劇場用フル3DCG級クオリティの短編をUnreal Engine 4 で制作した、マーザ・アニメーションプラネットを直撃 ゲームエンジン、そしてインタラクティブ・エンターテインメントの未来とは?・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第37回 | GameBusiness.jp

劇場用フル3DCG級クオリティの短編をUnreal Engine 4 で制作した、マーザ・アニメーションプラネットを直撃 ゲームエンジン、そしてインタラクティブ・エンターテインメントの未来とは?・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第37回

ゲーム開発 ゲームエンジン

劇場用フル3DCG級クオリティの短編をUnreal Engine 4 で制作した、マーザ・アニメーションプラネットを直撃 ゲームエンジン、そしてインタラクティブ・エンターテインメントの未来とは?・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第37回
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2015年のゲームシーンにおいて最も話題となったのは開発ツールの無料化でしょう。とりわけ、これまでハイエンド用ゲームエンジンとして名実ともにそのポジションを確立していたEpic Gamesのゲームエンジン、Unreal Engine 4(以下、UE4)が無料化されたことの意義は大きいと言えます。更にこの衝撃は、ゲーム業界のみならず、CGスタジオにも確実に広がっていたようです。

筆者はこれまで、「ゲームとCG映像の関係」を探るために本コラムにおいて幾度かに渡りCGスタジオを訪問してきましたが、そのいずれもが今夏、UE4を用いた3DCG映像制作に取り組みメディアを賑やかせました。一方はテレビドラマ向け3DCGキャラクターの制作ツールとして、他方が今回取り上げる「Happy Forest」。更にこの「Happy Forest」のプロデューサーが、以前、本コラムで2回にわたりフィーチャーしてきた『初音ミクProject DIVA』シリーズや初音ミクライブの3DCG制作の担当マネージャーだった今村理人氏だったのです! そこで早速、都心にある同社のスタジオを訪問してきました。今回伺ったのは、今村理人プロデューサーに加え、ディレクターの加治佐興平氏、プロダクションエンジニアの松村知哉氏、モデルアーティストの高橋聡氏、そしてプロジェクト・マネージャーの宇津野周一氏の総勢5名。それぞれの視点から本プロジェクトについて存分に語っていただきました。


Unreal Engine 4で制作された「Happy Forest」


実はPS3時代からリアルタイムエンジンを使った3DCG制作については独自に研究



本誌の読者はご存じのとおり、マーザ・アニメーションプラネット(以下、MARZA)はもともと前身がセガのVE(ビジュアルエンタテインメント)研究開発部。したがって、ゲームエンジンでの映像制作経験もその時代からあったとのこと。2008年ごろにソニック関連のコンテンツを開発していた際、自社開発エンジンであった、The Hedgehog Engineを使ったPlayStation3(以下、PS3)向けのプロジェクトに携わっていたのです。当然、ゲーム制作はソニックチームが、CG制作を今村氏のチームがおこなっていたのですが、そのときに、「The Hedgehog Engineをシネマティックに活用できないか」という依頼が来たとのこと。そこで検証をしてみたものの、やはり当時は実現に至らなかったと、今村氏は述懐します。その理由として、表現力及び開発環境などが不十分だったとのこと。ゲームエンジンの映像表現機能が強化されてきたと実感したのが2014年ごろ。そのようなタイミングで、大手ゲームメーカーにおいてCTOとして活躍されていた橋本善久氏が独立しリブゼント・イノベーションズ株式会社を立ち上げたことから、2014年4月より橋本氏に協力を仰いだとのこと。

実は、橋本氏、もともとセガのソニックチームでプログラマー、企画、ゲームディレクターとして在籍しており、前述のThe Hedgehog Engineの生みの親であったということもあり、今村氏とは旧知の仲だったとのこと。橋本氏の独立後にさっそく連絡をとり、ゲームエンジンを使ううえでの落とし穴などをレクチャーしてもらい、2014年夏から本格的に検証をはじめていったのです。ただ、2014年の時点では既に数多くのゲームエンジンがあったのも事実。そこで今村氏が着目したのは、普及の度合い、つまり「シェア」だったと言います。どれだけ優れたエンジンでも普及していないと情報も入ってこないというのが大きな理由とのこと。つまり優れた作品を効率的に生み出すにはエンジンそのものの能力もさることながら、シェアも同じくらい重要だというのです。この点はまさに経営者的な発想ですね。これらを踏まえ、いきついたのはUnreal Engineか、Unityのどちらかだったのです。

ただ、実際に検証に入る前までは、ゲームエンジンのイメージは「PlayStation2時代のローポリゴンを動かすためのエンジンという意識で止まっていた」と語ったのは、本作のディレクターを務めた加治佐氏。なのでゲームエンジンで映像を作ってくれという経営陣の依頼に理解が追いつかなかったとのこと。そのとき、今村氏がチームの心境を察したのか、シリコンスタジオのリアルタイムエンジン・テクニカルデモ「Museum」を見せてくれ、そこではじめて今のリアルタイムレンダリング(ゲームエンジン)はプリレンダーと同じくらいの表現ができると認識してプロジェクトに挑んでいったとのこと。

たった3か月で、未来的アリーナアクションの動画を作成。しかしプロデューサーの今村氏はもっと上を目指せと!





そこで最初に取り組んだのが「KURO1.0」。モデラーとアニメーターを中心としたデザイナー10名が、2014年10月~12月の3か月で取り組んだとのこと。当時は、UE 4.4 での開発でした。もちろん、制作工程においてはソフトの使い分けをおこなっています。まずモデリングについてはMaya、ディテールの作りこみはZbrushを使用。モーションキャプチャーをした際は、キャプチャーした動きを、モーションビルダーで取り込み、それをUEのタイムラインツール上に落とし込んだのです。従って、アニメーションについてはモーションなどを実装するまでプリレンダーとほぼ同じ工程でおこなわれたとのこと。これらのアセットはすべてFBXでUE4にコンバートしていったとモデルアーティストの高橋氏。従って、UE4を活用したのはシーン構築、シェーディング、ライティング、エフェクト、ポストエフェクトならびにキャプチャーでの工程ということになります。

とは言ってもUE4については皆、ゼロから学ぶという状況。スケジュール的にもツールをゼロから学ぶことと、映像制作を同時進行でおこなうことを前提にスケジュールを組んでいったと加治佐氏。またパイプラインも無く、データ管理も手探りだったが故に「これで完成するのか? 完成予定日に間に合うのか?」といった若干の不安を抱えながらのプロジェクト進行だったとのこと。

設定は巨大な未来のスタジアムで、アーマーを着込んだスポーツ選手が未来のスポーツに興じ、それをチアガールが応援するというもの。そのために、環境づくりとしては通路、スタジアム全体ならびにチアリーダーたちが踊る空中ステージを、キャラクターモデリングとしてはアーマー、相手方のアーマー、ヒロインとその他のチアガール達をそれぞれ作り上げる必要があったとのこと。アセットの量全体としてはそこまで多いとは感じなかったものの、映像として作らなければならない要素は想定以上に多く感じたと加治佐氏。











ただこれらの工程を通して皆で感じたことは、一般的なPS3の時のオープニングムービーに近い映像として仕上げることができたという点。またこれによって、ゲームエンジンでもプリレンダーの映像を作れると改めて実感できたと加治佐氏は語りました。また、プリレンダー用ソフトの場合、30~50台のサーバーでやらなければならなかった工程を、1台のマシンで90分程度の間に実施できた時はやはり驚いたとのこと。また、アセットを作るデザイナーにとっては見た目を常に確認できたのが利点だったと言います。これについて「比較的最終出力に近いモノをリアルタイムで確認できた点がよかった」と高橋氏は当時を述懐します。

ですが、クオリティにおいてはプロデューサー側の認識と制作側で乖離があったとも。デザイナー側としては、初めてのプロジェクトという視点から見て、PS3並のクオリティは悪くないと感じていたものの、プロデューサーサイドとしてはPlayStation 4並かそれ以上のクオリティを期待していたとのこと。それを受けての反省点は、このプロジェクトが制作側にとってゲームエンジンを活用した初めてのプロジェクトだったにしては、複雑だったということ。

また、プロデューサー側の要望に応えるには、技術的部分を掘り下げるエンジニアが必要だと感じるようになったとのこと。

徹底的な技術検証で、アンリアルエンジンの強みを見極める





そこで「KURO1.2」では目標を「ゲームエンジンの仕組みを理解しフォトリアルな表現を達成する事」に定め、10人いたデザイナーを2人に減らしつつ、エンジニアを新たに1名追加。この体制で、2015年1月中旬から2月中旬までの1か月間、技術検証に注力していきました。プロジェクト開始時には、UE4のバージョンがアップされたこともあり、UE4.5が採用されています。

その際、エンジニアとして投入されたプロダクションエンジニアの松村知哉氏は、プロジェクト参加時にUE4を触ったときの印象について、「プリレンダーでの画の出し方とは全く違うことが調べれば調べる程明らかになった」と語りました。

例えばプリレンダーの場合、レイトレーシングの機能が標準搭載されていることから光の状況などは自動的にシミュレーションするようになっているのですが、UE4で同程度の効果を出すには、事前に緻密なセットアップが必要になるとのこと。とりわけ研究したのがライティングの手法。そこで「KURO1.2」では、「とにかく岩、草といったものをリアルに表現しよう」という目標の元に検証を進めたと松村氏。



というのもUE4の場合、ライティング関連では、まず全てのオブジェクトに対し、それが動的なのか、静的なのかをあらかじめチェックしておく必要があります。更にライティングについてもリアルタイムにライティングを計算するMovable(動的)ライティング、ライトマップにあらかじめベイクし影も固定するStatic(静物)、そして、直接光による影をリアルタイムに計算しつつ、間接光はあらかじめライトマップにベイクするStationaryと大きく分けて3種類あります。それらをあらかじめ設定しておかないと映像制作時にエラーが返ってきてしまうからです。ここは「一度設定すると、あとはシミュレーションでいいところまで映像が出てくるプリレンダー向けソフトとの大きな違い」と加治佐氏は指摘します。ただ、プリレンダーのCG制作においても数年前はこのような制作方法だったと加治佐氏。つまり、レイトレーシング機能がMayaなどに標準搭載される前は、レンダーマンをレンダラーとして、またはシャドウマップベースのレンダラーを用いるのが一般的だったからです。ただ、その後プロジェクトを重ねていく中で、「ゲーム的なアプローチは別なのでそれを組み合わせれば現在のプリレンダーと同じくらいのクオリティを出せる」と思うようになったと加治佐氏は当時を振り返ります。

一方、ゲームエンジンの要であるリアルタイムレンダリングについては、技術が日進月歩で発展しており、新たな技術でレイトレース的な映像効果を生み出す技術も生まれ、UE4はそれを即座にエンジンに取り入れているので、これらの検証も進めたと松村氏。具体的な例として「Distance Field」についてあげました。結果的に「Distance Field」を活用すると、高精度な影が得られるものの、各オブジェクトに対し高解像度でのベイクが必要であるうえに、変形なども伴う動的なオブジェクトには使用ができないということから、今回の舞台である「森」というシチュエーションで使うのは困難だとの判断で、採用を見送ったとのこと。逆に「街中で建物が多いシチュエーションだったら、もっともシンプルにベイクできる」と、この技術を活用可能なシチュエーションについても松村氏は分析しています。これらの検証を経て、岩、苔、水面といったものをリアルに表現できればより複雑なものができるという視点で研究を重ねていったのです。

「KURO1.2」では、小島のようなフィールドに、岩、苔、海面、ドラゴンの石像的なオブジェならびにルービックキューブを設置しました。そのすべてがまるで実写のように見えるほど現実感にこだわったのです。その結果、UE4.5は、金属やプラスチック、水面などは表現しやすい一方、人肌、ゼリー、髪の毛の表現はまだ難しいという結論に至りました。これについては、「『KURO1.0』では、髪の毛一本一本を示そうとしたシーンがあったが、それができなかった。あとは、人物についてもSub Surface Scatteringを使用しようと思いながらも、当時はそのためのパラメーターが少なく、うまく実装できなかった」と高橋氏は当時の状況を振り返ります。

また、最近の技術的状況についても、「たしかにGDC2015でのデモで登場した、凧を追う少年の表現ではだいぶ良くなってはいるものの、プリレンダーの人物表現までには至っていない」とUE4における人物表現の限界について加治佐氏が補足しました。そこで題材の選定としては、MARZAが得意としているキャラクターと、UEの得意としている質感表現、とりわけ硬度のあるオブジェを用いたもので、かつこれまであまり表現されていなかったもの、ということで、ディフォルメ表現も効果的で、しかもリアルな質感が強みになるドラゴンベイビーを作ることに決定したのです。このように一見直感的に題材が選ばれているようで、実はその背景には冷静な分析結果があったことが明らかとなり、同作品がテクニカルデモであるということを改めて示した形となりました。

アンリアルエンジンの強みとMARZAの強みを統合させて作り上げた「Happy Forest」









そこでいよいよ、現在話題となっている「Happy Forest」となる「Kuro1.5」に取り組むこととなったMARZA。2015年の2月中旬から3月末にかけて制作するにあたり、改めて組織を再編することになりました。エンジニアを松村氏の他にもう1名を追加して2名に、デザイナーも5人が加わり総勢9名としました。UE4.6を使用しての制作です。制作時に使用したソフトですが、背景にはレイアウトのスクリプトがUEに既にあったため3ds Maxを採用。

ただシーンの中心、実写で言うところのプロップ的な樹木についてはMudboxを駆使してスカルプティングしたと高橋氏。これに対し、ドラゴンのモデリングはZbrushでおこない、それをUEで展開したとのこと。スカルプティングツールも使い分けていることにこだわりが感じられますね。

なお、ドラゴンベイビーですが、デザインを最終稿に持っていくまでが大変だったと高橋氏。ディレクターからの課題は「UEの質感表現の秀逸さを活かしつつ、可愛さを出してほしいが、世に出ている多くのドラゴンとの差別化もしっかりやって!」という禅問答のようなもの。事実、担当したデザイナーは非常に長い時間頭を悩ませていたとのこと。しかし、ここはプロ。最終的にはいくつかの候補の中から、アーティストとディレクターがそれぞれ関わりながら案を決定していきました。





一方、「Kuro1.5」におけるエンジニアとしての仕事は、主に2点。まずは、ライティング関連の最新技術をひも解いていくということを中心に進めたという点、もう1点はEye Shaderの開発です。GDCなどでの発表内容を参照しつつ、光の屈折、映り込み、奥の陰影、濡れ感などをシェーダーの構成要素として追加。UEのブループリントで設計し、瞳をリアルに表現しました。シェーダーの設計ですが、ブループリントで開発することで「デザイナーとやりとりしながら最後のほうは詰めていくことになるので、開発経過をリアルタイムで見ることができたのは、やりやすかった」と高橋氏はその感想を語りました。





また、グローバルイルミネーションについては、「特に動いているキャラクターにどう設定したらいいのかはかなり調べた」と加治佐氏。当初は想定より効果が見えにくかったとのこと。従って効果を強調するうえでの「セッティング」をしなければならなかったとのことです。 

総じて、UE4を用いて映像制作を進めるうえで、Mayaなどのプリレンダー用ソフトと改めて違うと感じたのは「即興性」だと言います。

例えば「Happy Forest」の冒頭で登場する古ぼけた巨木。もともとこれはあくまで背景の一部のパーツ用につくっていたものだったとのこと。リアルタイムで「舞台」をチェックしている中で偶然この「情景」に巡り合ったとのこと。「あまりにもよくできていたので冒頭シーンに入れることを決めました」と加治佐氏。なので「ステージが森で、役者がドラゴンでという意識で撮影に取り組み、撮れるところを撮って、エディットはディレクター側でということができました」とのこと。これは、リアルタイムかつインタラクティブに、様々な角度から素材確認ができないプリレンダーCGの制作では起きえないことです。

また、この手法を発展させていけばテレビの中でリアルタイムに何かをキャプチャーし、状況にあわせてコンテンツを変化させたり、視聴者の動向にあわせ、動的に視たいと言われたものを見せるということもできるのではと実感したとのこと。





ゲームエンジン民主化の時代においてその果実をつかみ取れるかはここ数か月が勝負! 現在はUnityに挑戦中。詳細は、2016年3月ごろまでには発表予定!





このような技術的な研究と試行錯誤、そして学びの上で「Happy Forest」は7月に公開されました。「その後、1週間くらいで一気に視聴者数が伸びました。主に日本のCG専門誌のみで記事をフィーチャーしていただいたのですが、実際にはロシアから1日に1万くらいアクセスがあり、続いてブラジル、更に北米系で、最終的には北米からのアクセスが一番多くなったという感じです」とこのコンテンツがいきなりグローバル的な注目を浴びていたことをプロジェクト・マネージャーの宇津野氏が明かしました。視聴者からの反応もポジティブで、「いいね」の数や、メッセージにも驚いたとのこと。

これら一連のプロジェクトを終えての感想を聞くと、まず開口一番に皆が口をそろえて言われていたのが「CG制作に何か新しいものを感じた」という点です。エンジニアの松村氏は「UE4.9では、Facewearというフェイシャルのキャプチャーも連動するようになっているみたいなので、ライブ演技などをして即座に映像を出せるのではと感じています。そうなるとリアルタイムならではの映像で、プリレンダーと全然ちがうと言えますね」と日進月歩で変わるゲームエンジンの技術に期待を寄せます。一方、「CGを展開できる幅がすごく拡がった」とは、加治佐氏の談。そしてその可能性を拡げていくためにも「ゲーム業界で行われているGame JamのようなもののCG映像版ができればいいなと思っています。みんなで短時間にラフを作るみたいな。そういった活動を通して短時間でより多くのモノを生み出せる体制を作れれば」とのこと。これが実現したらハッカソン、Game Jamに続く新たなJamが日本発で生まれるかもしれません。

一方、高橋氏は、モデルデザイナーとして「ディフォルメキャラクターからフォトリアルまでリアルタイムで表現できるので、いろいろなメディアに対応したキャラクターを作れそうだな」と実感したとのこと。つまり、様々な依頼にあわせてそれに必要なパッケージングができるということを感じたとのことです。

当然、本作のOculus Rift 対応なども気になっていたので聞いてみました。「もちろん検証はしました」と加治佐氏。しかしOculus Rift対応にするためには、背景のポリゴン数なども工夫するなど、フレーム落ちを防ぐことをあらかじめ意識してモノづくりをしなければ理想的なコンテンツは作れないと実感したとのことです。また、ゲーム的モノづくりについて改めて理解を深めないとVR映像には望めないとも。

これらの言葉を伺う限り、今回の経験は、MARZAにとって着実に新たな「知」をスタジオとしての礎に取り込む絶好のチャンスになったようです。事実、今村氏は、「今回のプロジェクトを契機に新しいビジネスを開拓したいです!」とキッパリ。ゲーム業界もそうですが、CG業界も競争過多による価格競争がし烈になる一方。そのような中で「UEを活用するといった取組みを通して新しいモノを生み出していきたい」とのこと。また、CGスタジオのプロデューサーとして、このプロセスにビジネス的な「何か」を感じており、その果実をつかみ取れるかはここ数か月が勝負だと感じているとのことです。それをふまえつつ、現在はより規模を大きくして、Unityを使ったより大きなプロジェクトを進めていることを明かしてくれました。詳細は、2016年の3月には明らかになるとのことです。ゲームエンジンの開放や、VR解禁前夜という激動の時代の中、慎重論も聞こえますが、むしろこのゲーム開発とは畑違いの隣接領域がにわかに活気づいているのは新たな時代の幕開けを感じさせます。しかもその1社が初音ミクライブなど常にCG映像表現に一捻りを加えてきたMARZAであるだけに、今後の展開が楽しみです。
《中村彰憲》

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