
ゲームのオンライン化が加速する現代において、プレイヤーの満足度を左右する「低遅延」は、開発者が向き合うべき重要な課題です。
ゲーム開発者向け技術カンファレンス「CEDEC2025」にて開催されたセッションに登壇したアカマイ・テクノロジーズの大石太郎氏は、この課題に対する新たな解決策として、同社がグローバルに展開する広大なエッジネットワーク上でコンテナを直接実行できる新サービス「Managed Container Service(MCS)」(2025年中に提供開始予定)を紹介しました。
本サービスは、ゲームサーバーを物理的にプレイヤーに極めて近い場所へ配置することを可能にし、通信遅延を劇的に改善する“ディストリビューテッドアーキテクチャ(分散アーキテクチャ)”を実現します。本記事では、この新サービスの概要と、データベース連携によってレイテンシー改善と90%のコスト削減を両立した先進的なユースケースについて、講演内容を基に詳しくレポートします。
オンラインゲームのUXを左右する「遅延」という課題
セッションの冒頭、大石氏は世界のゲーム人口の約41%がオンラインゲームをプレイし、そのうち75%がマルチプレイを楽しんでいるという統計データを提示。多くのプレイヤーがオンラインでの対戦や協力プレイを日常的に楽しむ中で、「遅延」がプレイヤー体験を損なう大きな要因になっていると指摘しました。
特にPing値(サーバーとの応答時間)がパフォーマンスの指標となるオンラインゲームでは、50ミリ秒を超えると影響が出始め、100ミリ秒を超えると快適なプレイは困難になるといわれます。大石氏はライアットゲームズのFPSタイトル『VALORANT』を例に挙げ、「自分のネットワーク環境が安定していても、マッチングしたサーバーの場所によって遅延が大きくなり、公平な体験ができない」といったユーザーの声が実際に多く上がっていることを紹介しました。

この問題の根源には、特定のデータセンターにゲームサーバーを集約させる従来の“ハブアーキテクチャ”があると大石氏は説明します。この構成では、サーバーから地理的に遠いプレイヤーは、どうしても遅延という不利益を被ってしまいます。すべてのプレイヤーに公平で快適な体験を提供するためには、この構造的課題の解決が不可欠です。

Akamaiの回答――“世界で最も分散した”エッジ網を活用する新戦略
この課題に対し、Akamaiは長年のCDN事業で培ってきた世界最大級の分散型エッジネットワークを活用するアプローチを提示します。同社は、特定のリージョンに大規模なデータセンターを構える従来のクラウドとは異なり、プレイヤーにより近い多数の拠点にサーバーを分散配置する“ディストリビューテッドアーキテクチャ(分散アーキテクチャ)”を提唱しました。

このアーキテクチャの有効性はデータにも表れています。大石氏が示した図では、2023年3月時点で遅延が大きかった南米やアフリカといった地域が、データセンターの拡張を経て約1年半後には大幅に改善(緑色に変化)していることが示されました。


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新コンテナサービス「Managed Container Service (MCS)」が2025年登場
そして、この分散アーキテクチャをゲーム開発者がより容易に活用できるようにするのが、本セッションで発表された新サービス「Managed Container Service(MCS)」です。大石氏は、2025年中に本サービスが正式に登場することを明らかにしました。