米国ゲーム人口拡大はさらに続く…ESA副会長にインタビュー―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第49回 | GameBusiness.jp

米国ゲーム人口拡大はさらに続く…ESA副会長にインタビュー―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第49回

6月14日から16日までの会期中に、293もの出展者により2,000もの商品が紹介され、68,400人が参加しただけでなく、オンラインで数百万人視聴するなど大盛況のうちに終了したE3。

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■米国では市場規模300億ドルを達成。『Pokemon GO』の社会現象化も市場に影響

6月14日から16日までの会期中に、293もの出展者により2,000もの商品が紹介され、68,400人が参加しただけでなく、オンラインで数百万人視聴するなど大盛況のうちに終了したE3。インサイド及びGame*Spark編集部は昨年に引き続き、E3を主催するESA(エンターテインメントソフトウェア協会)に独占インタビューを敢行しました。今年対応いただいたのは同団体のCommunication and Industry Affairs担当Senior Vice Presidentであるリッキー・テイラー氏(Ricky Taylor)。昨年の状況から今年前半までの業界の状況やE3の位置づけ、そして今後の展望まで語ってもらいました。

――まず、2016年のゲーム業界に関する印象を教えてください。

Ricky Taylor氏(以下、Ricky):2016年も最高の1年でした。クリエイティブなゲームが数多く生まれたと同時に、消費者も貪欲にあらゆるタイプのゲームを購入したからです。それはテレビゲームに留まらず、スマートフォンなどのモバイルゲームや、タブレット型デバイスに及びました。全世界でいうと1,000億ドル、米国だけでも300億ドルもの市場規模に及びます。このようなこともあり、現在、エンターテイメント産業において最もクリエイティブな才能がゲーム業界に集まりつつあります。これはゲームが受動的なメディアではなく、プレイヤー自身が主体的に関わることが出来るメディアだからです。また、友達やグループ単位で一緒にゲームが出来るという点においても他のメディアとは全く違うということが出来ます。だから様々な業界と連携することも出来、相乗効果が測れることからこれまでにない成長を見ることが出来たのです。

――2016年を象徴する出来事は何でしょうか?

Ricky:16年で社会現象を巻き起こしたのは『Pokemon GO』でした。これはおそらくアメリカだけでなく海外も同じだと思いますが。多くの人たちのイマジネーションを捉えました。ARを使ったゲームとしてここまで社会現象化したゲームは、これがおそらく初めてなのではないでしょうか。私自身、いろいろ人が町中に出かけて、モンスターを探している様子をみました。これはまさに新しいテクノロジーを使ってあらたな付加価値を生み出すゲーム業界の代表的な例とだと考えています。こういったARやVR技術を利用したゲームは、今後もっと増えることになるでしょう。このように新たなテクノロジーが導入されることでゲーム体験自体を改善、向上させ、普通では考えられることがない様々なアイデアで人々を楽しませることが出来るのがこの業界の特徴なのです。

ESA Fact Bookが示したここ数年の米国ゲームソフト市場規模とハードも含めた産業規模の内訳。こちらからダウンロード可能

■今年のゲーム業界の特徴は「無限(LIMITLESS)」。あらゆる可能性が現実化する

――17年の前半を一言で表すとしたら何になりますか?

Ricky:2017年のこれまでの展開をひとことで表すとすれば「無限」(Limitless)ですね。というのも我々、ビデオゲーム業界は進化の最中にあり、如何なる形で消費者にコンテンツを提供すれば彼らの心に響くのかをまさに理解しようとしている所だからです。オンラインの場合、如何に毎日プレイヤーとつながるのかを考えつづけています。それはゲームそのものでのつながりもあれば、オンラインコミュニティを通してという場合もあります。会話を盛り上げながらフィードバックをもらい、そこでの課題をすぐにでも解消するという具合です。だから、あらゆる意味での可能性の模索が始まったのです。それは如何にコンテンツを提供するかに留まらず、如何に新規の消費者にアクセスするか、価格設定は、コミュニティとの関係はどうするべきかなどですね。これまでもそれなりの成果を上げてきましたが、今後はこれら様々な分野でクリエイティビティを発揮することで発展が期待できるのです。

――今年のE3はいかがだったでしょうか?

Ricky:今年のE3を象徴したものにソニー・インタラクティブエンターテインメント(以下、SIE)による「PlayStation E3 Media Showcase」があります。ここでは「ゲーム」が発表の中心となっていたのです。つまり「ゲーム」によって自社のメッセージをストーリーにして示そうとしていたのです。いまはネットの時代です。ですので、まず「ゲーム」そのものを見せれば、興味を持ったひとはプロデューサーやクリエイターによる解説などさらに深くところまで情報を得ることが出来るのです。

そのような中、E3は「エレクトロニクスエンターテインメント」の展示会としてゲームそのものの他に、ESL(Electronic Sports League)などのイベントや業界関係者が未来について語るシンポジウムなどを同時開催しました。これら全てのエンターテインメントが近い将来、どう発展するかを確認するのがE3なのです。

SIEメディアショーケースの主役はゲームだった

――昨年話題となっていたVRなどについて、今年の出展状況はいかがでしたか?

Ricky:今年の出展傾向を見ると、VRの出展もかなり増えました。120もの出展者がVRコンテンツを展示したのです。これは昨年から136%の増加率です。わずか数年前、VRコンテンツの出展者はゼロだったのにもかかわらずです。ここからも如何に業界がVRに対し感心を抱いているかが分かると同時に、VRはゲームプレイなどのエンターテインメントに加え、それ以外の業界をも変えるのではという声も出ています。まず、教育手法が変わるでしょう。さらに歴史的イベントの体験、株式投資などVRは日常生活を洗練化したり、付加価値を提供することが出来るのです。そして、ゲームは人々のライフスタイルにVRを導入するきっかけとなるのです。

ですので、今回の調査で、回答者の3分の1が今後、VR関連ハードを購入すると答えたことにも何の驚きもありません。来年同じ調査をしたとしたら、さらにその数は増えていることでしょう。消費者は次の時代のエンターテイメントを常に望んでいます。そして、VR、AR、MRはまさに次世代を象徴する新境地と言えます。この後もより多くひとがこの新しいエンターテインメントに嬉々として参加することになるでしょう。最近、話題になったVR作品は『バイオハザード7 レジデントイービル』ですね。あそこまでの恐怖は私もこれまで感じたことがありませんでした。その他にもこれまで経験したことのない作品、自分でプレイしてから思わず他の人にHMDを渡して体験を共有したくなるものが出てきていると思います。

――ゲームアプリなどの状況はいかがでしょうか?

Ricky:スマートフォン用のゲームアプリが生まれたことで、ゲーム人口自体が拡大しました。なので、従来のゲームプレイヤーがスマートフォン用ゲームアプリへと逃げてしまったということはありません。むしろ、ゲームプレイヤーが単純に増えたというべきでしょう。なので、もはや「誰もがゲーマー」と言える時代となりました。それに異論を示すひとたちには私は常にこう聞き返します。「あなたのスマートフォンを見せてください。このアイコン、このアイコン、このアイコンはゲームですよね!」と。アプリストアの売り上げランキング上位にくるのは常にゲームです。また、アプリとしてはコアなものからカジュアルなものまで数多くあることから、あらゆる層に対し訴求することが出来ています。音楽、カラオケ、バトルモノからパズルモノまでとあらゆるものが集まっているのです。

■さらなるイノベーションが進むゲーム業界。他のメディアも巻き込んでさらなる発展が続く


――Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)の反響はいかがでしょうか?

Ricky:任天堂はゲームに関する「イマジネーション」を的確に捉え、新たな体験として提供することを得意としています。さらに誰からも愛されるキャラクターとともにこれらを提供することで、多くのユーザーが次世代のテクノロジーを体験したいと思わせるのです。そして単純にNintendo Switchが素晴らしい商品であることも忘れてはなりません。まさに優れた商品と優れたゲームを提供すれば消費者は必ずついてくるということの証とも言えます。任天堂はその点におけるリーダーと言えます。

――最近は、ハリウッド映画のゲーム化も進んでいますがこの点についてどう感じられますか?

Ricky:今後、このような作品は増えていくことでしょう。例えば今年、Insomniac Gamesによるアクションゲーム『スパイダーマン』の発表があり、スパイダーマンが網を投げて、空中に舞う、敵を拘束するというシーンがありましたが、こういった、コミックや映画に登場するキャラクターの能力の中にはゲーム的要素を含んだものが多いです。ビデオゲームというフォーマットで物語を語られるということは、もしかしたら映画などよりも、世界を拡張できるかもしれません。プレイヤー自身がその世界に入り、物語を展開することになるのですから。アメリカにおいて、もっともクリエイティブな才能が集まるのがハリウッドですが、昨今はハリウッドの人たちの多くがゲーム作りに関わるようになってきました。逆にゲームとして生まれたものが劇場用映画になるというケースも増えています。だからマルチメディア展開は必然的な進化の過程にあると言えるでしょう。

そういった視点から言うと、VRで、「スターウォーズ」シリーズのミレニアム・ファルコンに搭乗するという経験や、ライトセイバーを操るといった経験をしたことがありますが、まさに自分はジェダイの騎士だと感じてしまう程でした。VRだとそれが可能になるのです。

――これらを踏まえたゲーム業界の展望を教えてください。

Ricky:このようにこれからも我々の業界はイノベーションが進むでしょう。ある話では、現在25億人程のゲーマーがいると言われていますが、これからもさらに多くの人たちにリーチする必要があります。それによってゲーム人口の更なる拡大を目指せればと思っています。

――ありがとうございました。
《中村彰憲》

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