ANYCOLORの作戦勝ちか?カバーに差をつけた戦略の真髄とは【ゲーム企業の決算を読む】 | GameBusiness.jp

ANYCOLORの作戦勝ちか?カバーに差をつけた戦略の真髄とは【ゲーム企業の決算を読む】

VTuberグループ「にじさんじ」を擁するANYCOLORの大躍進が留まるところを知りません。

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VTuberグループ「にじさんじ」を擁するANYCOLORの大躍進が留まるところを知りません。

2023年4月期の売上高は前期比78.9%増の253億4,100万円、営業利益は同124.5%増の94億1,000万円となりました。この数字は2023年4月期期首予想の上限だった売上高210億円を1.2倍、営業利益65億1,000万円を1.4倍も上回るものです。

2024年4月期は売上高を前期比30.2%増の330億円、営業利益を34.9%増の127億円と予想。ANYCOLORの株価は今年2月に5,000円を下回りましたが、6月に入って7,000円台まで回復しています。

2023年6月8日、グロース市場に上場してわずか1年で、プライム市場への市場区分変更もありました。最も期待のかかる新興企業の一つと見て間違いないでしょう。

タレント1人当たりの稼ぎはカバーが圧倒的

今回の決算発表で最も注目すべきポイントは、本業での稼ぎを表す営業利益の伸びでしょう。2022年4月期の営業利益率は29.6%でしたが、そこから1年で7.5ポイントも伸長。2024年4月が予想通り着地すると、営業利益率は38.5%まで伸びることになります。

※ANYCOLOR決算短信より

同じく「ホロライブ」などのVTuber事務所を運営するカバーの2023年3月期の営業利益率は16.7%で、大きな差があります。

カバーのVTuberの運営スタイルは、少数精鋭であることで知られています。カバーに所属するVTuber数は75(2023年3月末時点)、ANYCOLORは156(2023年4月末時点)で、2倍以上の開きがあります。

VTuber1人当たりの売上高にも大きな差が生じており、カバーは1人が年間2億7,300万円稼ぎます(年間の売上高を所属タレント数で割った単純計算)。その一方で、ANYCOLORは1億6,200万円。1億円以上の差がついています。

カバーの方が効率よく稼いでいるように見えますが、利益率にこれだけの差が生じているのはなぜでしょうか?

軸をずらして市場拡大を進めるANYCOLOR

その答えを見る前に、ANYCOLORがどのようにして業績を伸ばしているのかを確認しましょう。

2023年4月期において、収益貢献が特に高かったのは「NIJISANJI EN」です。「にじさんじ」の売上高は前期比45.1%増の184億500万円でしたが、「NIJISANJI EN」は同468.3%増の64億400万円に跳ね上がりました。

※ANYCOLOR決算説明資料より

ANYCOLORの業績拡大で「NIJISANJI EN」が伸びていることは、極めて重要な意味を持ちます。「NIJISANJI EN」はVTuberが主に英語を用いて活動することが「にじさんじ」との最大の違いで、海外でも国内でも人気があります。

ANYCOLORは日本語から外国語に軸をずらすことにより、VTuber市場そのものの開拓を進めました。ANYCOLORはシェアやマーケットの拡大に注力しているのです。

もともと「にじさんじ」は芸能事務所のような特色があり、多数所属するVTuberそれぞれの個性を生かした配信を行っています。「にじさんじ麻雀杯」などはその典型的な例でしょう。ANYCOLORは個性的なVTuberを数多く集めていたため、麻雀好きなどのニッチ層にもリーチすることができます。事業の性質が市場の拡大に向いているのです。

「NIJISANJI EN」は「にじさんじ」で蓄積したノウハウが、外国語というフィールドで再現性を持って事業展開できるのか、という実験的な要素が強かったものと考えられます。それが見事成功したことにより、ANYCOLORの中期的な業績の伸びは、ある程度約束されたものだと言えるかもしれません。

その一方で、アイドル事務所という毛色が強い「ホロライブ」のファンは、音楽好き、アイドル好きにある程度限定されます。それが2社の決定的な違いです。

ファンの固定化を防ぐ巧みな戦術

それでは、その違いが数字にどのように表れるのでしょうか。


《不破聡》

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