音楽配信事業、ゲーム・デジタルコンテンツの企画や開発を手掛けるフロムイエロートゥオレンジ(fYtO)は、新作ゲームコレクション『ONE-DOT GAMES』を2026年5月17日にiOS向けに無料でリリースしました(Android向けは追ってリリース予定)。
本作は、ゲームクリエイター飯野賢治が2009年にiPhone向けアプリとして企画した『one-dot enemies』を元に、“1ドット”をテーマに、さまざまな遊び方へと発展させた5種類のゲームを収録したゲームコレクションです。リリース時には3種類のゲームが配信され、残りの2種類は後日配信されます。もちろん追加コンテンツを含めて無料です。
収録されているゲームは、『one-dot enemies』を飯野賢治氏と共に開発したSTUDIO-KURAや、公私にわたる友人のゲームクリエイター飯田和敏氏、元ワープ開発者など、同氏とゆかりのあるメンバーも参加。さらに、飯田氏が教員を務める立命館大学映像学部・通称「ゲームゼミ」の学生も参加し、飯野賢治氏が取り組もうとしていた“若手クリエイター育成”の志も受け継いでいます。
Game*Sparkでは、2026年2月にfYtOの代表取締役を務める飯野由香氏と飯田和敏氏へのインタビューを実施。『ONE-DOT GAMES』への想いや飯野賢治氏との思い出、さらに『太陽のしっぽ』『アクアノートの休日』などで知られる飯田氏のゲーム作りについてなど、さまざまな内容をお聞きしました!
『ONE-DOT GAMES』飯野由香氏&飯田和敏氏インタビュー

◆飯野賢治の遺したもの
――本日はよろしくお願いします。早速ですが、まず『ONE-DOT GAMES』の企画立ち上げ経緯について教えてください。
飯野由香氏:ありがとうございます。もともとは2025年の5月5日、飯野賢治生誕55周年に合わせて、55曲を収録したアルバム「KENJI ENO 55」を制作したことがきっかけでした。
そのアルバムには、未発表曲や未配信曲など、できる限り幅広い楽曲を収録したいと考えていました。その中で思い出したのが「one-dot enemies」という楽曲です。これは2009年3月にiPhone向けの無料アプリとして配信された『one-dot enemies』のために飯野賢治が作曲した楽曲です。

ただ、私は当時の制作経緯を詳しく知りませんでした。そこで楽曲の権利関係を調べていく中で、STUDIO-KURAの青木秀雄さんと出会うことになりました。そこで初めて、『one-dot enemies』は飯野賢治と青木さんのお兄さまが二人で作り上げたアプリだった、ということを知りました。
そうして楽曲「one-dot enemies」を無事にアルバムへ収録できることになったのですが、やり取りを重ねる中で、青木秀雄さんから「Android向けのリブートだけでなく、何か別の形でも展開してみませんか」とご提案をいただきました。それが、今回の「ONE-DOT GAMES」が生まれるきっかけになりました。
※2026年3月21日に『one-dot enemies』Android版が無料配信。

――『one-dot enemies』は今遊んでもユニークなゲームだと思います。シンプルなんですが、ついつい頑張ってドットを見つけて潰してしまいます。
飯野由香氏:『one-dot enemies』は、現在もiPhoneでプレイすることができ、これまでに全世界で29万ダウンロードされています。一方で、Androidでは遊ぶことができませんし(インタビュー当時)、iPhone版も長らく触れていないという方が多いと思います。
そう考えると、何か別の形で新たに展開できたら面白いのではないか、という思いがありました。ただ、もともとの『one-dot enemies』は、飯野賢治が企画し、青木さんのお兄さまがプログラミングを担当して完成したゲームです。
今回も青木さんのお兄さまには開発者として関わっていただける一方で、飯野賢治本人はもういません。つまり、新しい企画を立ち上げるにあたって、ゲームクリエイターとしての視点をどう補うか、という課題がありました。
そこで、新たに企画を作るのであれば、せっかくなら若いクリエイターの方々とも一緒に取り組みたいと考えました。
その背景には、飯野賢治がかつて構想していた、若い才能を支援するプログラム「イルカの学校」を、何らかの形でもう一度動かしたいという思いもありました。
とはいえ、若い方々に参加してもらうだけではなく、その方々を導いてくださるゲームクリエイターの存在も必要です。そこで真っ先に思い浮かんだのが飯野賢治と親しかった飯田和敏さんでした。飯田さんは立命館大学で教員としても活動されていたので「学生の皆さんとのコラボレーションはできないでしょうか」とお願いしました。
飯田さんからは「話はわかったけど、学生たちが立候補するかどうかはわからないよ」と言われました。そのうえで「学生がやりたいと言ったら協力するよ」とおっしゃってくださり、結果的に4名の学生が参加してくれることになりました。
参加してくれた皆さんはとても意欲的で、さまざまな企画を出し合い、話し合いを重ねていく中で、最終的に2作品を担当してもらうことになりました。
飯田さんには後日、「快諾してくださってありがとうございます」とお伝えしたのですが「快諾じゃないよ」と返されました(笑)。
それくらい、簡単に進んだ話ではなかったのですが、結果として、とても良い形で若いクリエイターの皆さんとご一緒できたと思っています。

――快諾ではなかったんですね。
飯田和敏氏:なんで快諾じゃなかったのかというと、そこには僕と飯野さんの歩んできた道も大きな関係があります。まず、僕と飯野さんが親しく活動していた頃は、ゲーム業界やクリエイターにすごい注目が集まっていた時代だったんです。そんな時代だったので、かなり無茶もしていたし、飯野さんの周辺にもそういった人もたくさんいました。
でも、少し風向きが変わったらスッと雰囲気が変わって、例えば昨日まで顔パスだった場所を今日になったら断られたり。そういった業界での雰囲気や扱いの変化を共有していく中で「僕達はこれからどうなっちゃうんだろうね」という話をしょっちゅうしていました。

僕も飯野さんも1994年ぐらいから突っ走ってきたんですが、2000年を越えた頃からだんだん失速していったんです。僕は少し疲れてしまったのもあって、しばらくゲームを作ろうって気持ちになれなくなって。飯野さんとは、その頃あんまり会うことがなかったんですけれども、やはりゲームからちょっと引いていた時期があったんです。
でも事情があって作らなくなっても、だんだん"雪解け"していくように「やっぱりゲームを作るのは楽しいよね」という思いがあるんですね。僕らはなんていうか、時代の中で不相応に大きく見られちゃったっていうところがあるんですよね。だからすごいお金が動くこともあって、そういうこともプレッシャーだったと思います。
僕も飯野さんも色々なことを整理して、裸一貫で初心に戻ってやっていこうと思ったのが、なんとなく同じような時期なんですね。僕が『ディシプリン』という、狂気のようなゲーム作り出した頃に、飯野さんも『きみとぼくと立体。』を作っています。僕も飯野さんもWiiウェアを選ぶっていうところが面白いと思いますね(笑)

――どちらも2009年の作品です。これも偶然のタイミングだったんですね。
飯田和敏氏:そんな風に、またその"第二のゲームクリエイターとしての人生"をやっていくんだなっていう感じだったんです。でも、そこから数年後(2013年)に飯野さんが亡くなってしまいます。すごくビックリして、みんなそうだったと思いますが、ガッカリしてしまって……。
飯野さんの葬儀が終わってから、渋谷のギャラリーで飯野さんの作品の展覧会(「飯野賢治とWarp展」)をやったんですね。そこには飯野さんの作ったゲームや色々な資料や出版物もあって、そこの対談やインタビューってほとんど僕がお相手をしてて。なんだか不思議な思いもあって、展覧会にはずっと顔を出していました。
展覧会は最終的に僕が朝にギャラリーを開けて、すべてのゲーム機の電源を入れました。並んでいるドリームキャストの起動音はライブの合奏みたいでした。ドリームキャストの起動音は坂本龍一さんが作っていて、仲の良かった飯野さんが依頼したと聞いていますね。

僕も展覧会にただ通うだけではなく、そこにある作品を片っ端からクリアする企画がスタートします。当時Ustreamで毎日10時間くらい配信して。でも、寝ないでプレイするわけにもいかないし『エネミー・ゼロ』とかすごい難しいのもあって、配信でも「みんな協力してよ」とお願いしたんですね。

そうしたら全国から飯野賢治ファンが集まってくれて、交代制でゲームをして無事クリアしたんです。そんな感じで非常に濃い、葬儀とは別の“ゲームクリエイターとしての弔い方”みたいなのをさせてもらって。飯野さんが望んでいたかどうかわかりませんけど(笑)。一応、僕的にはそこで区切りがなんとなくついたかなっていうのもありました。
今回、由香さんから企画の話を持ってこられたときに、最初にちょっと「またやるの?」と思いました(笑)。その時に感じたのが、飯野さんの作ったゲームや人間性があり、イベントも色々開催していた方だったので、やっぱそこにはファンコミュニティがあるわけです。
そこに僕が出ていっても「誰?」となってしまうんじゃないかなと。飯野さんのことを投影されて期待されても、正直なところ、ちょっと荷が重いというのは未だにあるわけです。ということで、最初に由香さんからお話をいただいた時は、少しためらってしまったんですね。というのが快諾できなかった真相になりますね(笑)
――その上で、今回『ONE-DOT GAMES』の企画に立命館大学の学生さんが参加した経緯はどのようなものでしょうか。
飯田和敏氏:由香さんが最初に言ったように、若い人たち中心に企画ができないかと言うので、僕が普段教えている学生たちにまず話をすることにしたんです。
最初に学生たちに「ゲームクリエイターとしての僕のこと知らないでしょう?」と聞きました。普段教員として接していますが、僕もかつてクリエイターとしてブイブイ言わせていた事は言っていません。なので、ほとんどの人がそれを知らないし、そこには断絶のようなものもあるんじゃないかなと思います。
もう30年近く経っていますから、学生たちは飯野さんのことも当然知らないわけです。だから「飯野さんの企画をやるんだ」って言っても、誰も手を挙げないんじゃないかと思いました。だから、由香さんには「聞いたんだけど無理だったよ」と断ることになるんじゃないかなと。
でも「意気込みがある人は授業後に残ってほしい」とお願いしたら複数人残ってくれたんですよ。彼らはやっぱり飯野さんのことを知らなくて、逆に「すいません、知らないんですけど参加してよかったですか?」と聞いてくれました。

――作りたいという気持ちで残ってくれたんですね。
飯田和敏氏:僕としては(飯野賢治氏を)知らなくても全然いいと思ったんです。当然じゃないですか。存在を知らない人たちに「かつてこういうゲームを作った飯野賢治というゲームクリエイターがいたんだよ」と説明することで、知ってもらえる機会でもあります。
『one-dot enemies』なんかは「ああ、これもゲームなのか。こんなのもゲームになるのか」みたいな、単純だけど面白さがあるゲームです。
恐ろしく難しい『エネミー・ゼロ』や、画面がない『リアルサウンド ~風のリグレット』みたいな、ちょっと変わったものを作るクリエイターがいたんだよっていうのを、やっぱり後世に伝えたいなっていうのもありました。
飯野さんや、その時代の人たちの武勇伝を語るんじゃなくて、ゲームというプラットフォームを使ってめちゃくちゃに遊び倒していた……自由に作っていたという、その精神性みたいなものを知ってほしいと思いました。これは僕自身が課題として持っていたものでもあります。

最近の学生はコンプライアンス的なこともあるのかもしれないけど、基本的にお利口なので、バカなことをあんまりやらないですね。でもゲームを作りたいとかエンターテインメントをやりたいって言ってる以上は、若いうちに“やってないとダメでしょ!”という思いをずっと持っていました。
だから、"バカ代表"の飯野さんや僕が、昔はこんなことをやったんだよっていうのを、ゲームとして知ってもらうことで、もっとのびのびと生きていってもらえればいいなと考えます。それはゲーム制作っていう間接的な方法でも十分伝わってると思います。
だから学生たちとのミーティングなんかは一生懸命ですごく面白いですよ。その中で『one-dot enemies』では学生による、2つの企画が形になっています。片方はテストプレイも始まっていますよ。
――飯田さんも教員として参加している、立命館大学の映像学部から今回『one-dot enemies』に参加した学生さんは全員同じ学年なんですか?
飯田和敏氏:そうですね、全員が三回生で同じ学年ですね。(※取材日は2月)
――それで複数人が企画に参加して、その上でアイデアや才能も溢れてるというのはすごいですね!ちなみに、学部からの卒業生はゲーム業界へ進む人も多いんでしょうか?
飯田和敏氏:そうですね。うちのゼミって少し変わっていて、5人の教員がチームを組んでいるんです。僕はアートディレクション担当ですが、他にもプログラマーとか、サウンドデザイナーとか、ゲームデザインなどのメンバーがスペシャリストとして教えています。なので、受け持てる人数も多くて、今後さらに増えそうです。
学生たちは在学中からゲームを作りたいという気持ちも強くもっています。これまで10年以上やってきて、近頃では有名タイトルのチーフやリーダーとして参加しているという報告もあります。僕も業界に還元したいという気持ちはあったので、時間をかけてでも業界に入り込んでくれているのが嬉しいですね。
個人でインディーゲームを作っている卒業生もいますし、そういう作品を作りたいという学生をBitSummitに連れて行って、誰かに紹介するということもあります。ゼミ生はゲーム業界に入るかどうかというのはともかくとして、在学中は本当に一生懸命ゲームづくりを頑張っていますね。
◆"ワンドット"に何を託すのか
――『ONE-DOT GAMES』では「今どきの“one-dot(1ドット)”のゲーム、世界を表現する」という題材がありますね。このテーマについて教えてください。
飯田和敏氏: 最初に飯野さんの『one-dot enemies』をリブートするということを聞いて、自分であらためてプレイして、その意味を考えたんです。飯野さんの過去の作品との関連とかも意識していたらタイトルに「エネミー」が付いているなど思いました。
飯野さんの『エネミー・ゼロ』では敵の姿が見えません。韮澤靖さんのデザインしたかっこいい敵で、ピクセルも存在して、3Dデータ作ってるのに、わざわざ見えなくしてるんですよ。とんでもないことをしていますよね。
『エネミー・ゼロ』には「デジタルの悲しみ」というテーマで、当時のビットの観念論、その0か1というものがあります。『エネミー・ゼロ』が"ゼロ"なわけで、そこから一歩踏み出して"ワンドット(one-dot)"になったのが『one-dot enemies』なんだなと思います。

これは同じように見えにくいけど、ドットが1つ、ビットが1個"立ってる"のと"立ってない"のが大きく違うというんです。この2作品について、僕が「そうか、兄弟だ。表裏の作品なんだな」というふうに理解したら、すごくやる気が出てきたんですね。
それを学生に伝えたら「じゃあ"ハーフビット"というのはどうでしょう」みたいな話が出て、その自由な発想は面白いなと思いましたね。学生たちとは"ゼロポイント何ビットのエネミー"みたいな言葉遊びも楽しみました。
――『ONE-DOT GAMES』は5本のゲームが収録されたゲーム集のような内容になると伺っています。中には飯田さんが手がけた作品もありますが、その内容を教えてください。
飯田和敏氏: 『one-dot enemies』にあらためて触れた際、僕は老眼なのでプレイが大変だったんです。iPhoneも解像度がどんどん上がっているんですけど、僕の年齢などもあってどんどん見えなくなっているなと。
さらに飛蚊症もあって、画面に集中しようと凝視すると、必ず気になってしまいます。それで、ある時にこの(凝視することで見える飛蚊症の視点が)極めて"ワンドット"的だなと思いました。その"0"と"1"をひっくり返すような認知・意識のレベルの話だなというふうに感じたんですね。
一方で、ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリが作った「アンダルシアの犬」というシュールレアリズムの“宣言”とも言える映画があって、その冒頭が“女性の目をカミソリで切り裂く”という衝撃のシーンから始まります。ショッキングなシーンではあるんだけど、一つの解釈としては「この映画、目で見るな。網膜で見るな」という意味があります。

映像学部では先生から教わる基本的な作品で、本当にみんな絶賛するようなものなんですね。僕がその"目に関するゲーム"を作ろうと思ったのは、自分にとっての「アンダルシアの犬」の衝撃的なオープニングを、スマートフォンでやるといいんじゃないかと言う発想です。それが『ONE-DOT Eyes 』ですね。
自分にとって飛蚊症は非常に邪魔なものなので、手で取り除きたい。でも流石にそれはできないので、スマホの中でタッチで潰せたら気持ちいいかもしれない。逆に目玉をタッチするのは気持ち悪いんだけど、気持ちいいとか気持ち悪いとか、いろいろな感情を呼び起こすっていうのも、すごく“飯野的”だなというふうに考えたんですね。
最初にこれを思いついてイメージムービーを作って、由香さんに見てもらいました。

飯野由香氏:鳥肌が立ちました。
「やっぱり飯田さんにお願いしてよかった」と心から思いました。私自身も飛蚊症があるので、それをゲームで潰せるって最高じゃないですか。
ただ、この企画が最初に出てきたので、学生の皆さんにとっては、いきなりハードルが上がってしまうのではないかと少し心配しました。
でも実際には、学生の皆さんからも次々と面白い企画が出てきて、私自身、何度も驚かされました。「これはきっと面白いものになる!」と感じました。
――『ONE-DOT Eyes』では直接目の画面で取り除いてます。花粉症の人が辛すぎて「目玉を取り外して洗いたい」みたいな表現をするのが、それに近い感じなんでしょうか?
飯田和敏氏:その感覚はわかるかも知れません。僕も取れるなら取って綺麗にしたいですからね(笑)。
これが評判よかったら、他の体のパーツもどんどん題材にできるかも知れませんね。気になるところとか、痒いところをワンドットで処理していくような感じでやれたら面白そうです。

現時点だと学生たちのサポートもあって、ゲームの進捗は少し遅れていますが、エンジンをかけてどんどん進めていきます。
――『ONE-DOT GAMES』では、ゼミの学生たちの企画する2作品も収録されます。企画づくりの際に、飯田さんからどのようなアドバイスがあったのでしょうか?
飯田和敏氏:僕としては、これまで話してきたゲームや飯野賢治の存在といった内容の話を最初に伝えました。そこから先は、学生たちが自分で考えて、ディスカッションして、どんなものを作るかというのを目指していました。
その中でゲームの企画に必要なものは「地域性」「普遍性」「実現性」であるみたいな、抽象的なところを伝えています。この三つの要素をクリアしていかないとなかなか進まないし、とくに「実現性」に関しては、空論を無くすために重要です。期間やリソースなどを確認できなければ、企画の良し悪しも判断できません。
そういった中で生まれたのが今回収録される2タイトルで、当然ボツになった企画もたくさんあります。でも、ボツになったものでも大切な資産です。今回は実現性の面で難しかったけど、そのテーマは次の作品のためにも活かされるものですね。
だから、ボツをたくさん作るっていうのは、ゲームクリエイターになりたい人にとっては、とっても大事なことです。
――学生企画は2タイトルが収録されます。『ONE-DOT GARDEN』は"ワンドット"の害虫を駆除して土地に花を咲かせるゲーム、『ONE-DOT ZERO』はスマートフォンを傾けて真っ黒な画面を"ワンドット"ずつ削っていく内容です。『ONE-DOT ZERO』のスマートフォンを傾ける操作というのは、やはり今のガジェットに慣れている世界の発想なのかなと、ユニークに思います。
飯田和敏氏:最初は黒板を爪でひっかくようなイメージだと思ったんですが、だいぶ違う感覚でしょうね。これは。今の20代ならではのリアリティや発想もあるんだろうなと思いますね。
まだまだゲームとしては思案中でもあるので、今後学生たちの発想でどのようになっていくのかは楽しみにしてほしいですね。

――『one-dot enemies』でも、単純にドットを潰すだけじゃなく、一気に弾けたり、壊すと逃げるドットがあったりしてメリハリが楽しいですよね。『ONE-DOT GARDEN』でも、そういうのがあれば嬉しいです。
飯田和敏氏:学生たちは企画づくりの際に「"ワンドット"に何を託すのか」という話をしています。その中で、例えば"ワンドット"が花粉で、それが移動で受粉して花が咲く。そこにプレイヤーがどう介入するか、みたいな内容を議論したりしています。

――学生企画でも"ワンドット”を倒すのか、"ワンドット"で削るのかといった、発想の違いがあるのも面白いですね。
飯田和敏氏:「"ワンドット"というキャラクター」をどういう存在にするのかという感じですね。学生たちとは、今回の企画にあわせて1度合宿を行ったんですよ。お泊り合宿ですね。
合宿では色々な企画が出てきて、今回収録される『ONE-DOT ZERO』は、その話し合いの中でポンと生まれたものなんです。最初は別の企画を詰めて行こうという話だったんですが、こっちのパワーがすごすぎて、結局『ONE-DOT ZERO』の企画で行こう!となったんです。
こういう化学反応というか、その時にやっぱりみんなで集まって、制限もない状態で真夜中まで話し合おうよという時に、なんかいいものが生まれるなあっていうのはすごい感じましたね。
後はまあ『ONE-DOT ZERO』には他チームが作成している他の2作品もあるので、我々がこけても大丈夫だと思います(笑)
――(笑)。飯田さんと学生さんの企画ではないですが『ONE-DOT Blink 』も気になります。瞬きするとカメラが認識して敵が増えていくから、できるだけ瞬きせずに敵を全滅させろという。自分はドライアイなんでクリアできないかも知れません。
飯田和敏氏:これも今時の作品だなと思います。『ONE-DOT ZERO』と同様に、今の端末に慣れ親しんでいるからこそ出てくる企画やアイデアだと思うので、面白いなあと思ってます。

――STUDIO-KURAの青木さんが作る『ONE-DOT Block Breaker』も、"ワンドット"を弾き返すブロック崩しで面白そうですね。
飯田和敏氏:今のところこの5本のゲームを全て無料で配信する予定だって言うんだからすごいと思います。正直なところ狂ってると思いますよ(笑)
※現時点で最初のリリースで『ONE-DOT ZERO』『ONE-DOT Block Breaker』『ONE-DOT Blink』の3作品を無料配信し、追って『ONE-DOT GARDEN』『ONE-DOT Eyes』を無料配信予定。

――元々の『one-dot enemies』は、飯野賢治さんが「あらゆる年代に楽しんでほしい」と願うことで無償でリリースされたとお聞きしています。今回も、その意志を受け継ぎ無料リリースを予定しているんですね。
飯野由香氏:はい。今年の3月1日でワープの設立から33周年を迎えます(取材日は2月)。
現在は、ワープという名前を聞いても知らない方が殆どで、ご存知であっても「かつてゲームを作っていた会社」という印象だと思います。
だからこそ、もう一度ゲームを出すことで、ワープや現在のフロムイエロートゥオレンジの活動を、より多くの方に知っていただきたいという思いがあります。
ただ、私はゲームクリエイターではないので、今回のように青木さんや飯田さんをはじめ、素晴らしいクリエイターの皆さんのお力をお借りしながら、新しい形でゲームを届けられることをとてもありがたく思っています。
フロムイエロートゥオレンジは、ワープの流れを受け継ぐ会社であり、現在もゲームに関わる会社です。そのことを改めて知っていただくきっかけにもなればと思い、まずはできるだけ多くの方に触れていただけるよう、無料での配信することにしました。
飯野賢治の意志を受け継ぐだけでなく、そこから次に繋がるものも生み出していきたいと考えています。もちろんボランティアというわけにはいかないので、今後の展開では、広告などを取り入れる可能性もあるかもしれません。

――「ボランティアじゃない」というのは大切なことだと思います。
飯田和敏氏:でも、どうしても「亡くなった人の名前を使って金儲けするのか」みたいな批判もあるんですよ。
飯野由香氏:そうなんです。実際に、かなり強い言葉で「亡くなった人の名前を使って商売をしている」と言われたこともあります。
「何か良いことをするのかと思ったら、結局は商売なんですね」と受け取られることもあって、そこまで言われるのかと思ったこともあります。
――なるほど。
飯野由香氏:でも、ここで私が必要以上に萎縮しないことも大事だと思っています。飯野賢治という人は、常に何かを言われる存在でしたから。
だからこそ、きちんと意味のある形で次につなげていきたいと思っています。

――『ONE-DOT GAMES』とても楽しみにしています!
次ページでは、飯田和敏氏から、さまざまなゲームのお話を聞かせてもらっています。『太陽のしっぽ』『アクアノートの休日』『巨人のドシン』など、一風変わった名作ゲームが生まれた経緯など、たっぷりと聞かせていただきました!








