1週間の気になる生成AI技術・研究をいくつかピックアップして解説する連載「生成AIウィークリー」から、特に興味深いAI技術や研究にスポットライトを当てる生成AIクローズアップ。
今回は、先日発表されたOpenAIの動画生成AI「Sora 2」を悪用する動きと、OpenAIのサム・アルトマンCEOが著作権に関した今後の変更方針を言及した内容を取り上げます。
Sora 2が公開されて以来、「本物と見分けがつかない」という驚異的な精度により、創造的な表現を楽しむユーザーが急増しています。一方で現在、ソーシャルメディア上で憂慮すべき事態が進行しています。
Sora 2で生成した動画を、AIによる作品であることを明記せずにTikTokなどのプラットフォームに投稿し、大量の視聴回数やエンゲージメントを獲得するアカウントが出現しているのです。

▲赤ちゃんと猫が戯れる動画を複数投稿しているTikTokアカウント
事例として、赤ちゃんと猫が戯れる短い動画を多数投稿しているTikTokアカウントがあります。1日前に開設されたこのアカウントは、執筆時点で16本の動画を公開し、8001人のフォロワーと48万1300件のいいねを獲得しています。これらすべてがSora 2で生成されたコンテンツであるにもかかわらず、AI生成であることの表記は一切ありません。むしろ、「#ホームビデオ」というハッシュタグを掲載しています。
コメント欄を分析すると、ユーザーの大半が、これらの動画がAIによって生成されたものだと認識していません。Sora 2の技術的な完成度の高さゆえに、多くの人が疑いもなく「本物の映像」として受け入れています。
本来、Sora 2で生成された動画にはウォーターマークが自動的に付与される仕組みになっています。このマークは、コンテンツがAI生成であることを明示し、透明性を確保するための機能です。現に上記アカウントの動画にもウォーターマークは付与されています。
一方で、Sora 2のウォーターマークを除去するWebサービスが早くも登場しています。試してみましたが、ブラウザ上で数分のうちに除去が完了しました。
現在のSora 2はアニメキャラクターなどの著作権に引っかかるであろう二次創作も可能にしています。つまり非実在だけでなく、既存キャラクターや人物の動画も生成可能であり、投稿もあっさりできる状況です。このような状況の中で、SNSプラットフォーム側も対応を検討していると考えられます。
OpenAIのサム・アルトマンCEOが著作権に関して今後の変更方針を言及
こうした状況の中、アルトマン氏がユーザーからのフィードバックや権利者の意見を積極的に収集し、サービスの改善に向けて2つの変更を実施することをブログで発表しました。
第一に、ユーザーが著作権に触れる動画を生成した際に、権利者がキャラクターの使用方法をより細かく制御できる機能を導入します。権利者は自身のキャラクターの利用範囲を自由に設定でき、使用を完全に禁止することも可能です。
第二に、新たな収益分配モデルを構築します。ユーザーが著作権に関わるコンテンツを含む動画を生成した際、発生する収益の一部を権利者に還元する仕組みです。これにより、権利者は使用を許可することで新たな収益源を得られる可能性が生まれます。
アルトマン氏は今回の発表の中で「特に、日本の素晴らしい創造力に感謝したいと思います。ユーザーと日本のコンテンツのつながりの深さに驚かされます」と述べ、日本ユーザーへの敬意を示しました。最初は野放しだった日本のコンテンツでも一部生成ができなくなったものがあります。