高齢者が『鉄拳8』で燃え、介護施設同士がオンラインで戦う!「ケアeスポーツ協会」にeスポーツの新たな形を見た―主催団体&優勝者に話を訊いた | GameBusiness.jp

高齢者が『鉄拳8』で燃え、介護施設同士がオンラインで戦う!「ケアeスポーツ協会」にeスポーツの新たな形を見た―主催団体&優勝者に話を訊いた

プロゲーマーとしても活動する「ケアeスポーツ協会」の広報の方や優勝者の村部良江さんにお話を伺いました。

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高齢者が『鉄拳8』で燃え、介護施設同士がオンラインで戦う!「ケアeスポーツ協会」にeスポーツの新たな形を見た―主催団体&優勝者に話を訊いた
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私たちゲーマーは、今この瞬間もゲームを楽しんでいます。しかし、ふとしたときに「このまま年を重ねても、今と同じようにゲームを楽しめるのだろうか……」という不安を覚えたことがある人も多いのではないでしょうか。

そんな不安を払拭し、私たちに希望を与えてくれるような大会が、実際に開催されていたことをご存じでしょうか。その大会では、なんと60代後半から90代に至るまでの幅広い年齢層の高齢者たちが、『鉄拳8』に興じ、真剣な眼差しで戦いを繰り広げていたのです。

本記事では、この大会を主催した一般社団法人ケアeスポーツ協会および、大会優勝者へのインタビューをお届けします。


――本日はよろしくお願いいたします。まずは、浜様の自己紹介をお願いします。

一般社団法人ケアeスポーツ協会 浜進平氏:よろしくお願いいたします。一般社団法人ケアeスポーツ協会広報の浜進平です。主にSNSの更新や許諾申請、配信周りなどを担当させていただきます。

――そもそも「ケアeスポーツ」というのはどういったものなのでしょうか?

浜:介護施設「あみーご倶楽部」に入居されている高齢者が自由に参加できる大会を作る、そして「勝った!嬉しい!」「負けた!悔しい~、次こそ勝つ!」という感情を起こすことを目的に活動しています。協会のロゴは「CES」という文字がはみ出ているデザインになっており、これまでの介護(ケア)の枠に囚われないという思いが込められています。

――ケアeスポーツ協会が今までに行ってきた活動や、そこに至るまでの経緯などを大まかに教えていただけますでしょうか?

浜:ケアeスポーツ協会は2019年に発足しました。ちょうどコロナの全盛期です。きっかけは、自宅待機時間が増えた際に、弊社の代表がeスポーツに着目し、介護施設でも使えるのではないかと考えたことです。

せっかくやるからにはレクリエーションで終わるのではなく、真剣に取り組みたかったんです。勝った負けたと、悔しがったり喜んだりしてほしい。そこでオンラインで大会を始めたところ、本気で挑んでくれるということがわかり、それが第一歩となりました。その後、愛知県などで講演会を行ったり、中京テレビ「喫茶ソルセオ」やテレビ東京「何を隠そう…ソレが!」などのTV番組で取り上げていただいたりしています。

――今までの「ケアeスポーツ」大会は将棋やオセロがメインだったかと思いますが、今回『鉄拳8』を導入した理由は何でしょうか?

浜:私は普段『鉄拳8』のプロゲーマー(Rox3Gaming はまちゃん。)としても活動しており、そのチームのスポンサーがあみーご倶楽部および協会を運営するセンチュリークリエイティブという会社だったんです。

ちょうど同社が広報を探している段階だったので私が入ったのですが、すでにそこでは将棋やオセロで戦う大会が第6回まで進んでいました。ただ、『鉄拳8』は高齢者でもできるんじゃないかと思い、一度テストでやってみたんです。そうすると「これならいけるな」と確信が掴めて、その後元中日ドラゴンズの平田良介さんと戦ってもらうなんてこともあり、着々と種目として準備をしていった形です。

――『鉄拳8』を扱った「第11回あみーご倶楽部CUP TEKKEN8 決勝大会」の動画はかなりの再生数を記録していらっしゃいますが、こちらの反響はいかがでしたか?また、選手の方々の反応はどんな具合でしたか?

浜:過去にないくらいの反響をいただいています。まだ全員がこの反響にどう対応すればいいかわかっていない状況ですが、観ていて面白かったという意見が多いですね。キャスターや声優さんからも好評でした。引き続き応援されるような形にしていきたいと考えています。

選手の中には認知症を患われている方もいますが、楽しかったと言ってくれました。キャラクターを選んでいるときにはどんどん愛着がわいていくようですし、「せめて一回は勝ちたい」と情熱を燃やして練習してくれる方もいました。大会までの練習期間は1ヶ月ほど設けたのですが、夜まで熱中したり、60試合くらいやっていたりする方もいましたね。

――こちらの大会を開催するまでに、選手の方々へはどんな形でサポートされていましたか?特にゲームのプレイスキル向上についてはどなたがどういったアドバイスをされていたのでしょうか?

浜:鉄拳オンライン大会の開催は初めてだったので、オンラインとは何かを説明するところから始めました。「顔の見えない人と対戦する」ということがわかる人もいれば、説明されてもわからない人もいるんです。

そこで、サポート職員の理解度をとにかく上げました。職員大会も開催し、ゲームや配信、ラグチェックなどを体験して理解を深めてもらいました。職員向けに遊び方・勝ち方という動画も作成し、まずは職員さんに『鉄拳8』を楽しんでもらうというところにフォーカスしたんです。広報の自分がいきなり行ってもわかってもらえないので、普段から入居者の方とかかわりのある職員さんにご助力いただきました。

――職員さんも普段からeスポーツ系のタイトルを遊ばれているのでしょうか?

浜:職員さんはまちまちなのですが、施設にたまたまゲームが好きな人が偶然ひとりいらっしゃって、かなり助けてもらいましたね。

――今後『鉄拳8』以外のタイトルを扱うとしたらどんなタイトルが良いかと思いますか?(もしくはゲーム以外でも結構です)

浜:まだ私個人が思っているだけで何も決まっていないのですが、入居者の方々が思った以上にビデオゲームができるとわかったので、他の格闘ゲームもやりたいですし、『ジオゲッサー』とかも良さそうです。地域を絞ればわかりやすそうですしね。

将棋やオセロも面白いですし、それを待ち望んでいる方がいるので今後もやっていくのですが、それだけではない飛び抜けた何かをやりたいと思っています。

――現時点までで見えてきた課題と、今後のビジョンを教えてください。

浜:我々は少しずつ伸ばしていこうかなと計画していたのですが、今回思った以上に反響があり、期待の高さがうかがえたんですよ。ただ、現場の方のしっかりした協力なしでは成し得なかったというのも事実です。入居者の方には93歳とご高齢の方がおられたり、「格闘して戦う」ということに対しての嫌悪感が強かった人もいたのですが、そこは現場の職員さんに大きく助けてもらいました。

今後はそこをもっと万全の状態で臨めるように調整していきたいですし、もっとみんなが気軽に遊べる――それこそ『ジオゲッサー』のような――ゲームも取り入れられればと思います。とにかく、できる限り現場ファーストであることは目指したいです。

――続いて今回優勝された村部さんにお伺いします。どうしてこのキャラクター(パンダ)を選んだのでしょうか?

村部良江さん:(動物の)パンダが好きだからです。

――ゲームを遊んだり、練習したりしている最中に感じた、楽しかったことや、難しかったことなどを教えてください。

村部:勝ったことが嬉しかった。難しいと感じたことは特にありませんでした。

――ビデオゲームで遊んだのは初めてですか?

村部:初めてです。意外とすぐに馴染めました。

職員:息子さんが今40代半ばくらいで、世代的にはちょうどファミコン~スーパーファミコン~初代PS・SSと直撃なのですが、そもそも息子さんもあまりゲームをしてこなかったようです。

――本番のあいだはどんなことを考えていましたか?

村部:勝つことのみです!

――素晴らしいですね(笑)。大会に参加してみていかがでしたか?

村部:初めての挑戦でしたが、とても楽しかったです。

――他のゲームでも大会を行うとしたら、参加してみたいですか?

村部:『鉄拳8』以外でも何かあったらぜひまた参加したいと思います。


今回の大会やインタビューを通して、高齢者でも真剣になってゲームに取り組めるということが改めて強く感じられました。高齢者がどのように格闘ゲームを楽しんでいるのか、気になる方は一般社団法人ケアeスポーツ協会のYouTubeチャンネルをご覧ください。


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