ゴールドやギルを現金化!? スクエニが目指す「ゲーム×トークンエコノミー」の未来とは | GameBusiness.jp

ゴールドやギルを現金化!? スクエニが目指す「ゲーム×トークンエコノミー」の未来とは

2022年元日、スクウェア・エニックスの松田社長は年頭所感を発表しました。その中で、今後の戦略的な新分野への挑戦として、ブロックチェーン技術によるトークンエコノミーを中心とした、自律的な分散型ゲームを標榜しています。

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ドラゴンクエスト』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズで有名なスクウェア・エニックスは、2022年、新たな分野へと貪欲に挑戦していくようです。2022年元日、スクウェア・エニックスの代表取締役社長の松田 洋祐氏は、年頭所感として新分野への挑戦を掲げました。

スクウェア・エニックスは2021年5月に発表した中期事業計画で、AI、クラウド、ブロックチェーンに対して重点投資をするという発表をしています。元旦の年頭所感ということで、こういった新しい分野が、今後のゲーム業界にどのようなインパクトを与えていくのか、スクウェア・エニックスは何を目指しているのか、そんな未来への指針を示しています。

今回はその中でも特にブロックチェーン分野について、スクウェア・エニックスが描いている未来について、解説していきたいと思います。

■トークンエコノミーとブロックチェーン

松田社長は、年頭所感の中で、トークンエコノミーを中心とした自律的で分散型のゲームを標榜しています。あまり聞きなれない言葉が出てきますね。ひとつずつ解説していきましょう。

トークンエコノミーとは、日本語で言い換えるのであれば、“代替通貨経済圏”とでも呼ぶべきでしょうか。代替通貨、つまり代わりのお金です。これにはブロックチェーンの技術が関わっています。

ブロックチェーンは、デジタルデータの取引記録を複数のコンピューターで保持することで、データの信頼性を高める技術です。1か所が管理するのであれば、そのサーバーを攻撃することで改ざんが可能かもしれませんが、ブロックチェーンでは1か所を改ざんしても繋がっているすべてのコンピューターの取引記録と齟齬が生まれるため、改ざんするのが非常に難しいのが特徴の1つとされています。これを利用してコンピューター上で使える仮想の通貨があり、そしてその通貨を使った経済圏、すなわちトークンエコノミーというわけです。

つまり、スクウェア・エニックスのゲームの中に、トークンによる経済圏が生まれる、それも、現金に換金可能な形で、という未来を語っているのです。

■UGCと自律的なゲーム

松田社長は、このトークンエコノミーを使うことで、クリエイターが完成品をプレイヤーに届けて終わるのではなく、プレイヤーの手によって成長し続ける自律的なゲームの可能性を提示しています。

“UGC”という言葉があります。User Generated Contentの略で、ユーザーが作るコンテンツを指します。例えば、『あつまれ どうぶつの森』では、服や壁紙などに使えるデザインをユーザーが自ら作り、そしてオンラインで配布できます。そうすると、ゲームクリエイターはユーザーがデザインするツールを提供することで、ユーザー自身が創作を楽しみとしてコンテンツを作ってくれる、このような仕組みをUGCと言います。

UGCは従来からある概念ですが、松田社長はこれまでのゲームではユーザーの創作意欲にのみ依存していて、ビッグコンテンツが生み出されにくかったと指摘します。ここに、トークンエコノミーが介入することにより、プレイヤーに明快なインセンティブが示され、たくさんの人が創作活動に没頭して、ゲームが自律的に発展していく、その可能性があるというのです。

このように、クリエイターが作ったものを一方通行でユーザーに届けて終わりではなく、ユーザーが創造性を発揮して発展していくゲームを、松田社長は“分散型ゲーム”と呼んでいます。ブロックチェーンは、取引記録を複数のPCで管理するため、“分散型台帳”とも呼ばれます。このブロックチェーンの考え方をゲームにも応用して新しいゲームの世界を作っていく、ということなのかもしれません。

■NFTを使った『資産性ミリオンアーサー』

『資産性ミリオンアーサー』(公式サイト)より

スクウェア・エニックスは、『資産性ミリオンアーサー』というブロックチェーン技術を使ったデジタルシールの販売を既に行っています。これはNFT、非代替性トークンと呼ばれるものです。ちょっとややこしいのですが、同じブロックチェーンを使っていても、お金の代わりに使う貨幣は、代替性トークン。唯一無二のものではなくて、価値としてお金と交換可能なトークン。

NFTは非代替性なので、代替が効かないトークンです。ブロックチェーンの技術を使うことで、デジタルデータの1つ1つに、それがコピー不可能で唯一のものである、という証明書をつけ、デジタルデータを現実の物のように所有できる技術です。アートの分野などで活用が盛んですが、ゲームでも使われ始めています。

『資産性ミリオンアーサー』は『ミリオンアーサー』シリーズのキャラクターが描かれたデジタルのシールを購入でき、買ったシールは自分のものとして所持することも、また他のユーザーと交換、売買もできます。一般的なスマホゲームのガチャなどとは違って、販売枚数が決まっていて、売り切れることもあります。

ちなみに、この売買の時にお金の代わりに使わるのは、代替性トークンの方ですね。『資産性ミリオンアーサー』ではLINEが独自に提供する“LINE Blockchain”を利用しています。

『資産性ミリオンアーサー』は、ゲームというよりデジタルシールの販売なので、年頭所感で松田社長が提案するようなトークンエコノミーによる自律的で分散型のゲームとまでは言えませんが、スクウェア・エニックスがこの分野の研究を着々と進めている、その1つの成果であることは間違いありません。

■“Play To Earn”と“Play To Have Fun”の衝突

松田社長は、年頭所感の中でトークンエコノミーがもたらす懸念についても話しています。ブロックチェーンが使われたゲームには“Play To Earn”という概念があります。ゲームを遊んで儲ける、というような意味で、これに対して従来の純粋に楽しみとしてゲームを遊ぶことを“Play To Have Fun”と呼ぶようです。純粋にゲームを遊んでいる人達からすると、お金を儲ける目的でゲームを遊ぶ人が入ってくれば、ゲームの面白さが壊れてしまうかもしれない、と考える場合があります。

松田社長は、この懸念を理解していると前置きした上で、トークンエコノミーが発展することで“Play To Earn”の人も、“Play To Have Fun”の人も、さらにはゲームをより面白くするために貢献したい人、“Play To Contribute”まで、様々な動機を持った人がお互いに関係をもって発展していくゲームが作れるのでは、と言います。

スクウェア・エニックスは、クリエイターが作った完成品を届ける中央集権的なゲームに加えて、トークンエコノミーを中心としてプレイヤーがコンテンツを作って自律的に発展する分散型ゲームを加えていくことを、2022年以降の戦略的テーマとしています。さらには、自社トークン発行まで見据えているということで、もしかするとドラクエのゴールドや、FFのギルを稼いで現金にできる……なんて日もいつか来てしまうかもしれません。

ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』など、従来型のゲームも楽しみですが、スクウェア・エニックスの新たな挑戦にも、期待したいと思います。

《田下広夢@インサイド》

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