エクシヴィ近藤義仁氏とGugenka(R)三上昌史氏が語るバーチャルSHOWROOMER「東雲めぐ」爆誕のうらがわ―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第50回 | GameBusiness.jp

エクシヴィ近藤義仁氏とGugenka(R)三上昌史氏が語るバーチャルSHOWROOMER「東雲めぐ」爆誕のうらがわ―中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第50回

昨年末あたりから、急激に話題になり、現在まで様々なシーンを沸かしているバーチャルYoutuber。

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Gugenka(R) from CS-REPORTERS.INC 統括 プロデューサー三上昌史氏氏(左)
エクシヴィ代表取締役社長近藤義仁氏(右)

昨年末あたりから、急激に話題になり、現在まで様々なシーンを沸かしているバーチャルYoutuber。

仮想空間ライブサービス、「SHOWROOM」でも、その流れに乗る形で18年3月1日、「東雲めぐ(しののめ めぐ)」が颯爽とデビューし、初日にして約5000人ものビューアーを得たことで話題となりました。そして、同キャラクターは、XR(VR、ARならびにMRの総称)の伝道師として知られるGOROmanこと近藤義仁氏と、人気アニメのVRプロデュースで名を馳せるGugenka(R) from CS-REPORTERS.INCの三上昌史氏とのタッグで生み出されたキャラクターだったのです。そこで今回はこのお二人に、「東雲めぐ」誕生の背景を伺ってきました。

東雲めぐ

◆VRを活用したアニメ制作のイノベーションを進める技術がベースで生まれたバーチャルSHOWROOMER


――まず、「東雲めぐ」バーチャルアイドルのプロデュース体制について教えてください。

近藤義仁氏(以下、近藤):「東雲めぐ」は僕たちがVRやモーション関連の技術を、キャラクターデザインや世界観設定などのプロデュースは株式会社シーエスレポーターズのGugenka(R)さんが担当して共同制作しています。リアルタイムモーションは弊社がOculus Rift向けコンテンツの開発で培った技術がベースになっています。配信は本当に「東雲めぐ」自身が自宅からおこなっているんです。

――つまり、御社がこれまで培ってきた、VR開発技術が基礎になっているわけですね。では、これは、バーチャルアイドル配信に特化した技術なんですか?

近藤:いえ。もともと、この技術は、バーチャルアイドル配信とはまったく違う文脈で開発していたんです。PC向けVRゴーグルと、モーションコントローラ、そしてUnityなどを組み合わせれば、簡単に「動画」が作り出せるので、それを応用してアニメ制作の自動化が出来ないかと模索していたんです。現在、アニメの制作プロセスかかなり非効率なので、それを解決出来ないかなと思ってこの開発してきました。これを弊社ではAniCast(R)と呼んでいます。

――たしかに、前回、取材した際は、バーチャルアイドルについてはまったくお話されていませんでしたよね。

近藤:実は、VR技術やFaceRigという仕組みをつかって、バーチャルキャラクターになりきるっていうのはずいぶん前に、弊社でも実現していました。私やスタッフもキャラクターになって「わー!」って盛り上がっていたのですが、もう飽きてしまっていたんです。

――では、バーチャルキャラクターのプロデュースをもちかけたのは、三上さんですか?きっかけは?

三上昌史氏(以下、三上):私自身はこれまでも、デジタルアクターの、高崎柚乃といったオリジナルキャラクターや人気アニメなどのVR体験などをプロデュースしてきました。このような中、GOROmanさんとお会いしたのが、VIPO(映像産業振興機構)が昨年10月24日に開催したセミナーの際、講演者として同席したときです。

近藤:ある意味、僕らはライバルだったとも言えますね(笑)

――では、ライバル同士だったのにコラボレーションしたのはなぜでしょうか?

三上:セミナーのときにAniCast (R)の前身となる技術を紹介していて、それにすごく驚いたんです。実は、「東雲めぐ」自体はしばらく前に生まれていて、東京ゲームショウ2017にも出展していました。自社のオリジナルIPをやりたいというのもありましたが、単純にキャラクタービジネスをやるというよりは、弊社独自の体験を生み出したいなと思っていて、そこで考えたのがこのキャラクターだったんです。最初にやろうとしたのが「東雲めぐ」を活用したリアルタイム音楽ライブでした。VR上で且つ、マルチプレイヤーで、数百人が同時に視聴できるというものです。モバイルで実装しようとしたのですが、通信速度の問題を感じてしまい、一旦、プロジェクト自体を止めていたんです。そんなときに、見たのがあの技術デモでした。

◆「Miku Miku Akushu」から培われた「存在感」を高める技術が、バーチャルキャラクターに命を吹き込むと直感


――どんな点に感動したのでしょう?


GOROman氏によるプレゼンスの研究が存分に発揮された東雲めぐ

三上:絵づくりだったりとか、キャラクターに魂があるように見せる方法など、単に「ポン」とキャラクターを仮想空間に出すのではなく、「プレゼンス」というか、どうしてそのキャラクターがそこにいるのかという点も考えてつくっている感じがしたのです。ユーザーが見ている方向に視線を向けてくるといった本当に細かな部分までですね。こういった部分は、そこまでVRやMRに関心がない人でも、その驚きに気づくのではと、直感しました。

近藤:これは自分が「MikuMiku Akushu」や「Mikulus」のときからずっと培ってきた技術ですね。

三上:こういった部分はやはりセンスが大切ですよね。積み重ねもあるので。また、広い意味でのサービスは近いように見えても、細分化していくと、その方法やアプローチは弊社とXVIさんでは明確に違いがあるので、いっしょに仕事をすれば、それぞれの強みを活かせるなと思ったんです。

近藤:セミナーの際、三上プロデューサーが、AniCast (R)プロジェクトのディレクターであり担当した室橋に「これ、売るんですか」と聞いてきたので、「う~ん、別に」的に答えてました。「なんとなくVIPOさんから呼ばれたので、出展してみました」といった感じで(笑)。

三上:この時、このような技術があれば、たとえ、マルチプレイで数百人が見るようなライブではなくても、Vチューバ―的なコンテンツならお客さんも面白いと感じてくれると思ったんです。そこで、セミナーがあったその夜にメールを送りました。

――メールを受けたときにどう思われましたか?

近藤:「この技術を使って「Vチューバ―」を商業化することを検討されてますか?」といった内容だったので正直驚きました。僕の中で、モーションキャプチャをライブで使うということ自体に対するマイムーブは既に終わっていたので。2年くらい前に(笑)。だいだい、お金の臭いがする前にやめちゃうんですよね。でもその提案を聞いたとき、「たしかに、これだったら、Vチューバ―化するのもありじゃん」となったんです。

――(笑)。では、開発もVチューバ―が流行りだす前には着手していたんですね。

近藤:11月ごろには進んでいましたね。ただ、SHOWROOMでのライブ配信をアニメ的表現としてやる試みは弊社としてはあくまでもAniCast (R)で実現できることの一角として進めていました。まさに「アニメ」を「キャスティング」するサービスのひとつですから。Anicastだと自分が演じながらカメラの動きまで調整できてしまうので。

三上:もともと既に存在していたVチューバ―のようなものを作るつもりはありませんでした。

――では、どうしたんですか?

近藤:私と室橋、三上さんの三人でSHOWROOM株式会社のCTO、佐々木康伸さんに会いに行ったんです。AniCast (R)のデモを持って行ってみせると、「これ、前からやりたかった事なんです」となって、話がどんどん盛り上がっていったのです。そこで、SHOWROOMERに、有料で購入する「ギフト」をその場で提供できる「ギフティング」を仮想空間でも出来るようにすればといったアイデアを出すと、その場で「おもしろい!やりましょう!」ということになり、会社に戻ってくると、SHOWROOMの「ギフト」システムに関するAPIがもうメールで送られていたんです。

――すごいですね。

近藤:CTOが独断でOKして社内資料が送られてくるという...ということで弊社も1-2週間程で、バーチャルギフティングの仕組みを開発してしまいました。普通のSHOWROOMERの場合、実写なのでギフトを配信画面内に送ることは出来ないんですが、弊社の技術はギフトをそのまま配信中のVR空間内にビジュアル化することを実現したんです。これで、バーチャルSHOWROOMERは観客から送られたギフトを実際に持ったり、頭にかぶせたりすることが出来るようになりました。また、贈り物には送れ手からの名前を入れられるようにしています。


バーチャルギフトを仮想空間で実際に持ったり、頭にかぶせたりも出来る。


◆バーチャルSHOWROOMER「東雲めぐ」プロデュースへの道程


――「東雲めぐ」のデザインを担当したアーティストはどのような方ですか?

三上:キャラクターのデザインは弊社のデザイナーがやっています。敢えて著名なキャラクターデザイナーなどにお願いしなかったのは、変化を重視するキャラクターである「東雲めぐ」に単純に人気があるからという理由で、特定のデザイナーを起用してしまうと、自分たちのやりたいことが出来なくなる気がしたんです。

近藤:大御所の先生がデザインすればするほど、制約が生まれるんですよね。

三上:アニメ業界の場合、声優さん押しやイラストレーター押しなどを考えながら企画を進行しがちなのですが、逆に「色が無い」キャラクターと考えたときに、決して有名というわけではないけれど表現力のある弊社のデザイナーに任せるのが適切と思ったんです。

――キャラクターのコンセプトはどういったものでしょうか?

三上:そもそもですが、敢えて「ガチガチに決めない」というコンセプトにしました。人生も将来どうなるかなんて誰も分からないですし、10年前の自分も今の自分がこうなっていたなんで絶対分からなかったので。でも今のキャラクターって、すごく固められているじゃないですか。そこで、「東雲めぐ」はGugenka(R)とXVIさんだけでなく、リスナーさんやさまざまな人たちが関わる過程ですらアイデンティティの一部とすること自体が面白いんじゃないかと思ったんです。なので、「このキャラクターだから、このようにしゃべる」ということを決めないのがコンセプトになりました。

――では、設定は全くない?

近藤:唯一あったのが、デビューする段階で中学三年生で歌手を目指しているということだけでしたね。

三上:そこは今でもブレずにいますね。あとは、ネタに走らないというか、例えば「コーラにメントスを入れてボカーン☆」として喜ぶといったキャラクターではなくて、普通の人にも自然に受け入れられるコンセプトにしました。

近藤:差別化は分かりやすいのですが、間口が狭くなってしまうんですよね。

三上:競合も多いですし。なので、「こんな娘もいたらいいよね」という大きな枠はあっても細かいところは決めないようにしました。これもコンセプトですね。

――反響はいかがでしょうか?

近藤:最近も6000ビューには達しているなど好調です。

――「めぐ」ちゃんならではの企画はどのように考えているのでしょう?

近藤:ほとんどおまかせです(笑)。

三上:彼女は僕たちからみても実在している人物といえるので、基本方針として、配信は好きなようにやってもらうようにしています。ただ、そのままだと人生の波風が立たないので、それを立たせるためのイベントをすこしずつおこなっています。

近藤:以前、三上さんが言った、いいたとえがあって、これは、テーブルトークRPGで、僕らはゲームマスターなんじゃないかと。「めぐ」ちゃんがRPGをプレイしているのを僕らが見守っているという感じです

――(一同笑)

三上:私たちがゲームマスターとして、「人形劇をする」とか「歌を歌う」といったことをコンセプトとして提示し、それをどうするかは「めぐ」ちゃんに任せてあるんですけど、彼女は私たちが考える予想をはるかに超えたことをやってくれるんです。彼女の料理の仕方で、イベントがまったく違う方向へと変化していくのがだいご味ですね。

近藤:まさにバーチャル・タレントですよね。声優さんは台本をもらって演じることが前提なので、「めぐ」ちゃんのようなことをするのは全く別だと思います。

三上:「めぐ」ちゃんは実在する。

――実際、これまでどんなことが起きましたか?

近藤:この前、三上さんの案で人形劇をすることになったのですが、「めぐ」ちゃんが考えてきたのがお惣菜のたくあんを擬人化した、「たくあんマン」だったんです(笑)。



たくあんマンは、東雲めぐちゃんによるオリジナルデザイン。

三上:「たくあんマン」は「めぐ」ちゃんがデザインしたんですよね。指を使ってiPadで。あと、私の想定では人形劇もさくっとやってさくっと終わると思っていたんですが、「一方で」「一方で」を連呼して話をどんどん広げていったり....リスナーさんのコメントが入って盛り上がったりと、想定外のことが多々起きて盛り上がりました。天然な部分もありながら、計算された所もあって。

◆リスナーとのインタラクションで拡大する「東雲めぐ」ワールド


――リスナーさんとのコミュニケーションで興味深いことはありましたか?

三上:「たくあんマン」の人形劇をやったときに、小学3年生のリスナーさんが描いた「鬼」のイラストを使って劇をやっていたら、それを見ていた大人のリスナーさんが「面白かった」と評価して更にそれを漫画にして送ってくれたんです。

近藤:その他にも、「たくあんマン」の人形劇をしているとき、リスナーさんがどんどんだるまを送ってきて、最終的にはだるまで、「めぐ」ちゃんが見えなくなったり、といったこともありましたね。もともと、リスナーさんが、PNGで素材を送ってくれれば、バーチャル空間にすぐに取り込むことが出来るシステムを実装していたのですが、僕らが開発した技術で、用途の想定を遥かに超えたことをやってくれるのがうれしいですね。

三上:ある意味、リスナーさんも、「めぐ」ちゃんの世界の住人になってくれているんだなと思いました。

――では、これからの「東雲めぐ」ちゃんの展開を教えてください。

三上:「めぐ」ちゃんの世界が、現実の世界を彩ってくれるような、リスナーさんの毎日が楽しくなるようなことをやっていきたいなと思っています。自分もその世界の一員なんだと思ってもらえるといいなと思いますね。知り合いの中にひとりでも素敵なひとがいれば自分の世界が彩られるじゃないですか。でも、そういったことってあまりないのですよね。「めぐ」ちゃんがそのひとりになれればと思うんです。

――今回の成功を経て得た事はなんでしょう?

近藤:面白いと思ったことが、「シナジー」ってこうやって発揮するんだなと改めて思ったことです。僕と三上プロデューサーはそれぞれVR/AR技術を使ってキャラクターを生み出すっていうことをやってきました。東京ゲームショウでもそれぞれ別の場所でVRのアトラクションを展開したり。むしろ双方はライバル的ですよね。それがこんな形でキャラクターをプロデュースできた。

三上:「めぐ」ちゃんもいまある技術で自分なりに考えて、歌ってみた動画を自分でつくったりしてくれるんです。もともと、こういうことが好きだった方だとは思いますが、私たちが思いつかないことをやりますよね。どうゆう出会いがあるかで、クリエイティブも変わってくるというのが特徴ですね。

近藤:AniCast (R)としては、これから、Vチューバ―やSHOWROOMERの配信ツールというよりは、アニメーション制作のツールへと発展させていきたいと思います。

三上さん、近藤さん、ありがとうございました!


(C)うたっておんぷっコ♪/(C)Gugenka(R) from CS-REPORTERS.INC
《中村彰憲》

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