任天堂は2026年3月期(2025年4月1日~2026年3月31日)を1割の営業増益と予想しました。
6月5日に発売するニンテンドースイッチ2の販売計画を1,500万台に設定。この数字は供給面で何らかの制限があって設定したものではないと明言しています。4月にマイニンテンドーストアで抽選販売の応募受付を開始すると、国内だけで220万の応募がありました。需要面を考慮すると、1,500万台は保守的な数字だとの指摘もあります。
さらに、今期の業績予想は中国からアメリカへの関税を145%で計算したもの。2025年5月12日にアメリカと中国は関税を115%引き下げ、30%にすることで合意をしています。任天堂は大幅な増益も視野に入ります。
1.7倍の価格差を考慮しても「ニンテンドースイッチ」を1,500万台販売した2018年3月期の営業利益率と同じ?
2026年3月期の売上高は前期比63.1%増の1兆9,000億円、営業利益は同13.3%増の3,200億円と予想しました。「ニンテンドースイッチ2」の発売で売上高は過去最高を更新する見込み。一方、営業利益3,200億円で、営業利益率は16.8%。営業利益率は「ニンテンドースイッチ」が通年で業績にフル寄与した2018年3月期と同水準です。
2018年3月期の「ニンテンドースイッチ」の販売台数は1,505万台でした。当時の販売価格は2万9,980円。「ニンテンドースイッチ2」は日本版が4万9,980円です。価格がおよそ1.7倍に上がっていることを考えると、部材費の高騰などを考慮しても営業利益の予想は保守的だと言えるでしょう。

一番のマイナス要因がアメリカの関税。任天堂は米大陸の売上高が全体の44.2%を占めています。アメリカは主力市場。そして各種報道や公式サイトの情報によれば、ハードウェアの生産は中国、ベトナム、カンボジアで行っており、北米向けのハードウェアはベトナムを中心に輸出しているようです。
ベトナム、カンボジアの関税は10%、中国は145%という税率の前提で業績予想を立てています。しかし、中国の関税は30%に下がります(記事公開時点)。90日間の期限が設けられているものの、この合意の一番のポイントは米中両国が歩み寄りを行ったこと。トランプ大統領は中国に対して強硬な態度をとっていましたが、自国の主力産業であるiPhoneなどハイテクセクターへの影響が深刻と見たのか、早期引き下げに動きました。
トランプ大統領が示していた、各国が交渉したがっているという態度はむしろ反転し、自らが交渉をしなければならないことを示唆しているようにも見えます。一部の関税は課されるとしても、今後100%を超えるような法外な措置はとらないのではないでしょうか。
中国製品のアメリカ販売も関税をコストとして吸収する余地が?
古川俊太郎社長は5月8日の決算発表会にて、直近の需要の大きさに応えるべく、生産体制の強化を進めて販売促進に注力すると語りました。この発言からは、すでに計画を上回る販売数が見えてきます。
145%などという関税の影響を考慮した場合、中国製のニンテンドースイッチ2をアメリカで販売することなどとてもできません。しかし、30%程度に引き下げられるのであれば、任天堂が関税の上乗せ分を吸収する余地も出てくるのではないでしょうか。トヨタ自動車は自動車に課される25%の関税をコストとして吸収する意向を示しています。