
7月22日から24日にパシフィコ横浜ノースで開催されるゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2025」において、アカマイ・テクノロジーズ(以下、アカマイ)が3つのセッションを実施します。同社は、エッジネットワーク技術を活用したゲームインフラの最新動向と、Cygamesとの共同セッションではセキュリティ対策の実践事例を紹介する予定です。
現代に求められるゲームインフラ:低遅延・AI・セキュリティが融合する時代へ
今日のゲーム開発において、成功の鍵を握る技術的要素として「低遅延」「AI」「セキュリティ」の三つがあげられます。特にeスポーツやリアルタイムマルチプレイヤーゲームでは、レイテンシは単なる快適性の指標ではなく、競技の公平性を左右する指標にもなっており、人気作として求められる十分条件から必要条件となってきました。
同時に、AIはゲーム開発のあらゆる局面に浸透し始め、開発ワークフローの効率化から、プロシージャルなコンテンツ生成、さらにはプレイヤーと音声で自然に対話するNPCの実装まで、爆発的な進化を遂げています。
そして、これらの要素が高度化するほどに重要性を増すのがセキュリティです。高い収益性と膨大なユーザーベースを持つゲーム業界は、サイバー攻撃者にとって格好の標的となっており、DDoS攻撃は年々その規模と巧妙さを増しています。
この複雑な課題に対し、世界最大級のエッジプラットフォームを持つアカマイが、明確なビジョンと具体的なソリューションを「CEDEC 2025」で詳しく解説します。
セッション①:エッジ革命で実現する"もっと近くに置ける"ゲームサーバー
日時:7月22日(火)11:40~12:05 第12会場
講演者:大石太郎氏(アカマイ・テクノロジーズ合同会社 Senior Solutions Engineer)
1つ目のセッションでは、「"もっと近くに置ける"時代のゲームサーバー ~Akamaiの新しいコンテナサービスの可能性~」と題し、ゲームサーバーに関するパラダイムシフトが紹介されます。
リアルタイム性が求められるマルチプレイヤーゲームにおいて、物理的な距離に起因する遅延をいかに克服するかは至上命題です。アカマイの新しいアプローチは、ゲームサーバーやリアルタイム処理を担うロジックの一部を、中央のデータセンターからプレイヤーの物理的に「もっと近く」へと移すことにあります。
このセッションでは、アカマイがグローバルに分散配置したエッジで直接コンテナを動作させる、新しいサービスについて解説されるほか、また実際のゲーム開発現場でどのように活用が進められているかが解説されます。エッジで処理を行うことにより、データがクラウドと往復する時間を劇的に短縮し、低遅延を実現するだけでなく、コアサーバーへのネットワーク負荷を軽減し、システム全体の応答性を向上させる効果も期待できます。
従来の集中型クラウドモデルでは、データセンターから遠い地域のプレイヤーは物理的な距離という越えられない壁に直面していました。アカマイの提案は、この前提を覆し、アプリケーションの設計思想を「エッジネイティブ」へと転換させるものです。
講演者の大石氏は、2019年より同社でゲーム・メディア業界向けの製品導入支援に従事。現在は幅広い業界に対してクラウド技術の導入支援を行っています。

セッション②:AI時代のゲームインフラ──GPU×エッジネットワーク×Kubernetesの融合
日時:7月24日(木)15:00~15:25 第12会場
講演者:森祐孝氏(アカマイ・テクノロジーズ合同会社 Senior Technical Solutions Architect)
2つ目のセッションでは、「Akamai Cloudで進化するゲームインフラ:エッジネットワーク × GPU × K8s~AI推論と高速配信を両立するクラウド設計と導入ポイント~」をテーマに、AI対応型ゲームバックエンドの構築手法が紹介されます。
ゲームにおけるAIの活用は、開発効率化の領域を飛び越え、ゲーム体験そのものをリッチにする中核技術へと進化しています。自然言語でプレイヤーと会話するAI NPCや、戦況に応じて連携する高度なAIなど、こうしたリアルタイムでの「推論」処理は膨大な並列計算能力を要求し、それを支えるのがGPU(Graphics Processing Unit)です。
本セッションでは、アカマイが提供する統合クラウド基盤「Akamai Cloud」の3つの要素を軸に、リアルタイム推論やマルチリージョン展開がどのように行われているかのユースケースも解説されるということです。
世界最大規模のエッジネットワーク:コンテンツやデータをプレイヤーに最も近い場所から高速配信
GPUインスタンス:高度なAI推論処理を担う強力な計算リソース
Kubernetes (LKE):負荷に応じて自動でスケールさせるコンテナオーケストレーション技術
森氏は、SIerやゲーム会社でのエンジニア経験を持ち、現在は同社でクラウド導入の技術支援を担当しています。

セッション③:ゲームの裏側で戦う──Akamaiが観たセキュリティ脅威とCygamesの実践的な対策
日時:7月24日(木)15:30~15:55 第12会場
講演者:佐藤太志氏(株式会社Cygames エンジニア2部 副部長 兼 インフラセクションマネージャー)、小松大晟氏(アカマイ・テクノロジーズ合同会社)
注目の3つ目のセッションは「ゲームの裏側で戦う──Akamaiが観たセキュリティ脅威とCygamesの実践的な対策」と題して、実際のゲーム運営現場でのセキュリティ対策事例が詳しく紹介されます。
ゲームが提供する体験がどれほど素晴らしくても、それが安定してプレイヤーに届かなければ意味がありません。大量のトラフィックを送りつけてサーバーを機能不全に陥らせるDDoS攻撃、ゲームの公平性を破壊するチートBot、不正なAPIアクセスによるアイテム詐取など、脅威は多岐にわたります。
前半では、アカマイの小松氏がグローバルネットワークで観測した最新の攻撃トレンドを解説。「なぜゲームが狙われるのか」「どのような脅威が存在するのか」といった、対策を講じる上で不可欠な背景知識が、実際のデータを基に紹介されます。
後半では、『グランブルーファンタジー』『Shadowverse: Worlds Beyond (シャドウバース ワールズビヨンド | シャドバWB)』などを運営する株式会社Cygamesから佐藤氏が登壇。同社は2018年にWAF、2019年にBot対策サービスを導入し、さらにSIEM(Security Information and Event Management)とBot対策サービスの連携により、リアルタイムでの検知・分析を実現しました。
運用負荷やコストの制約がある中で、どのように段階的にセキュリティを強化してきたか、その具体的なプロセスが公開されます。「ユーザーファースト」を掲げるCygamesが、アカマイのソリューションを活用してインフラの信頼性とユーザー体験をどのように向上させたのか、実践的なノウハウが惜しみなく共有されます。
Cygamesの佐藤氏は、データセンター運用を経て2011年に同社へ入社。大規模タイトルのインフラ構築・運用を担当し、現在はインフラセクションマネージャーとしてクラウド環境の標準化を推進しています。


ブース展示:エッジネイティブコンピューティングの可能性を体験
セッションと並行して展開される展示ブースでは、Akamai Cloudの実機デモンストレーションが行われます。低レイテンシー・低コストでのオンラインゲーム構築や、GPUを使ったレンダリングファームの実装例が紹介される予定です。
主な展示内容:
エッジネイティブコンピューティングの構築事例
新しいGPU、VPUインスタンスのデモ
Kubernetesなどの機能実装ロードマップ
最新セキュリティソリューション
セッションが「なぜ(Why)」と「何を(What)」を学ぶ場であるならば、ブースは「どのように(How)」を具体化する場となります。特に、セッションでは時間の制約上、質疑応答の時間が設けられていないため、「自社のゲームアーキテクチャにどう適用できるか」「予算内で実現可能か」といった個別の疑問をエキスパートに直接相談できる貴重な機会となりそうです。
セッション情報まとめ
セッション①
タイトル:"もっと近くに置ける"時代のゲームサーバー ~Akamaiの新しいコンテナサービスの可能性~
日時:7月22日(火)11:40~12:05
会場:第12会場
講演者:大石太郎氏(アカマイ・テクノロジーズ合同会社)
カテゴリ:エンジニアリング
セッション②
タイトル:Akamai Cloudで進化するゲームインフラ:エッジネットワーク × GPU × K8s~AI推論と高速配信を両立するクラウド設計と導入ポイント~
日時:7月24日(木)15:00~15:25
会場:第12会場
講演者:森祐孝氏(アカマイ・テクノロジーズ合同会社)
カテゴリ:エンジニアリング
セッション③
タイトル:ゲームの裏側で戦う──Akamaiが観たセキュリティ脅威とCygamesの実践的な対策
日時:7月24日(木)15:30~15:55
会場:第12会場
講演者:佐藤太志氏(株式会社Cygames)、小松大晟氏(アカマイ・テクノロジーズ合同会社)
カテゴリ:エンジニアリング
CEDEC 2025 公式サイト:https://cedec.cesa.or.jp/2025/