憎しみだけではなく、その裏にある愛情も感じてほしい―『The Last of Us Part II』エリー役・潘めぐみさんインタビュー | GameBusiness.jp

憎しみだけではなく、その裏にある愛情も感じてほしい―『The Last of Us Part II』エリー役・潘めぐみさんインタビュー

「憎しみ」一辺倒ではなくて、ジョエルや恋人との「幸せ」がまず前提にある物語。エリー役・潘めぐみさんは本作についてそう語ります。

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憎しみだけではなく、その裏にある愛情も感じてほしい―『The Last of Us Part II』エリー役・潘めぐみさんインタビュー
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2020年6月19日に、ソニー・インタラクティブエンタテインメントより発売された『The Last of Us Part II(ラストオブアス パートII)』。すでに報じられている通り、事前のメディアレビューではかなりの高評価を得ており、期待されている方も多いと思われます。

そんな本作を、「日本語」でプレイされる方々にとって、ひとつ大きな要素となりうるのが「吹き替え音声」。前作『The Last of Us(ラストオブアス)』でも吹き替え音声の評価は高く、映画的なカットシーンや重厚な物語を、より親しみやすい形で楽しむことができました。そのため、本作も吹き替えでプレイするという方は少なからずいるでしょう。

エリー役・潘めぐみさん

今回は、主人公・エリーの日本語吹き替えを前作から引き続き担当された潘めぐみさんへインタビュー。前作の振り返りから、19歳になったエリーの演じ方などを中心にお話を伺いました。

<聞き手:Takuya Suenaga>
<執筆:文章書く彦>

――本日はよろしくお願いいたします。まずは前作『The Last of Us(ラストオブアス)』の振り返りをお聞きしていければと思います。前作を担当されたのは、まだデビュー間もない頃でしたよね。

潘めぐみさん(以下、潘)そうですね。オーディションを経て、エリー役を担当させていただくことになったのですが、当時はゲームの吹き替えそのものがはじめての経験でした。なので「吹き替えのゲームをどうやって収録しているのか」というところからのスタートでした。原語版のオリジナルのエリーである(声優だけでなく、モーションもされているため)アシュレー・ションソンさんの音声の波形に合わせて収録するという形だったのですが、お芝居の経験もまだ浅い中、それだけではなく実務的なスキルも必要だったので、毎日のようにスタジオに通って手取り足取り教えて頂いたという思い出があります。

――オーディションの結果はスムーズに決まったんですか?

何人か候補の方がいらっしゃる中で、実際にゲームの映像とPVに当てはめていくスタジオオーディションだったのですが、どれくらいの時間がかかって自分がエリーに選ばれたかということは知らされていませんでした。ただ、一つエピソードがあって、役が決まったあと家で原語版の映像を見ながら練習していたら、当時同居していた母が「あんた何で英語喋ってるの!?」って居間からびっくりして飛んできて(笑)。だからきっと、ボイスマッチといいますか、原語版と声が似ている人が選ばれているのかな?とも思いましたね。

『The Last of Us Remastered』ローンチトレーラー

――『The Last of Us』は、写実的で映画的なゲームですが、アニメ的な表現のゲームと演技が変化したりはしますか?

本当に実写のようなので、表現としてデフォルメする必要がないというのはあります。表現を盛る必要がないというのは一つ大きな違いですよね。

あとは、吹き替えのゲームなので、原語版の情報がすでにあるわけです。そこを活かしたうえでどのように日本語の感情を乗せるのか、というのがすごくチャレンジングなことでした。吹き替えではないタイトルの作品だと、キャラクターを自分がイチから作り上げることが多いのではないかなと。

我々がゲームの吹き替えを収録している方法というのは原語版の音声が流れたあとに、もう一度同じ音声が流れて、それと同時に私達が喋る、という方法なんです。だから演技を判断する材料が一瞬前に流れた原語版の音声しか存在しないんですよ。もちろん台本にも細かいシチュエーションや場所、お芝居の流れは明記されてるんですが、いったいエリーがどういう感情で、どういう表情をしているのかというのはアシュレーさんの原語版の音声情報だけなので……。それを如何に日本語にするのかというのを瞬時に判断しなければならないので、想像力と瞬発力と経験を一瞬で試されます。それはキャラクターを一から作るというのとはまた違う経験ですね。

――前作でエリーを演じられてから、洋画の吹き替えを担当されることも増えましたね。

増えましたね!今バランスよくお仕事させていただいているのは前作のおかげかと思ってます。

――ご自身的にもターニングポイントになった作品の一つなのではないでしょうか。

そうですね。間違いなく(今の仕事に)影響しています。

――前作で14歳のエリーという少女を演じるにあたって、当時はどのような心構えで望みましたか?

自分が周りと違った特別な抗体を持っているというのは、彼女が望んでそうなったわけではない不本意な状況だったんだと思います……。エリーというのは自由奔放でわがままでぶっきらぼうだし口も悪いし、大人からしたら扱いづらい存在だと思うのですが、この特別な抗体のせいで周りに振り回されてきたこれまでがあってそうなっているんだと思います。だから、そうした部分で、彼女自身何か一つでも「信じられる存在」が欲しかったんじゃないか、なにか「希望」を信じたかったんじゃないかと思うんです。

そして、ジョエルと出会ったことで彼女自身、物語の中で変わっていく。それは彼女の成長でもあると思うんですが、「本来の、14歳としての彼女を取り戻していく」過程だったとも思うんです。物語の最後、ジョエルと親子のような絆を築いた彼女こそが本来のエリーなのではなかろうか、と考えながら演じてました。

『The Last of Us Remastered』より

――ちなみに、前作はプレイされましたか?

はい!ただ、当時は家にプレイステーション2までしか持っていなくて、さらに自分のゲームをやっていた全盛期が小学生の頃の「スーファミ」だったんですよね。ゲームのブランクがあったせいで、自分ではうまくプレイできなくて……。ほとんど友人や先輩に頼んでプレイしているのを傍らで見させてもらっていました。それでも最後までちゃんと見届けましたよ!

――前作の物語を見届けて、どのような感想を持たれましたか。

前作の最後のほうの話になってしまうんですが、エリーの抗体からワクチンを作ることができれば多くの人を救うことができたかもしれない、だけどジョエルの選択があって今回の『パートII』につながるわけなのですが……。その選択はエリーにとっては本意ではなかったんだろうな、という……。だけどジョエルはそうしたかったわけじゃないですか。

「多くを救うか、一人を救うか」という選択には、すごく考えさせられるものもありましたし、物語として「ジョエルの答え」は提示されましたが、この先2人がどうなっていくんだろう、というのは、プレイヤーひとりひとりの考えに寄ってくると思います。だから「ジョエルの答え」だけが全てではない、という、想像の余地がある作品だと感じました。

――私も当時プレイしていて「本当にこれでいいのかな?」と思いましたね。

その答えを作品側が決めてくれないところがニクいところですよね。

――その結末から、ゲーム内では5年、我々の世界では7年の歳月が経過しました。今再びエリーを演じるにあたって、演じ方はどのように変化しましたか?

ゼロからのスタートではなかった、ということは言えると思います。ゼロからキャラクターを作るのではなく前作から地続きのキャラクターなので。年齢を重ねたということや、声のトーンが変わったということはもちろんありますが、あまり硬く捉えずにすんなり入っていけたかなと思っています。原語版の波形に合わせる作業的な部分でも、ブランクがあったにもかかわらず不思議とスムーズに呼吸感がフィットしていく感覚がありました。

――初めて『パートII』のエリーを見た時に、どのような印象を持ちましたか?

より過酷を極めているなとは思いましたね。「一体なにがあったのか」最終的なところは、収録を始めた時点ではまだ明かされていなかったんですが、きっと復讐のためにこの物語が描かれているんだろうなというのは想像がつきました。その後、ジャクソンで日常を過ごすエリーの雰囲気を見ていると、あどけなかった14歳のエリーからは一転して落ち着きのある表情が見られることが多くなってきたな、と思いましたね。

物語開始までに過ごしたジャクソンでの5年間がエリーにもたらした「幸せ」。それがこの物語の根源にあると思います。だから「憎しみ」一辺倒ではなくて、ジョエルや恋人との「幸せ」がまず前提にある物語なんだよ、ということを最初にお伝えしたいです。

「憎しみ」だけだと本当にプレイしていくのが過酷だと思います。「愛憎」という言葉があるように、大切な誰かがいるからこそ「憎しみ」が生まれる、というのは今回のエリーの気持ちの根源ではないでしょうか。そういう、幸福を感じるような存在がエリーにも見つかったんだな、ということがまず物語の大きなポイントかとも思います。


――『パートII』のエリーを演じるにあたって、どのようなことを意識されていたのでしょうか。

19歳のエリーは、14歳のころよりも不器用です(笑)。14歳なりにも素直になれない部分とか不器用な部分は、前作をプレイなされた皆さんならおわかりかとは思いますが、今回のエリーは、器用になったかと言えばそうではないです。逆に、彼女の中で溜め込む、といいますか、溜め込んだことで歪んでいきます。その「歪み」を自分の中では大きいテーマとして演じていましたね。

愛情が素直に表現できないという「歪み」もありますし、前作のジョエルの選択に対しても「ジョエルを信じたいが、選択としては不本意だった」ということをずっと抱えているので、それに対しての「歪み」でもある。そして、いろんな大人たちと過ごしてきたなかで生まれた「歪み」もある……。鬱屈した、というか端的に言えば「こじらせてる」ということことなんですけど(笑)。

年齢を重ねていくと親に素直になれない、とか、感謝を伝えられないという「こじらせ」ということなら、皆さんにもわかっていただけるんじゃないかと思います。彼女自身もその「歪み」に気づいてはいるんですが、自分の気持ちも押し通したいという、矛盾した感情が同居しているのが『パートII』のエリーなので、演じていて苦しくなることもありました。


――お話を聞いていて、程度の差はあれど、自分にもそういう時期があったな、と思いました。

ですよね。しかもエリーの場合は本当の親ではない、しかしある意味では家族よりも強い絆で繋がったジョエルという存在に対してなので……。あとはそのジョエルの弟であるトミーであったりとか、ジャクソンでの他の人たちと「血がつながってない」という部分での関係性の溝というのが、今回エリーの「歪み」に繋がっているんじゃないかなと私は思っています。

――血縁関係に対する「こじらせ」より複雑な感情になりそうな印象がありますね。すでに潘さんは物語を最後まで読まれていると思いますが、『パートII』の物語について、どう感じました?

物語を通してでいうと……本当に過酷を極めるものなんですが、その過酷さの裏側に、人のぬくもりとか愛情というものをより強く感じましたね。辛いというよりは「悲しい」とも感じました。自分ではどうすることもできなかった無力感とか、力の無さを痛感する物語でしたし、あらためてエリーとジョエルの強い絆も今作で感じることができました。

『パートII』のエリーを見ていると、前作のジョエルを見ているような感覚になってくるんですよね。重なって見えてくる。大切なものを奪われてしまった、という2人の共通点をすごく感じます。だけど、前作のジョエルのようなことを決して繰り返さないというか、物語として同じことを繰り返さないというのも感じました。物語の結末も「ああ『The Last of Us』だな……」というふうに、前作と本作を通して感じられるものになっていると思います。

――ある意味父親的な存在であるジョエルに対してどういうような感情を持って演じてるのかお聞きできますでしょうか。

私自身、エリーと重なる部分が多くあって、彼女もきっと同じだったんじゃないかと勝手に思っていて(笑)。エリーにはお母さんがいましたし、私自身も母の愛情をもらって生きてきたので。うちでいうところの母は、父と母を兼ね備えた強い母なのですが、母に抱く想いは、エリーのジョエルに対する想いと重なる部分はすごくありましたね。

愛おしい部分であったり、反発してしまう部分であったり、素直になりきれない部分であったりとか、自分と重ねて考えたりもしました。年頃になると親への思いって素直に伝えられなくなってくるじゃないですか。「なんで?」というような疑問も大人になるとあえて尋ねたりせず、自分で抱えて消化を待つようになったりもするじゃないですか。そういう誰にも言えない、自分の中で消化していくものというのが、エリーにもきっとあったはずで、私にもそういう感情があったので、そういう自分の感情を注ぎ込んで演じた部分は多少なりともあったかもしれません。


――ジョエルもエリーもお互い不器用ですよね。

どっちかっていうとジョエルの方が愛情を伝える術は知っていますよね。元々は一人の親ですから。愛情を伝えるという一点においてはジョエルのほうがエリーよりも経験があるので、ジョエルがエリーに優しくするべきだと思います(笑)。

実際にジョエルもエリーに愛情を与えてはくれるんですが、エリーにとっても譲歩できないものがあったりもする。っていうのも、親子関係に置き換えてすごく共感できる部分だなと思いました。ジョエルと2人きりでなく、ほかの登場人物がいたからこそ救われた部分もエリーにはあると思っています。私自身、母とずっと2人だったけど、2人だけじゃない時間があったから、お互いのことを他の人から聞くみたいな形で受け取ることが多くありました。エリーもきっとそうだったと思うんですよ。2人だったからこそ分かることもあっただろうけど、2人以外の誰かと共にする時間があったことで、お互いの理解が深まったんじゃないかなと思います。

――ここまでお話を聞いていて改めて思いましたが、エリー、ハマり役ですね!私自身も、前作は吹き替えでプレイしていて、ぴったりだなと思っていたんですが、よりそう思うようになりました。

ありがとうございます、役者冥利に尽きます。

――エリー以外にも、他作品で様々なキャラクターを演じてきましたが、潘さんにとってエリーという役はどのような立ち位置にありますか?

出会いがデビュー当初からなので、イコール芸歴といっても過言ではない存在です。だから本当に、いろんなことを『The Last of Us』の現場で教えて頂きました、この仕事を続けていくうえでの大切なことをたくさん教わった現場だったので、きっとこれからも役者人生の上で影響をもたらしてくれる作品になると前作当時から思っていました。今でこそ吹き替えのお仕事とアニメーションのお仕事をバランスよくさせていただいているのですが、役への起用要因が『ラストオブアス』だったりもするんですよね。本当に糧になってますし、影響をもたらしてくれています。

今また演じさせていただく機会があったことに関していいますと、もう本当に「一生モノだな」と。こういうご時世ですし、なかなか何か一つのことを続けていくことって大変だと思うんですが、こうやって『パートII』が出るということはありがたいことですし、あの頃の仕事が今の私を凄い支えていることも実感できる、本当に本作に出会えてよかったなと思います。

もし今後、続編が出なかったとしても、私にとってかけがえのない作品です。これからの続編がもし出るならもっともっとハードルが上がっていっちゃうでしょうけど、演じ手としては彼女の一生を演じてみたいなとすごく強く思います。

――私以外のゲーマーにとっても、「エリーは潘さんじゃないと」ということにもうなっていると思います。

ハードルが上がっていきますね(笑)。ありがたいです!

――それでは最後に、楽しみにしてる原作ファンに一言いただければと思います。

大変長らくお待たせしてしまったと思いますが、この世界情勢の中でこれだけのものを世界中の皆様にお届けできるというのは本当に嬉しいです。今回、シナリオも映像もすべて待っていただけただけの甲斐のある、申し分のない内容になっていますから、前作をプレイしていただいた方であっても納得がいくだろうと思います。

今回から遊んでいた方に関しては、ここから始めるとより過酷でしょう(笑)。もちろん今作から遊んでいただけてもそれはありがたいですが、今作の物語の裏には「憎しみだけではなく愛情がある」ということを、できれば前作からプレイして感じていただければ嬉しいです。どっちをとっても片方で完結している作品だからこそ続けてプレイしていただきたいものになっています。どうか最後の最後まで、この前作から続く物語の結末を、楽しんでいただければと思います。

前作未プレイの方は、出ている情報だけだと感染者たちだけが敵だと思うかもしれないんですが、決してそうではなくて、我々人同士の話でもあります。プレイヤーの皆さんには現実とかけ離れたものとしてではなく、身近なものとして、『The Last of Us』の世界で生きている人々の人生を一緒に歩んでいっていただけたらなと思います。

――ありがとうございました!
《文章書く彦/Game*Spark編集部@Game*Spark》

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