ゲーム動画配信の双方向性を劇的に拡げる「Genvid」が持つ実力を拝見!視聴者が深くゲームプレイに関われる強力なミドルウェア | GameBusiness.jp

ゲーム動画配信の双方向性を劇的に拡げる「Genvid」が持つ実力を拝見!視聴者が深くゲームプレイに関われる強力なミドルウェア

採用タイトルの発表や大規模な資金調達などで注目を集める「Genvid」。インタラクティブ・ストリーミングという新たなジャンルはゲームにどのような変化をもたらすのでしょうか。ストリーミング界のUnityを目指すというその思想に迫ります。

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大和智明氏(左)、一條貴彰氏(中央)、ジョンソン裕子氏(右)、Jacob Navok氏(画面内左)、池村匡哉氏(画面内右)

先日お伝えしたGenvidによる新作タイトル発表を受けて、編集部ではGenvidのサービスや今後の展望について直接取材を行いました。お答え頂いたのは、Genvidビジネスディレクターのジョンソン裕子氏、Genvidデベロッパー・リレーションズも担当し、自身が代表取締役を務めるヘッドハイでは『デモリッション ロボッツ K.K.』を手掛ける一條貴彰氏、新作タイトルのひとつである『ドンさわぎ』を開発するハーツテクノロジー代表取締役の大和智明氏の3名です。また、Web会議の形でGenvid CEOのJacob Navok氏と『ドンさわぎ』のディレクター池村匡哉氏にもご参加いただきました。本稿ではGenvidの機能面だけでなく、同社の今後の展望や各デベロッパーがどのようにGenvidを活用しているかなどをお伝えしていきます。


ゲームプレイ動画のライブ配信と言えば、どのようなスタイルを想像するでしょうか?視聴者はチャットなどで盛り上がれるとはいえ、あくまでも動画を観るという点では受身です。そんな視聴者が直接、配信者のゲームプレイに干渉できたら面白いと考えたことはありませんか?

結論から言えば、すでにそれは可能なのです。Genvidが開発する「Genvid SDK」を利用すれば、視聴者がライブ画面を直接操作することで細かい情報を取得できるようになるだけでなく、ゲームプレイに影響を及ぼせるような設計を組むことも可能となります。

VTuber業界でも盛り上がりを見せているゲームプレイのライブ配信ですが、「投げ銭」的なサービスが整備されてきたことで、配信者の収益確保の成功例が増加してきました。その様な背景の中でGenvidは、配信者と視聴者をよりインタラクティブに結びつける為の技術を開発しています。まずは「Genvid SDK」で何ができるのかをご紹介します。


ライブ配信への視聴者による参画具合は千差万別で、ヘビーなファンともなれば高額な「投げ銭」も次々と飛び出していきます。とはいえ、その参加方法はあくまでも配信者への応援といった形に留まってしまい、多くのログが流れる中では配信者が拾いきれないような場面が出てしまうことも事実です。

これまではチャットや「投げ銭」といった範囲でしか配信者に関わる方法が無かったライブ配信に対し、強力で自由なオーバーレイによるインターフェースを提供することで、ゲームルールそのものへの干渉や、様々なスタイルの応援方法を実現する、などといったことを可能にするのがGenvidの技術なのです。
※オーバーレイ:何らかの上に覆いかぶせるといった意味の英単語であり、ゲーム等におけるコンピュータ用語としては「画面に重ね合わせて表示する」といった意味で使用される。本記事では、実際のゲーム画面とは別のプログラムが、同じ画面上に別の情報を覆いかぶせて表示するような技術のことを指す。あくまでも単なる重ね合わせであり、ゲームそのものを変更せず、表層的に実現するものを呼ぶことが多い。

ゲーム画面と区別が付かない程の情報量


『Retroit』

「地図として表示されたオーバーレイ」により、プレイヤーの位置をリアルタイムで把握できる

今回発表されたタイトルのひとつである『Retroit』は、複数のプレイヤーが共有しているステージ上で車両を操作するゲームとなっています。

実は、Twitch上でゲームプレイを視聴しているこの画面が既に「Genvid SDK」によるインタラクティブ配信となっています。どこまでが実際のゲーム動画で、どこまでがオーバーレイなのか、見分けが付けられるでしょうか?

前面に見えているニュース番組のようなインターフェースは全て「Genvid SDK」を介して生成・配信されたオーバーレイです。”LIVE TRAFFIC MAP”と書かれた大きな地図や、下部にあるテロップ、右側の大きなボタンまでもがオーバーレイとして表示されています。

オーバーレイは動画に含まれておらず、あくまでも視聴者のブラウザで動画の上から描画されたものです。配信者がゲームプレイで生み出している動画は背景の街並みの部分でしかありません。しかしながら「Genvid SDK」による配信であれば、視聴者はオーバーレイを操作することで、ゲームに関するデータを選択的に取得できます。

本来ライブ配信は動画ですので、視聴者ひとりひとりに対して個別に情報を提供するといったサービスには向いていませんでした。あくまでも配信者が見せたい画面を視聴する他はなかったのですが、「Genvid SDK」を使うことで、視聴者は見たい情報を自分で選ぶことができます。

『In The Black』



こちらは宇宙空間で複数のプレイヤーが対戦する『In The Black』というタイトルです。画面の下部や左上、そして中央にプレイヤーの情報が表示されています。更に右上にはレーダーが表示されていますが、これらも「Genvid SDK」によるオーバーレイでの表現です。

通常、対戦ゲームの動画配信では配信者によるカメラ操作や解説などでしか選手達の情報を得られません。しかしながら「Genvid SDK」で提供されるオーバーレイを操作すれば、視聴者はいつでも選手達のリアルタイムな状況を取得できるようになります。これらは視聴者のブラウザ上で表示の切り替えが可能なため、配信者はゲームプレイを中断することなく実現できます。選手情報を表示する画面を配信側でいちいち出さなくてよいのです。

しかも配信者のゲームプレイと同期しているので、視聴者は「まさに今欲しい情報」を自分の見やすい形で閲覧できるという訳です。お気に入りの選手の細かい情報だけを映して欲しいと思うのはファンとしてのワガママかもしれませんが、これまでは放送の都合上、まんべんなく切り替えられる画面の一瞬を読み取るしかありませんでした。ですが、「Genvid SDK」によってそうした視聴者の需要を満たせるようになったのです。

情報の提供だけじゃない「フレーム同期」の強み



配信はあくまでも動画であるはずなのに、どうしてこのような双方向性を実現できるのでしょうか?「Genvid SDK」の担っている役割を紐解いていきましょう。

「Genvid SDK」は、ゲームサーバーで動作しているゲーム内部の情報を配信できます。例えば選手がその瞬間に所持している武器の詳細や、移動している位置といったものです。これらを動画配信サイトが提供しているオーバーレイ機能(「Twitch Extensions」など)に渡すことで、視聴者へゲームデータを届けられます。

動画とゲームデータを一緒に配信することで、最終的に視聴者の画面へオーバーレイとして加工して表示できるようになるという訳です。しかも、「Genvid SDK」は強力な「フレーム同期」機能を有しており、実際のゲームの状況とタイミングが一致した情報までに整えてオーバーレイへ反映することを実現しています。

このフレーム同期がなければ、動画よりもゲームデータが先に視聴者のもとへ届いてしまい、展開を読めてしまうといった望まれないタイムラグを生んでしまうこととなります。

ある選手がダメージを負った瞬間のフレームが視聴者の画面で再生されている時、「Genvid SDK」はその瞬間の情報だけを表示するよう常に調整している訳です。これにより、動画そのものが視聴者の画面で遅延していようとも、視聴者にとってはズレのないオーバーレイとして映るようになります。

『Deadhaus Sonata』



こちらは『Deadhaus Sonata』というアクションタイトル。多くのプレイヤーがキャラクターを操作する中で、視聴者は俯瞰した「神の視点」でさまざまなインタラクトを仕掛けられるといった新しいゲームとなっています。

視聴者にとっても激しく画面が動くタイトルですが、上記の画像では白くハイライトされた領域があります。周囲の白いアイコンと合わせて、これらが「Genvid SDK」によるオーバーレイ表示です。

赤く燃えている鉄格子は、ゲーム内に存在するトラップオブジェクトですが、カメラ視点が激しく動いても、オーバーレイはしっかりと鉄格子の上に追従して表示されます。このようにして、ゲーム内のオブジェクトの位置情報とカメラ情報を紐づけた処理まで可能となっており、視聴者に対して便利な情報を提供するといった複雑な表現が可能となるのです。

カウンターストライク:グローバルオフェンシブ(CSGO)』といったFPSタイトルのe-Sportsシーンでは、以前から試合観戦用の機能がゲーム本体に組み込まれています。観戦の上では、壁の向こう側にいる選手を影のように表示すると試合展開を把握しやすくなり、視聴者に対してそのような配信を可能としていました。

しかしながら、やはり動画として配信する以上は(※)、配信者が見せたいカメラ位置でしか表現できないという制約がありました。「Genvid SDK」を活用することで、ゲーム本体のシステムを変更することなく同様の表現を可能とするどころか、視聴者自身が表現方法の設定やオン/オフを切り替えるといったことまで実装できるわけです。
※ゲームソフト本体を使って試合を観戦する場合(スペクテイターモードなどと呼ばれる)は、視聴者もゲームを起動して、ゲームの機能のひとつを利用して観戦することとなる。この場合は、観戦者が自由にカメラを動かすなどといった多角的な観戦が可能となる。しかし、これを行う為にはゲームメーカーがこの機能そのものを設計・実装しなければならず、観戦者もそのゲームを所持している必要がある。

ゲーム本体と「Genvid SDK」が連携



「Genvid SDK」はゲーム本体の情報を取得できますが、反対にゲームに対してアクションを仕掛けることも可能となっています。この機能を有することで、視聴者が直接的にゲームプレイへ干渉できるのです。

ゲームデータを配信サイトの拡張機能へ送信することで、リアルタイムにオーバーレイを描き出す訳ですが、このオーバーレイそのものに機能を持たせられます。例えば、プレイヤーキャラをクリックできるようなオーバーレイの設計にし、そのクリック情報に反応してキャラクターを光らせる……などといった動作が可能となるのです。

『ドンさわぎ』



ハーツテクノロジーが開発する『ドンさわぎ』の配信画面では、オレンジ色で表示されている枠と、青い炎のようなアイコンが「Genvid SDK」によるオーバーレイ表示となっています。テニスを主題としたパーティ系の対戦ゲームです。

プレイヤーは次々と降りかかるどんぐりをラケットで打ち、相手陣地へ送り込みます。どんぐりはしばらくすると爆発するので、タイミングをみて打ち込む必要があるというルールです。

視聴者は青い炎のアイコンをクリックすることでポイントを取得できます。このポイントを消費して各種アイコンをクリックすると、プレイヤーへ実際に様々なインタラクトを行えるというゲーム設計が特徴的です。


ここである視聴者がウチワのアイコンをクリックしたとしましょう。すると実際に、プレイヤーのラケットが大きなウチワへと変化し、打ち込む能力が上昇するのです。視聴者が行った事はオーバーレイへのクリックだけではありますが、「Genvid SDK」がオーバーレイへのイベントを仲介することで、ゲーム本体へ繋げています。

ゲームルールをどのようなものとするか、といった設計については慎重さが求められることになりますが、この機能が存在することで視聴者が行える応援の幅を広げられるといったメリットが生まれます。

様々な視聴者から寄せられるアクションをたくさん集めたプレイヤーはより目立つようになるというように、デザイン次第という訳です。オーバーレイは視聴者へ個別のものとして管理されていますので、例えば有料ポイント(Twitchでは「bits」と呼ばれる)を使用した場合は、ゲームに介入できる機能が広がっていくといった新たなマネタイズも可能となります。

デベロッパーが視聴者に向けて開発を



これまで、YouTubeの「スーパーチャット」やTwitchの「bits」といった投げ銭的なマネタイズは、あくまでもプレイヤーと視聴者の間で発生するものでした。そこには、ゲームタイトルそのものの露出が増加するという広告効果はあったものの、エコノミクスの観点でいえば、お金の直接的な循環においてデベロッパーやパブリッシャーが輪から外れてしまっていたという側面があります。

Genvidのデベロッパー・リレーションズを担当している一條氏は、同時に『デモリッション ロボッツ K.K.』というタイトルを開発しているインディーデベロッパーでもあります。先日発表されたGenvidによる新作タイトルのひとつであり、2020年冬にニンテンドースイッチとPCでリリースする準備を進めています。
※今回の『デモリッション ロボッツ K.K.』におけるGenvid対応の発表はPC版であり、他プラットフォームでの対応は未定。

一條氏は作品の開発者としての視点で、「Genvid SDK」の活用による動画配信は、これまでゲーム実況の文化とうまく絡めずにいたデベロッパーへのマネタイズを滑らかにするものだと語ります。

一條「インタラクティブ・ストリーミングの機能は、大手のデベロッパーでは自力で実装できるかもしれませんが、私のようなインディーの立場では難しくなってきます。ですが”Genvid SDK”なら、組み込むだけでインタラクティブ・ストリーミングためのインフラ部分が実現できるというアドバンテージがあります。

また、たとえばデベロッパーが主催するイベントの形で”Genvid SDK”を活用した配信を行えば、視聴者の皆さんが支払ったプレイヤーへの応援は、あくまでもデベロッパーが配信しているライブ配信へ届けられることになります。

デベロッパーはインタラクティブな配信までを含めてゲームシステムを設計することで、動画配信の文化をより面白いものに高めながら、配信者と視聴者だけで留まっていたマネタイズの輪の中に入れるという訳です」


『デモリッション ロボッツ K.K.』は、解体業者となったプレイヤーがどれだけ街を破壊できるかというタイトルです。「Genvid SDK」によるインタラクティブ配信では、視聴者は解体を反対する市民という立場で介入できます。

視聴者には、ステージにある建築物を「かつて自分が住んでいた家」とオーバーレイ上で表示。その家が見事(?)破壊されれば、その視聴者はプレイヤー達へトラップを投入できるといった設計になっています。

また、プレイヤー達の画面には、トラップで邪魔をしかけた視聴者のID名が表示されます。誰によって邪魔をされたのかを知ったプレイヤーは、配信中に「〇〇(ID名)、ふざけんなよ~!」等の反応を示し、視聴者は実況動画というエンタメに一緒に参加している感覚を得ます。こうした、配信者と視聴者の相互作用を狙った設計をしているとのことです。


ジョンソン「ゲームのプレイヤー数に注目すると、その増加傾向は頭打ちにあります。しかし、TwitchやYouTubeをはじめとしたゲーム動画配信に対する視聴者は大きく増加しているのです。これまで、e-Sportsのプロシーンにおいても、リアルなスポーツのスタジアム観戦にあたるような”視聴者へのマネタイズ”はうまくアプローチできていなかったという実態がありました。

その理由のひとつとして、どこまでいっても”視聴者=プレイヤー”に近い人達にしか理解できない映像で終わってしまっていたということが挙げられます。そのゲームを遊んでいなければ何をしているのか分からない、ということでは観客は増えないという訳です。

そこで”Genvid SDK”を活用して、動画配信と同時にゲームの状況やルールなど補足的情報を提示できれば、様々なタイプの視聴者へ価値を届けられるようになります。もちろん、これまでのヘビーなゲームファンにとっても、より”深く絞った”観戦が可能となるはずです。

そうして生み出された価値をデベロッパーから提供することで、直接的に視聴者から対価を得られるという明瞭なマネタイズを実現したいと考えています」

開発者へのサポートも重視



『ドンさわぎ』はニンテンドースイッチで「Genvid SDK」を活用した最初のタイトルとして登場しました。開発者の大和氏はその経緯について、サポートに対するGenvidのフットワークの軽さを次のように語っています。

大和「Genvidの開発者さん達の大半は海外の方々ですが、私達のような日本のインディーデベロッパーの立場として見ても、とてもサポートに対してフットワークが軽く、手厚くやっていただけていると感じています。

私達のタイトルはニンテンドースイッチではじめて”Genvid SDK”を活用したタイトルとなる訳ですが、その点の不安がなく進められたのもそうしたサポートのお陰です。また、とにかく視聴者がどんどん参加できるゲームというスタイルが新しくて面白いと感じました。ですので、私達のタイトルはむしろその方向で何ができるのか、から設計しています」

ジョンソン「元々はスクウェア・エニックスの社長を務めた和田洋一が設立した”シンラ・テクノロジー”が前身です。CEOのJacobも同社のExectiveで、日本語を話せますし、日本のゲームシーンにも精通しています。

現時点では、Genvidのようなインタラクティブストリーミングはまだまだモバイル黎明期のような時期と捉えています。中国本土で多くの視聴者を擁する”Huya”(虎牙。中国のゲーム実況配信サイト)との資本提携も実現できました。配信プラットフォーム、ゲームプラットフォームを絞らず、広く”Genvid SDK”を対応させていき、将来的にはインタラクティブ・ストリーミング界のUnityのような存在になりたいというのが私達の願いです」

開発者に必要な技術は?


一條氏によるUnite Tokyoでのスライド発表の一部

それでは、オーバーレイを表示させるためにデベロッパーが担うべき技術は何が必要なのでしょうか。先に紹介した通り、オーバーレイとひとことに表しても非常に細かい表現が可能であることから、詳細なデザインが必要であることが分かります。

オーバーレイの表現については、いわゆるWebアプリケーションのフロントエンド技術がそのまま活用できます。基本的にはHTML5とJavascriptによる設計となり、フレームワークは限定されていません。

「Genvid SDK」を使ったタイトルの開発段階では、AWSなどのクラウドコンピューティングサービスを用意せずとも、1台のPCのみでテストが可能とのことです。セットアップには基本的なコマンド操作(※)や、Pythonスクリプトの実行環境等が必要ではありますが、その操作は少なく済み、難易度も低めとのことでした。
※BashはUNIX環境で使用するシェルと呼ばれるPC操作の基本ソフトのひとつ。WindowsではコマンドプロンプトやGit Bashなどのターミナルを利用する。それぞれコマンドの内容は異なる為、対応した知識が必要となる。CUI(文字だけで操作するインターフェース)操作となり、Pythonスクリプトはコマンド操作で実行することになる。Pythonはプログラミング言語のひとつで、扱いやすく、数値処理に強いことから機械学習などの分野でよく使われる。

デベロッパー発のイベントから個人へ



Genvidが想定する運用は、あくまでもデベロッパーから発信される「イベント」といった形式です。ゲーム大会との運用には相性がよく、視聴者への多様な表現を可能としながら、マネタイズの新たな可能性を提示しています。

ミドルウェアとしての「Genvid SDK」が目指す方針としては、YouTubeや既に資本提携を獲得したHuyaといったメジャーなプラットフォームをはじめとして、できるだけ多くのプラットフォームへ対応することとされています。

Jacob「現在、世界中で複数の動画配信プラットフォームがあり、それぞれ抱えるユーザーも違えば地域毎の人気も異なります。”Genvid SDK”を活用することで、簡単に複数のプラットフォームにデプロイできるようになります。

デベロッパーの立場で見れば、プレイヤーや視聴者の参加人数の大きな場所で勝負したいと考えるのは当然です。その意味でも、今回”Huya”との資本提携が行えたことはとても大きな意義があると考えています。

ただ私達は、それで終わりにするのではなく、獲得した資金を更なる研究・開発に投資して、より垣根なく利用できる”Genvid SDK”にしていきます。現時点ではデベロッパーによる公式ゲーム大会などに向けたものではありますが、今後は個人の動画配信者向けに”ローカルGenvid”の提供も予定しています。これはデベロッパーが使用して機能を開発することで、個人の配信者でも簡単にインタラクティブストリーミングが配信できるようになるというものです。」




これまでゲームのライブ配信は、特にプロゲーミングシーンにおいてマネタイズの問題を切り離して語ることはできませんでした。「観客不在」の議論は長きにおいて続けられた話題でもあります。

取材を通して、「Genvid SDK」はゲームだけに留まらないポテンシャルを秘めていると感じました。筆者はロードバイクレースを視聴することがあり、観戦中にいつでも選手の情報を引き出せる、といった活用が可能だろうと考えたためです。(実際にフィジカルスポーツでのGenvid利用もあるとのこと。)

これから普及が進むと考えられる5G回線はGenvidにとって心強い後押しとなることは間違いありません。まだまだ「画面の向こうを眺めている」感覚が拭いきれないライブ配信の体験が「Genvid SDK」でどこまで拡げられるのか、期待したいと思います。
《Trasque》

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