「ゲームは継続率や独自性重視」―ネクソン経営企画室長、熊谷峻平氏に訊く | GameBusiness.jp

「ゲームは継続率や独自性重視」―ネクソン経営企画室長、熊谷峻平氏に訊く

企業動向 戦略

「ゲームは継続率や独自性重視」―ネクソン経営企画室長、熊谷峻平氏に訊く
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モバイルゲーム会社であるgloops(グループス) の買収、Cliffy BやBig Huge GamesのTim Train など著名ゲームデザイナーとの連携で話題を集めるネクソン。韓国ではNPC(ネクソン&パートナーズセンター)という起業家向け入居施設の取り組みも注目されています。編集部では、同社の経営企画室長の熊谷峻平氏に、オンラインゲームの運営理念やパートナーシップの意義、日本市場における戦略について話を訊きました。



―――テラスをはじめ、オフィスの内装がとてもおしゃれですよね。これも「社内の雰囲気はこうあるべき」という理念の反映でしょうか。

熊谷: そうですね。内装には社長のオーウェン・マホニーが非常に強いこだわりを持っています。「ゲーム会社のオフィスはかくあるべし」というものです。おそらく、広大な敷地にすばらしいオフィスを構えるEA (Electronic Arts)の勤務経験が影響しているのでしょう。

たとえばこのテラスの壁に書かれた「Never Ending Fun Story」という言葉もそうです。前社長の崔 承祐は「No.1 グローバル・エンターテインメント・カンパニー」を経営方針としていたのですが、マホニーは「Fun(楽しさ)」という言葉を大切にしており、反対側の壁にも「Global Fun Leader」という言葉が書いてあります。



―――マホニー社長の考えはオンラインゲームの運営にも出ていますか?

熊谷: もちろんです。まさに現在進行形でオンラインゲームの運用方法を変えていこうとしています。普通は売り上げとDAU(1日のアクティブユーザー数)を指標にすると思うのですが、ネクソンは思い切って売り上げではなくDAUとユーザー継続率を重視しようとしています。そこに「ユーザーが愛着を持ってゲームをプレイしてくれているかどうか」が表れると思うんですよ。

売り上げを重視するということは、場合によってはユーザーに長期的に遊んでいただく観点からは 邪魔になってしまうことがあります。たとえば「今月は売上げ目標に届かないから月末だけ課金施策を入れよう」とか。でも、それではユーザーのほうを向いていないと思うんです。ですので、売り上げという制約を外して、DAUと継続率にフォーカスすると別の選択肢も生まれてくるのではないでしょうか。その点から5年も10年も続くような、できる限り息の長いゲームを提供するために努力しています。

―――Cliffy B やBig Huge GamesのTim Trainなど著名なクリエイターとのパートナーシップ提携については?

熊谷: 今の業界には「F2Pのオンラインゲームにチャレンジしたい」というクリエイターの方々が多いので、そうした方と提携していきたいと考えています。

提携相手にとってネクソンの魅力は、まず「世界中に事業拠点を持っていること」でしょう。ネクソンはアメリカ、ヨーロッパ、韓国、日本など世界中に拠点があり、中国にも直接(ゲームの)配信はできないのですがビジネスを知り抜いている人たちがいますから。「開発者がワンストップでゲームを世界中に配信できる」のは大きな魅力だと思います。

次が「F2Pのノウハウにアクセスできること」です。欧米のコンソールゲーム出身の開発者の方々は、パッケージ販売モデルには長けていても、F2Pには土地勘がなかったりします。その点ネクソンは世界で最も早い段階でF2Pを導入し運営し続けている会社ですので、運営手法をアドバイスできるのです。

―――クリエイター支援といえば、韓国で起業家向け入居施設のNPC(ネクソン&パートナーズセンター)を展開していますね。日本でも始める予定はありますか?

熊谷: 今のところはありませんが、とても好評な取り組みなので韓国に限定する理由もないと思っています。

ところでNPCという名称は、ゲームのNPC(Non Player Character)と掛けているのです。NPCはゲーム内でプレイヤーをサポートしてくれますよね。「メインのプレイヤーはあくまでベンチャーの会社であって、ネクソンはNPCのようにベンチャー企業をサポートしますよ 」という意味が込められています。



―――NPCを始めたのはどうしてですか?

熊谷: ネクソンが創業した20年前のオフィス環境は劣悪で「無い無い尽くし」でした。初期メンバーの多くはそんなベンチャー時代の苦労を経験しています。だからこそ、自分たちも起業を支援したいと思い、「まずは場所を提供しよう」とNPCを立ち上げたわけです。今の入居者はゲーム企業が多いのですが、特にジャンルを限定はしてはいません。

―――入居の具体的なメリットとしては何がありますか?

熊谷: 起業したばかりのときは賃料を節約するために、ソウルから1時間かかるオフィスを使わざるをえないことも少なくありません。しかしNPCならオフィスがきれいで交通アクセスもよいため、従業員の勤務が楽になるのはもちろん、人材採用の面でも有利です。

プログラマーやデザイナーの方々には「会社の運営や契約書の書き方がわからない」という方も多くいます。そうした会計、法務、資金調達や投資関連など ゲーム開発会社にとって専門範囲外の活動もネクソンがサポートすることで、ゲーム作りに専念できる環境を作れるに違いありません。その他、クラウドサービスやソフトウェアの割引もしています。

また、起業時には苦しみを共に分かち合うことが大事だと思うんですよ。起業は孤独になりがちですが、NPCには同じような境遇の企業ばかりなので連帯感を持ったり、いろいろな人とつながったりすることができるんです。ネクソンを軸にしてスタートアップ業界の人たちの連携の輪が広がっていけば、と考えています。

―――日本市場について伺います。注力したいデバイスはありますか?

熊谷: モバイルはダントツで大きいので無視できないでしょう。しかし大事なのはデバイスよりもやはりゲーム自体の面白さです。

―――F2Pの課金はどのようにバランスを取っていますか? 安くすると収益が上がらず、逆に高くすると「お金儲けしか考えていない」とユーザーの反感を買ってしまいます。

熊谷: F2Pの課金は本当に難しい問題ですね。ネクソンで一番収益を上げているのは中国の『アラド戦記』で、最高同時接続300万人を突破するほどの 人気タイトルなのですが、運営会社の元社長は「女性がショッピングを楽しむ感覚で課金をしてもらう」と言っていました。

女性ってショッピング好きな方が多いですよね。セールがあるとそれだけで気分が高揚してショッピング自体を楽しんだりします。そのように「楽しさの延長線上に課金がある」のが理想ではないでしょうか。「ゲーム内で強くなるためのアイテムを売る」という手法も否定するつもりはないのですが、まずいのはユーザーの足元を見るような形になってしまい、F2Pの課金がそれだけになってしまうことです。



―――中国と韓国、日本で人気を博すゲームの傾向に違いはありますか?

熊谷: 各国のiOSのモバイルランキングを見ると、中国ではカジュアルゲームが多いかなと思います。中国版LINEのような「WeChat」がゲームセンターをオープンしたことで、ゲーマーでなかった人たちがゲームをプレイするようになりましたから。

韓国はさすがオンラインゲームの国という感じですね。韓国版LINEの「カカオトーク」がゲームセンターをオープンして3年目になりましたが、日本よりもハードコアの世界に行っているんじゃないでしょうか。というのは、日本ではまだ「スマホを縦にして片手でプレイする」ゲームが多いのに対し、韓国だと「スマホを横にして両手でプレイする」ゲームが主流だからです。「携帯用ゲーム機」のような遊び方をしていますね。

一方、日本は強化合成やクエストなど、「基本的な枠組み」をなぞっているゲームが多いと思います。「基本的な枠組みをなぞった上でどう工夫するか」という感じですね。ただ枠組みに忠実なゲームがあまりにも多いので、だんだんユーザーも「次のゲーム」を求めるようになるじゃないかという気がします。

―――では、ネクソンから「日本のゲームシーンをこんなふうに変えていきたい」ということはありますか?

熊谷: 代表のマホニーは、「ゲームはアートだ」と常々言っていて、「人類の歴史でアートが発展していく中で、ゲームはアートが発展した究極形態の1つである」と主張しています。

ビジネスにおいても「目先の収益アップを図ること」よりも「すばらしいアートを作る、つまり独自性があって差別化されたゲーム体験を提供することに一点集中する」ことが成功につながると考えています。

しかし、残念ながらここ5~6年、その考えは業界全体で軽視されてきたのではないでしょうか。類似性の高いゲームにプレイヤーも食傷気味になってきているように思います。だからこそ、ネクソンとしても「ゲームをアートだと考える文化」に持っていきたいのです。

―――本日はどうもありがとうございました。
《Game*Spark》

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