プラチナゲームズにおけるゲーム開発とは? 神谷チームの面々に聞く | GameBusiness.jp

プラチナゲームズにおけるゲーム開発とは? 神谷チームの面々に聞く

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オリジナリティ溢れるゲームで世界的なヒットを飛ばす、業界の風雲児プラチナゲームズ。その同社で開発スタッフを募集中です。配属先は稲葉敦志プロデューサーと神谷英樹ディレクターによる新作タイトル開発チーム。しかし、開発チームの一員として働くというのは、どういうことなのでしょうか? 神谷チームの先行開発スタッフに話を伺いました。




パーティションで区切られていることの多いゲーム開発スタジオ。特に家庭用ゲーム機向けの大作チームでは、多くがそんなスタイルではないでしょうか。しかしプラチナゲームズでは全チームがワンフロアに収まっており、立って見渡せば全メンバーの様子が確認できます。右手には社長の三並氏、プロデューサーの稲葉氏の机があり、経営陣や管理職もワンフロア。ディレクターの神谷氏の席も開発チームのど真ん中です。作業エリアも特別かと思いきや、あまりに普通で、へだたりがないので驚かされました。

プラチナゲームズの始業時間は午前9時半。神谷チームの一日は朝礼から始まります。神谷氏を中心に簡単な伝達事項などがあり、和気藹々とした雰囲気です。「今日も一日がんばりましょう!」と、開発チームの結束にも効果的だとか。これまた驚いたのは、神谷氏を中心に同心円状にチームの机が配置されていること。そのため全員が席の前に立てば、すぐに朝礼が開始できる仕組み。文字通り神谷氏がチームの中心となって開発が進んでいます。


毎日の業務は朝礼から始まる。

毎週月曜日には全社員を集めて、大会議室で全体朝礼が開催されます。ここでは全社に関わるさまざまな情報共有が行われます。各チームごとにセクションリーダーが集まるリーダー会議も、大会議室で不定期に開催。神谷チームでは11名のリーダーが集まります。細かい打ち合わせは日々、自然発生的に行われているため、ここで話し合われるのは納期前のスケジュール確認や、仕様の刈り込みといった重めの内容。そのため真剣な雰囲気で、ピリピリとした空気が漂うのだとか。

小会議室では適時、セクション単位でのミーティングも開催されます。リーダー会議で決まった内容が現場スタッフに伝達されたり、仕様面で大きな変更が起きたときなどに、適時集まって行われます。取材当日は背景チームのミーティングが行われ、作業の分担確認などが行われていました。


大会議室で行われるリーダー会議。


小会議室で行われるセクション会議

もっとも、こうした「しゃちほこばった」会議はプラチナゲームズではあまり多くはありません。ちょっとした仕様変更や打ち合わせは、そこかしこでスタッフが集まって、自然発生的に行われています。「こんなアイディアはどう?」「ここは、こうした方がおもしろい」など、自由闊達な議論が展開。ディレクターやプランナーの指示を通り越して、プログラマーが勝手にモーションデザイナーに攻撃モーションなどを発注し、実装するといったことも、普通に見られるとのことでした。

時にはそうした打ち合わせを、ディレクターの神谷氏がそばから覗いていることも。こうしたボトムアップのモノ作りが、高いクオリティを支える源泉になっているようです。とにかくみんな、元気で明るく、よく喋ります。社内のあちこちには、フィギュアやプラモデル、ポップなどが並べられ、楽しげな雰囲気を演出。こうした遊び心や自由闊達な雰囲気が、面白いゲーム作りに繋がっていくのでしょう。






社内のあちこちで行われる小ミーティング。重要な決定や仕様変更が雑談レベルで決められていく。
■現場スタッフに聞く仕事のやりがい

●デザイナー編

背景デザイナーの鷲阪崇人です。これまで『ベヨネッタ』にかかわりました。背景デザイナーのやりがいは、画面の雰囲気からレベルデザインまで、ビジュアル面とゲーム性の両方をつきつめていけるところ。ゲーム性の部分ではプランナー、ゲームエンジンの部分ではプログラマーと、密接なやりとりをしながら進めています。プラチナゲームズの良さはゲームが世界中のユーザーに注目されていていることですね。ちょっと雑誌に情報が載るだけでも、インターネットで相当な数の書き込みがなされます。世界中の人に遊んでもらえるゲームが作れる。それが一番のやりがいです。

背景デザイナーの武市えりなです。以前は『MADWORLD』を手がけました。背景デザインはある程度、自分のイメージした世界観を作れる点が楽しいですね。ディレクターのイメージをたたき台に、こんな植物が欲しい、あんな建物が欲しい、と作り出せる。ゲーム全体のボリュームと直結するので、作業量も多いんですが、それだけにいろんなことが試せて、おもしろいです。プラチナゲームズは環境が良くて、わりと自由に作業をさせてもらっています。パソコンやツールなども揃えてもらえるし、社内の風通しも良い。決められた作業だけやって終わりじゃなくて、いろんな意見をぶつけ合いながら作っていけるんです。




背景デザイナーの鷲阪氏(右)と、プログラマーの大森氏(左)、齋藤氏(中)を囲んで、背景制作のミーティング。レベルデザインやゲームエンジンの領域に踏み込むため、自然と他のセクションスタッフを巻き込んでの打ち合わせとなる。

UIデザイナーの大倉麻衣です。ウェブデザインのアルバイトから入って、UIデザイナーの仕事が空いているとのことで、『ベヨネッタ』で社員になりました。メニューや画面レイアウトが好きだったので、ちょうど良かったですね。チュートリアルの設計なども行います。『ベヨネッタ』でも技をアイコンとキャラクターの動きだけで説明するチュートリアルがありますが、画面を見ただけで、頭にすっと入ってくるようなUIをがんばって作りました。プラチナゲームズの良いところは、みんな楽しいゲームを作るための意識が高くて、クオリティもすごいこと。まわりのみんながすごいモノを作るので、自然と触発されるんです。


ゲージアイコンのラフデザインを神谷氏(右)に提出し、チェックを受けるUIデザイナーの大倉さん(左)。ディレクターやプランナーの大まかな指示をもとに、各パーツをデザインし、プリントアウトしてチェックを受ける。プログラムで実装後、実際に操作をしながら、直感的に操作できるUIに調整が続けられていく。

モーションデザイナーの甲斐秀敏です。これまで『ベヨネッタ』を手がけました。はじめにキャラクター像などのとっかかりを提示してもらって、そこからイメージをふくらませて、モーションをつけていきます。『ベヨネッタ』でも女性キャラクターなのに男性的なモーションを付けて、ギャップを演出したりしました。こんな風にキャラクター性とゲーム性の両方で作り込める点が醍醐味です。うちの会社の良いところは、職種を超えてどんどん提案していけること。他社から来たスタッフに「そこまで口を出して良いんですか?」と驚かれることもしばしばです。なかなか珍しいんじゃないでしょうか。


プログラマーの齋藤氏(左)とモーションデザイナーの甲斐氏(右)。齋藤氏から発注された敵キャラクターの攻撃モーションが完成したので、確認してもらっているところだ。プランナーを介さずに、細部をプログラマー主導で作り込んでいくのがプラチナ流。

エフェクトデザイナーの安田隆弘です。プラチナゲームズに入社して4ヶ月目で、本プロジェクトが初めてです。今はプロジェクトの初期の段階で、内製のエフェクトツールをプログラマーと一緒に作り込んでいます。エフェクトはゲームで一番目立つところ。キャラクターの魅力を際立たせたり、印象的な世界観を構築する上でも必須です。なによりモノが破壊しても爆発しなかったら、寂しいですよね。プラチナゲームズに入社して驚いたのは、周りのスタッフが協力的で、自分の意見をちゃんと聞いてもらえるところです。遊びの部分だったりとか、自分の担当外のことでも、どんどん言える。そこはすごく大きくて、やりがいを感じます。

プログラマーの坂本氏(奥)と共に、内製ツールの開発を進めるエフェクトデザイナーの安田氏(手前)。最近ではエフェクト表現に物理シミュレーションが使われることも。プログラマーとデザイナーの二人三脚で、見栄えの良いエフェクトを効率的に作るための内製ツール開発が進められていく。
キャラクターモデリングの舟橋英志です。主にキャラクターなど、動くもののモデリングをしています。入社して1年4ヶ月の新人で、今のプロジェクトが初めてですね。まだまだいろんなことを勉強する毎日です。できるだけ疑問点を抱え込まないように、すぐに解決法を聞くようにしています。キャラクターモデリングは、自分でモデリングしたキャラクターを動かしてもらえる点が醍醐味。人気の職種だし、自分でも憧れでした。それが入社してすぐに、ゲームの代名詞とも言えるような、最も重要なキャラクターのモデリングを任せてもらえたんです。びびりましたけど、すごく嬉しかったです。
先輩から指導を受けるキャラクターモデリングの舟橋氏(手前)。入社1年半の新人モデラーで、キャラクターモデルの効率的な作り方をはじめ、あらゆることを勉強する毎日だ。疑問点を抱え込まずに、すぐに解消するようにしているとのこと。
●プランナー編

プランナーの柴田洋です。過去に『ベヨネッタ』にかかわりました。プランナーのやりがいは、全体を把握できるところですね。もともとデザイナー出身で、昔はキャラマン(キャラクター専門のデザイナー)でしたが、それだとできることが限られていました。それが今ではゲーム全体のことが考えられるので、ずっと楽しいです。指示をもとに一部だけ作るのではなく、全体を統括する。プラチナゲームズは誕生して数年の企業で、自分ががんばらないと、会社が消失してしまうかもしれない。自分が係わっているタイトルが、会社の屋台骨の一つを支えていることを考えると、頑張らないといけないって実感しますね。



プレイヤーキャラクターのアクションについて、プランナーの柴田氏(左)がプログラマーの齋藤氏(右)に相談中。ボタンの反応やステージの仕掛け、カメラのアルゴリズムなど、プランナーとプログラマーの二人三脚で仕様が詰められていく。

●プログラマー編

プログラマーの齋藤健治です。『ベヨネッタ』のメインプログラマーで、新作プロジェクトではプレイヤーキャラとエネミー周りを担当しています。プログラマーはゲームそのものを作っていると言えますし、そこが一番のやりがいですね。特にメインプログラマーは管理業務が中心ですが、今の担当パートはゲームの基本部分なので、楽しくて仕方がないです。またプラチナゲームズではある程度の仕様は決まっていますが、かなりプログラマーの方で自由にさせてくれます。ちょっとしたミーティングで、こっちの方がおもしろいとなったら、プログラマー主導で作り込んでいける。その自由度の高さがやりがいを感じますね。

●サウンド編

サウンドデザイナーの進藤雅人です。『ベヨネッタ』で効果音を手がけました。前職は楽器販売で、一念発起して会社を辞め、背水の陣で応募試験に臨みました。無事採用されて、本当に良かったです。効果音って地味な存在ですが、これがないとものすごく寂しいですよ。パンチが気持ちよく「バコーン!」って当たった時の音などが作れると、うれしいですよね。ただアイディアが全然浮かばない時は大変です。銃撃音など実在する音ならまだ簡単ですが、ファンタジー系など実際にない効果音がホントに大変で、ない知恵を絞って絞って作っています。この規模の会社で内部にサウンドチームを抱えている会社は少ないと思うんですよ。それだけサウンドにこだわっている証拠だし、比較的作りたい音を自由に作らせてもらっているので、楽しいですね。




サウンドデザイナーの進藤氏(左)が作成した効果音を、神谷氏(右)がチェック。ディレクターから効果音のリストをもらい、想像力をふくらませて、さまざまな効果音を創り出していく。

今日のゲーム開発には大きく「ウォーターフォール型」「アジャイル型」という2つの潮流があります。ウォーターフォール型は決められたスケジュールと手順通りに、粛々と進めていくスタイル。大規模開発に向く一方で、痒いところまで手が届くゲーム作りには向きません。アジャイル型は開発対象を多数の小単位(ステージなど)に分割し、短い時間で反復(イテレーション)を繰り返しながら進めていくやり方。画期的なゲームが生まれる可能性がある一方で、無駄が多く、大規模開発には向きません。

ウォーターフォール型はハリウッドスタイル、アジャイル型は古き良き「日本型開発」とも言えますが、実はこれ以外にごく少数の、第3の方式があります。それが「カウボーイコーディング型」といわれるもの。現場の開発者が荒馬を乗りこなすように、好き勝手に開発を行うスタイルで、しばしば駄目な開発スタイルの例とされています。しかし、カリスマゲームデザイナーと、現場スタッフの職人的な個人技が融合すると、非常に効率的な開発環境となり、大きなブレイクスルーをもたらします。

大作アクション『ベヨネッタ』の開発チームは約60名だったとのこと。ハイエンド機向けのタイトルの中では、かなり小規模だと言えます。これを100人、200人と増やさない理由の一つには、チーム内のコミュニケーションが薄まり、柔軟な開発ができなくなるから。そのぶんスタッフには2倍、3倍の能力と仕事量が求められますが、それをこなすだけの力量があるのでしょう。神谷氏をはじめ、個性的で高い能力を持つディレクターのもと、ボトムアップでゲーム開発を続けるプラチナゲームズは、カウボーイコーディング型の実践例という、希有なゲームスタジオなのかもしれません。


現在、プラチナゲームズでは主要な全ての職種で、新作タイトルの開発スタッフを募集中です。この記事をご覧になり、興味を持った方は、ぜひ公式サイトをご確認の上、チャレンジしてみてください。また、稲葉氏と神谷氏の対談も併せて御覧ください。




フィギュアやプラモデル、ポップなどがフロアのあちこちに並べられ、楽しげな雰囲気の社内。こうした遊び心や自由闊達な雰囲気が、面白いゲーム作りに繋がっていく。
《小野憲史》

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