スパイク・チュンソフト代表 櫻井光俊氏に訊く海外戦略―「日本独自の強みで海外展開をめざしたい」 | GameBusiness.jp

スパイク・チュンソフト代表 櫻井光俊氏に訊く海外戦略―「日本独自の強みで海外展開をめざしたい」

GDC2018で新作『ザンキゼロ』をはじめ、4タイトルの北米展開を発表したスパイク・チュンソフト。同社の戦略について代表の櫻井光俊氏にお話を伺いました。

企業動向 戦略

GDC2018で新作『ザンキゼロ』をはじめ、4タイトルの北米展開を発表したスパイク・チュンソフト。これまでもSteamによる海外配信や、他社パブリッシングでの海外展開は行ってきましたが、今回は満を持して自社によるパッケージソフト販売が行われる予定です。同社の戦略について代表の櫻井光俊氏に伺いました。



◆Steamでの海外配信が追い風になった


――いきなり4タイトル、それも御社ならではの、日本テイスト全開のゲームで北米展開をされるとのことで、驚かされました。

櫻井光俊氏(以下櫻井氏):ははは、ありがとうございます。

――実はチュンソフトさん時代から、ずっと海外展開について注目してきました。ただ、当時から「ローカライズの費用がかさむ上に、海外での需要が乏しい」と聞いていました。特にビジュアルノベルはその傾向があったようですね。

櫻井氏:よくご存じですね。

――それもあって今回のラインアップには驚いたんです。『ファイヤープロレスリングワールド』『STEINS;GATE ELITE』『428~封鎖された渋谷で~』『ザンキゼロ』『PixelJunk Monsters 2』の5タイトルで、『PixelJunk』以外は日本ならではのゲームですよね。それぞれ、どういった理由から?

櫻井氏:まず今回の北米展開の背景について説明すると、これまで弊社ではSteamでの『ファイプロ ワールド』『ダンガンロンパ』などのタイトルを2016年から配信してきました。これがいずれも好調な点があります。『ダンガンロンパ』シリーズについては、それぞれが20万本以上売れているほどなんですよ。そもそも『ファイプロ ワールド』も海外からたくさんの問い合わせメールをいただいて、その結果配信を決めた経緯がありましたから。


――それはすごいですね。

櫻井氏:その一方でこれまでも弊社は海外でもパッケージ版を、日本一ソフトウェアさんのパブリッシュで販売してきました。もちろん日本一ソフトウェアさんは非常に良くやっていただいてきましたが、Steamでの好調を受けて、ある程度コミュニティが温まってきたと感じていました。そこで、満を持して自社でも販売を手がけていきたいと考えました。

――すでに海外販社は設立されているのですか?

櫻井氏:はい、2017年12月に米ロサンゼルスのロングビーチに設立しました。マーケティングと販売を行う予定です。

――北米以外の地域はどうでしょうか?

櫻井氏:まず北米でノウハウを蓄積して、そこから欧州、アジアにも広げていきたいですね。そのためにも自社でリスクをとることが必要でした。

――ローカライズやカルチャライズについて、どのように考えられていますか?

櫻井氏:言語対応など最小限度に留めるつもりです。10年くらい前は海外に出すなら現地の文化に合わせた修正が必要だと言われていましたが、実際コストをかけたわりには、あまり効果が上がらなかったと思うんですよ。その一方で海外でも「できるだけ日本版と同じ内容で遊びたい」という需要が高まってきました。そうした声を大切にしたいと思っています。

――なるほど。

櫻井氏:そもそも僕らは海外でマスに向けて売ろうと思っていません。日本のゲームが好きな濃いユーザーさんにむけて、しっかりと楽しめるものを提供していく予定です。

◆現地主導のマーケティングを実施


――たしかに、ここ数年でそうした動きが感じられるようになりました。『ペルソナ5』のヒットはその一例です。海外からも『Undertale』『OneShot』など、JRPGに影響を受けたインディゲームが高い評価を受けています。今年のゲームデベロッパーズチョイスアワードでオーディエンス賞を受賞したのも『NieR:Automata』でした。

櫻井氏:はいはい。

――その一方で日本でも『アズールレーン』『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』など、アジア産のゲームが大ヒットを記録するようになっています。いずれも高い技術力に裏打ちされていて、日本のゲーム会社が完全に追い抜かれた感じもありますよね。人件費についても、もう日本より中国の方がずっと高くなっています。

櫻井氏:その一方で企画の独自性については、まだ日本に一日の長があると思うんですよ。だからこそ、日本のゲームが好きなユーザーさんに対して、高いクオリティのゲームを出していきたい。そこに強みがあると思っています。


――対応言語はどうなりますか?

櫻井氏:まずは英語のみでローカライズします。販売地域が増えるにつれて、対応言語を増やす必要がありますが、まずはアメリカむけに注力しようと。それに一度英語に翻訳すると、多言語への展開もやりやすくなりますしね。

――『ザンキゼロ』については、まさにこれから日本でも発売されることになりますが、海外との同時発売についてはどうでしょうか?

櫻井氏:そこは我々も悩んだところですが、まずは日本先行で発売し、じっくりローカライズをしてから、アメリカで発売する予定です。なにしろ我々にとっても初めての経験ですから、時間をかけてでも良いものにしようと思っています。

『ザンキゼロ』スクリーンショット。画面は開発中のもの

――海外展開でいうと、日本人のクリエイターにとって、ローカライズのクオリティ判断が難しいという課題があります。この点についてはどうでしょうか?

櫻井氏:そこは問題ないと思っていて。要は現地のローカライズプロデューサーなりに、いかにクオリティチェックの権限を委譲できるかという話ですよね。我々は逆に、海外のゲームを日本に翻訳して販売しているじゃないですか。そのため英日のローカライズノウハウが蓄積されています。その上で、日英・英日の担当者同士が、社内で仲が良いんですよ。

――ただ配信するだけなら、それこそSteamで良いわけですよね。現地に子会社を作られることで、よりマーケティングに幅や深みが出てくるということでしょうか?

櫻井氏:はい。市場をよく理解している現地の担当者に任せて、しっかり考えてもらいます。スパチュンらしい、目について刺激的なプロモーションをアメリカでもやっていきたいですね。

◆日本ならではのゲームで世界展開に挑戦


――ちなみに今回のタイトル内で『PixelJunk Monsters 2』だけ異質ですが、これはどういったところから?

櫻井氏:もともと僕が『PixelJunk Monsters』の大ファンだったんですよ。それでキュー・ゲームス代表のディランさんから「10周年を記念して続編を作っていて、パブリッシャーを探している」と聞いたので、だったらうちから出そうよと。すんなりと決まりました。


――こちらもパッケージ販売されるのですか?

櫻井氏:いえ、こちらはダウンロード配信のみとなります。

――話を戻すと『STEINS;GATE ELITE』のような中二病タイトルが、アメリカでどのように受け入れられているのか、気になります。ただ、個人的には「中二病」は世界で共通した概念だと思っているんです。誰だって子どもから思春期を経て、大人になるわけですから。

櫻井氏:ああ、それはそのとおりかもしれませんね。

――ぜひ「中二病」にかわる、良い英語をつくって浸透させてもらえればと。「Teenager Syndrome」では長い気がしますし、それこそ「Otaku」などと同じく、「Chûni」でもいいのかもしれません。

櫻井氏:それはおもしろい提案ですね。ぜひうちのローカライズチームでも共有させてもらいます。


――そんな風に御社の海外展開が成功すると、次に続く企業もやりやすくなります。一社ではできないことでも、何社かが束になっていけば、国産ゲームの海外展開についても、道が開けていきます。

櫻井氏:他に『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』の打越鋼太郎をはじめ、さまざまなクリエイターが仕込みを行っていますので、期待してください。また弊社には『喧嘩番長』というIPがありますよね。その中で女性向けに展開している『喧嘩番長 乙女』なども考えてみたいですね。

――ああ、いいですね。女性向けゲームは海外でサイレントマーケットだと思います。ぜひ御社に掘り起こしていただけることを期待しています。実際、国産ゲームの海外展開は今が良いチャンスであり、またラストチャンスなのかもしれません。

櫻井氏:ありがとうございます。がんばります。

――本日はありがとうございました。
《小野憲史@Game*Spark》

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