300万円、営業利益は同20.4%増の90億4,100万円でした。営業利益率は38.8%。前年同期間は38.7%でした。稼ぐ力そのものは大きく変化していません。

ANYCOLORの株価が急落した理由や収益性の変化、今後の見通しを紐解いていきます。

下方修正を出していないのに株価はなぜこれほどまでに急落したのか？

ANYCOLORは2024年4月期通期の売上高を前期比30.2%増の330億円、営業利益を同34.9%増の127億円と予想しています。この数字は期首に掲げた予想と全く同じもの。直近の決算で修正されたわけではありません。

※決算短信より筆者作成

それにも関わらず、株価が急落したのはコンセンサスとの乖離が鮮明になったためでしょう。コンセンサスとは企業分析のプロフェッショナルであるアナリストの業績予想の平均値。ANYCOLORのコンセンサスは、売上高が予想よりも5.9%、営業利益は15.7%、純利益は14.4%、それぞれ高く設定されています。

■会社予想とコンセンサス

※株予報Proのデータをもとに筆者作成

株価の形成に強く影響するのは純利益です。

任意の銘柄が割高か割安かを判断する指標にPERというものがあります。株価を1株当たりの純利益で除して求めることができます。

決算を発表する前の3月14日のANYCOLORのPERは22倍でした。このPERは会社の通期予想を使って算出しています。これにコンセンサスを当てはめると19倍になります。コンセンサスは会社よりも高めの予想を出しているので、必然的にPERが低くなる（株価が会社予想と比較して「割安である」と判断される）のです。

決算発表後、株価は急落しました。3月19日時点のPER（会社予想）は18倍。決算を発表する前のコンセンサスで算出したPERに近づいています。

なお、日経平均を構成する225銘柄の平均PERはおよそ17倍。ANYCOLORはその水準と大きく変わらなくなりました。

つまり、ANYCOLORは2022年、2023年に業績の大幅な上方修正を行っており、市場の期待は高い状態でした。アナリストも過去の経緯から高めの予想を出していました。しかし、2024年4月期第3四半期の決算発表で、どうやら会社の予想通りに着地をしそうだということが明らかになり、期待先行で買っていた投資家の売りが出て株価の調整が入ったことになります。

そして株価は、日経平均を構成する銘柄と同等の評価を得る水準に落ち着いたと見ることができます。決して、今の段階で業績悪化が鮮明になって売りが殺到している、というところにまでは至っていません。