「許諾のないゲーム実況・配信はすべて違法」 次の逮捕者を出さないために“配信者や視聴者はどうすべきか”【弁護士に聞いた】 | GameBusiness.jp

「許諾のないゲーム実況・配信はすべて違法」 次の逮捕者を出さないために“配信者や視聴者はどうすべきか”【弁護士に聞いた】

違法なゲーム配信による初逮捕者が出た事案について、著作権に詳しい中島博之弁護士に取材を実施。ゲーム文化の衰退をさせないためにも、配信者、視聴者が知っておくべきことや注意すべきことを聞きました。

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「許諾のないゲーム実況・配信はすべて違法」 次の逮捕者を出さないために“配信者や視聴者はどうすべきか”【弁護士に聞いた】
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違法なゲーム配信による初逮捕者が出た事案について、著作権に詳しい中島博之弁護士(弁護士法人東京フレックス法律事務所)に取材を実施。ゲーム文化の衰退をさせないためにも、そして逮捕者を出さないためにも、配信者、視聴者が知っておくべきことや、注意すべきことを聞きました。

――今回の逮捕者が出た事案について、率直な意見をお聞かせください。

中島博之氏(以下、中島):昨今、YouTubeなどの動画配信サイトでゲーム実況・配信の人気が高まる中、明らかにメーカーが許諾してないような違法な配信が増えており、今回のような逮捕に至ったことはやむを得ないことだと思います。

ここ数年で、漫画も含めた全ての著作物がダウンロード違法化の対象になったり、違法にアップロードされた著作物がある場所のリンクを集めたサイトを運営するリーチサイト規制が設けられたりと、著作物に関しては、厳しく取り締まろうという風潮になってきています。

「ファスト映画」問題と同様に、ゲーム内容を丸々ではなく、一部分をアップロードしたとしても、メーカーが許諾していない部分を投稿すれば、引用などの例外にあたらない限り、著作権法上は違法性が認められます。エンディングなど核心的な部分が含まれていれば、悪質性が高いと判断されるかもしれません。

――これまでも違法な配信はあったと思いますが、なぜいま逮捕者が出たのでしょうか。

中島:コンテンツを丸々アップするようなマンガや映画とは違い、ゲームの実況・配信というものは、長らくメーカー側が黙認をしてきたというのが大きな要因だと思います。

なぜ黙認してきたというと、ゲーム実況・配信を楽しんでいる多くの視聴者がいるということ。さらに実況・配信自体に、ゲームの宣伝・販促の効果があるといった理由があると思います。昨今ではメーカー側はガイドラインを設けることで、曖昧だった部分を明確にしています。

しかし、視聴回数を増やしたいがためか、ガイドラインを無視した悪質なものは日々増加しており、今回のような警察主体の取り締まりが行われたと考えられます。

――今回の事案は、違法性が高いものだったのでしょうか。

中島:そうですね。今回は“ゲーム実況”ではなく“ゲーム配信”に当たる行為なのですが、エンディング含めたノベルゲームの終盤(約1時間)の動画を投稿、配信していました。さらにはマルチエンディングの別バージョンも同様の形で配信していたので、警察側も違法性が高いと判断したのではと思います。

――このような逮捕事案が出たことで、今後は取り締まりが厳しくなり、さらに逮捕者が出てくる可能性もあるのでしょうか?

中島:先ほど述べたようにゲーム配信は、メーカー側が黙認してきたという経緯もあり、グレーな部分が多くありました。しかし、今回の逮捕事案第1号が出たことで、違法な配信ははっきりと違法・取締りの対象であると明らかになりました。そのため、メーカー側も刑事告発による逮捕という選択もしやすいようになったと思います。

実は私自身も、ゲームの実況・配信が好きでよく視聴するのですが、ガイドラインを遵守していない配信も少なくないと感じています。

映画であれば、「NO MORE 映画泥棒」のような啓発によって、映画のアップロードは違法だと認識している方が多いと思います。しかし、ゲームに関しては、実況・配信というのが世の中に溢れている状態なので、違法なことではないと認識している方が多いのではないでしょうか。

明確な悪意がなかったとしても、違法な配信をしないためには、メーカー側がゲームタイトルごとに設けている配信ガイドラインを守るということが大切です。

――ここ数年で実況・配信におけるガイドラインの整備が一気に進んだように思います。弁護士というお立場から、ゲーム実況・配信における法整備の現状や、課題と感じている部分があれば、教えてください。

中島:そもそも、著作物を無断でアップロードしてならないという著作権法は整備されているので、法律自体は全く問題がないと思います。

実は厳密にいうと、メーカーから許諾を得ていないゲーム実況・配信は、法律上は違法になります。しかし、メーカー側がガイドラインを設けることで、そこを見逃しているような状態なんです。

たとえば、任天堂さんのガイドラインを見ると、「ガイドラインを守る場合、著作権侵害を主張いたしません」と書いてありことがわかります。

これはつまり「配信してもいいですよ」という許諾を与えるということではなく、「ルールを守ってもらえれば、訴えませんよ」というニュアンスなわけです。著作権法という大前提があるからこそ、このような書き方になっていることを、配信者や視聴者の方は知っておくべきです。

このような事実が周知されていないというのが、ゲーム実況・配信における課題の1つだと考えています。

――このほかに、配信者側が注意すべき点はありますか?

中島:企業に所属しているストリーマーやVTuberの方であれば、コンプライアンスがしっかりしているので、配信ガイドラインを遵守するなどの管理は徹底して傾向にあると思います。

しかし、個人でやられている方の中には、ガイドラインをしっかり見てない可能性もあると思います。配信を考えている方は、事前にガイドラインをしっかりと確認しておく必要があります。コンテンツあってのゲーム配信であり、そのコンテンツを使わせてもらっている立場というのを忘れてはいけません。ガイドラインを無視するということは、コンテンツを破壊し、市場を衰退させているとの同義です。

違法な配信でゲームが売れなくなれば、当然次のゲームをつくる予算もありません。つくり手側がゲームを制作しなくなれば、ゲーム配信もできなくなるのです。ゲーム1つを制作するのに、様々な人が関わり、労力や時間をかけてつくられています。そういったゲームの裏側にあるものも知るということも大切かもしれません。

ゲームが好きだからこそ、ゲーム実況・配信をしている人がほとんどだと思うので、そんな人たちが、ゲーム文化を衰退させたいとは思っていないはずです。

――違法な配信に対して、視聴者側はどのように対処すべきでしょうか?

中島:何よりもまずは、ガイドラインを守っていない実況・配信は視聴しないということです。「ファスト映画」「漫画海賊版サイト」などの事案と同様に、「みんな見ているから」「見るだけなら悪くない」という考えは、コンテンツの衰退につながります。

例えば2021年には、マンガの違法な海賊版サイトの上位10サイトのアクセス数が月間4億PVを超すという未曾有の事態になりました。見ること自体は違法ではないので、無料で見られるなら見てしまおうという一人ひとりの行動が権利者の首を絞めるのです。やはり一人ひとりが「違法なものは視聴しない」という気持ちを持つことが重要です。

あとは、YouTubeなどは第三者として通報もできますので、明らかに違法なもの(ガイドラインを無視したもの)があったら通報するといった行動もよいと思います。

また、勘違いされやすいのですが、配信する側が収益を得ていないとしても、メーカー側が本来、お金を払わなければ見ることができない映像を公開されている損害があることには変わりありません。「収益化してないから著作物を配信してOK」というのは誤った認識です。

――大勢の人たちの意識を変えていくことはできるのでしょうか?

中島:簡単なことではないと思いますが、ファスト映画の事案をみても、逮捕者が出たという事件は、人々に意識に大きな影響を与えると思います。

ファスト映画が問題になる前は、動画のコメント欄を見ると「お金も時間も節約できて、ありがたい」「次はこの映画をアップしてください!」など、好意的な意見が多かったです。

しかし、ファスト映画の投稿者が逮捕され、有罪判決が出ると「ファスト映画は違法なもの」という認識が世間に広まると、あれだけ溢れていたファスト映画はどんどん減っていき、コメント欄にも「こんな違法なもの許されるのか」「映画に対する冒涜だ」というコメントがついていました。

このような事案が1つ出てくると、世間の価値観が変わっていくので、ゲームの実況・配信に関しても、今回の初逮捕をきかっけに変化が起きていくでしょう。

また、問題意識を風化させないためにも、今年3月に行われた文化庁のゲーム実況・配信に係る著作権セミナーのように、官民連携で継続して啓発をしていくことが重要だと思います。

《松田和真@Game*Spark》

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