オンラインゲームの遅延問題に終止符を。―Akamaiが提供する“世界で最も分散したネットワーク”とは?コスト90%削減を実現したDB連携事例も【CEDEC2025レポート】 | GameBusiness.jp

オンラインゲームの遅延問題に終止符を。―Akamaiが提供する“世界で最も分散したネットワーク”とは?コスト90%削減を実現したDB連携事例も【CEDEC2025レポート】

Akamaiが提示したのは、単なる新サービスの紹介に留まらない、オンラインゲームが抱える「遅延」という根源的な課題に対する明確なビジョンと具体的な解決策でした。

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オンラインゲームの遅延問題に終止符を。―Akamaiが提供する“世界で最も分散したネットワーク”とは?コスト90%削減を実現したDB連携事例も【CEDEC2025レポート】
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ゲームのオンライン化が加速する現代において、プレイヤーの満足度を左右する「低遅延」は、開発者が向き合うべき重要な課題です。

ゲーム開発者向け技術カンファレンス「CEDEC2025」にて開催されたセッションに登壇したアカマイ・テクノロジーズの大石太郎氏は、この課題に対する新たな解決策として、同社がグローバルに展開する広大なエッジネットワーク上でコンテナを直接実行できる新サービス「Managed Container Service(MCS)」(2025年中に提供開始予定)を紹介しました。

本サービスは、ゲームサーバーを物理的にプレイヤーに極めて近い場所へ配置することを可能にし、通信遅延を劇的に改善する“ディストリビューテッドアーキテクチャ(分散アーキテクチャ)”を実現します。本記事では、この新サービスの概要と、データベース連携によってレイテンシー改善と90%のコスト削減を両立した先進的なユースケースについて、講演内容を基に詳しくレポートします。

オンラインゲームのUXを左右する「遅延」という課題

セッションの冒頭、大石氏は世界のゲーム人口の約41%がオンラインゲームをプレイし、そのうち75%がマルチプレイを楽しんでいるという統計データを提示。多くのプレイヤーがオンラインでの対戦や協力プレイを日常的に楽しむ中で、「遅延」がプレイヤー体験を損なう大きな要因になっていると指摘しました。

特にPing値(サーバーとの応答時間)がパフォーマンスの指標となるオンラインゲームでは、50ミリ秒を超えると影響が出始め、100ミリ秒を超えると快適なプレイは困難になるといわれます。大石氏はライアットゲームズのFPSタイトル『VALORANT』を例に挙げ、「自分のネットワーク環境が安定していても、マッチングしたサーバーの場所によって遅延が大きくなり、公平な体験ができない」といったユーザーの声が実際に多く上がっていることを紹介しました。

この問題の根源には、特定のデータセンターにゲームサーバーを集約させる従来の“ハブアーキテクチャ”があると大石氏は説明します。この構成では、サーバーから地理的に遠いプレイヤーは、どうしても遅延という不利益を被ってしまいます。すべてのプレイヤーに公平で快適な体験を提供するためには、この構造的課題の解決が不可欠です。

Akamaiの回答――“世界で最も分散した”エッジ網を活用する新戦略

この課題に対し、Akamaiは長年のCDN事業で培ってきた世界最大級の分散型エッジネットワークを活用するアプローチを提示します。同社は、特定のリージョンに大規模なデータセンターを構える従来のクラウドとは異なり、プレイヤーにより近い多数の拠点にサーバーを分散配置する“ディストリビューテッドアーキテクチャ(分散アーキテクチャ)”を提唱しました。

このアーキテクチャの有効性はデータにも表れています。大石氏が示した図では、2023年3月時点で遅延が大きかった南米やアフリカといった地域が、データセンターの拡張を経て約1年半後には大幅に改善(緑色に変化)していることが示されました。

新コンテナサービス「Managed Container Service (MCS)」が2025年登場

そして、この分散アーキテクチャをゲーム開発者がより容易に活用できるようにするのが、本セッションで発表された新サービス「Managed Container Service(MCS)」です。大石氏は、2025年中に本サービスが正式に登場することを明らかにしました。

これまでAkamaiのコンテナサービスは、一部の主要な“コアサイト”(下図、緑の箇所)でのみ利用可能でした。しかし「MCS」の登場により、世界中に張り巡らされた多数の“エッジサーバー”のロケーション(下図、オレンジの箇所)でも、直接コンテナアプリケーションを稼働させることが可能になります。


これにより、例えば南米の太平洋側やアフリカの中部など、これまでクラウドサービスの提供が手薄だった地域にも低遅延のゲームサーバーを展開できるようになります。これは、既存プレイヤーの満足度向上はもちろん、これまで快適なプレイ環境がなかった地域の新規ユーザー獲得にも繋がる大きなビジネスチャンスとなり得ます。

さらに「MCS」は、リージョンをまたいだ複数のコンテナ群を単一のクラスターとして管理できる“グローバルなコンテナオーケストレーションフレームワーク”の提供も予定しており、運用負荷の軽減にも貢献することが期待されます。

クラウドコストの削減についてはこちら低レイテンシーのアプリケーションの展開についてはこちら

【事例】HarperDB連携でレイテンシー改善とコスト90%削減を両立

セッションでは、ネットワーク遅延だけでなく、データベースアクセスに起因する遅延を解決するユースケースも紹介されました。多くのゲームに実装されている生涯戦績の確認機能など、複雑なデータを集計・表示する際には、レスポンスの遅さが課題となることがあります。

この課題に対し、Akamaiは分散データベース技術を持つHarperDBとの連携ソリューションを提示。中央のデータベース(Oracleなど)を正としつつ、世界各地のAkamaiのクラウド上に展開したHarperDBにデータをキャッシュ的に配置するアーキテクチャを構築しました。

これにより、ユーザーは大元のデータベースまで問い合わせに行く必要がなくなり、最も近いリージョンから応答を受けられるようになります。実際にこの構成を導入したあるユーザーは、レイテンシーを31ミリ秒まで短縮しただけでなく、Akamaiのクラウドサービスが持つコスト競争力を活かし、インフラコストを実に90%も削減することに成功したといいます。

これは、ネットワークとストレージの両面から遅延を最適化し、同時にコスト効率も追求できるAkamaiのクラウド戦略の強みを示す好例と言えるでしょう。

質疑応答

セッションの最後には質疑応答が行われました。競合他社と比較した際の強みについて問われた大石氏は、「Akamaiの最大の強みは、世界で最も分散したエッジロケーションの数にある」と回答。

特に、まだクラウドインフラが十分に整備されていない東南アジアや中東といった成長市場をターゲットにするゲーム企業にとって、Akamaiの広範なネットワークカバレッジは、他社にはない明確な差別化要因になるとの自信を示しました。

まとめ

本セッションでAkamaiが提示したのは、単なる新サービスの紹介に留まらない、オンラインゲームが抱える「遅延」という根源的な課題に対する明確なビジョンと具体的な解決策でした。

2025年に登場する新コンテナサービス「MCS」は、同社の強みである“世界で最も分散したネットワーク”を最大限に活用し、これまで難しかった「プレイヤーのすぐ近くにサーバーを置く」という理想を現実のものにします。これにより、UXの劇的な向上や、新たな市場の開拓が可能になることが期待されます。

また、HarperDBとの連携事例で示されたように、ネットワークだけでなくデータベースの最適化や大幅なコスト削減といった多角的な価値提供も可能です。Akamaiがクラウド事業で本格的に打ち出す“分散”というキーワードは、今後のゲーム開発におけるインフラ設計の常識を大きく変えていく可能性を秘めていると言えるでしょう。

クラウドコストの削減についてはこちら低レイテンシーのアプリケーションの展開についてはこちら
《多賀秀明》

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