PlayStation 、獅子は笑顔で目覚めた・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第10回 | GameBusiness.jp

PlayStation 、獅子は笑顔で目覚めた・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第10回

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PlayStation Meeting 2011に行ってきました。
その様子と感想を述べます。
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その様子と感想を述べます。
PlayStation Meeting 2011に行ってきました。
その様子と感想を述べます。

開催場所は、東京都港区・芝公園。ザ・プリンスタワー東京。昔、ボウリング場やゴルフ練習場があった跡地に建てられたホテルのボールルーム(=大宴会場)で行われました。ホテル入り口から、3度エスカレータを降りると会場があります。会場に着いた瞬間、今日は良い発表会になる、との予感が体内を走りました。

7年前を思い出しました。2004年、ニンテンドーDSの発表会です。出迎えてくださる任天堂の社員の方たちは、笑顔に満ちていました。我が社の新製品を発表することに、誇りを持っていることが、ひしひしと感じられました。

その時と同じ雰囲気が会場に漂っていたのです。いつもは怖い顔の人も笑っています。ご丁寧にも「クロークはあちらですけど、帰りが混むから手荷物はお持ちになったほうがいいかもしれませんよ」などと、社員の方がご案内してくれました。懐かしいキャッチフレーズを使えば、サービス満点、プレイステーションです。

会場に入りました。来場者たちは、なんらかの電子機器を操作しています。ノートPC、スマートフォン、ICレコーダー、デジタルカメラ、タブレットPC。かく言う私もそうです。今朝のことです。私はTwitterでこんなことを発言しておりました。

おはようございます。今日のPlayStation Meeting 2011の準備完了。ボイスレコーダー、カメラの充電、メモ用紙、ペンなどを取材用のバッグにつめ込みました。どうでもいいようなことだけど、記者会見の場面では、持ち物が重要だと思う。たとえば、カメラのバッテリーが切れそう、というだけで気が散る。気が散ると邪念が入ってスピーカーの話を集中して聴くことができない、と。


それにしても電子デバイスの種類の多さに圧倒されます。私の隣に座っていた記者のPCを覗き見すると(失礼!)、レッツノートにeモバイルを接続してHTMLエディタを立ち上げています。発表内容を逐次、WEBサイトにアップしていくのでしょうか。
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いよいよ開始です。電子デバイスがあふれる会場で、メインステージには平井一夫(ソニー・コンピュータエンタテインメント・代表取締役社長兼グループCEO)が壇上に立ちました。そこで、まず発表されたのはPlayStation Suite(プレイステーション・スイート)でした。まさに多端末化が勢いを増す時代に、携帯電話、スマートフォン、タブレットPCに「プレイステーションのクオリティを保ったソフトをクロスプラットフォームで提供していく」との発表です。

これは何を意味しているのか。「カジュアルにゲームを楽しむユーザーの皆様が加速度的に増加しています」の発言から推定するに、ソーシャル・ゲームの台頭にプレイステーションが楔(くさび)を打ち込むことを狙っているのでしょう。そして、「アンドロイド端末向けに」としたことは、アップル社を完全なる敵と位置づけた宣戦布告とも受け取れます。

ともあれ、多端末化の時流には、あえて逆らわない。それでいて、家庭用ゲーム専用機メーカーの存在意義を希薄化させない。私が考える限り、最善の戦略だと思いました。



つづいて、PSP(プレイステーション・ポータブル)の後継機が発表されました。PlayStation Meeting 2011では、この次世代携帯型エンタテインメントシステムをNext Generation Portable。コードネームをNGPと呼んだため、インターネット掲示板では、ネオジオポケットなどと揶揄されているようです。

しかし、1998年に発売されたネオジオポケットを知っているユーザー=ゲームのリテラシーが高いユーザーであればあるほど、NGPが魅力的に思えるでしょう。

今日、次世代ゲーム機の発表会でよくある光景。壇上に立つスピーカー・平井一夫氏が、ポケットからNGPを見せた瞬間に、どこからともなく拍手が起きました。歓迎の拍手です。会場内にいる、その筋のプロフェッショナルたちは好感をもってNGPを見ていました。

NGP、ニンテンドー3DSがやろうとしていることと重複する部分がかなりあります。

Social Connectivity.(社会的なつながり)
Location-based-Entertainment.(位置情報をもとにした楽しみ)
Converging Real and Virtual.(現実と仮想の収束)
Live Area.(生活空間)
Revolutionly User Interface.(革新的なユーザーインターフェイス)

これら英語がNGPのコンセプトとして飛び交いましたが意訳します。
「いつの間に通信」「すれ違い通信」「ARカード」的な楽しみがあるのが、NGPでもあります。

手前みそですみません。かつて、私はヒットコンテンツのトレンドは「3つの『間』」であると述べました。ニンテンドー3DSも、NGPも現実の「人間」「時間」「空間」を遊びに取り入れようとしています。そこにゲームの果てしない可能性があることに、多くの人が気づいています。言い方が違うだけなのでしょう。

前門の虎、後門の狼、という諺があります。NGPはソーシャル・ゲームの台頭や、当然ライバル視されるニンテンドー3DSや、ゲーム専用機以外の端末や、これからソニーの宿敵となるのかアップル社という、虎や狼たちに囲まれています。

その苦境の中で、堂々と獅子が立ち上がったかのような印象を受けた。
頼もしい印象を持ったPlayStation Meeting 2011でした。

皆さんが気になるニンテンドー3DSとの比較を申し上げましょう。異なるユーザーをつかんで棲み分けをする。両方を購入するユーザーが多いだろう。この2つの答えが、ゲーム業界の物書きの模範解答でしょう。
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私は前回のニンテンドー3DS体験会レポートで、ニンテンドー3DSの将来は「まだわからない」。ニンテンドー3DSの未来は未知です、と述べました。数学的に言うと変数が多すぎてわからないのです。

NGPも変数が多く、未知であることにかわりません。だいたいが、この高性能ハードの値段がいくらなのかも発表されていません。特に3G回線と接続できる。すなわち、このことは携帯電話と同様にキャリア(通信事業者)と契約を結び、所有するだけでコストがかかる装置になるのかもしれません。この回線契約については、NGPの最重要な着目点だと思います。

互いに変数が多いハードです。ですが、今後、変数が埋まっていく速度はNGPのほうが早いと予測します。

PlayStation Meeting 2011が終わったあと、SCEJプレジデントの河野弘氏が、証券アナリストから「クロスプラットフォームにした際のビジネスモデルが見えない」と詰め寄られる場面をたまたま目撃しました。

そこで河野氏はきっぱりと「今は明言できないが、ビジネスモデルを変えていく」とおっしゃっていました。任天堂、ニンテンドー3DSが曖昧なのは、この部分です。「いつの間に通信」のために、無線LANアクセスポイントを増やしたら、設置した企業や店舗はどのような利益があるのか。したがって、どのような普及の道筋があるのか。ニンテンドー3DSの肝である、通信にかかわる部分が、発売を一ヶ月まえにしてぼやけていることに、一抹の不安を覚えます。

その点、NGPは変数を定数に変えていこうとする強い意志を感じます。

万雷の拍手とともに終わったPlayStation Meeting 2011。
久夛良木健・ソニー・コンピュータエンタテインメント・名誉会長がいらしたので「今日の発表は15年まえから考えていたことですか?」とずうずうしくも質問しました。「私はもう道を譲ったんだから、平井に訊いてよ。ノーコメント」と言われました。しかし、その時に浮かべた笑顔は、コメントをしているのに等しい「ノーコメント」でした。

帰り道。タクシーに乗りました。乗るなり運転手さんが、「今日は1200人の宴会があったんですって?」と尋ねられました。「どうして知っているんですか?」と私。運転手さんはカーナビの下の特殊な端末を指さして、「今はね、GPSっていうんですか? 便利な機能がありましてね、お客さんがいそうな場所はどこか、その付近にいるタクシーに情報が流れるんですよ。それで私も駆けつけました」。

その端末を覗かせてもらうと、確かに「ザ・プリンスタワー東京。16:30。1200人宴会終了」の文字が表示されていました。ディスプレイには3本の棒が立っていたので、3G回線を使った端末なのでしょうか。

携帯ゲーム機も変われば、タクシーも変わる。
他端末と通信デバイスの多様化に歯止めはきかない。
改めて感じた2011年1月27日の午後でした。

■著者紹介
平林久和(ひらばやし・ひさかず)
株式会社インターラクト(代表取締役/ゲームアナリスト)
1962年・神奈川県生まれ。青山学院大学卒。85年・出版社(現・宝島社)入社後、ゲーム専門誌の創刊編集者となる。91年に独立、現在にいたる。著書・共著に『ゲームの大學』『ゲーム業界就職読本』『ゲームの時事問題』など。現在、本連載と連動して「ゲームの未来」について分析・予測する本を執筆中。詳しくは公式ブログもご参照ください。Twitterアカウントは@HisakazuHです。
《平林久和》

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