【特集】プラチナ稲葉敦志氏に訊く、プロデューサーとディレクターに必要なもの | GameBusiness.jp

【特集】プラチナ稲葉敦志氏に訊く、プロデューサーとディレクターに必要なもの

ゲーム開発 プロデュース

【特集】プラチナ稲葉敦志氏に訊く、プロデューサーとディレクターに必要なもの
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2016年で創立10周年をむかえたプラチナゲームズ。最近でも『ニーア オートマタ』の成功が記憶に新しい、日本有数のトリプルAデベロッパーです。Game*Sparkとインサイド編集部は、京都BitSummit会場で、同社の取締役であり開発本部長 チーフクリエイティブオフィサーの稲葉敦志氏にインタビューを実施。最新の開発動向から、「ゲームプロデューサー」という立場の難しさまで、気になるトピックについて語ってもらいました。

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■Steamでのリリースは積極的にやっていく

――つい最近から、『ベヨネッタ』や『VANQUISH』といったプラチナゲームズの旧作タイトルが、Steamでも配信されて話題になりました。どのような方針なのでしょうか?

稲葉敦志氏: PCでのリリースは、積極的にやっていきたいです。PCゲームの世界は、誰もがウルトラハイスペックの本体を持っているわけではないので、ユーザーがそれぞれカスタマイズしています。統一された性能のハードで遊ぶコンソールとは別の世界です。プラチナゲームズとしては、とにかくたくさんのプラットフォームで出したい、元気なプラットフォームで出したいという考えがあります。そういう意味で、PCゲームは無視できない存在です。パブリッシャー側に対しても、PCで出したいと常々話していて、今後どんどん増えていくのではないかと思います。

――Steamとは打って変わって、2016年にはCygamesと共にスマホ向けの完全新作『LOST ORDER』を発表しました。こちらについてはいかがですか?

稲葉敦志氏: そうですね、本当にプラットフォームにこだわるつもりはないです。コンテンツメーカーなので、コンテンツを提供できる場があれば、何でもやりたい。ただスマホ専用だと、色々特殊なことを求められるので、その中で如何に“プラチナゲームズらしさ”を出せるかが勝負かなと。『LOST ORDER』に関しては、プラチナゲームズらしさ、というよりは、Cygamesさん、そして松野泰己さんとのコラボレーションになるので、松野さんの味をどれだけ出せるかがタイトルの主題です。


――2017年1月に開発中止が発表された『スケイルバウンド』について、何かコメントいただけるでしょうか?

稲葉敦志氏: ごめんなさい。色々な事情で今はコメントできないんです。

――大ヒットを記録した『ニーア オートマタ』にはじまり、任天堂プラットフォームのタイトル、そしてActivisionの欧米向けタイトルなど、開発ラインは着実に増えています。ターゲットもジャンルもそれぞれ異なるゲームを多数手がける中で、プラチナゲームズが貫いていることはありますか?

稲葉敦志氏: ユーザーがプラチナゲームズのゲームに対して思い描くのって、「クールなコンボ」だったり、「スタイリッシュなアニメーション」だったりすると思うのですが、そこはしっかり中心に置いておきたいです。先ほどの『LOST ORDER』など特殊なタイトルもあり、いろんなジャンルに行くのですが、アクションのインターフェース、そこから得られる気持ちよさ、スムーズさ、爽快感は大切にしたい。その上で、アクションRPG、アクションアドベンチャーなど、遊びの幅を横に広げていきたいと思っています。まだまだ自分としてもやりたいことはたくさんあるので、ラインの数を減らしたい思いは全くありません。

■自社IPタイトルも準備している

――プラチナゲームズは、自社パブリッシングタイトルには着手されないのでしょうか?

稲葉敦志氏: 準備はしています。社内でも言っていますし、自社で企画を作って、自社で開発して、自社で販売をするというところまでやります。

――そうなんですね! そのタイトルは規模としてはどんなものですか?

稲葉敦志氏: 資金的な面でいくと、例えばIPをプラチナゲームズが保持して別の会社にお金を出してもらうなど色々なパターンがあると思のですが、最初に出すタイトルについては、規模は小さめにしたいです。ものすごくピュアなプラチナカラーというか、濃縮されたものを届けられると考えているためです。規模よりも“純度”にこだわって出したいなと。


――先ほどのお話にあったように、プラチナゲームズといえば、やはり(シングルプレイの)アクションゲームジャンルが主体だと思いますが、今のゲーマーのトレンドを見た時に、ご興味のある他のジャンル・分野はあるでしょうか? 例えば最近だと、e-Sports系のシューター、オープンワールドのサバイバル、もちろんVRなども人気です。

稲葉敦志氏: オープンワールドのサバイバル系だと、これまで積み重ねてきたアニメーションのライブラリなど我々のノウハウを活かせる部分はたくさんありそうです。さすがにクールなコンボはないでしょうが(笑)。ただ、e-Sports特化のFPSは、プラチナゲームズが作る意味があるのかどうか、疑問も感じます。そこに新しいアイデアがあれば意味はあるかもしれません。ただし、“e-Sports”自体にはものすごく興味があって、チャレンジしていきたい分野ではあります。既存のものに対して同じようなゲームを作りたいわけではないです。

VRに関しては大きな可能性は感じるものの、個人的には、ハードウェアのテクノロジーがもう2段階ほど成長しないと、一般的なものとしては厳しいかなと感じます。例えば、ゴーグルが眼鏡のサイズまで小さくなって、VRとMRの機能が一体化するようなデバイスができれば、すごいかもしれません。

ゲームエンジンに関しては、様々なテクノロジーがありますが、これから先おさえるべきものは限られていると思います。プラチナゲームズ、僕としては自社でトライしていきたい。他社のエンジンを使いたい気持ちはあまりないです。

■ゲームプロデューサーとディレクターに求められるもの

A 5th of BitSummitのセッションで登壇する稲葉氏

――A 5th of BitSummitのセッションで話されていたゲームプロデューサーの重要性というテーマについて。強い個性とこだわりを持ったディレクターたちと、ゲームを売るパブリッシャーの間にたって、双方と向き合いながらゲームを作っていくのは、とんでもないメンタルの強さや高いコミュニケーション能力が求められるようにも感じますが、実際のところプロデューサーに必要とされるパラメーターというのはどの辺りになるのでしょうか?

稲葉敦志氏: ひとりで全て持つことができるわけではないですが、「審美眼」と「翻訳能力」だと思います。やはりディレクターが最初に出してくる企画書なり草案書が原石なんです。それを見て、すぐにきれいなダイアモンドになるかはわからなくても、いいところを伸ばして悪いところを削る作業は必要です。何がいいか、何が邪魔でダメなのかを、瞬間的に言える審美眼はプロデューサーにとってのクリエイティビティであり、ディレクターが持ってきたものをそのまま「この人がこう言ってるので」と(パブリッシャー)に持っていくのは、プロデューサーではないです。

もうひとつの翻訳能力というのは、自分の考えを何もかも話せるディレクターばかりではないので、ほとんどが優秀な能力を持っていてもそれをうまく外に出せない。そこに対して、「こうだよね」「ああだよね」と伸ばしながら通訳できる人間です。それをパブリッシャーなり外に向けて伝えていくのが最初のステップになりますが、ユーザーへのメッセージという部分でも同じことだと思います。

――なるほど。反対に、ディレクターに求められるものとは?

稲葉敦志氏: 「自分のカラーをはっきりと持っている人」です。次々アイデアが思い浮かぶ人、データ整理に優れた人、いろんなタイプがいますが、「オレはこうだ」という色を持っていないと絶対にディレクターはできないです。ディレクターって、本当に悲惨なんですよ。ゲームを作る時、「あれがダメだ」「これが面白くない」「何言ってるかわからない」とか集中攻撃にあうんです。でも、そんな時に「いやいやオレの作品はこうだから」と自分の内側から言える。プロデューサーとしては、そういった“人の魂”みたいな部分を見抜いて伸ばす力が必要です。そこのパートナーシップは、実は相性みたいなものもあって、優秀なプロデューサーだから、あるいは優秀なディレクターだからといって、誰とでもうまくやれるわけじゃない。組み合わせやマッチングがすごくあるんです。

稲葉氏のセッションは動画でも視聴可能。00:47:00地点からスタート

――そんなやりとりをいつも繰り返して辛くなることは?

稲葉敦志氏: 辛い……? むしろ楽しいです。いろんなギザギザしたカラーを、吸い上げたり、伸ばしたり、叩いたりしているプロセスがすごく楽しい。でも、めんどくさいです。めんどくさいけど楽しい。

――セッションで、社内でしのぎを削って戦わないとディレクターにはなれない、というお話もありましたが、それって社内政治的な側面もあるのでしょうか。

稲葉敦志氏: 社内政治はありません。例えば、最初のアイデアが良かったとしても、それを伸ばせなければ「君にはまだ早い」ということになり、何がダメだったかをはっきり伝えます。別の人間が良いものを持ってきていたら、それも共有して、出来ているものと出来ていないものをきちんと説明したうえで「じゃあ次がんばって」と言って終わりです。誰か後ろ盾がいるとか、口がうまいとか、勤続年数とか、そんなものは一切関係ないです。とにかく情熱があってそれをしっかりパッケージできる経験があればいいんです。

――稲葉さん自身が、ゲームをデザインしたいという想いはありますか?

稲葉敦志氏: 僕は、自分の「作りたい欲求」は果たしています。そこは性質が少し違っていて、ディレクターは、作品の隅々まで自分の神経を行き渡らたせるために、3年くらい集中します。僕はやりたいことがいっぱいあるので、プロデューサーとして、自分のカラーを作品に入れるわけです。「これは面白い」「これはユーザーに受け入れられる」「プラチナとして新しい」と言ったり、単純に「面白いかもしれないけどオレが嫌だ」という場合もあります。次の作品を考えるときも、「このテーマを絶対やるべきだ」「いまこれがトレンドから考えてくれ」とか、いつもアイデアを出しているので、作りたい欲求は満たされています。

――わかりました。本日はありがとうございました。

《Rio Tani》

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