NPCに個性ある行動を取らせるAIの作り方。『モンスターハンターストーリーズ3』のバトルAIの事例から考える【CEDEC2026】 | GameBusiness.jp

NPCに個性ある行動を取らせるAIの作り方。『モンスターハンターストーリーズ3』のバトルAIの事例から考える【CEDEC2026】

『MHS3』でいかにNPCの戦闘AIを、そのキャラクター性を生かしたものに仕上げたのでしょうか。本講演からは、ゲーム中のNPCのAIなどをより自然に感じさせるためのヒントが凝縮されています。

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NPCに個性ある行動を取らせるAIの作り方。『モンスターハンターストーリーズ3』のバトルAIの事例から考える【CEDEC2026】
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RPG開発などでプレイヤーの味方となるNPCに、いかに戦闘などで自然な行動をさせるような実装をするかは悩みどころかもしれません。

CEDEC2026では講演「『モンスターハンターストーリーズ3』 共に闘うキャラの個性:RPGバトルAIにおける機械学習と従来手法の融合」にて、そんな悩みのヒントになる知見が共有されました。カプコンCS第二開発統括 開発二部 第一ゲームプログラム室の稲葉光彦氏が登壇し、『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』(以下、MHS3)のバトルNPCが持つ「キャラクターの個性が出る行動選択」のための新しいAIについて紹介する講演を行いました。

本作では、NPCのキャラクター性に沿った行動をAIで実現するため、独自の仕組みと調整方法が考案されました。講演では、従来の思考の組み方に機械学習を組み合わせるという試みが、両手法それぞれの特徴に触れながら紹介されました。

あわせて、従来手法のみでは難しかった「プランナー職が直感的に調整できる」仕組みや、AIの行動評価において比較の難しい定性的な情報を「キャラクターの個性を軸として評価する」考え方、開発内での運用やコストを抑えた量産手法、幅広いバトルAIへの応用可能性についても語られています。

『MHS3』は、レンジャー隊の仲間やオトモンと共に冒険するRPGです。バトルは伝統的なコマンドバトル形式を特徴としています。稲葉氏はプログラマーとして、フィールドやバトルに登場する各キャラクターのAIシステムを担当した経験をもとに、本講演をまとめています。

本作の味方NPCは、主人公を立てるバランスタイプのシモン、天才肌のティオ、調合が得意なガウルなど、それぞれ個性豊かなキャラクターとして構築されています。各キャラクターはバトル中に操作はできず、AIのNPCとして完全に自律的に動くように設定されています。

稲葉氏らが目標としたのは、こうしたキャラクター性をバトルの行動選択にも反映させることでした。「人間味のある行動をさせたい、賢く見せたいという狙いがあり、逆に最適解ばかりを取る行動やユーザーのストレスになる行動は避けたい」といいます。

キャラクター性は、所持スキルと「思考」の掛け合わせで表現されると稲葉氏は説明します。ここでいう思考とは、状況などの入力に対して条件や確率から判断を行い、スキルの使用という出力を導く仕組みのことです。

ただし、従来の作り方では条件設定が複雑になるほど調整が難しくなるという課題がありました。「イメージ通りの結果が得られるような確率や条件になっているかどうかわからない」「作った後にイメージとずれていたときに、どこをどう調整すれば理想に近づくのかがわからない」という問題です。

この課題に対して稲葉氏らが取ったのが、機械学習の活用と「行動選択思考の二層化」という2つのアプローチでした。まず検討されたのが、思考のすべてを機械学習に置き換え、出力そのものをスキルにする案です。しかしこの方法では、開発中にスキルを追加・変更したり、武器種によってスキル構成が変わったりするたびに、モデルの出力形式が変わってしまい、作り直しが発生してしまいます。

そこで採用されたのが、思考を「行動カテゴリー(攻撃・回復・防御など大枠の行動の種類)を選ぶ」段階と、「そのカテゴリーの中から具体的なスキルを選ぶ」段階の二段構成に分ける方法です。

このカテゴリー選択を機械学習が担当し、キャラクター性を反映させる一方、カテゴリー内のスキル選択は従来手法(威力や回復効率など定量的な比較)に任せる、という役割分担がポイントになります。

稲葉氏は、同じカテゴリー内のスキル同士(たとえば攻撃Aと攻撃B)は威力といった共通の尺度で比較しやすい一方、攻撃と回復のようなカテゴリー間の比較は「入力や条件によって答えが変わり、定量的に直接比較できず、最終的には人の感覚による判断になる」と説明しました。だからこそ、この定性的な判断部分にキャラクターの個性が最も表れやすいという考え方です。

この二層構造により、スキルの変更が機械学習モデルに影響しない柔軟な構造になり、また同じキャラクターであれば武器や進行状況が変わっても同じモデルを使い続けられるようになったといいます。

カテゴリー選択モデルの学習データは、「行動指針データ」と呼ばれる形で作成されます。ある状況におけるゲーム内の数値をシステムが自動で抽出し、その場面でとってほしい行動カテゴリーをプランナーが選択する、という組み合わせです。

このデータ収集は、プランナーがゲームをプレイしながら、学習させたい場面で該当のカテゴリーボタンを押すだけで完了するツールが用意されました。「調整を行うプランナーが、プレイ感覚のままデータ作成を回せる環境を用意しており、プランナーはこのキャラクターだったらどう行動したいかを考えてカテゴリー選択をします」と紹介されています。

キャラクターごとにこの行動指針データを集めて機械学習を行うことで、調整済みモデルが自動的に生成される仕組みです。条件を一つ一つ手作業で書く必要がなく、プランナーの感覚をそのままモデルに反映できる点が特徴だといいます。

さらに量産コストを抑える工夫として、全キャラクター共通の「ベースモデル」を先に作成し、そこに各キャラクターの行動指針データを適用してキャラクターごとのモデルを作る、という二段階の学習フローも採用されました。人間らしい判断の土台を共通で持たせたうえで、キャラクターごとの個性を上乗せするイメージだといいます。

稲葉氏はこの手法の利点を3つにまとめました。

ひとつは、攻撃と回復のように尺度の異なる定性的な判断を、条件設定なしに直感的に調整できる点です。二つ目はモデルの柔軟性で、スキルの変更がモデルに影響しないため、スキルの追加・削除やスキル違いのバリエーション作成が容易になったといいます。三つ目は、カテゴリー構成が全キャラクター共通であることを生かし、ベースモデルを利用した量産ができる点です。

従来手法では、状況に応じたイメージ通りの出力を得るために条件を一つ一つ検討・調整する必要があり、想定外の状況にも弱いという難点がありました。今回の手法では、機械学習の特性上、未知の状況でも「このキャラクターだったらどうするか」という基準で対応できる点も利点として挙げられています。

最後に稲葉氏は、今回はコマンドバトルに限定した内容だったとしつつ、行動選択の判断はジャンルを問わずゲームAIに必要なものであり、同様の考え方はアクションゲームなど他ジャンルへの応用も可能だと述べ、講演を締めくくりました。

今後もゲーム開発でNPCを扱うことは多いため、『MHS3』のケースはさまざまなヒントが詰まっているといえるでしょう。

《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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