『Pokémon Trading Card Game Pocket（ポケポケ）』の大ヒットでディー・エヌ・エーの業績が急伸しました。
2025年3月期（2024年4月1日～2025年3月31日）の営業利益は289億円となり、前期の282億円の赤字から一転。営業利益率は17.7%で、2019年3月期以来の高水準となりました。ゲーム事業のセグメント利益は前期の11.2倍という急伸ぶり。これまでの停滞感を払拭しています。
一方で成長が期待されていた「Pococha」のライブストリーミング事業や、ヘルスケア・メディカル事業の停滞感が鮮明に。ヘルスケア・メディカル事業は減損損失を計上しました。
2025年1-3月もモバイルゲーム収益トップの『ポケポケ』
2025年3月期の連結売上収益は前期比19.9%増の1,639億円でした。
ディー・エヌ・エーはコロナ禍の巣ごもり特需の影響により、2021年3月期にライブストリーミング事業の売上が前期の2.6倍に増加。会社の成長をけん引し、12.9％の増収となっていました。しかし、2022年3月期はその反動で減収。2023年3月期、2024年3月期はほぼ横ばいで推移しており、勢いを失っていました。
『ポケポケ』のヒットでそれを払拭しています。
『ポケポケ』は2024年10月30日にリリース。2025年2月27日に1億ダウンロードを突破しています。Sensor Towerによると、『ポケポケ』のダウンロード数のシェアは日本が18％。幅広い国でダウンロードされている一方、収益シェアは日本が41％となりました。2位のアメリカとは2倍近い差があります。世界中でヒットしているゲームですが、収益性のカギは日本が握っています。
同じくSensor Towerによる調査では、2025年1-3月の日本のモバイルゲーム収益のトップは1億ドル以上を売り上げた『ポケポケ』で、僅差で2位となったのが『モンスターストライク（モンスト）』でした。日本の『ポケポケ』人気の勢いは続いており、『モンスト』で安定的な収益性を確保するMIXIと同じく、ディー・エヌ・エーの中長期的な収益基盤となると見て間違いないでしょう。
ただし、ディー・エヌ・エーは今期の業績予想の開示は行っていません。
停滞感が鮮明になった「Pococha」と「IRIAM」
ゲーム事業の売上収益は前期比44.6%増の780億円、営業利益は11.2倍の385億円でした。『ポケポケ』リリース後の3Q（2024年10月1日～2024年12月31日）から売上が急増。前年同期間比で2.2倍、前四半期比で2.5倍となっています。3Q単体のセグメント利益は186億円ですが、これは『ポケポケ』リリース前のゲーム事業における四半期単体の”売上”を上回る数字です。
ディー・エヌ・エーはゲーム事業において、リリース後の施策の積み上げにより、ユーザーの熱量や継続性を高め、年数を経ても売上を維持・伸長した実績を持っていることを強調しました。特に『ポケポケ』は新拡張パックの追加による、中長期的な収益性の維持を図りやすいゲームという特徴があります。ディー・エヌ・エーは金脈を掘り当てたと言えるでしょう。
しかし、気がかりなのは成長が見込まれていた他の事業。「Pococha」と「IRIAM」のライブストリーミング事業の売上収益は前期比4.7%減の405億円、2億円のセグメント損失（前期は3億円のセグメント利益）となりました。まさかの減収、赤字転落でした。
