『メギド72』の当初の失敗からの復活劇は ゲームの“こだわり”を運営に絡めることで実現した。プレイヤーを熱狂させ続ける独自の手法とは【CEDEC2021】 | GameBusiness.jp

『メギド72』の当初の失敗からの復活劇は ゲームの“こだわり”を運営に絡めることで実現した。プレイヤーを熱狂させ続ける独自の手法とは【CEDEC2021】

人気スマホRPG『メギド72』。いまでこそ独自の地位を築き上げたタイトルですが、サービス当初はそうではありませんでした。一時は終了まで囁かれたタイトルがいかに復活し、ファンの引き付け続けるこだわりを見せたかが今回のセッションでは語られました。

ゲーム開発 プロデュース
『メギド72』の当初の失敗からの復活劇は ゲームの“こだわり”を運営に絡めることで実現した。プレイヤーを熱狂させ続ける独自の手法とは【CEDEC2021】
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国内最大のゲームカンファレンス「CEDEC2021」が8月24日から26日にかけて開催され、「『メギド72』の事例でお伝えする『こだわり』によってユーザーを熱狂させるスマホゲーム運営手法のエッセンス」のセッションが公開されました。

ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)が運営している人気スマホRPG『メギド72』は、ユーザーを引き付け続けるコンテンツとコミュニティを作り上げてきましたが、必ずしも正攻法だけで作っているわけではなかったといいます。ゲーム内外も独特の「こだわり」により、熱狂を生んできた面があったことを、DeNAゲーム事業本部マーケティング統括部の早川真央氏と魏健人氏が解説します。

順風満帆ではなかった『メギド72』の船出

まず初めに、あらためて『メギド72』について紹介。本作はDeNAが運営を担当し、メディア・ビジョンが開発を行ったタイトルであり、本格スマホRPGと銘打って2017年12月7日からサービスが始まりました。

ドラフトフォトンシステムという独自のバトルシステムや、ゲームの内外に関して独自のこだわりを持った運営によって、プレイヤーから好評を獲得。2019年には日本ゲーム大賞の優秀賞を受賞しました。

しかし『メギド72』はサービス当初から人気があったわけではありません。サービス開始当初こそユーザーが集まったのですが徐々に減少していき、サービスから1年を過ぎるころには収益も悪くなるほどで「サービス終了か?」とさえ囁かれたくらい、厳しい時期に突入していきました。

そこで運営側は「この状況を打破すべく、背水の陣で改修した」とのこと。その結果、V時回復を達成。最もアクティブユーザーも収益も低い時から約15倍もの増加を見せることに成功します。

こうした改修のポイントにはチュートリアル改修と初期ゲームサイクルの改善を行った他、運用方針の改善も行ったことで、サービス終了の危機から一転し、スマホRPGの中でも代表的な一作へと生まれ変わったのです。

ゲームデザインの変遷

ここからは、いかに『メギド72』の状況を復調させたが解説されます。

まず本作がなぜサービス開始の初速で失敗してしまったかを振り返りました。早川氏によれば「各施策のこだわりを、ゲームサイクルとして機能させることができなかった」ことが、失敗の原因なのだそうです。

施策のこだわりとは、『メギド72』ではガチャのキャラにレアリティの差分を作っていないことや、3Dモデルを使い、ほぼ全キャラに固有のモーションやエフェクトを用意することなどです。

普通のソーシャルゲームのなかでも相当な手間をかけていたのですが、リリース当初はこれらをうまくゲームサイクルに回すことを深く考えていなかったことが失敗に繋がったのだといいます。

では『メギド72』を復調させるために、いかにこだわりを生かすようにしたのでしょうか?

早川氏はここで2つのポイントを提示。ひとつは「勢いや経験則ではなく緻密な分析」です。ゲームデザインの精度は分析の制度によって左右されるとのことで、分析できる環境設計が必須になったそうです。そこでエンターテイメントサイエンス部など、組織を横断した分析組織を設立する施策を行ったといいます。

ふたつ目は「分析結果を元にした、ゲームデザイン設計ができるスタッフのアサイン」です。多種多様な分析内容はゲームデザインをサポートするための強力なツールになるため、その内容からゲームデザインするために専門スタッフが必要になります。そのため、分析とゲームデザインの両立を目指す組織を作ったのだと解説されました。

そこで当時の早川氏は『メギド72』のこだわりの目的には「キャラクターを平等に扱う」ということがベースにあったといいます。キャラを平等に扱うのはストーリー面やマーケティング面などの観点などもはさみがちになりますが、ここでの論旨はバトルの側面に絞ったものとして説明しました。

そんなキャラを平等に扱う運営方法なのですが、早川氏は「多くのソーシャルゲームでメジャーな方法が使えない」という壁に当たったのだといいます。

たとえば普通のソーシャルゲームでは各キャラにレアとかSSRといったレアリティが設定され、パラメーターの強弱が作れるのですが、本作は平等を目指すためにその手法を作れません。

また時系列によるインフレも難しく、普通ならサービス開始2年目に登場するキャラが1年目のキャラより強くなるという傾向があるのですが、こちらも見送ることになります。

そこで本作が目指したのは、キャラクターの魅力ではなくそもそものバトル自体の魅力を上げていくことでした。

しかしすでにサービスが始まったタイトルのため、新しい魅力の軸を導入するのは難易度が高いもの。そこでナチュラルな後付けとして、属性や3すくみ関係のような新ルールの追加を考案したとのことです。

これは多くのRPGでもお馴染みのルールですが、早川氏は「そもそもゲームの途中に実装されることもあり、運営としてもお客様側としても面白みに欠けてしまう」と考えたそうです。そこで、本作のバトルシステムに合わせた新しいバリエーションがないかを模索します。

そこで考案されたのがタクティカルソートというものです。これは本作独自のアーキタイプバリエーションのことで、単なる属性といったバリエーションとは違い、遊び方に変化が生まれやすいデザインだと言います。

タクティカルソートには、楽器を持ったキャラが「協奏」というバトルスタイルで音楽を使って戦うものや、「点穴」という独自のエネルギーを溜め、防御を無視したダメージを与えるものなどが用意。タクティカルソートが変わるだけで戦術が大きく変わるため、さまざまなキャラクターの需要が高まっていったとのことです。

こうしたタクティカルソートを実装したメリットは「遊び方が増え、プレイヤーの体感がよかった」ことと、「一定の数までバリエーションを増やすことができた」ことだと説明。属性システムとは違い、遊び方の変化を生みながらキャラの需要も生んだ意味で、まさしく複数の問題を同時に解決するようなアイディアだったと言えるでしょう。

こうしたタクティカルソートの運用について、戦術ごとのマッピングを提示しながら説明しました。縦軸はタクティカルソートを使う時の難易度で、横軸は戦術から生まれるダメージ量を示しています。

マッピングの左上に属するソートになると、ダメージも低く扱いも難しいものになるため、プレイヤーの体験が良くないものに陥るため、対応が必要になるそうです。

反対にマッピングの右下に属するソートでは、プレイヤーには無敵感を味わいやすく好まれるがソートが一強の状態に陥るため、多様さが生まれなくなるリスクがあるとのこと。「この領域に属するものは基本的にリリースしてはいけない」というほどです。

縦軸のソートではプレイヤースキルの成長ができているかもチェックする意味も込めたといいます。たとえば扱いが簡単なソートでは、ゲーム序盤に取りやすくし、プレイヤーに戦術を覚えてもらう意図があります。

プレイヤーが本作を始めたとき、これが序盤に使われているかどうかをチェックします。早川氏は「冒頭で話した初期ゲームサイクルの改善」とは、まさにこのことだったと説明しました。

一方で縦軸の上に位置するソートの扱いが難しいものを、ゲーム後半で入手し、扱えているかプレイヤースキルの成長が適切かをチェックします。また横軸のダメージ量とソートの難易度が適切かも見ていくとのこと。

たとえば上の図では、戦術Eと戦術Cはほぼ同じダメージ量ですが、戦術Cのほうが使うのが簡単です。すると戦術Cの利用が集中してしまうため、不適切なマッピングの状態なのだと説明。キャラの追加や武器などでダメージを引き上げる施策をとるとのことです。

ここまでのタクティカルソートの話は、キャラクターの性能の話でもあります。早川氏は「一般的にソーシャルゲームでキャラの魅力を作るのは見た目とストーリーの話だが、それ以外でも魅力を作れる」とのことです。

というのも、先述のように『メギド72』の方向性はバトル中心でキャラを平等に扱うもののため、キャラの魅力単体では売り上げを出すのが難しいとのこと。そのため、キャラ性能の魅力から売り上げを出すという考え方だそうです。

キャラ性能の魅力を最大にするためには、たとえばタクティカルソートで需要の幅を作ったとしてもプレイヤーにそれを欲しいと思ってもらう必要があるとのこと。なので、タクティカルソートマッピングの把握や、キャラごとの使用率といったゲーム環境を把握し、適切なキャラクターをタイムリーにリリースすることが大切なのだそうです。

しかし「タイムリーにリリースすることは難しい」と早川氏は説明。というのも、開発する時期とリリース時期のタイミングがズレることがあり、リリース時の環境とはマッチしない可能性があるからです。

『メギド72』の制作スケジュールでは、リリースの約1年半前からキャラクターの輩出計画を立案するとのことです

この段階でリリース時のメタ環境を想定してキャラの選定や技の候補、タクティカルソートまで決めておく必要があると説明。さらに能力がそのままキャラのイラストにも反映される構成なのもあり、排出計画の段階でかなり突き詰めて決めておかなければならないそうです。

計画段階でここまで設計を考えておく理由には、リリースまでの期間が長くなるほどに外部要因が入ってしまうため、設計の確度が落ちていくためとのこと。この設計確度を上げていくために、先述の環境の分析のほか、ユーザー状態の把握を行うことが必要だと言います。これらの分析結果を元に将来を予測し、キャラクターの排出計画を設計していくのだそうです。

ファンの驚きも用意する、こだわりのマーケティング施策

続いて魏氏が、独自のマーケティング施策について解説。

『メギド72』で行ってきた施策は「形式にとらわれない」という意識で行っており、マッチョキャラのキャラソングのPVをイベントに合わせて公開したり、リアルイベントに合わせて会場内に人工芝を敷き詰めたりと、これまでもネタとして興味を引かれるのような施策を行ってきました。

開発領域だけではなく、マーケティング領域でもこだわりを見せているのが『メギド72』の特徴であり、ここでは「どのような考えからそうした施策の実地に至ったか」が解説されました。

そこで近年で大きなトピックスとなった、2019年にゲーム大賞優秀賞を受賞した施策について解説。この賞はCESA開催にによって、その年で優れたゲームに授与されるものです。受賞の大多数がコンソールゲームのなか、『メギド72』は唯一のスマートフォンゲームとなったとのことです。

あらためて、ゲーム大賞優秀賞を受賞する前の状況を振り返ると、2019年は要所で施策を行うも、アクティブユーザーの維持は出来ていても伸び悩む状況が続いていました。

そんな中、ゲーム大賞受賞のお知らせが届きます。マーケティングとしては、「これをうまく施策に使えないか?」と考えたそうですが、当初は社内でも受賞に関して「ニッチすぎる訴求では?」とか「その賞自体を知らない人が多いのでは?」といった、消極的な声が出てきたそうです。

困った魏氏は、『メギド72』の前プロデューサーである宮前公彦氏に相談したところ「リスクがあるが、今回を逃したら二度とチャンスは来ない」、「事例がなくとも『メギド72』としての事例を創出する気持ちが大事」との言葉を受け、全力でゲーム大賞受賞を使い倒すと決めたそうです

受賞後、およそ半年に渡ってやりすぎだろうと思うほどの「ゲーム大賞」を押し出したプロモーションを実地します。初となる交通広告の実施や、デジタル広告からテレビCMに利用したり、果てはゲーム内のアイコンにまで受賞マークを利用することをやってきました。

しかし施策の裏では様々な戦略も平行して考えていたそうです。まずプレイヤーへの感謝を伝えることを行い、苦しい時期を支えてくれた事の感謝としてゲーム内外でのキャンペーンやプレゼントなどを行いました。

続いて、訴求効果を踏まえた施策の展開を説明。たとえばデジタル広告を機軸に訴求テストを行い、効果を分析し、大型マーケッティング施策に生かしたとのこと。さらに広告にて新規の客層へ「何か受賞したすごそうなゲーム」と刷り込む意図もあったそうです。

施策の結果、デジタル広告の転換率(CVR)は2倍になり、デジタル広告の獲得単価(CPI)は20%以上の改善、そしてTVCMからの獲得件数は2倍にもなったそう。この施策は見事に大きな効果を上げたとのことです。

それ以後も形式にとらわれない、オリジナルな施策の実施しています。昨年2020年には「メギドミー賞」という、ゲーム大賞受賞をさらに悪乗りしたような施策を行ってもいるのです。

この施策のベースには、サービスが開始された7月2日「メギドの日」という他タイトルのハーフアニバーサリーがあります。これまでも様々な施策を行ってきましたが、3回目の施策として「メギドミー賞」の試みが行われました。

背景としては2020年1月移行、じりじりとアクティブユーザーが減ってしまっている中、「メギドの日」に合わせて盛り上がりを作りたいと考えたそうです。そこで「メギドミー賞」では、4月後半から7月2日までの期間にユーザー参加型投票コンテンツを実施する施策を行いました。

これはキャラや音楽など10部門にも及ぶ投票の部門が用意され、オンラインの生放送にて受賞者を発表するものでした。企画開始当初はプレイヤーも戸惑った声が上がったそうですが、施策の実施後には声は一変し、高評価に変えることに成功したといいます。

こだわったポイントとして、元ネタのアカデミー賞のように格式ある式典らしさを追求したとのこと。最もチームで議論したところは「すべてのキャラにファンがいるため、人気投票にはしたくなかった」ことでで、考えた結果プレイヤー自身が審査員としてキャラを評価していくかたちにしたとのことです。

もっとも力を入れたのはPVと授賞式だといいます。50種類にも及ぶノミネートPVや、授賞式のオープニングやエンディングのサプライズPVまで作り切り、3D空間による授賞式の演出までこだわりました。見事に施策は成功し、メギドミー賞によってアクティブユーザーを伸ばすことに成功しました。

セッションの感想としては、通常のソーシャルゲームとは一味違うゲームデザインや方向である『メギド72』は、当初の失敗からの回復も含めて独特だということです。ゲームの本質がどこにあるかをしっかり理解した上でプレイヤーたちの環境を分析し、対応してきた背景には、決して小手先だけではないこだわりを、ゲームデザインでもマーケティングでも貫き通す戦略と意志があったことがよくわかるものでした。


《葛西 祝》

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