なぜCDNはゲーム業界に必要なのか?単なるコンテンツ配信に止まらない可能性をライムライト・ネットワークスに訊く─5Gや超低遅延配信が生み出す新たなサービスのカタチ | GameBusiness.jp

なぜCDNはゲーム業界に必要なのか?単なるコンテンツ配信に止まらない可能性をライムライト・ネットワークスに訊く─5Gや超低遅延配信が生み出す新たなサービスのカタチ

ライムライト・ネットワークスが提供する、画像や動画、音楽などのデジタルコンテンツを多くのユーザーに向けて高速に配信するための仕組み「CDN」。ゲーム業界における活用事例や5Gによる影響などをお話いただきました。

ゲーム開発 サーバー・ホスティング
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なぜCDNはゲーム業界に必要なのか?単なるコンテンツ配信に止まらない可能性をライムライト・ネットワークスに訊く─5Gや超低遅延配信が生み出す新たなサービスのカタチ
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ゲーム業界においてはもはや導入が常識とも言えるCDN(Content Delivery Network)。画像や動画、音楽などのデジタルコンテンツを多くのユーザーに向けて高速に配信するための仕組みで、巨大化が進むゲーム本体やパッチの配信、そして様々なライブストリーミングなどでも活用されています。


全世界40都市に130以上の大規模配信拠点をもち、70TBbpsというキャパシティをもつワールドワイドなCDNを構築しているライムライト・ネットワークスは、DAZNなどの動画配信におけるバックエンドをサポートするだけでなく、多くのゲーム関係企業のコンテンツ配信も影で支えています。

田所 隆幸氏

今回は同社の日本法人代表 田所 隆幸氏にインタビューを実施。CDNの成り立ちから導入事例、新型コロナウイルスによる通信量の変化、そして5Gによる今後の展望など、CDNに関わる内容を多岐に渡って伺いました。

CDNがゲーム業界に必要な理由


──まずは、ライムライト・ネットワークスの提供しているサービスの中で、ゲーム業界でも活用できる、あるいはされているサービスについて教えてください。

田所 隆幸氏(以下、田所)やはり一番は、我々の基盤でもあるCDN(Content Delivery Network)です。そしてそのネットワーク上ではエッジコンピューティングのサービスも提供しており、大きくはこの2つがゲーム業界のみなさんにご活用いただけると思います。

もうひとつ挙げるとしたらビデオの超低遅延配信ですね。ゲームとビデオは切り離せないサービスで、以前はビデオをプロモーションとして流し、実際にゲームをプレイする際はコンソールにダウンロードする形がとられていました。

しかし、最近ではオンラインで流れているビデオに対して、オンラインでプレイヤーが参加して遊ぶという新たな体験もでてきており、今後はよりレイテンシ(遅延)が少ない配信が求められています。また、成長著しいe-Sports分野においても遅延のないライブストリームが期待されています。

──ゲーム業界において、CDNを使ってサービスを提供するということは既にスタンダードになっているのでしょうか。

田所デベロッパーやパブリッシャーのみなさんはかなり前からCDNを意識していると思います。市場の構造上、ある程度プラットフォーマーに依存する部分もありますが、パブリッシャーがCDNありきで運用を作ったり、デベロッパー自身で様々なゴールをCDNと連携して作り込むこともあります。そのため、「CDNを念頭において開発が進められている状況」だと考えています。

──改めてになりますがCDNがどういったサービスなのか教えてください。

田所CDNは、今から約20年前に提唱され始めたテクノロジーです。インターネットが普及し始めた頃、細いネットワークではユーザーの体験をいいものにできないという問題がありました。それを解決する手段として、「ユーザーの近いところにキャッシュサーバーを置けばレスポンスが早くなり、体験を低下させないよね」という発想がCDNの始まりです。

当時は日本でも色々な企業がWebサービスを立ち上げていましたが、多数のユーザーがアクセスするとレスポンスが遅くなっていました。それに対応するため、キャッシュを作成してオリジン上に置いて早く返すという方法をとっていましたが、アクセス数の増加やグローバルアクセスへの対処は困難な状況でした。そこで、世界の主要都市にキャッシュを置くことで、ユーザーのリクエスト・レスポンスを早くするというものがCDNの仕組みです。

──例えば、オンラインゲームのラグに対してもCDNは有用なのでしょうか。

田所もちろん効果的です。コンテンツには静的なキャッシュできるものと、動的なキャッシュしにくいものがあります。そのうち、ゲームダウンロードは静的なのでキャッシュがとても効くため、完成したオリジンから直接引っ張るのではなく、キャッシュサーバーから配信されるのが一般的です。ゲームのファイルやパッチサイズがとても大きくなっているので、基本的にはCDNが活用されます。

──ライブストリーミングでもCDNは有用なのでしょうか?

田所はい。ライブストリーミングはキャッシュとは異なる形態になりますが、遅延なく配信するテクノロジーもあります。ポイントとしては、アクセスするデバイスから我々のようなCDNに入るまでをいかに高速にできるかです。そのため、5Gが普及すれば今よりさらにユーザーの体験はシームレスなものになるでしょう。

──Nintendo of Europeといったゲーム業界の事例も公開されていますが、既にライムライト・ネットワークスのCDNを利用しているユーザーは、どういった部分にメリットを感じているのでしょうか?

田所皆さまにはやはりパフォーマンスの安定性が一番評価されています。CDNを提供する各社色々な特徴がありますが、ライムライトの強みはネットワーク基盤にあり、我々の配信拠点は全世界のメトロと呼ばれる都市に配備しています。さらにそれぞれをプライベートバックボーンで運用しているので、我々のネットワークに入ってしまえば高速に処理されるだけでなく、外部からアクセスできないというセキュリティも担保されています。

そしてどこかの配信拠点にお客様のコンテンツがキャッシュされているので、オリジンを取りに行くことはほぼありません。誰かが一度アクセスすれば、ネットワーク内の一番近いところからキャッシュされたコンテンツを拾って流すので、高速に配信できるというわけです。

──セキュリティも担保しながら、キャッシュによる高速化を実現されているわけですね。

田所そうした特徴から、ゲームのダウンロードなどに関しては約98%という高いキャッシュヒット率(コンテンツを配信する時にオリジンに戻らずCDNから配信された割合のこと)を誇ります。

例えば膨大なプレイヤーがいる人気ゲームタイトルの本体やアップデートの配信も、各配信拠点にキャッシュされているため、プレイヤーは自身の環境から一番近いサーバーにアクセスするだけでいいのです。このように、我々は自社内で完結していることがパフォーマンスの観点からも強みだと考えています。

ライムライト・ネットワークス:オンラインゲームの状況に関する調査 - 2020年

よりゲーム業界に関わりたい─エッジサービスと開発者に向けたのサポートについて


──コンテンツの配信においては様々な要素から高速性と安全性、そして高いキャッシュヒットレートを実現しているわけですね。それでは、ライムライトのエッジサービスではどういったことが実現できるのでしょうか。

田所ライムライトの「エッジ」は基本的に弊社の配信拠点に配置されています。クラウドの中央部分ではなく、ラストマイルネットワークに接続する直前の「エッジ」に計算処理能力を持たせることで、遅延を抑えユーザーエクスペリエンスを飛躍的に向上させることが目的です。

──具体的な活用事例を教えていただけますか?

田所例えば、ゲーム専用のコンソールやPCに制限されない、スマートフォンなどを使ったクラウド上でのマルチプレイヤーのエクスペリエンスを提供したい、というニーズにお応えできます。ゲームマップやグラフィックス、インタラクティブ機能、コンテンツ生成などのオンラインゲームの処理を、地理的にゲーマーの近くに配置されたエッジロケーションに分散して実行します。

コンテンツをネットワークのエッジにプッシュすることで遅延の問題が解決され、よりスケーラブルで柔軟なプラットフォームを実現でき、ゲーマーは場所やデバイスの種類を問わずゲームを続けることができます。

ライムライト・ネットワークス:オンラインゲームの状況に関する調査 - 2020年

──今後さらにゲーム業界に深く入っていきたいということですが、その狙いはどこにあるのでしょうか。

田所ライムライトはネットワークを提供しているので、これまではネットワークオペレーションに携わる方々とコミュニケーションを多くとってきました。しかし、ネットワークの設計が不可分となった昨今のゲーム業界においては、ゲームを開発している人たちとのお付き合いも増えてきています。

もちろん先にもお話したように既にCDNを念頭においたゲーム開発は進んでいるわけですが、彼らにライムライトが提供しているAPIコードやサンプルなどを認知・活用してもらい、それらを使って新たなゲーム開発更にはユーザー体験を共に実現できるのではないかと考えています。

──ゲームの開発者向けにもAPIやツールも提供されているのですね。

田所こうした環境の整備も積極的に進めており、間もなくデベロッパーコミュニティもローンチする予定です。そこではテクニカルドキュメントを共有し、ライムライトのエンジニアやデベロッパー同士がやりとりできるポータルとして活性化させていくつもりです。

ローンチ時にサポートするのは、「Python、Node.js、Go」の3言語で、グローバル展開のため英語からのスタートになりますが、今後日本語を含む多言語の展開も予定しています。内容はゲーム業界関係者に限らず、幅広い業種の方々にディスカッションいただけるように考えています。

──CDNを導入するために決して安くないコストがかかるという印象があるのですが、ゲーム業界に浸透させるという意味で中小のパブリッシャーやデベロッパーなどにも広げていくような動きも検討していますか。

田所CDNはグローバルで展開するような大企業に提供するだけでなく、敷居を下げた形での利用も可能です。現状ゲーム業界で導入されているお客様についても、必要な部分だけご契約いただくというケースもあります。

コロナ禍のトラフィック増にも対応…CDNが次世代通信でできること


──少し話題は変わりますが、新型コロナウイルスの影響によって、通信のトラフィック量が増えているという報道もありました。ライムライト・ネットワークスではどのように対応・対策を行ったのでしょうか?

田所正直に申し上げるととても大変でした。総務省が発表したデータでは平日のトラフィック量が1.4倍程度、休日が1.2倍程度に増加となっており、我々のCDNでも同じような傾向でした。この現象はゲームやエンタメの影響もありますが、リモートワークが進んだ結果、自宅のインターネット経由で仕事をされる方が増えた影響も多いと考えています。

我々はインターネットインフラを提供している会社のひとつなので、ゲーム以外の色々な局面でも活用いただいています。例えば、オフラインの就活イベントが実施できなくなり、オンラインで何百社も集め、何十万人の学生さんが受けるセミナーを高品質かつ安定した形で配信するといった取り組みも現在サポートしているところです。

──やはり急激なトラフィックの変化に対応するという意味でもCDNは重要になると思います。イベントもオンライン化するコロナ禍のまっただ中で、超低遅延配信のニーズも高まっているのでしょうか。

田所おっしゃるように、昨今新型コロナウイルスの影響でオフラインのイベントができないため、オンラインでインタラクティブ性が高い配信への需要が高くなっていると感じています。その際、遅延によってインタラクティブ性が下がるのは火を見るより明らかです。

例えば、サッカーの試合をオンラインで見ている時に、実際にはゴールが決まっているのに配信では数十秒遅れる……ということが起きてはユーザー体験が台無しになってしまいます。

今までのライブストリーミングは、カメラで撮影してインジェストして配信するまで20~30秒かかりました。これを様々なCDNベンダーの努力で2~3秒に縮められようになり、ライムライトの技術では遅延が1秒未満という超低遅延配信を実現するサービスもお引き合いを多くいただくようになりました。

事例としてはKDDI様と一緒に「春高バレー(全日本バレーボール高等学校選手権大会)」において我々の超低遅延配信技術を活用したAR観戦の仕組みを導入しました。また、低遅延での配信が求められた某コンテストでも、地上波と同等の遅延でコンテストをライブ配信した実績もあります。

──インターネットの配信において、遅延が1秒未満でライブストリーミングを見られるのは大きいことですよね。

田所我々も一昨年ぐらいに世界初として発表したのですが、グローバルに対応しているサービスなため日本で配信する映像をアメリカでも1秒未満の遅延で視聴できます。一方で、画質を求められるとテクノロジー的には課題があるのが現状です。パケットロスしたものはそのまま置いていくという技術のため、多少の画面落ちやカクつく可能性もあります。常に高品質は追求しつつ、1秒未満で対応できるもの、3~4秒で配信するものといった複数のサービスを提供してお客様の要望にお応えしています。

──5Gによって、ユーザーの体験や開発者が提供できるものに変化はあるとお考えですか?

田所ソフトウェアダウンロードに関してはもちろん早くなりますよね。そして、クラウドベースのゲームはこれからもっと進化すると思います。5Gによってラストワンマイルの課題が解決されれば、ゲームやアプリケーションを端末にインストールのではなく、クラウドで処理する形へ移行していくのではないでしょうか。そこで、我々CDNベンダーが提供しているサービスを使い、より高速に通信できるロジックを埋め込んでもらうことで、ゲーム体験はまだまだ進化すると考えています。

また、クラウドゲームの先を見通すと、クラウド上のゲームに色々な人がジョインして遊べるようになるライブストリーミング型ともいえるゲームの形も生まれてくると思います。クレーンゲームやギャンブルに近しいものはリアルタイムで一緒に遊べるようになる、ひとつのコンテンツへの参加人数が増える、投げ銭の形態が変わるなど、さまざまな展開も生まれそうです。

──次世代通信によってCDNが提供できるサービスがさらに広がっていきそうですね。

田所ラストワンマイルの制限がクリアになると、想像もしないようなものが生まれてくるのではないか、新しいインタラクションができる世界が生まれてくるのではないか、現状のユーザー体験がはるかに良くなるのでないかといったことも考えられます。弊社としては、新しいアイデアの実現に向けネットワークを支えるパートナーとして努力を続けていきたいと思います。

──ありがとうございました。

「ライムライト・ネットワークス」公式サイト




現在GameBusiness.jpでは開催しているオンラインイベント「Game Business Expo」では、本稿でご紹介した「ライムライト・ネットワークス」のほか業界関係者に向けたツールやサービスの紹介を展開しており、6月26日(金)には合計6のオンラインセッションを予定しています。ぜひ下記よりお申し込みのうえご参加ください!

《カミヤマ》

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