英国政府「古いゲームの救済意義わかるが、法律での対応難しい」―サービス終了後もゲームをプレイ可能な状態に保つ「Stop Killing Games」運動、ついに質疑の壇上へ | GameBusiness.jp

英国政府「古いゲームの救済意義わかるが、法律での対応難しい」―サービス終了後もゲームをプレイ可能な状態に保つ「Stop Killing Games」運動、ついに質疑の壇上へ

「Stop Killing Games」運動が、ついに英国議会に届きました。

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英国政府「古いゲームの救済意義わかるが、法律での対応難しい」―サービス終了後もゲームをプレイ可能な状態に保つ「Stop Killing Games」運動、ついに質疑の壇上へ
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2025年11月3日、オンラインゲームのサービス終了後もゲームを遊べる状態を保つ「Stop Killing Games」運動について英国議会にて議論がなされ、英国政府はこの問題についてユーザーの注目が集まっていることは認識しているものの、商業的・法的リスク、およびセキュリティリスクの面から現行法の改正は難しいことを示唆したと海外メディアVGCが報じています。

「Stop Killing Games」運動、英国議会まで届くも政府は「義務付けは難しい」との判断





「Stop Killing Games」運動は、2024年にレースゲーム『ザ クルー』が完全にプレイ不能になったことを受けてヨーロッパ圏を中心に始まった運動です。



この運動に関連した英国内の請願署名は約20万件、欧州全体では100万件を超える署名を集め、英国政府や欧州委員会がどう動くか注目されていました。

そして2025年11月3日、英国議会にて本件に関する審議が行われ、数十人の議員が英国消費者法のあり方を巡って主張を発表したとVGCは伝えています。

パム・コックス議員は「同運動は購入したゲームが消えてしまうプレイヤーのフラストレーションの高まりを浮き彫りにしています。デジタル所有権は尊重されるべきであり、たとえ公式のサービスサポートが終了したとしても、パブリッシャーはプレイヤーがゲームを保有または修復できる手段を提供するよう努めるべきです」と、現行法では消費者が十分に保護されていないことを主張しました。

ヘンリー・タフネル議員は「ゲームを削除することは、社会、そして業界全体にとって不可欠な文化的・芸術的遺産を消し去ることに繋がります。もし書籍、映画、あるいは楽曲の複製がすべて破壊されたら、私たちはそれを文化的悲劇と見なすでしょう。ビデオゲームの喪失も同じように捉えるべきです」と、ゲームの文化的重要性を考慮するよう求めました。

こうした主張に対し、政府代表でスポーツ・観光・市民社会・青少年担当大臣のステファニー・ピーコック議員は、以下のような回答を行いました。

  • この請願には英国内で約19万筆の署名が集まり、欧州市民イニシアチブを含む同様のキャンペーンでは、100万筆を超える署名が集まった。世界中で大きな関心が寄せられていることは承知している。

  • 同時に、政府はゲーム業界が同運動に懸念を示していることも認識している。ゲームの開発と維持はかつてないほど複雑化しており、サービス終了後もサポートを続けることにはゲーマーだけでなくビデオゲーム会社にとっても意図しない悪影響が生じるリスクがある。

  • ゲームは常に消費者にライセンス供与されており、直接販売されているわけではない。1980年代には箱の包装を破ってゲームカートリッジを取り出すことで、今日ではデジタルストアでゲームを購入する際に「同意する」をクリックすることでライセンス契約に同意している。ゲームのライセンス供与は一部の議員が指摘するような不公平な商慣行ではない。

  • 英国法は非常に明確で、消費者への情報は明確かつ正確でなければならないと規定している。プロジェクトが失敗に終わった場合や、ゲーム開始後すぐに中止せざるを得なくなった場合には、消費者に提供される情報が明確かつタイムリーであることが特に重要だと申し上げたい。

  • サービス終了後にオフラインモードをパッチで比較的簡単に実装できるゲームもあるだろうが、オンライン体験に特化したシステムを持つゲームの場合、大規模な再開発なしには実現不可能だ。解決策があまりにもリスクが高く、負担が大きすぎると判明した場合、ゲーム開発のイノベーションを阻害する可能性がある。

  • サービス終了後もゲームを動かすことには商業的および法的リスクが伴う。もしユーザー側がサービス終了したゲームのサーバーを自由に動かせるとなった場合、課金などの支払いの責任が誰にあるか明確ではない。また、違法や有害な活動が発生した場合、ゲームメーカーの評判が損なわれる可能性もある。

  • 英国では2023年オンライン安全法に基づき、ゲーム企業はゲーム内での有害コンテンツを管理する責任を負っている。もしサービス終了後も代替サーバーなどでゲームを動かす場合、子どもが有害情報に晒されたり、あるいは悪意のある第三者による有害コンテンツに誘導されたりといったセキュリティ上のリスクが伴う。

  • ゲームの保存自体については博物館や保存団体により促進する取り組みを積極的に支援している。ゲームの開発者やパブリッシャーの皆様には、ゲームの開発、リリース、サポートにおいて、保存への取り組みを継続的に検討していただくようお願いする。

  • 今回の議論を受け、ゲームの消費者に提供される情報が既存の消費者保護を正確に反映したものとなるよう、デジタルコンテンツを含む消費者法の遵守に関する企業向けガイド「ビジネス・コンパニオン」の内容について検討する。

以上のように署名運動やゲーム保存の意義については認めているものの、商業的・法的・セキュリティリスクの面からはサービス終了したゲームを動かすことについては英国政府は積極的ではなく、またゲームの所有権についても昔から現在まで「ライセンス供与」であるという解釈を英国政府は示しました。

今回の英国議会での質疑応答を受けて、「Stop Killing Games」運動の目標の達成が果たされるかどうかはかなり難しいといったところでしょうが、英国政府の見解を引き出したという点では運動の意義があったといえるかもしれません。

《ずんこ。@Game*Spark》

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