Netflix日本10周年、アニメ視聴数は5年で3倍に。幹部が明かす日本アニメを「グローバル戦略の中核」に据える理由 | GameBusiness.jp

Netflix日本10周年、アニメ視聴数は5年で3倍に。幹部が明かす日本アニメを「グローバル戦略の中核」に据える理由

Netflixは日本市場に参入してから10周年。同社のアニメ戦略に関する記者向けラウンドテーブルで語られたこととは?

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左:坂本和隆氏、右:山野裕史氏
  • 左:坂本和隆氏、右:山野裕史氏
  • 坂本和隆氏
  • 山野裕史氏
  • 山野裕史氏
  • 坂本和隆氏
  • 左:坂本和隆氏、右:山野裕史氏

日本市場に参入してから10周年という節目を今年9月に迎えるNetflixは、2025年8月6日、同社のアニメ戦略に関する記者向けラウンドテーブルを開催した。取材にはNetflix コンテンツ部門 バイス・プレジデントの坂本和隆氏、および同部門でアニメ関連のコンテンツ全般を担当するディレクターの山野裕史氏が応じ、アニメがグローバル戦略の中核を担うまでの道のりと、今後の展望について明らかにした。

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Netflixにおけるアニメの成長

坂本氏は、Netflixがサービスを開始した2015年当初を振り返りながら、今やアニメが「グローバル戦略の中核を担う最重要カテゴリー」にまで成長したと述べた。現在、190以上の国と地域で展開する同社のメンバーの50%以上、約3億人が最低でも一度はアニメ作品を視聴したことがあり、かつてニッチなジャンルと見なされていたアニメが、メインカルチャーとして世界的に波及している現状を強調した。アメリカ、ブラジル、メキシコでの継続的な成長に加え、アジア、ヨーロッパ、アフリカでも人気が着実に拡大しているという。

また、日本のコンテンツは、非英語圏の作品として、韓国に次いで世界で2番目に多く視聴されており、その中心をアニメが担っていることも明かされた。

『SAKAMOTO DAYS』のような新作から『ナルト』のような旧作まで幅広く人気

プレゼンテーションでは、アニメの好調ぶりを示す具体的なデータが公開された。2025年上半期のアニメ視聴数は前年同期比で約20%増加し、過去最高を記録。アニメの総視聴時間はこの5年間で3倍になり、2024年には10億ビュー(総視聴時間を作品の時間で割ったもの)を超えたという。

個別の作品では、『SAKAMOTO DAYS』シーズン1が2,400万ビューを記録し、世界(非英語作品)で33位にランクイン。エンゲージメントレポートの発行開始以降、日本発アニメとして半期ごとの視聴数で最も見られた作品となった。

また、継続的に視聴され続けているタイトルの代表例として、『NARUTO -ナルト-』シリーズが累計4,800万ビュー、『ONE PIECE』シリーズが累計3,000万ビューを達成、さらに、スタジオジブリ作品も累計4,000万ビューを超えており、新作だけでなく、旧作も含めて幅広い作品が支持を集めているようだ。こうした、長く見られ続けているタイトルをNetflixでは「エバ―グリーン」と呼ぶそうだが、『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』も上記のタイトルとともに「エバーグリーン」の作品だという。

Netflixならではの緻密な翻訳作業

Netflixは日本発アニメのみならず、世界中で「ローカルファースト」の考えを重視しているという。山野氏は、海外でのヒットを狙って作品をプロデュースするのではなく、まず日本の視聴者にしっかりと届けることを最優先していると説明。日本で支持されることが、結果的にグローバルな成功という結果に繋がるという、同社の基本的方針を語った。独占配信か非独占かという方針については、固定的なものはなく、旧作の複雑な権利関係やアニメ業界独自の生態系を考慮し、作品ごとに柔軟に対応しているという。

また、グローバル展開を支えるローカライズへの注力も同社の強みとなっており、アニメがグローバルに普及する要因のひとつとなっているようだ。最大33言語に字幕・吹替対応するだけでなく、その質にも徹底的にこだわる。単なる翻訳に留まらず、視聴状況(例:日本語音声+英語字幕か、英語音声+英語字幕か)によって表示する字幕を使い分けたりと、非常にきめ細かい対応を行っている。山野氏は「意図を解説した文章を作成し、それを元に各言語の翻訳者が最適な意訳を考える」といった、時間と労力をかけたプロセスの一端を明かした。

さらに、『火垂るの墓』では独自に音声ガイドを制作するなど、アクセシビリティ向上への取り組みも進めている。



今後の展望とクリエイターとの関係

今後の作品開発について山野氏は、Netflix側からジャンルを提案することもあるとしつつ、最も重視するのはクリエイターの「やりたいこと」やビジョンとの合致であると語った。クリエイターの熱意に共感し、企画の早い段階から伴走する姿勢で臨んだ作品の事例として、4~5年前から準備を進めてきたという劇場版『ベルサイユのばら』の事例が紹介された。

また、今夏スタジオジブリの『火垂るの墓』が国内で初めて配信されたことで、他のジブリ作品を今後配信するかを問われた坂本氏は、同社から営業したり、ジブリから話を持ち掛けられてはいないと回答。作品の調達については「タイミングとご縁を大切にしている」といい、今後自然な流れで協力関係を結んでいけたらという考えのようだ。

Netflixは今後も、日本のクリエイターやパートナー企業と共に、国境や言語の壁を越えて世界中の視聴者に物語を届けていく構えだ。

《杉本穂高》

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