
小学生の子どもたちが作り上げたゲームが遊べる「ジュニアゲームショー 2026」が8月30日、大阪・弁天町の港区民センターにて開催されました。

本イベントは「探究塾ぱ~ぱす」が主催し、『マリオカート』シリーズなどを手がけたゲームクリエイター・木村眞人氏が講師となって、小学生を対象にゲーム開発を教える「ゲームクリエイター探究講座」の成果発表となる機会です。
本稿ではそんなユニークなイベントの模様と、任天堂で約35年に渡る開発キャリアを生かしてイベントを支える木村氏へのインタビューをお届けします。
小学生がScratchで開発した力作を展示
ジュニアゲームショーの名の通り、会場でゲームを出展しているのはいずれも講座を受講している小学生。会場内には長机と椅子が配され、さながらインディーゲーム展示会のように児童の力作が所狭しと並びました。

ゲームの開発には、ブロックを繋ぎ合わせることで視覚的にプログラミングが可能な環境「Scratch」が用いられており、開場前にはタブレットやノートPCにおいて“最終調整”に勤しむ姿も見られました。

入場は無料で、保護者の参加も多く会場は常に満員です。
参加者同士でお互いのゲームをプレイしあう光景や、自らゲームの内容を紹介しながら感想に耳を傾ける姿も見られ、子どもたちもすっかりクリエイターの顔つきに。

作品は長いものでも2か月ほどの短期間制作とのことで、低学年の児童が手がけた微笑ましい作品から、ビジュアルまでこだわって作られたであろう歯ごたえのあるアクションゲームまでバリエーションはさまざま。
数か月の講座だけで作品を完成させるクリエイティブ能力に驚かされつつ、歓声や笑い声、そして遊び疲れたのか眠ってしまった小さな子も見られるなど、子ども離れしたクオリティと子どもらしいエネルギーのどちらをも内包した、エネルギーに満ち溢れたイベントとなっていました。

講師を務める木村眞人氏にインタビュー!
ここからは「ゲームクリエイター探究講座」の講師であり、会場でも受講生たちを見守っていた木村氏へのインタビューをお届け。任天堂でのゲーム開発を経て、小学生への指導に尽力する背景やモチベーションについて聞きました。
――本日はよろしくお願いいたします。最初に、簡単な自己紹介をお願いします。
木村氏:木村眞人です。2025年まで、任天堂で35年間ゲーム開発に携わっていました。プログラマーとして入社して、最初に関わったタイトルはスーパーファミコンの『F-ZERO』です。その後に、同じくスーパーファミコンの『スーパーマリオカート』も担当しました。
――『マリオカート』シリーズでは、最新作の『マリオカート ワールド』までスペシャルサンクスとしてクレジットされています。他にもさまざまなタイトルをサポートされてこられたのでしょうか?
木村氏:プラットフォームがゲームキューブに移ったあたりから年次が上がったこともあり、開発環境のサポートをするマネージャーが主な担当となりました。他にも実験的なプログラムをテストするなど、色々な領域で仕事をしていました。
――退社されてからは、このイベントに取り組まれているのですね。
木村氏:そうですね。フリーになってからは「自分で好きな仕事を見つけてやりたい」と思い、自分が35年続けてきたゲーム開発の経験を元に、子どもたちにクリエイティブの面白さを伝える方法はないかと模索していました。
そこで様々な習い事を企画している「探究塾ぱ~ぱす」と出会い、今よりももう少し小規模なゲーム開発講座のメンター役を務めるところからスタートしました。
段々「もっとしっかりゲーム作りを伝えたいね」と思うようになり、小学生でも取っ付きやすいScratchを用いて、単にプログラミングを教えるだけではなく「ゲームを作るとはどういうことなのか」を伝えるプロジェクトとして始まったのがこの「ゲームクリエイター探究講座」です。

――「ジュニアゲームショー」はその成果発表の場で、大阪の会場で展示されている以外にもオンラインで参加されている方もいらっしゃるんですね。
木村氏:オンラインでは北海道から沖縄の方まで参加されていますね。この講座は小学校低学年のあまり経験がない子が対象の「初級」と、ある程度のプログラムが可能な子が参加する「中級」に分かれているのですが、今回は初級で40作品以上、中級では約100作品が展示されています。
――かなりの参加者数ですね。会場の展示作品も拝見しましたが、想像以上に小学校低学年くらいの方が多く、しかもしっかりした作品を作られていました。Scratchを使っているとはいえ、1年生か2年生でひとつの作品を完成まで辿り着けるというのは驚かされました。
木村氏:講座の中である程度の枠組みやアプローチは手を替え品を替え教えていますが、それで基礎ができれば、あとは子どもたちは自分の興味の対象を突き詰めようとし始めます。
自分の中で好きなものをどうゲームにして、それで色々な人を楽しませることを目的に、完成まで走り切れるようサポートしてきました。


――現代は小学校でプログラミング教育も行われる時代になり、彼らにとってはプログラミングも身近な存在になっているのかなとも感じます。直接関わられている木村さんの目線では、今の小学生くらいの子どもたちにどのような変化・特徴を感じられていますか?
木村氏:強烈に感じるのは「自分の周りに与えられて消費するものがとても多い」ことです。YouTubeといった動画コンテンツもそうですし、スマホでも簡単に無料でゲームができますよね。私がゲーム開発を始めた時にはインターネットすらなくて、スタッフで話し合いながらゲームを作っていたんですけれどね(笑)。
――ものすごいギャップですね(笑)。
木村氏:ただ、そういった「見るだけ」「タップするだけ」で簡単にあらゆるものがインプットできる時代になっているからこそ、いざScratchでゲームを作るとなると自分たちで何かを作り出すアウトプットの経験は足りていないと思うんです。
何も揃っていないところから自分でアウトプットをして、その成果物が色々な人に遊んでもらえて影響を与える。という経験を生み出すことが、この「ゲームクリエイター探究講座」の目的のひとつになっています。
――今は「学校の宿題もAIに質問すれば簡単に解決できてしまって……」という話題も聞かれますし、アウトプットの機会は一層貴重になっているようです。ただ、今回のゲームショーで並んでいる作品を見ると「あのゲームを意識したんだな」「鉄道が好きなのかな」と、それぞれの個性となるフックが感じられて、やっぱりチャンスがあれば創造性が発揮されるのだなと思わされました。
木村氏:ですよね。ゲーム作りをずっとやっていた私から見ても「おっ、これは斬新やな」「この視点はプロからはちょっと出ぇへんわ」みたいなアイデアが出てきていて、今回に限らず子どもたちとお付き合いしていると「やっぱり子どものクリエイティブの種・発想力は馬鹿にできないな」と感じさせられます。
この講座の中でも自由な発想を求めることは何回も何回も伝えてきていて、段々「自由にやっていいんだ」と思えることで、それが生まれてくるんだと思います。
――吸収力もすごいですね。
木村氏:講座の中では教材をベースにして「これを自分たちでもうちょっと面白く作り変えてみて」という宿題を出すんですが、やっぱり面白いアイデアを取り入れてくる子はいっぱい居るんですよね。
私はクリエイティブに関しては「放っておいてもクリエイティブをやる人」と、そうでない人の2種類があると思っているんですが、こういう講座に興味を持ってくれる子はやっぱり前者が多くて、そういう子たちが宿題も面白く仕上げてきてくれる印象です。
宿題を出した次の講座では「こんなユニークな発想があったよ」と全員の前で紹介していて、それを見てまた他の子たちも作り方やアイデア、発想の仕方について吸収していってくれたんじゃないかなと。

――ゲーム開発全般に話題を広げますと、それこそ木村さんが『スーパーマリオカート』を作られていた頃は容量も技術も"制限の時代”でしたが、今は想像したものはほぼすべて表現できる環境へと進歩しています。ただ、一方で先ほどもあったようにインプットされるコンテンツが膨大にあるからこそ、多少技術的に優れているだけでは関心を得られなくなりつつありますよね。
木村氏:その方面で人を驚かせるのは難しくなっていますね。
――短い時間で楽しめる内容が求められている時代とも言われており、再び「制限がある中で面白さを追求する」という、かつてのゲーム作りに回帰していくのではないかと考えているのですが、木村さんの視点ではいかがですか?
木村氏:そうですね。例えばフォトリアルな映像を突き詰める人もいるでしょうし、それはそれで良いものが生まれることもあると思います。ただ、結局いざ作るとなったら「こう動かしたらこう面白い」というプリミティブな発想の部分が重要になるのは変わらないでしょう。
この講座で子どもたちが作っているゲームもその一番シンプルなところで、僕らがファミコンで作っていた頃と同じなんです。市販のゲームからすると大したことはなくとも、自分の思う「こう動かしたらこう面白い」が形になったゲームを作り上げた経験は、成功体験のようなものとして積み重なっていきます。
プログラムを書いてみたら絵が動いて、仕組みやルールを考えて……という「ゲーム作りの過程」そのものがすごく面白いですし、それがゲームの面白さにも繋がっていくと思います。
今回、この講座に参加してくれたメンバーの中から「ずっとゲーム作りたいな」と思う子も何人か出てくるでしょう。シンプルな構造の中で何が面白いかを突き詰められていく過程ができていれば、それをきっかけにどんどん伸びていく感じがしていますし、いずれ新しいクリエイティブや面白さを発見してくれる子が出てきてくれたら面白いなと思って、眺めています。
――冒頭でも「自分で好きな仕事を」という話題がありましたが、やはりこういったゲーム作りとその面白さの継承が木村さんが今やりたいことなのでしょうか。
木村氏:「ゲームクリエイター探究講座」とは言いつつも、別にゲームクリエイターを量産したいと思って取り組んでいる訳ではないんです。単に私がゲームを作っていたからそれを手段としているだけで、子どもたちとこういうことをしたい理由のもうひとつは、やっぱり日本の将来は彼らにかかっているからなんです。
その中で、モノを作ったり創造したりできる側の人間に、一人でも多くなってほしいなと思って、私がゲーム作りで出会ってきた色々な教訓やモノづくりに対する考え方を伝えています。それが発揮されるのはゲームでも別のものでも良いので、この講座のゲーム作りや人を笑顔にできた体験を通じて人間的に成長してほしいというのが、任天堂を退職した後、子どもたちに教えている一番の理由です。
――あくまでゲームはフックで、この体験を通じて絵を描いても良いですし、音楽の道に進んでも良い。ということなんですね。
木村氏:私と探究塾ぱ~ぱす代表で作り上げてきた講座で大事にしているのが、アウトプットなんです。作りっぱなしだと、どうしても自分の中で妥協してしまうじゃないですか。なのでちゃんと締め切りを決めて、発表会があって、その発表会では見ず知らずの人に自分のゲームをプレゼンして、フィードバックをもらう。
期日までに仕上げて世間に問う、というループや流れは、私がプロとしてゲーム開発をしていた時とそんなに変わらないんですよ。前回もこの流れがあることで生徒さんの成長度はすごく感じ取れたので、これはもっともっと広げていきたいなと思っています。

――「放っておいてもクリエイティブをする」話もありましたが、中には指導が終わった後にも自分でブラッシュアップする生徒さんも多そうです。そういった湧き出るクリエイティブを育てていきたいということなんですね。
木村氏:そうですね。講座も今は初級と中級とがありますが、次はもっと高度な上級クラスも作る予定です。今は基本的にひとりで作っていますが、上級では企画やグループワークで他者と接触しながら作っていく体験も取り入れていきます。そういう(他者との)経験は、将来誰もがしていくものなので、ゲーム作りもさらに段階を上げてやりたいなと。
そうしていろんなステージを作っていく中で、将来的には参加した子どもたちが成長してこのムーブメントをもっと広げる側に回ってくれたら、というのが私と探究塾ぱ~ぱす代表の野望なんです。実際にすごく期待を持たせてくれる生徒もいて、将来を楽しみにしています。
――将来が楽しみですね。
木村氏:大きなことは言えませんが、そういう人がもっと増えてきたら、日本はちょっと良くなるんじゃないでしょうか(笑)。それが野望であり、今後の展望でもありますね。
――興味深いお話がお聞きできました。ありがとうございました!
木村氏が講師を務め、探究塾ぱ~ぱすが運営する「ゲームクリエイター探究講座」は、次回以降も規模を拡大しながら開催予定。全国からオンラインでの参加が可能なので、ゲーム開発に興味がある児童にとって貴重な機会になるでしょう。
関連イベントとして、9月14日・9月19日には木村氏による特別講演「世界を夢中にさせる“面白さ”は、どうやって生まれる?」も予定されています。こちらはZoomにて全国からオンラインで参加可能なので、興味のある方は公式LINEから申請してみてくださいね。









